鶴岡地区医師会だより

三原一郎目線で鶴岡地区医師会の活動を配信しています。

ちょうかいネット運用の現状と課題

2017-07-28 09:34:01 | 日記
昨晩行われた医師会と勤務医との懇談会で、Net4U・ちょうかいネットの運用の現状と課題と題した話題提供をしました。

Net4Uの運用の現状に関しては、以前もこのブログで報告していますので割愛しますが、

今回は、ちょうかいネット運用の現状について、荘内病院、医師会の登録状況を元に分析してみました。

下記が、講演内容ですが、ちょうかいネットは、一部の医療機関でしか利用されていないこと、
荘内病院と日本海総合病院間、相互でのカルテ開示が進んでいることが分かりました。





山形県では、2次医療圏毎に、医療情報ネットワークが整備されている。
庄内医療圏の医療情報ネットワークは「ちょうかいネット」と呼ばれ、
ID-Linkという方式で、主要な病院の電子カルテ情報を閲覧できる仕組みが構築されている。
Net4Uも、開示施設のひとつである。



Net4Uからは、ワンクリックでちょうかいネットに繋がる機能が実装されている。
この機能を利用するには、患者の同意と登録が必要であるが、
同意書をもらい、ほたるにFAXすることで、直ぐ利用可能になる。



ID Linkで、病院の電子カルテを閲覧した画面。
処方、検査、画像、ノート(所見)などの情報が時系列でアイコン表示される。
アイコンをクリックすると内容が閲覧できる仕組みになっている。


Net4Uは、ちょうかいネットの公開施設でもあり、
ID-Linkを利用することで、Net4Uに参加していなくても、
病院からNet4Uの情報を閲覧することも可能である。


ID-Linkは複数の施設の電子カルテの診療情報を、
ひとつのカレンダーに集約して表示することができるので
庄内医療圏に分散しているカルテ情報を集約することも可能である。



青線が、荘内病院のカルテ公開件数の年次推移である。
右肩上がりで増えている。
一方で、赤線は医師会での登録(地域からの開示請求)であるが、こちらは頭打ちの状態にある。



青が、日本海総合病院への荘内病院の公開患者数、
赤が、荘内病院への日本海総合病院の公開患者数である。
荘内病院の登録数の伸びに比し、日本海総合病院での登録の伸びが顕著である。
背景に、日本海総合病院では、受診した荘内病院での受診歴のある患者を積極的に登録していることがある。


荘内病院の登録の内訳:連携パスでの登録数が多いという特徴がある。次いで多いのが日本海総合病院。



医師会登録分(カルテ公開を請求した施設)の内訳
診療所13(歯科2件を含む、診療所全体の10%程度)、病院4、訪看2、老健2、薬局1



公開請求をした件数の施設内訳
診療所が約70%を占める、次いで病院(17%)、訪看、老健、薬局の順
上位4施設(内科系診療所3+協立リハ病院1)での全体(940)の3/4を登録



医師会登録(公開請求)数は頭打ち、
公開請求の内訳:荘内病院:77%、日本海総合病院:18%、
荘内病院への公開請求は増加傾向



荘内病院の公開件数は増加傾向
とくに日本海総合病院への公開件数が急増
荘内病院での登録の特徴として連携パス関連が多い(28年度、355/490)
地域からの公開請求施設は、診療所13、病院4、訪看2、老健2、薬局1であり、診療所に限っても診療所総数の11%程度に過ぎない(28年度)
地域からの公開請求数(940)の3/4は、上位4施設(内科系診療所3+リハ病院1)が占める



ちょうかいネットの利用価値は病病連携において高い
地域からの病院カルテへのアクセスは、まだ一部に限られ、さらなる普及活動が必要


山形県鶴岡地区 IT活用のハイブリッド多職種連携

2017-07-08 11:54:10 | 日記
ファイザー株式会社が発刊している「ND(New Decade)地域連携」という冊子で、鶴岡地区の約20年に及ぶ「連携」の取り組みを取材して頂きました。
取材とは言っても、名立たる連携のエキスパート3名による詳細なヒアリングに基づくもので、当地区の連携の歴史の総括と言っても良い内容となっています。
ご覧頂ければ幸いです。





