鶴岡地区医師会だより

三原一郎目線で鶴岡地区医師会の活動を配信しています。

庄内地域医療情報ネットワーク研究会

2022-03-15 12:27:16 | 日記

年度はコロナ禍で開催できなかった。今年も開催をどうするか議論があったが、このような活動は継続が大事であること、オンラインでの学会や研究会が広く一般的に行わることが可能となった今の時代、とくに情報ネットワークをテーマとする本研究会としては開催すべきあろうということになった。

まずは、庄内の医療情報ネットワークの歴史を振り返ってみたい。当地区の情報ネットワークの歴史は2001年のNet4Uの運用に始まる。2003年には荘内病院に、2008年には日本海総合病院に電子カルテが導入され、地域での医療情報化の基盤ができた。その後、病院・Net4Uと地域の診療所を結ぶネットワーク(ちょうかいネット)が構築され、現在に至っている。その間、Net4Uは、医療と介護を繋ぐヘルスケアソーシャルネットワークとして全面改訂され、おもに施設を含む在宅医療における医療と介護を繋ぐシステムとして発展してきた。酒田では2018年より薬局間でお薬情報共有システムが運用され、ちょうかネットは秋田へもネットワークを拡充している。

庄内地域医療情報ネットワーク研究会の歴史である。1回目は、全国規模のIDリンク研究会と合同で開催され全国から315名の参加を得て盛大に行われた。その後は、医療と介護の連携をテーマを主に年1回開催されてきたが、ここ2回はテーマが(医療情報ネットワークの)「未来」や「進めよう」というにテーマに変わってきている。参加人数は年々減少傾向にあるが、医療情報ネットワークが当たり前になってきた証左なのかもしれない。

山形県内4医療圏毎の参加施設数の比較である。庄内医療圏は、病院、診療所、薬局、訪看、介護施設などの参加数はいずれもトップ。とくに、介護施設の参加が多いのが目立つ。

4医療圏の登録患者数、アクセス数の比較。ちょうかいネットが多く、ついで、べにばなネット、Oki-netの順。

鶴岡医療圏の医療機関や施設からの開示請求数の推移、荘内病院、日本海総合病院ともに右肩上がりで増加している。2021年度は、荘内病院へ900、日本海総合病院へ400、庄内余目病院へ100の開示請求があった。

2016年にデータをとっているので、今回は、荘内病院にお願いして調査してもらい施設類型の割合の推移を調査してみた。2016年度は、医科診療所が多くを占めていたが、2021年度は、全体にバランスがとれているようにみえる。数的には、介護系施設が2から9へ、歯科診療所の0から3、訪問看護ステーションの2から5の増加が目立つ。

2016年と2021年度の施設類型毎の登録患者数の推移である。薬局、歯科診療所の実際の利用は少ないことがわかる。介護系施設、訪看の伸びが著しい。医科診療所の利用患者数は減少している。病診連携という意味では、順調に推移しているわけではない。今後の課題と考える。

参加施設はトータルで141。近年は、訪問看護・訪問リハ、介護系施設の参加が増えおり、全職種バランスよく参加している。

参加職種の内訳。数字は調査年度にアクセスした職種毎のユーザ数をカウント。ここ数年、看護師>介護職>医師の順位は変わりはないが、看護職、介護職の割合が増加しており、看護師と介護職で7割を占める。

2013年から過去8年間の職種毎のユーザー数の年次推移。近年、看護師の増加が著しく、介護職、リハ職の利用も順調に増加傾向にある。一方で、医師、薬剤師、歯科医に著変はない。

歯科医師、衞衛生士、言語聴覚士、作業療法士、寒冷栄養士、薬剤師、医師、看護師など多職種で構成されるチームを結成。食支援が必要な患者宅へ訪問し、チームメンバーで課題を検討し、患者家族を支援する活動を行っている。情報共有にはNet4Uを利用。アセスメントシートや動画を含む画像をチームで共有することで、実際に患者宅へ訪問しなくてもディスカッションができている。

Note4Uは、患者家族もパソコンのみならずスマホやタブレットを利用し、Net4Uにアクセスできるツール。連絡ノートに書きこむことで患者・家族に関わるチームと様々な連絡や情報のやり取りが可能となる。

在宅医、ケアマネ、訪問看護師、病院所属の認知症看護認定看護師などよりなる在宅チームが家族と共に患者本人の願いを支え、在宅看取りを行った事例。

荘内病院に入院したコロナ患者の肺炎症状などが重篤化した場合、日本海総合病院へ転院しエクモなどの治療が必要になる場合がある。そのような事例においてちょうかいネットが活用されている。また、宿泊療養施設に入所した患者のバイタル情報をちょうかいネットのフェイスシートへ登録し、保健所や病院、診療所などが参照している。

鶴岡地区の新型コロナへ対応(荘内システム)の概要図、第5波はオミクロン株の特性から患者数は多いが軽症が大多数という特徴がある。鶴岡地区では、荘内病院は重症例の対応に特化し、若年層の患者は医師会を中心とした開業医がトリアージとその後の経過観察を行っている。情報のやりとりは電話とファックスがほとんどであり、折角の医療情報ネットワークが活用されているという状況にはない。(以下つぶやき:病歴、家族構成、保険証番号など個人情報丸出しの情報がセキュリティーなど全く考慮されていないファックスでやりとりしているいることに全く問題を感じていない国、行政はいったいどんな感覚なんだろう。個人情報保護法があるのに・・。IT後進国なんだな~)

2018年にオンライン診療が解禁となったが、少なくとも当地区では普及しているという状況にはない。鶴岡地区は山形県のオンライン診療導入支援事業を受託し、在宅患者におけるオンライン診療の実証事業を実施した。オンライン診療は、十分使えることは実証できたが、運用の実際には訪問看護師などの介在が必要であること、また、診療報酬が低く設定されていることが普及の阻害因子と考えられた。

東北公益文科大学の鎌田先生は、「連携」について研究しているが、医療連携、多職種連携の先には、社会連携が必要と訴えている。社会連携とは、複数異分野が 関係する連携事象のこと。情報ネットワークも同じような考え方にたつと、横軸の基盤化にあたる部分が、医療情報のデジタル化と考える。実質的には電子カルテの普及である。一方縦軸の高度化は、医療情報利活用に当たるだろう。デジタル化した医療情報をどう利活用していくかが課題であるが、現在、ちょかいネットは医療連携に利用され、Net4Uは多職種連携に活用されている。さらに、社会連携という文脈ではNote4Uを代表とする患者主体のシステム(Personal Helath Record)がそれに値するだろう。将来的には、医療情報は患者さん自身が直接アクセスし、活用していく時代へ発展していくものと考えている。

 


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ほたる便り(たべるを支援し隊からのお願い)

2022-01-15 16:05:16 | 日記

 


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大腿骨近位部骨折術後早期のBI損失量に影響を与える因子の分析

2022-01-06 09:29:22 | 日記

大腿骨近位部骨折術後早期のBI損失量に影響を与える因子の分析

<目的>

先の論文「大腿骨近位部骨折前のBarthel Index(BI)と認知症によるマトリックス分類とBI損失量分析」において、退院時BI損失量のバリアンス発生と術後1週目BI損失量との間に有意差がみられ、術後早期のBI損失量が予後を左右するクリティカルインディケーターと考えられる旨を報告した。そこで、今回はADLがほぼ自立し、認知症がないA群を対象とし、術後1週後BI損失量が75以上の群を初期バリアンス群とし、70以下の非初期バリアンス群とを各種観察項目で比較検討することで、初期バリアンスに影響を与える因子を明らかにすることを目的とした。

<方法>

対象は、急性期病院での観察項目が記載されているパス番号2850~2980のA群73例(バリアンス群13例、非バリアンス群60例)とした。観察項目は、院内パスに記録されている術後リハ開始時期、移乗開始時期、フォーレ抜去時期、せん妄、輸血、安静時痛、荷重時痛、全荷重、危険行動、麻薬の使用、アセトアミノフェン・フェンタニルの使用とし、初期バリアンス群と非初期バリアンス群とを統計学的に比較した。

さらに、表記の検討で術後リハビリテーション開始時期が初期バリアンス発生に影響を与えていることが示唆されたため、リハビリテーション開始時期が術後1-2日の群と3日以上の群とに分類し、各種観察項目の出現頻度を統計学的に比較した。