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ICTネットワークと人的ネットワークが融合
さまざまなリソースをつなぐ”地域連携室”
-山形県鶴岡地区 IT活用のハイブリット多職種連-
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◇フェーズ1(1990年代から2007年)
 Net4Uの構築と人的ネットワークの萌芽

 国のIT化や地域連携を推進する動きに乗り、地域電子カルテ「Net4U」を構築。
 「地域住民の健康を守る」という理念の下、医師会が在宅医療や介護事業に積極的に
 取り組む中、 ICTネットワークを活用した有機的な多職種連携を目指す。
 他方、地域連携に着手したばかりの病院において、手探りで業務を行っていた連携
 実務者たちが 病院という組織の垣根を越えて自発的につながり、助け合う場を
 つくるなど、人的ネットワークの萌芽が見られた。  

◇フェーズ2(2008年~2010年)
 OPTIMプロジェクトの受託・人的ネットワークの拡大

 OPTIMが、地域の各施設、各職種のキーパーソンを結びつける「場」として機能し、
 顔を合わせ議論する中で、地域の課題を”自分事”として考える意識が醸成された。
 それがメンバーから人的ネットワークを通じて地域全体に波及し、理念共有を円滑
 にした。活発な交流で信頼関係や仲間意識も強固なものになっていった。
 一人一人のメンバーのアイデアから生まれた人的交流の場は皆が潜在的に求めたいた
 ものだった。また、OPTIMの活動でNet4Uを実際に利用することにより、多くの職種が
 そのメリットを実感することもできた。

◇フェーズ3(2011年から)
 在宅医療連携拠点事業で多職種連携を強化

 「地域連携室ほたる」は、医療・介護の多職種を繋ぐ総合窓口として重要な機能を
 担っている。Net4U活用支援の窓口でもあり、ICTネットワークと人的ネットワーク
 とのハイブリッド化の 推進に大きく貢献した。また、Note4Uの運用で 患者・家族
 が参加する仕組みも整い、ほたるが行う在宅医療・介護連携の 地域住民への普及
 啓発活動も相まって、地域連携の理念が地域全体に広がろうとしている。


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ドローンで空撮!仁賀保高原

2017-07-05 09:54:05 | 日記
2年程前からドローンに興味をもち、時々遊んでいたのですが、
タブレット画面を見ながら操縦していると3D酔いをしてしまい、
3機を次々に失くしたこともあり、ドローンは諦めようと思っていました。

そんな折、DJI社の新型ドローン MAVIC PROが目に留まり
今年の春、思い切って購入してみました。


飛ばしてみたら、なんと3D酔いもなくなり、それ以来、以前から
撮りたいと思っていた当地区の素晴らしい風景の空撮を楽しんでいます。

今年3月のハワイ旅行にも持参し、ハワイ島の絶景サンセットを撮影することもできました。

ブログがしばらく途絶えたのは、ドローンに熱中していたこともあります。

ドローン空撮映像は、YOU TUBEにアップしてありますが、ここでも、少しづつ紹介したいと思います。

今回は、秋田県にかほ市にある、仁賀保高原です。

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仁賀保高原は鳥海山の北麓に広がる標高約500mの丘陵地帯です。広々とした牧草地、その鮮やかな緑に点在する大小の湖沼、湿原そして四季折々に草花が咲きその中をたわむれるジャージー牛の姿は、牧歌的風景を満喫させてくれます。
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ここの素晴らし景色はドローンでこそ、堪能できます。

なお、この場所でドローンを失くした経験があり、
リベンジでもあります(笑)

ドローンで空撮!仁賀保高原




地域医療福祉情報連携協議会:第10回シンポジウム・総会

2017-07-04 09:38:46 | 日記


地域医療福祉情報連携協議会 第10回シンポジウム・総会
日時:平成29年6月29日(木)10:00~17:00
会場:御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンター
主催:地域医療福祉情報連携協議会
共催:特定非営利法人 地域医療情報連携推進機構