群間の比較検定には比率を比較するのにはFisherの正確検定、連続変数を比較するにはt検定を用いた。有意水準は危険率1%以下とした。

<結果>

 術後1週後BI損失量が75以上の初期バリアンス群と非初期バリアンス群との比較では、初期バリアンス群の術後リハビリテーション開始時期、移乗開始時期、フォーレの抜去時期が非バリアンス群に比し長く、有意差がみられた。その他の観察項目のなかでは、せん妄、輸血、危険行動が初期バリアンス群で有意に多いという結果であった。一方で安静時痛、各種鎮痛剤の使用、術前白血球数に関しては、初期バリアンス群と非初期バリアンス群間に有意差はなかった(表1)。

 リハビリテーション開始時期が2日以内群と3日以上群との比較では、移乗開始時期、フォーレ抜去時期に有意差がみられたが、その他の観察項目においては有意差がみられなかった(表2)。

<考察>

先の論文では、退院時のBI損失量バリアンス群と非バリアンス群の間で術後1週目のBI損失量に有意差がみられ、術後1週目BI損失量はバリアンス発生に有意に影響を与えていたことを報告した。そこで、今回は術後1週目BI損失量75以上を初期バリアンス群とし、非初期バリアンス群と各種観察項目を統計学的に比較してみた。結果として、初期バリアンス群は非初期バリアンス群に比し、術後リハビリテーションが1.2日、移乗の開始時期が1.7日、フォーレの抜去時期が2.1日と有意に長かった。このことからリハビリテーションや移乗の開始時期、フォーレの抜去時期の遅れが術後1週後BI損失量に影響していることが示唆された。また、初期バリアンス群には、せん妄、輸血、危険行動が非初期バリアンス群に比しより多くみられ有意差があったが、安静時痛、各種鎮痛剤の使用、術前白血球数に関しては、両群間に有意差はなかった。

さらに、リハビリテーション開始時期が遅れる要因を分析するだめに、リハビリテーション開始時期が2日以内と3日以上とに分類し比較してみた。リハビリテーション開始時期(平均値は術後1.7±1.1日)が3日以上の患者群では、リハ開始時期1-2日群に比し、移乗開始時期が4±1.4日、フォーレ抜去時期も4.8±1.8日と長期化しており、リハビリテーション開始が遅れることが移乗開始、フォーレ抜去時期にも影響していることが示唆された。一方でリハビリテーション開始時期と、せん妄、輸血、危険行動、安静時痛、荷重痛との関連性は認められなかった。

以上より、術後1週目BI損失量が75以上の初期バリアンス発生にリハビリテーション開始時期などの遅れが影響していることが示唆されたが、リハビリテーション開始などが遅れる要因については今回のデータからは明らかにはできなかった。

<結論>

  • 術後1週目BI損失量が75以上の初期バリアンス群では、リハビリテーションなどの開始時期が非初期バリアンス群に比し有意に長く、ハビリテーション開始の遅れが初期バリアンス発生に影響していることが示唆された。
  • リハビリテーション開始時期と移乗開始時期、フォーレ抜去時期とには関連性が示唆された。
  • せん妄、輸血、荷重時痛は初期バリアンス群に有意に多くみられたが、リハビリテーション開始時期との間では有意差はなかった。
  • 安静時痛、荷重時痛、各種鎮痛剤の使用に関しては、初期バリアンス群、非初期バリアンス群間に有意差はなかった。

表1:初期バリアンス群と非初期バリアンス群における各種観察項目の比較

 

 

非バリアンス群

バリアンス群

有意差

例数

60

13

 

年齢

82.5±6.9

86.5±7.3

なし

術後リハ開始時期(日数)

1.5±0.9

2.7±1.6

あり

移乗開始時期(日数)

2.8±1.1

4.5±2.1

あり

FL抜去時期(日数)

3.3±1.5

5.4±1.7

あり

術前WBC

9470±347

8580±283

なし

       

せん妄

13(21.7%)

8(61.5%)

あり

輸血

13(22%)

7(53.8%)

あり

安静時痛

3(5%)

1(7.7%)

なし

荷重時痛

53(88.3%)

7(53.8%)

なし

全荷重

55(91.7%)

8(61.5%)

なし

危険行動

2(28.6%)

5(71.4%)

あり

座薬の使用

20(90.9%)

2(9.1%)

なし

アセリオの使用

26(92.9%)

2(7.1%)

なし

表2:リハビリテーション開始時期が術後2日以内と3日以上との群間比較

 

 

リハ開始1~2日

リハ開始3日以上

有意差

例数

54

19

 

移乗開始時期

2.8±1.4

4.0±1.4

あり

フォーレ抜去時期

3.2±1.5

4.8±1.8

あり

せん妄

12(22.2%)

9(47.4%)

なし

輸血

12(22.6%)

8(42.1%)

なし

危険行動

4(7.4%)

3(15.8%)

なし

安静時痛

2(3.7%)

2(10.5%)

なし

荷重時痛

46(85.2%)

14(73.7%)

なし

 


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第21回日本クリニカルパス学会学術大会報告♯3

2021-12-18 10:40:41 | 日記

シンポジウム10 地域で活躍するメディカルスタッフ

-地域連携パス、退院支援、在宅医療-

 

たべるをあきらめない -食支援を通じた社会連携の取り組み-

 小川 豊美 (株)とよみ 認定栄養ケア・ステーション とよみ

鶴岡には、医療職以外に多くの優秀な人材がいますが、管理栄養士の小川豊美さんもその一人です。シンポジウム「地域で活躍するメディカルスタッフ」に登壇頂き、地域医療が抱える課題を「たべる」にフォーカスして、さまざまな取り組みを紹介して頂きました。とくに、2018年から始まった多職種によるたべるを支援する活動「南庄内たべるを支援し隊」については、コロナ禍でもZOOMを活用してのカンファレンスを継続していることや、患者さんの情報共有にNet4Uを活用していることなどを報告して頂きました。

 


パネルディスカッション3 大腿骨頚部骨折地域連携パスにおける多職種連携
-2次骨折予防に向けて-大腿骨近位部骨折地域連携パスの現状と課題  病病から病診パスへ

渡部 美穂

「大腿骨近位部骨折地域連携パスの現状と課題」というパネルディスカッションでは、荘内病院PTの渡部さんから大腿骨近位部骨折パスにおいても、再骨折予防を目的(アウトカム)とした病診パスが必要であり、病診パス運用へむけて検討しているとの報告がありました。なお、大腿骨近位部骨折は、二次骨折が多い疾患であり、骨粗しょう症治療薬の継続で有意に再骨折を予防できることが分かっています。しかしながら、現状では骨折後においても骨粗しょう症治療薬の内服は20‐30%に過ぎず、二次骨折予防の重要性が高まっています。

 


パネルディスカッション4 これからの緩和ケアとクリニカルパス

在宅がん患者のQOL向上に向けた取り組み -つらさPATHの導入-

 上林 沙希子

 

従来、緩和ケアにパスは馴染まないといわれてきました。緩和ケアという多様な病態に画一化、効率化を目指すパスは馴染まないという考え方だと思います。一方で、パスは患者さんのゴールを多職種チームで共有し、協働しながら患者さんを支えるツールですので、その人らしさを支える治療やケアにおいて、パスは重要なツールになり得ます。荘内病院の緩和ケア認定看護師の上林さんからは、つらさPATHという取り組みについての発表がありました。つらさの評価指標にはIPOS(Integrated Palliative care Outcome Scale)を用い、評価シートをNet4U上で運用することで、在宅療養中の患者の状況をより包括的に把握できるとの期待を述べていました。

 

以上、シンポジウムとパネルディスカッションへの当地区からの発表について簡単に報告させて頂きました。

 

その他に一般演題として、両リハビリテーション病院とこころの医療センターセンターからの発表もありましたが、詳細はパス協議会のホームページへの掲載してありますので、参照下さい。

庄内南部地域連携パス推進協議会


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第21回日本クリニカルパス学会学術大会報告♯2

2021-12-18 10:39:39 | 日記

シンポジウム3 癌の地域連携パス-なぜ軌道にのらないのか-

 