【特別講演】
 地域医療介護情報連携における厚生労働省の政策動向について
  厚生労働省 大臣官房審議官 椎葉 茂樹氏


【基調講演】
 日本医師会が目指す地域医療・介護連携の課題
  日本医師会常任理事 石川 広己


【事例報告】

・サービスクラウドにより黒字運営を実現した「ユビタン健康ネット」
 福島県医療福祉情報ネットワーク協議会 理事 星 北斗


・安定経営の上に広域化を実現
医療と介護を繋ぐヘルスケアソーシャルネットワークNfet4Uと
 広域ネットワーク「ちょうかいネット」との融合
 鶴岡地区医師会 理事 三原一郎


・自治体病院による全県ネットワークの構築
 ふじのくにバーチャル・メガ・ホスピタル
 静岡県立病院機構 静岡県立総合病院 副院長 森 典子


・愛知県内における在宅医療・介護連携の課題
 地域医療・介護連携システムの現状と課題
 ~愛知県内の取り組みを中心に~
 名古屋大学 総長補佐/水野 正明


・自治体としての地域医療介護連携の取り組み
 しまね医療情報ネットワーク(まめネット)
 島根県立中央病院 病院長 小坂 真二


【パネルディスカッション】
 
 テーマ:地域医療介護情報連携システムの安定経営のために
 モデレーター:NPO法人長崎地域医療連携ネットワークシステム協議会 理事・運営委員 柴田真吾
 パネリスト:事例報告者5名
 


私の事例報告の抄録
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医療と介護を繋ぐヘルスケア・ソーシャルネット「Net4U」と
広域ネットワーク「ちょうかいネット」との融合

山形県鶴岡地区医師会
理事/三原一郎

山形県鶴岡地区では、16年以上にわたり、地域電子カルテNet4Uを運用しているが、2012年には、医療と介護を繋ぐヘルスケアソーシャルネットワークNet4Uとして、おもに在宅医療における多職種協働を支援するツールとして全面改訂された。Net4U参加施設は医療機関、薬局、訪問看護ステーション、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター、老人施設など多岐にわたり、ユーザの職種別でみると、ケアマネジャーなどの介護職の参加が最も多く、全体の33%を占め、次いで看護師(27%)、医師(19%)の順である。Net4U利用患者数は年々増加傾向にあり、地域の在宅医療に関わる医療・介護職にとって必須のツールとして定着しつつある。
さらに、山形県では4つの医療圏毎にID-Linkやhuman-brideを利用した広域ネットワークが整備され、病院間あるいは病院と診療所間でのネットワークを介しての情報共有が徐々にではあるが普及しつつある。鶴岡、酒田を含む庄内医療圏のID-Linkネットワークは「ちょうかいネット」と呼ばれ、Net4Uもちょうかいネットの開示施設としてカルテ情報を開示するとともに、Net4U画面からワンクリックで開示病院の電子カルテを閲覧する機能を実装した。このことにより、病院、診療所、訪問看護ステーション、介護事業所、老人施設などの情報を一元化することが可能となった。
また、当地区では、電子化した5つの地域連携パスを運用しており、とくに、大腿骨近位部骨折、脳卒中連携パスは全例登録を原則とし、地域での疾患データベースを構築するとともに、蓄積されたデータを分析し、年報として冊子化するなど疾病管理を目指した活動も行っている。脳卒中地域連携パスはNet4Uとも連動しており、カルテ情報とパスデータを相互に参照することが可能となり利便性がさらに向上した。 一方で、これら医療情報ネットワークの利用医療機関は限定されており、課題も少なくない。
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医師会勉強会:皮膚を診れば、何でも解かる?