人生100年時代のがんパスを考える

三原 美雪(みはら みゆき)1 、坂本 薫2 、遠藤 貴恵3 、 菅原 和也4

当地区のパス協議会のパスアドバイザーをお願いしている三原美雪さんからは、「癌の地域連携パスーなぜ軌道にのらないのかー」というシンポジウムで、山形県のがんパスの現状や鶴岡で昨年から動きだしてIT化した大腸がんパスの報告がありました。人生100年時代に則し、県内統一からシフトした地域特性を生かしたパスへの改善、ITのよる情報共有とデータ分析による疾病管理、告知から緩和までの一貫したパスへのギアチェンジ、介護も含む多職種連携、がんに特化せず一本化した「私のカルテ」の実現が必要とまとめていました。

 

がんパスのアウトカムの大きな柱は、二人主治医制の普及です。病院の主治医とかかりつけ医が協働してがん患者さんをみていく仕組みですが普及しない最大の課題は病院医師とかかりつけ医との信頼関係が不十分であることに起因するのではと思っています。病院側も各科の説明会や懇親会など病診連携普及のための努力をしていますが、参加者が少ないという現状があり医師会の求心力不足を感じています。

 

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シンポジウム7 認知症のある人が、本当に地域で生き生きと暮らしていく

ためにできることとは-クリニカルパスの視点から-

 

認知症高齢者の在宅支援パス構築に向けて -本人の思いをつなぐ-

富樫 千代美(とがし ちよみ) 鶴岡市立荘内病院 看護部

荘内病院の認知症看護認定看護師の富樫さんからは、シンポジウム「認知症のある人が、本当に地域で生き生きと暮らしていくためにできること」において、慢性心不全で在宅療養の患者さんをNet4U、Note4Uを活用し、在宅医、薬剤師、看護師、理学療法士よりなる在宅チームと共に患者の願いを支え、在宅看取りを行った事例の報告がありました。本人・家族を含むチームが協働しながら同じ目標に向かう指標があることは有効であると述べており、まさにパスの実践事例の報告でした。とくに、Note4Uを利用し患者本人の思いを最後まで確認しながらの在宅看取りには頭が下がる思いでした。

このシンポジウムの最後のプレゼンターは、映画「ケアニン」のモデルになった介護施設を運営する加藤さんでした。自分の事業所に高齢 者を集めてお世話になっているだけの人を作り続けてい るのでは介護保険制度化では仕事をしていることにはな らないのではないだろうか?利用者のアイデンティティ とストレングスを中心に生活介護を行い、できることを 伸ばしていく。さらにその自立支援を地域包括化するこ とを前提にしていき、地域貢献に資する拠点をつくる活 動をおこなう。公園の清掃活動や子どもたちとの交流と いった地域活動を地域住民といっしょに考えるケアを実 践していく。介護スタッフは「お世話係」ではなく「地域デ ザイナー」である。目から鱗の素晴らしい講演でしたし、このような施設が一般的になるといいなと感じました。


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第21回日本クリニカルパス学会学術大会報告#1

2021-12-18 10:37:05 | 日記
11月26日~27日に山形市で開催された日本クリニカルパス学会学術集会では、当地区からシンポジウム5題、パネルディスカッション2題、一般演題5題、ランチョン1題、論文発表1題の計14題を報告してきました。
 
今回の学会のテーマは「時代に即するみんなのクリニカルパス」でした。今後高齢化とともに増えてくる心、呼吸器、骨折、認知症などの疾患をどのようにしたら、病院と地域~医療と介護が一体化して提供できるかがテーマでした。
 
クリニカルパス(パス)に対しては、治療のスケジュール表というイメージをもたれている方が多いと思いますが、患者さんのゴール(アウトカム)をその患者さんに係わる多職種が共有し、皆が同じゴールを目指し、それぞれの役割を果たしていくツールというのが根本的な考え方です。パスは病院では随分と普及しましたが、診療所を含む地域でパスを運用できている地域は数少ないのが現状です。
 
鶴岡は、脳卒中地域連携パスを診療所を含む地域全体で運用している数少ない地域です。しかも、全例登録を原則としたICTパスシステムを利用し、地域の疾患データベースを構築するとともにデータ分析を行い、学会等での報告を継続している全国でも唯一の地域だと自負しています。
 
さて、今回の学術集会でも多くの発表をしてきましたが、パス活動を知ってもらう良い機会ですので、当地区からの報告をかいつまんで報告したいと思います。
 
「地域包括ケアシステムにおける地域連携パス」というシンポジウムでは、鈴木さん(ストローハット社)が「地域包括ケアの変容と地域連携パスが 目指すべき深化の方向性」と題して、地域連携パスと地域包括ケアの差異に着目し、地域連携パスが目指すべき方向性についての総論的な話をして頂きました。私からは「地域包括ケアにおけるICTの活用」と題して、鶴岡の地域連携パスへの取り組みの現状と地域包括ケアにおけるNet4Uの成果や今後の課題について発表しました。
 
Net4Uは、おもに在宅医療の現場で、多職種の情報共有~コミュニケーションツールとして活用されていますが、パス情報の共有はシステム上可能となっているものの、訪問看護師やケアマネジャーなどの間では十分に活用されていないのが現状です。その要因のひとつとして地域の中でパスの概念や目的がよく理解されていないことが挙げられます。今後はパスの概念やパス情報を地域で共有する方策を模索する必要があると考えています。
 

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地域包括ケアにおけるICTの活用

2021-12-06 17:08:27 | 日記

 

鶴岡市を中心とした庄内南部地域は、医療が概ね地域内で完結しているという特徴があります。

大腿骨近位部骨折や脳卒中の患者のほとんどは市立荘内病院へ搬送され、その患者の多くは地域にある2つのリハビリテーション病院へ転院となります。

この地域特性を利用し、この2つの疾患に関しては、当地区では全例登録を原則とした地域連携パスを運用してきました。

運用にあたっては当初からICT化を原則としました。すなわち、セキュアーなクラウドサーバー上に疾患データベースを構築し、パスに関わる医療機関はサーバにアクセスすることでパスへの入力や参照ができるしくみとなっています。

脳卒中は13年間の運用で9500例、大腿骨近位部骨折15年間の運用で3400例のデータが蓄積されています。

脳卒中地域連携パスの例です。

再発予防とADL低下防止をアウトカムとし、地域で一貫した医療を行うことを目指してパスが運用されています。

病診パスは循環型とし、定期的に病院で診察・検査を行っています。

このようなかたちで、診療所までICT化したパスを運用している地域は少ないと思います。

生活期における連携パスのオーバービュー画面です。

患者は定期的に診療所を受診し、決められたフォロー項目をしっかりチェックすることで、

再発予防とADL低下防止を目指しています。

本学会で丸谷先生が報告するスライドをお借りしたものです。

脳卒中は再発率が高く、連携パスの運用で再発率が下げられるか?というのが当初からの課題でした。

丸谷先生の研究では、診療所と病院との循環型パスを運用したA群で、再発率が有意に低いというデータが出ています。

パスを利用し、厳密に患者をフォローするこで再発率が下げられる可能性が示唆されています。

 

パス運用にあたっては、2006年に庄内南部地域連携パス推進協議会を組織し、現在協議会のもとで、複数の連携パスが運用されています。

協議会の活動としては、ミーティング、学術講演会、事例検討会、懇親会、パス学会への報告、論文や年報の作成などの活動を行ってきました。

パス学会では、毎回10題程度の演題を発表し、

今年のパス学会誌に掲載された論文は、学術奨励賞を頂きました。

以上当地区の連携パスの概要について簡単に述べさせてい頂きましたが、今回のシンポジウムのテーマである、地域包括ケアシステムいう文脈では、Net4Uという仕組みがより有効に活用されていますので、Net4Uについて簡単に紹介させて頂きます。

Ne4Uは2000年の経産省の事業で開発された、21年以上の運用実績をもつ、日本で最も歴史のある地域電子カルテです。2012年には、、医療と介護を繋ぐヘルスケア・ソーシャルネットワークとして、地域包括ケアシステムを意識した仕組みに全面改訂されました。また、ID-Linkに対応することで、病院の電子カルテの参照を可能としました。

さらには患者・家族がNet4Uへ参加できる仕組みも追加されています。

Net4Uのネットワーク図です。セキュリティーの保たれたインターネットを利用して、地域の様々な職種、施設が患者情報を共有できるツールと位置づけできます。

 