2017-07-01 11:54:35 | 日記
第114回 鶴岡地区医師会 勉強会

皮膚を診れば、何でも解かる?
~内臓疾患に伴う意外な皮膚兆候・dermadorome~
獨協医科大学 皮膚科 准教授 濱崎洋一郎先生


 長崎県佐世保市出身
 1983年、川崎医科大学卒
 2005年から獨協医科大学皮膚科、講師を経て現在准教授


内臓疾患に伴う皮膚症状(兆候)をデルマドロームという。

Part1:皮斑を呈する内臓疾患
 皮斑(リベド)の分類
 -大理石様皮斑 閉じた網目状紅斑、一過性のことが多い
 -網状皮斑  おもに静脈性
 -分枝状皮斑 樹枝状 おもに動脈性 

・コレステロール結晶塞栓症
 71歳、男性、指尖部潰瘍、皮斑
 動脈の閉塞性変化、弾性板の断裂、クレステロール結晶の沈着
 
 「診断とは病名を付けることではなく、その病変がなぜ生じたかを知ること」

・クリオグロブリン血症
 69歳、女性、C型肝炎
 左下腿の発赤、腫張、
 クリオグロブリンを検出
 C型肝炎に、クリオグロブリン血症の合併は、40-60%
 
 「見えないのではなく、気づかないだけ」

・褐色細胞腫
 12歳、女性、両下腿の網状皮斑、
 倦怠感などの全身症状、
 生検で血管炎(多分動脈炎)、コンドロイチン硫酸の沈着
 副腎腫瘍摘出で皮疹も軽快した

・サルコイドーシス
 下肢の網状皮斑
 生検で、真皮内に肉芽腫が多発、
 自然の経過で治癒

part2:内臓悪性腫瘍にみられる皮膚症状

・黒色表皮腫
 頚部、腋窩にざらざらした黒褐色の局面を呈する疾患
 胃癌に合併することがある、
 急速に拡大し、強い痒みがある場合は、胃癌を疑う

 HAIR-AN症候群

・Leser-Trelat症候群
 多発する脂漏性角化症
 小さく、痒い、脂漏性角化症が急速に増大する場合は癌を疑う

・紅皮症、
 全身の瀰慢性紅斑を生じる疾患群
 原疾患は多岐にわたる
 皮膚T細胞性リンパ腫の一型として、Sezary症候群がある
 腫瘍性紅皮症の特徴として、痒み強い、脱毛、色素斑がある

・bazex(バゼー)症候群(腫瘍随伴性先端角化症)
 掌蹠、鼻尖、耳介などに、乾癬様皮疹が生じ、その数か月後内臓悪性腫瘍が顕在化する
 40歳以上の男性に多く、肺、食道、咽頭などの扁平上皮癌が多い

・腫瘍随伴性天疱瘡
 口腔、口唇などの粘膜に、広範にビラン、潰瘍、血痂を生じる。
 悪性リンパ腫、白血病に随伴することがほとんど。
 
・多中心性細網組織球症 reticulohistiocytosis
 手指、爪囲、手背などに硬い丘疹~結節を生じる。
 単球~マクロファ-ジが増殖する肉芽腫性疾患
 18%が悪性腫瘍(癌腫はさまざま)に合併
 
・皮膚筋炎
 眼瞼のヘリオトロープ疹、手指背のゴットロン兆候、多形皮膚委縮などの皮疹が特徴
 CPK、アロドラーゼ高値
 3割に悪性腫瘍、
 癌腫は多様
 50歳以上で高度の浮腫、痒みがある場合は高率に癌を合併する。


Part3:各種内臓疾患に伴う皮膚症状

・糖尿病
 糖尿病性浮腫性硬化症
 汎発性環状肉芽腫 約半分に合併
 前脛骨部委縮性色素斑
 
・バセドー病
 脛骨前粘液水腫
 
・甲状腺機能低下症
 粘液水腫 びまん性
 ミオパチーもみられ、皮膚筋炎と類似症状が多い

・ペラグラ
 ナイアシンの欠乏による皮膚炎、下痢、認知症の3Dを主徴
 皮膚症状は、痒みを伴う日光過敏症、色素沈着、皮膚委縮など特異的
 治療:ニコチン酸の補充

 ビタミンD抵抗性クル病Ⅱ型
  多発性嚢腫を伴うことがある
  
・黄色爪症候群
 肺疾患、リンパ浮腫を合併したものを黄色爪症候群という。
 日本人では副鼻腔炎を合併しやすい(副鼻腔炎の手術で軽快して事例を経験)