参加施設は141で、近年は、訪問看護・訪問リハ、介護系の職種、施設の参加が増えています。

参加職種の内訳です。

ここ数年、看護師>介護職>医師の順位は変わりはありませんが、看護職、介護職の割合が増加しており、看護師と介護職で7割を占めます。

 

2013年から過去8年間の職種毎のユーザー数の年次数位です。

近年、看護師の増加が著しく、介護職、リハ職の利用も順調に増加傾向にあります。

一方で、医師、薬剤師、歯科医に著変はありません。

Net4Uのメイン画面です。

共有ユーザー一覧では、該当患者の情報を共有している施設が一覧表示されます。

この画面は当院に通院していた実際の在宅患者のものですが、在宅主治医、中核病院医師、訪問看護師、ケアマネジャーが関わっていることが分かります。

右の欄には、共有している施設の所見、看護記録、処置、処方などが、時系列で表示されます。

在宅緩和ケアでの実例です。

在宅緩和ケアにおいては、かかりつけ医、看護師、リハ職、薬剤師などが患者宅を訪れケアに当たります。これら職種がリアルタイムに情報を共有しながら、多職種協働で患者を診ていくことにNet4Uは大きく貢献しています。とくに、中核病院の緩和ケアチームの参加は現場の多職種チームに大きな安心感を与えており、Net4Uは在宅緩和ケアには必須のツールとして定着しています。

Net4Uには、病院の電子カルテ情報にアクセスできたり、患者・家族が参加できたりと、さまざまな拡張機能がありますが、連携パスのオーバービューも閲覧することが可能です。

したがって、該当患者の共有ユーザであれば、職種を問わずパスデータを閲覧することが可能です。

しかし、実際にはパス情報が十分に活用されていないという現状があります。

 

丸谷先生からお借りしたスライドです。

地域包括ケアシステムにおける地域連携パスとNet4Uの役割がスマートな図として説明されています。

急性期から生活期に至る医療側の機能が地域連携パスが担う部分であり、ここはNet4UPATHでカバーされます。

一方、地域における生活期では、さまざまな職種が連携しながら多様なサービスを提供することになりますが、この部分はNet4Uのさらなる活用が期待されます。

脳卒中を例にとれば、再発予防は連携パスが、ADL低下防止は、おもに地域の多職種が目指すべき目標になると思われます。

しかし、現状は、病院の専門医と一部の診療所との間でパス情報は共有されているものの、医師以外の職種にパスが浸透していない現状があります。

パスの概念やパス情報を地域の多職種間でどう活用するか?

地域包括ケアシステムにおける地域連携パスの役割は今後の課題と考えます。

 

 

 

 

 

 


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日本クリニカルパス学会学術集会 鶴岡地区からの報告                

2021-12-06 09:23:50 | 日記

第21回日本クリニカルパス学会学術集会

鶴岡地区からの報告                             

 

シンポジウム

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シンポジウム3 癌の地域連携パス-なぜ軌道にのらないのか-

オーガナイザー/座長:若月 俊郎 松江市立病院

オーガナイザー/座長:川口 清  済生会山形済生病院

がん拠点病院が指定され、がん連携クリニカルパスの整備・運用が求められてから10年以上が経過した。各都道府県のがん連携協議会が中心となり、連携パスを整備しつつあるが、その運営体系や普及には地域差があるのが現状のようである。連携システムがうまく活用されれば、がん医療全体の質の向上が得られ、患者への恩恵がもたらされるが、そのためには患者と医療者側の双方で地域連携の有用性が実感されなければならない。医療者側としては患者への啓蒙とPDCAサイクルによるパスの洗練が必須である。当セッションでは連携が軌道にのっている地域の運営・活動状況・工夫点を拠点病院、行政(組織作り)の面から提示していただき、また連携医療機関側からみた問題点(手間や保険点数など)、 できれば患者側の満足度も表出させ、今後連携パスをさらに推進するためには何が求められるのかを浮き彫りにし、全国的ながん地域連携の向上につなげたい。

・当院における「がんの地域連携パス」導入の取り組みと課題

 坂口 清(美済生会熊本病院 集学的がん診療センター)

・がん地域連携パスの実績と課題 ーパス導入後11年間を振り返ってー

 北村 嘉隆(兵庫県立がんセンター 呼吸器外科)

・なぜ軌道にのらないのか ーがん連携の調整機能を経験してー

 舩田 千秋(東海国立大学機構)

・愛知県がん地域連携パスの現状と課題

 稲葉 一樹(藤田医科大学 先端ロボット・内視鏡手術学 教授)

・岐阜県におけるがん地域連携パス-運用8年 目での改定を終えて-

 山田 誠(岐阜市民病院 外科)

人生100年時代のがんパスを考える

 三原美雪(庄内南部地域連携パス協議会 パスアドバイザー)

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<抄録>

人生100年時代のがんパスを考える

三原 美雪(みはら みゆき)1 、坂本 薫2 、遠藤 貴恵3 、 菅原 和也4

 1庄内南部地域連携パス協議会 パスアドバイザー、

 2鶴岡市立荘内病院、

 3鶴岡地区医師会 ほたる、

 4ストローハット社

【はじめに】山形県がん地域連携パス部会では、平成22 年から県内統一の5大がん地域連携パス(以降「がんパ ス」とする)を運用してきた。令和1年までの総運用数は1,640件、連携医療機関数は192施設(約40%)である。この10余年の間、がんを取り巻く医療も大きくパラダイムシフトしている。治療の進歩もさることながら、地域連携から地域包括ケアシステムへ、人生100年、がんのみならず複数の疾病を抱えながら生きていくという時代に、がんパスはどのような立ち位置にあるべきだろうか。現状を踏まえ今後望まれるがんパスについて考察する。

【活動】平成27年、全県の患者と連携医療機関を対象 にアンケート調査を実施した。患者数438名、回収率 68.8%。連携医療機関数262施設、回収率49.5%であった。アンケート調査の結果から、80%の患者が「私のカルテ」を診察や検査に役立てており、今後も二人主治医制でみてもらいたいと思っていることが分かった。課題は、継続した主旨の理解とフォローアップ、形式や対象の見直 し、パス絶対数の増加、ITによる情報共有などであった。 鶴岡地区では、更に地域特性を生かしたパスへの改善が必須ととらえ、当地区の強みであるITによる情報共有を盛り込んだ独自の大腸がんパス作成を試み、令和1年 7月から運用している。

【考察・結論】地域包括ケア時代、県内統一からのシフト、 地域特性を生かしたパスへの改善、ITによる情報共有とデータ分析からの疾病管理、告知から緩和まで一貫したがんパスという概念へのギアチェンジ、介護も含んだ多職種連携、がんに特化せず一本化した「私のカルテ」の実現などが必要ではないかと考える。

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シンポジウム5 地域包括ケアシステムにおける地域連携パス-多職種・多施設での共有-

 オーガナイザー/座長:石井 政次 済生会山形済生病院         

 座長:重田 由美 日本地域統合人材育成機構

団塊の世代が75歳となる2025年を目途に住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けられるよう医療・介護・予防・住まい・生活支援の包括的確保の実現が地域包括ケアシステムです。そのため病院・かかりつけ医・介護福祉施設・訪問看護ステーション・ボランティアグループ等が協働してサービスの一体的提供を調整します。そして全国中学校区程度の生活圏での活動が推奨されています。しかし地域によって、サービス内容は限界があり活動はまちまちです。またサービス提供者間の連絡も難しい。我々医療・介護従事者の観点からみると徐々にシステム構築が進んでいるようにみえますが、はたしてそうでしょうか。生活周辺つまりは老人クラブ・ボランティア・自治会から見た観点は、理解していません。このシンポジウムは、地域連携パスのデータ活用と各職種の観点からみたシステムの問題点を挙げ、よりよい地域包括ケアシステムへの提言ができればと考えます。

地域包括ケアの変容と地域連携パスが 目指すべき深化の方向性

 鈴木 哲(㈱ストローハット 代表取締役) 1

・地域包括ケアにおけるICTの活用

 三原 一郎(山形県鶴岡地区医師会 理事)

・地域包括ケアシステム   かかりつけ医の立場から

 岡田 晋吾(北美原クリニック 外科)

・地域包括ケアシステムにおける福祉施設の役割

 森田 亜希(済生会特別養護老人ホーム・ケアハウスめずら荘 生活相談室)

・地域包括ケアシステムにおける 住民主体のサービス

 土井原 奈津江(慶應義塾大学SFC研究所)

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<抄録>

地域包括ケアの変容と地域連携パスが 目指すべき深化の方向性

 鈴木 哲(すずき さとし)1,2,3

 1(株)ストローハット 代表取締役、

 2慶應義塾大学SFC研究所、

 3特定非営利活動法人全国連携実務者ネットワーク

【目的】元来地域連携パスは、地域医療連携のためのツールとして開発され運用されてきた。一方で少子高齢化社会の進展の中で、日本の医療政策は地域医療連携から地域包括ケアの時代へと移り変わり、医療介護連携が地域連携の主軸となっているが、今後は福祉や子育てをも包摂した地域共生社会、全世代社会保障の実現に向けて、地域連携の在り様もさらなる変容が予想される。変容していく地域包括ケアの現状や展望を整理することで、地域連携パスの今後の深化の方向性を探る。

【方法】地域包括ケアの歴史と変遷を整理するとともに、地域包括ケアと地域包括ケアシステムの違いを整理することで、地域医療連携と地域連携パスの関係性、地域連携パスと地域包括ケアシステムの差異を抽出する。その差異を明確化することにより、地域連携パスの深化すべき方向性を導き出す。

【結果】地域連携パスと地域包括ケアシステムとでは、以下の点等における差異が認められた。・連携目的・連携範囲、職種・運営組織体制・運営予算、インセンティブ。

【考察・結論】特に重要な差異はすなわち連携目的であ る。具体的には、地域包括ケアシステムが重症化予防・ 再発予防・発症予防のための疾病管理・フレイル対策を目的としていることに対して、地域連携パスは主として 単一疾病の治療計画・リハビリテーション方針の共有を目的としている。ただし、地域連携パスの目的として重症化予防・再発予防のための地域疾病管理に主眼を置いている地域は少なくない。地域疾病管理ツールとして連携範囲、職種を拡大し、運営組織体制を柔軟に変容させていくことが、これからの地域包括ケアの時代に適用する地域連携パスの深化の方向性と考える。

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<抄録>

地域包括ケアにおけるICTの活用

 三原 一郎(みはら いちろう)

山形県鶴岡地区では2006年に庄内南部地域連携パス推進協議会を設立し、現在6つの地域連携パスを運用している。大腿骨近位部骨折、脳卒中に関しては、ほとんどの患者が地域の中核病院へ搬送されることを利用し、全例登録を原則とし、疾患データベースを構築している。蓄積されたデータは様々な視点から分析し、学会や論文での報告、年間集計表の作製など疾病管理を目指した活動を行ってきた。退院後の生活期に関しては、病院と診療所間でのパス情報の共有が実践されているものの、看護師、薬剤師、リハ職、介護職 などとのパスを介しての連携はできていないのが現状である。一方で、当地区では2001年から全国に先駆けて地域電子カルテ「Net4U」を運用し、主に在宅医療の分野での多職種間情報共有・コミュニケーションツールとして活用されている。Net4Uユーザは年々増加しており、 参加職種として看護師、介護職(おもにケアマネジャー)、 医師の順であり、近年看護師、介護職、リハ職の増加が顕著である。しかし、Net4Uには該当患者のオーバー ビューパスを参照できる機能が実装されてはいるものの医師以外の職種ではパス情報が有効に活用されていないのが現状である。

これからの地域連携パスには、病院退院後の生活期における介護職を含む多職種協働を支援〜推進する仕組みが求められている。幸い当地区にはNet4Uというすでに定着した多職種間情報共有ツールがあり、今後は地域連携パスとどう組み合わせて利用していくか、その普及のための戦略を模索する時期にきている。

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シンポジウム7 認知症のある人が、本当に地域で生き生きと暮らしていく

ためにできることとは-クリニカルパスの視点から-

 オーガナイザー/座長:三原 美雪  庄内南部地域連携パス協議会         

                              座長:下村 裕見子 北里大学大学院医療系研究科

我が国は世界でも有数の長寿国となり、類をみないスピードで高齢社会を迎えています。そのなかで 認知症のある人は増え続け、2015年には約700万人に上ると推計されています。認知症ケア加算など国の手厚い認知症施策により、認知症のある人への医療者の対応能力も向上してきました。しかし依然として多くの課題があるように思います。さらに新型コロナウイルス感染症流行により、面会の禁止やデイサービス参加方法などに戸惑いがある日々です。認知症があっても、暮らしのなかで張り合いや楽しみを感じながら過ごすためには多くの支えが必要です。病院と地域での暮らしをつなぐサポーターであり、パートナーであるべき私たちは、どのような情報を共有し、どのような連携をすべきでしょうか。チーム全員が協同して同じゴールを目指すクリニカルパスの視点から、一緒に考えていきましょう。

基調講演

・認知症のある人が安心して暮らせるために 求められること

 大石 智(学校法人北里研究所北里大学 医学部精神科学)

・認知症のある人を支援するために共有すべき課題

 姜 善貴(北里大学 医学部精神科学)

認知症高齢者の在宅支援パス構築に向けて -本人の思いをつなぐ-

 富樫 千代美(鶴岡市立荘内病院 看護部)

・認知症地域連携パスに始まる荒尾市の地域包 括ケアシステム

 中村 光成(医療法人成風舎西原クリニック 管理部)

・いまだけではなく2040年の日本を考えた 地域共生社会の準備

 加藤 忠相((株)あおいけあ 本部 代表取締役)

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<抄録>

認知症高齢者の在宅支援パス構築に向けて -本人の思いをつなぐ-

富樫 千代美(とがし ちよみ) 鶴岡市立荘内病院 看護部

【はじめに】急性期病院で認知症看護認定看護師(以下、 DCN)として、在宅、外来、入院棟で入退院支援を横断的に行っているが、認知症ケアでは、個別性が高くバリアンス発生が多い為、パス導入は難しいと考えていた。 ここでは、DCN自身が入退院支援を行った再入院事例から、バリアンスを振り返り、在宅支援パス構築の課題を述べる。

【活動内容】退院前・退院後訪問指導実践例は、家族の介護不安や介護保険未申請、サービス未導入、入院前にBPSDが見られていたケースが多い。再入院に至る要因には、服薬管理、食事摂取、疾患増悪、医療依存度の高いケアの困難さ、家族の介護疲弊がある。ここで紹介する慢性心不全の1事例は、担当ケアマネジャーが2回目退院後の在宅チームメンバーを拡充し、患者の願いを支え在宅看取りを行った。家族、循環器の在宅往診医、訪問薬剤師、訪問看護師、訪問理学療法士、ヘルパー、DCN各々が役割を発揮した。意思決定支援、家族メンタル支援も行い、必要な情報をICTで共有した。

【考察】筆者は、「認知症の人や家族の個別的なケアを多職種で専門的な視点で支え『つなぐケア』を考え、提案し 続けること」の重要性を述べていたが、バリアンスの検討はなかった。バリアンスに丁寧に対応する事で、在宅生活の質改善や満足度向上に繋がると思われた。

【結論】認知症の人や取り巻く人々の残存能力の早期アセスメントは必要なケア構築の為に重要である。家族を含む在宅チームメンバーが強みを最大限に活用し、協働しながら同じ目標へ向かう指標がある事は、在宅療養期間延長に有効である。バリアンスの振り返りにより、認知症のある高齢者の個別的な在宅支援パスが導入できる可能性がある。

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シンポジウム10 地域で活躍するメディカルスタッフ

-地域連携パス、退院支援、在宅医療-

 オーガナイザー/座長:岡田 晋吾 北美原クリニック

 オーガナイザー/座長:宮﨑 美子 医療法人社団東光会 戸田中央総合病院

クリニカルパスは日本の医療界にチーム医療、多職種協働という考え方を広く普及させた。今では病 院では多職種が参加するチーム医療は当たり前になっている。その後在院日数の短縮、病院の機能分化の流れに従って医療は病院内だけではなく地域全体で行うものとなっており、さらに最近では在宅や施設での看取りを含めて医療だけでなく介護を含めた多職種によるチーム医療が必要とされるようになっ ている。しかしいつでも集まることができる病院内とは違い地域で質の高い医療・介護を提供するためにはしっかりとした連携システム、確実な情報共有、多職種協働のためにアイデアやツールが必要となる。このシンポジウムでは各地域で地域連携パス、退院支援、在宅医療などに関わりながら活動してい るメディカルスタッフにそのノウハウや課題について紹介していただき今後の発展について議論したいと思っている。是非いろいろな職種の方々に積極的に参加していただきたきたいと考えている。

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・薬薬連携における連携シートの活用

 金谷 法好((株)アインファーマシーズ 北関東支店 次長)

・在宅がん療養患者への関わりと 在宅看取りにおけるチーム医療

 星 利佳(新庄ほし薬局 調剤部)

たべるをあきらめない -食支援を通じた社会連携の取り組み-

 小川 豊美((株)とよみ 認定栄養ケア・ステーション とよみ)

・ICTシステム『道南Medika』を活用した 退院調整

 木下 優子(函館五稜郭病院 在宅療養支援室)

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<抄録>

たべるをあきらめない -食支援を通じた社会連携の取り組み-

 小川 豊美(おがわ とよみ)

(株)とよみ 認定栄養ケア・ステーション とよみ

【はじめに】地域医療が抱える課題を「たべる」にフォーカスした解決の取り組みを紹介する。フレイル予防・病状 の重症化予防を行い地域で活力ある暮らしを継続することが大きな課題の一つでもあると考える。しかし、現状は何らかの疾患で病院に入院すれば院内のチーム医療が関わるが、退院はその関りはほぼ皆無となる。退院後在宅生活を支える地域の医療・福祉・異業種のサポート体制とその活用ができるシステムと環境が必要となってくる。いわゆる包括的な社会連携が必要になってくる。

【活動内容】当地区では2018年から南庄内たべるを支援し隊の活動を行っている。法人を超えたメンバーがチームを組み在宅訪問の活動を実践している。システム構築がほぼ完成し実践に移行した中での新型コロナ感染の影響で訪問の制限がかなりあったが、ZOOMを使った症例検討・会議を継続している。また、当地域の医療連携ネットワーク「Net4U」の活用を行い情報の収集・共有を 図っている。(症例:脳梗塞後遺症による食事低下:詳細当日にて)

【考察】症例:介護者から「咽もあり誤嚥性肺炎にならないか心配」「どんな食べ物が(食形態)いいのかわからない」と不安の声が聴かれた。チームを組みアドバイスを行った。

【結論】症例を通して、実践型の介入で普段の生活の相談事も受けるようになり関係するところへ情報発信しさらに連携を図り問題解決へ繋がった。介護者の精神的負担の軽減にもなった。法人を超えた多職種がチームを組み在宅へ出向きサポートすることで病状の重症化予防や、 地域の社会資源を有用に活用しつつ、本活動の運用を強化実践することで在宅生活が安心して暮らし続けられる「まちづくり」に繋げたい。

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パネルディスカッション

パネルディスカッション3 大腿骨頚部骨折地域連携パスにおける多職種連携

-2次骨折予防に向けて-

 オーガナイザー/座長:伊藤 博紀 能代厚生医療センター

 オーガナイザー/座長:遠藤 武秀 済生会山形済生病院

大腿骨近位部骨折地域連携パス(以下、連携パス)が運用されてから15年以上経過し、入院期間の短縮および退院時のADL向上など一定の効果が報告されている。近年では骨折の連鎖を断ち切ることも連携パスの重要なアウトカムとされ、達成に向けて術後早期から骨粗鬆症治療および機能回復訓練を進め、さらには回復期・維持期まで骨粗鬆症治療と、日常生活動作訓練や転倒予防を含めた運動療法、また薬剤・栄養指導等各職種の専門性を生かした質の高い医療を継続していくことが重要である。こうした包括的な治療体系において、連携パスは重要な役割を果たしている。

本パネルディスカッションでは、大腿骨近位部骨折診療における地域連携パスの運用例、二次骨折予 防に向けて成果を上げている各職種の実例を紹介し、連携パス活用の実際と課題、発展について議論したいと考える。

・地域連携パスから見る大腿骨近位部両側骨折症例の特徴

 原田 義史(青森県立中央病院 整形外科)

・現状報告と看護師としての関わりについて

 林 綾野(済生会横浜市東部病院 看護部)

大腿骨近位部骨折地域連携パスの現状と課題  病病から病診パスへ

 渡部 美穂(鶴岡市立荘内病院 リハビリテーションセンター)

・現状報告と薬剤師としての関わりについて

 市橋 直子(笹菊東明薬局 薬局)

・大腿骨頚部骨折を含む二次骨折予防における 臨床支援士の取り組み

 大芝 彩子(医療法人社団英志会 富士整形外科病院 事務部)

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<抄録>

大腿骨近位部骨折地域連携パスの現状と課題  病病から病診パスへ

渡部 美穂(わたなべ みほ)1 、三原 一郎2 、遠藤 貴恵3 、 菅原 早苗4

1鶴岡市立荘内病院 リハビリテーションセンター、

2鶴岡地区医師会、

3鶴岡地区医師会 地域医療連携室、

4鶴岡市立荘内病院 地域医療連携室

【はじめに】山形県庄内南部地域では2006年より、1急性期病院、2回復期病院による大腿骨近位部骨折地域連携パス(以下、連携パスとする)を運用してきた。当地区の特徴は、地域の骨折患者のほとんどが急性期病院に搬送されることを利用して原則全例登録している。2020 年度までに3,460例のデータが蓄積され、クリニカルパ ス学会などでさまざまな角度から分析しその結果を報告してきた。

【病診パスへの取り組み】一方で病診パスは作成されておらず、回復期病院退院後のフォローが十分ではない 実情があったため、2016年退院後の転帰に関するアン ケート調査を実施した。その結果として受傷前と比較しADLや認知機能が低下する事例が散見され、骨粗鬆症薬の服用状況は25%に留まり、複数回の転倒事例が10%程度にみられ、さらには約9%の再骨折が確認された。以上のことから連携パスを生活期へ拡大することが望まれた。そこで2020年、骨粗鬆症薬の継続と再骨折 予防をアウトカムとした新たな病診パスシステムを再構築した。

【今後の課題】生活期においてかかりつけ医と連携することで再骨折を予防するシステムが構築された今、確実な運用に向けて取り組んでいる。また、再骨折予防のためには骨粗鬆症の薬物療法だけでなく運動療法、食事療法 なども重要とされている。大腿骨近位部骨折患者は要介 護者が多いことを考慮すると、ケアプランに組み入れるなど、多職種、特に介護との連携は今後の大きな課題である。

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パネルディスカッション4 これからの緩和ケアとクリニカルパス

 オーガナイザー/座長:菅原 早苗 鶴岡市立荘内病院  

 座長:神谷 浩平 一般社団法人MY wells地域ケア工房

がんや慢性心不全などの様々な難治性疾患の治療・症状緩和、フレイルの状態を含む療養上の問題は、これからの緩和ケアのテーマであると同時に、地域包括ケアを考えるうえでの課題となっています。また、多職種チームでの介入は緩和ケアの基盤であり、クリニカルパスの最大のアウトカムは「チーム介入の点を線につなげること」です。 そこで今回のパネルディスカッションでは、緩和ケアにおけるクリニカルパスの運用について緩和医 療専門医の神谷医師より話題提供を行い、症状緩和についてのクリニカルパス、病状の変化に合わせた意思決定支援(ACPを含む)、地域連携パスなどについて討論を行います。 第19回の本学術集会において「地域包括時代における緩和ケア」と題して先進地域の発表が行われま した。さらに新たな変化の時代を迎え、その人らしさを支える治療やケアの進め方について、共に考える場にしたいと思います。

・緩和ケアとクリニカルパス -主観から客観、そして共感へ-

 神谷 浩平(一般社団法人MY wells地域ケア工房 代表)

在宅がん患者のQOL向上に向けた取り組み -つらさPATHの導入-

 上林 沙希子(鶴岡市立荘内病院 看護部)

・看取りのクリニカルパス導入時の 多職種カンファレンスの効果

 工藤 葵(医療法人社団 三喜会 鶴巻温泉病院 緩和ケア病棟)

・緩和ケア分野の地域連携パス推進に必要なこと

 小林 美貴(福井大学医学部附属病院 がん診療推進センター)

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<抄録>

在宅がん患者のQOL向上に向けた取り組み

-つらさPATHの導入-

上林 沙希子(かんばやし さきこ)

鶴岡市立荘内病院 看護部

在宅療養中のがん患者は病状の進行により症状が悪化することもありますが、医療者が関わる機会は限られています。緩和ケアにおいては患者の声を聴くことを大切にされており患者報告型アウトカム(PRO: Patient Reported Outcome)が推進されています。しかし、施設や事業所によって用いられる評価指標は様々であり、在宅での評価が主治医や医療者まで伝わらないことも多いと感じます。そこで、在宅療養患者のQOLの向上を目的に、地域で共通した評価を実施・共有したいと考え、つらさPATHを作成しました。当地域では「緩和ケア普及 のための地域プロジェクト(OPTIM)」介入終了以降も「庄内プロジェクト」と名称を変え、病気の時期や療養の場所を問わずいつでもどこでも緩和ケアが提供されることを目指して地域の多職種で連携して活動が続けられています。地域で利用している医療連携型電子カルテNet4U (the New e-teamwork by 4Units)は医療の連携に留まらず、近年では介護系事業所にも広く利用されつつあります。そこで評価シートをNet4U内で運用することで、 在宅療養患者の状態が医療者にスムーズに報告され、患者のより良い療養につながるのではないかと考えシステムを検討しましたのでご紹介いたします。評価指標に国際的に普及しているIPOS(Integrated Palliative care Outcome Scale)を用いることで、症状だけでなく全人的なアセスメントができるようになっており、より包括的に患者の状態を把握できると考えています。通常のクリニカルパスとは異なりますが今回の討論で今後の運用に向けてご意見をいただければと思います。

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一般演題

回復期リハ病棟退院患者の転帰先による日常生活動作能力の変化

 鶴岡協立リハビリテーション病院 リハビリテーション技士部

 佐藤 浩(さとう こう)、茂木 紹良

【はじめに】退院先によっての日常生活動作の実態や変化を把握するために調査を行った。 【方法】対象者は2016年度から2020年度までに庄内南部地域連携パスにおける連携医療機関を退院し、発症後1年で連携医療機関へ受診、さらに発症前生活場所から連携医療機関退院後の転帰先で上位 4つに多い生活場所に移行した脳卒中患者354名。基本統計、各期、病前BI・連携医療機関退院時BI(以下、退院BI)・発症1年後BI(以下、1年BI)を求め、各々検定で有意差を求めた。

【結果】病前生活場所が同居、連携医療機関が同居の群(以下A群) 260名、病前生活場所が同居、連携医療機関が施設の群(以下B群) 27名、病前生活場所が独居、連携医療機関が独居の群(以下C群)27 名、病前生活場所が独居、連携医療機関が施設の群(以下D群)10名。 年齢はA群73歳、B群76歳、C群66歳、D群76歳(中央値)。各期における4群の有意差はクラスカルウォリス検定で病前BI以外では有意差が認められた(病前BI群は各群共に中央値100)。各群の3期の有意差はフリードマン検定でD群以外は有意差が認められた、またScheffeの対比較でA群は全ての比較で有意差(病前BI>1年BI> 退院BI)、B、C群は退院BIと1年BIの比較以外は有意差(病前BI> 退院BI、病前BI>1年BI)が認められた。退院BIにおける同居患者は90、独居患者は95(中央値)。

【考察】退位後に独居患者は、発症後1年後でのBIで変化はないが、退院時の数値が元から高いこともあり、天井効果で有意差が認められていないと思われる。同居では、発症1年後においてもBIの数値は上がっており、今回の対象では、在宅での生活指導が適切にいっ ていることが推測できると思われる。

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改訂した循環型脳卒中地域連携パスにおける再発予防効果

 1鶴岡市立荘内病院 神経内科、

 2同 脳神経外科、

 3同 リハビリテーション科、  

 4鶴岡市立湯田川温泉リハビリテーション病院、

 5鶴岡協立リハビリテーション病院、

 6鶴岡地区医師会

 丸谷 宏(まるや ひろし)1 、佐藤 和彦2 、渡部 美穂3 、武田 憲夫4 、 茂木 紹良5 、三原 一郎6

【目的】脳卒中地域連携クリニカルパス(以下パス)は連携ツールとして様々な効果が期待されるが、再発予防への直接的効果は明らかにされていない。当地区では生活期ICTパスを2009年より運用。デー タ分析から再発因子となる疾病管理の問題点を明らかにし、2016年にパス改訂を行なった。今回新たなパスの再発予防効果や疾病管理状況について検証した。

【方法】2016年から2年間にパス登録された80歳以下の414名(平均 年齢66.7歳)を対象とした。生活期医療機関をパス参加機関+管理病院(A群)、パス参加機関(B群)、パス非参加機関+管理病院(C群)、 パス非参加機関(D群)の4群に分け、発症から3年間の再発率を分析。A, B, C群では生活期血圧と血糖管理状況の解析を行なった。

【結果】再発率はA群1.6%、B群5.8%、C群6.9%、D群8.6%でありA群が有意に低い結果であった。再発群の収縮期血圧は非再発群と比べ高い傾向(141 vs 128 mmHg)を認めたが、目標血圧達成率は各群で差はなかった。血糖管理はC群の目標達成率が低い傾向であった。

【考察】先行研究からは血圧管理基準の見直しと、糖尿病管理が課題とされたが、本研究より推奨される厳格な血圧管理(収縮期血圧130 mmHg未満)の達成率は全体で56%にとどまり、さらなる血圧管理の徹底が必要と考えられた。糖尿病管理についてはパス参加機関で 良好な結果であった。またA群のみ再発率が低く循環型パスの有効性が確認された。

【結論】再発予防を目標とする地域連携パスは疾病管理を通じて医療の質を向上させる取り組みであり、かかりつけ医と専門医の循環型連携パスが目標達成につながると考えられた。

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フレイルは大腿骨近位部骨折地域連携パス在院日数延長の原因

 1鶴岡協立リハビリテーション病院 リハビリテーション科、

 2鶴岡地区医師会、 3 鶴岡市立湯田川温泉リハビリテーション病院

 茂木 紹良(もてぎ あきら)1 、三原 一郎2 、武田 憲夫3

【目的】当地区のパスは、2006年に開始され現在の使用率は横ばいである。一方、併存疾患増悪による中止、術後の在院日数が増加した。この原因の一つが受傷前のフレイルであり、可逆性への介入が回復期・生活期の課題である。今回、フレイルと要介護の境界を基礎的ADLの自立とし、フレイルを含む集団を定義した。そして手術などの侵襲で術後ADL低下が大きい特性を活用し、フレイルの影響を明らかにした。

【対象】2008年度から2019年度登録2,797件のうち65歳以上でパス 転院し逸脱を除く1,929件、欠損値のない1,755件。

【方法】受傷前Barthel Index(BI)= 100点の対象者を6年ごと前期と後期の2群とし、アウトカムに影響する受傷前の要因で調整した傾向スコアマッチング(PSM)を用い比較した。

【結果】前期/後期、標本数323/279、年齢80.7/82.7、入院から手術までの期間中央値0日/1日、および骨折型が有意。PSMの結果、219 組、術後在院日数79日/92日、術後1週BI 50点/45点、1週BI利得(退院時BI-1週BI)40/45、術後4週BI 70点/65点、4週BI利得(退院時BI-4週BI)20/20が有意差(p<0.01)あり。1週効率(1週BI利 得/1週から退院までの日数)0.56/0.52、4週効率(4週BI利得/4週から退院までの日数)0.40/0.36、退院時BI 90点/90点で有意差なし。

【考察】後期において術後ADL低下が大きく、年齢等で調整しても影響は残存した。すなわち前期に比較してフレイルの影響が大きいと考えられる。また、BIの効率に有意な差がないことより後期の在院日数の延長はフレイルより大きく低下したADLへの対応の結果と考えた。

【結論】フレイルは、大腿骨近位部骨折地域連携パス在院日数の増加要因であることが示唆された。

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当院における排泄パスの運用状況と排泄自立に関与する要因分析

 1鶴岡市立湯田川温泉リハビリテーション病院 看護部、           

 2同 リハビリテーション課、

 3同 脳神経外科

 成澤 真理(なりさわ まり)1 、菅原 順1 、齋藤 美栄子1 、佐藤 尚哉2 、武田 憲夫3

【はじめに】当院では、2006年から排泄障害の評価と改善を目的とした「排泄クリニカルパス(以下パス)」を運用し、入院時の排泄能力を評価、その後パスを利用した排泄障害患者の自己排泄能力を向上さ せる取り組みを行っている。この度、本パス(2013年改訂)を使用した当院の取り組みの評価と問題点の検討を行ったので報告する。

【方法】2017年4月~2018年3月までに当院の回復期、療養病棟に入院した患者を対象に、入院当日から本パスの運用状況と、その後の経過を解析、患者の退院時の排泄確立状況を分析。当初から失禁の無い症例、膀胱カテーテルを挿入してきた症例、遷延性の寝たきり状態の症例(計412例)を除外し、その他の症例(230例)を常時排泄障害のあるグループ(34例)、排泄障害のある時とないときが混在しているグループ(117例)、尿意あるなしにかかわらず介助量が多く、トイレが使用できない例(79例)に分類。患者の排泄パターンから、 以後の排泄誘導に向けての看護・介護計画を組み入れた。最終的に、排尿障害が改善された症例と、改善されない症例を、平均値の t検定、比率はχ二乗検定、ノンパラメトリックデータに対しMannWhitney U検定、また排尿獲得の有無に関しての多変量解析(ロジス ティック回帰分析)で解析した。

【結果】230例の中で、常時排泄障害のあるグループ(34例)、退院時には排尿機能を獲得できた24例、獲得できなかった10例の因子を分析すると、「退院時の歩行能力」が重みのある要素として挙げられた。その他230例の分析、評価、報告を行う。

【結論】排尿自立への取り組みは、QOL向上に繋がる重要な取り組みである。そのためには、ADL全体の向上が重要な要素と思われた。

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歩行が入院時非自立かつ退院時自立患者の入院期間別の特徴

 1鶴岡市立湯田川温泉リハビリテーション病院 リハビリテーション課、    

 2同 脳神経外科

 佐藤 尚哉(さとう なおや)1 、佐藤 恵太1 、佐久間 岳1 、大沼 三冬1 、 佐藤 俊1 、武田 憲夫2

【目的】近年、回復期病棟では実績指数改善が求められている。当院回復期病棟で歩行に絞り、転院時非自立かつ退院時自立の患者の入院期間に影響する要因を検討した。

【方法】対象:2009年1月~2021年4月に庄内南部地域連携パスを使用した当院退院者1,523例中、歩行が発症前BI 15点、FIM:入院時1~4点、退院時6~7点、回復期日数61~150日の264例(73.4± 11.3歳、男性128例、女性136例)。調査項目:年齢、発症前・急性期入院時BI、入院時・退院時FIM(運動項目(以下、mFIM)・認知項目(以下、cFIM)、実績指数、急性期・回復期日数。統計学的分析:回復期日数を1.61~90日、2.91~120日、3.121~150日の3群に分け1元配置分散分析を行い、有意差のあった項目に多重比較検定を実施。統計解析:SPSS v23、有意水準5%。

【結果】各入院日数群の人数は1.78例、2.103例、3.83例。1元配置分散分析:年齢、急性期入院時BI、入院時・退院時mFIM、実績指数に有意差あり。発症前BI、入院時・退院時cFIM、急性期日数に有意差なし。多重比較検定:年齢、急性期入院時BI、入院時mFIM、実績指数で1.と3.間および2.と3.間、退院時mFIMで1.と3.間に有意差あり。

【考察】歩行が入院時非自立かつ退院時自立の患者の入院期間別の要因を比較した。回復期日数が61~120日より121~150日で、年齢、 急性期入院時BI、入院時mFIM、実績指数がそれぞれ低かった。1. 若い患者でいわゆるプラトーまでの期間が長くなる、2. 脳卒中後初期の重症度が入院期間に関わる、3. 入院期間が長いと実績指数が低くなる可能性が示唆された。

【結論】入院時非自立かつ退院時自立の患者の入院期間の影響要因は、年齢、急性期入院時BI、入院時mFIM、実績指数だった。上記を踏まえ歩行再獲得に向けた期間を設定する必要がある。

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ランチョンセミナー

 ICTを活用した維持期における脳卒中地域連携パスの介護領域への展開

 丸谷 宏(鶴岡市立荘内病院)

 共催:株式会社ストローハット

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論文発表

 座長:田中 良典 先生 編集委員会 委員長、武蔵野赤十字病院

    小林 美亜 先生 編集委員会 副委員長、千葉大学医学部附属病院

 大腿骨近位部骨折前のBarthel Index(BI)と認知症によるマトリックス分類 -BI損失量分析による予後予測-

 三原一郎(鶴岡地区医師会)

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在宅医療講演会

2021-11-20 09:18:41 | 日記

お隣の最上地域から講演依頼があり、20年以上におよぶ鶴岡の多職種連携の歴史について話してきました。


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日本クリニカルパス学会論文奨励賞受賞講演

2021-10-29 09:39:13 | 日記

骨折で低下したADLは、リハビリテーションを経て徐々に回復していきます。一方、ADLの回復は骨折前の状態や認知症の有無に左右されることが分かっています。そこで、骨折患者を骨折前のADLの程度と認知症の有無との組み合わせで6群にマトリックス分類してみました。6群のADL回復には一定の特徴があり、予後予測にも有用であることを学会で報告してきました。今回の研究では、BI損失量(骨折前BIと観察時BIとの差)という指標を用いて退院時アウトカムを設定し、バリアンス発生に影響を与える因子を探求することをおもな目的にしました。

 

退院時バリアンスは、過去のデータを分析し、標準偏差からの逸脱、運用の簡便さ、症例数などを考慮し、スライドのように設定しました。

各群のBI損失量の推移をみたグラフです。0のレベルが、骨折前のBI損失量です。AB,CD,EFをセットでみると分かりやすいと思います。A,C,Eは認知症なし、B,D,Fは認知症あり群です。骨折1週後みると、元々ADLが良いAB群の損失量が大きく、EF群の損失量が少ないのが分かります。その後、どの群も順調に軽快していきますが、B,D,Fの認知症あり群は、なし群に比し、骨折1週後の損失量が大きく、退院まで認知症なし群を上回ることはありませんし、その差は拡大傾向にあります。準寝たきりのEF群では、骨折前より BIが向上し退院しています。また、C群は、概ね骨折前の状態に戻ります。

認知症なし群とあり群との退院時BI損失量の比較検定では、認知症あり群が有意にBI損失量が大きいという結果でした。一方で、E,F群には有意差がありませんでした。

各群のバリアンス群と非バリアンス群のBI損失量の推移をグラフ化してものです。赤線の折れ線グラフはバリアンス群、青が非バリアンス群です。非バリアンス群が順調に右肩上がりで改善しているのに比しバリアンス群は、いずれの群においても、BI損失量が大きく、回復パターンも不規則で、退院時まで非バリアンス群を越えることはありませんでした。

 

様々な項目で、バリアンス群と非バリアンス群を比較検定してみましたが、1週目のBI損失量に有意差がありました。(本論文では有意水準を1%以下としているので、年齢には有意差がないと判断。)

山形県鶴岡地区は、人口12万程度の地方都市ですが、医療提供体制の特徴として、地域で医療が概ね完結していることが挙げられます。今回のテーマである大腿骨近位部骨折においては、ほとんどの患者が市立荘内病院へ搬送され、その患者の多くは地域にある2つのリハビリテーション病院へ転院となります。この地域的特徴を利用し、当地区では骨折患者の全例登録を原則としたICTパスを運用してきました。各医療機関で入力されたパスデータは、クラウドサーバーに保存され、パスに関わる医療機関の間で共有できます。データは、パスシステムを開発したITベンダーで保守、管理され、必要なときに必要なデータを提供してもらえる仕組みになっています。

パスの運用にあたっては、2006年に庄内南部地域連携パス推進協議会を設立し、15年間にわたり、勉強会、ミーティング、パス学会への報告、年報の作製などの活動を継続してきました。このようなかたちで、地域で発症した特定の疾患をほぼ全例を登録し、急性期から回復期までの経過を追跡でききている地域は他にはないのでは考えています。

論文を書こうと思った最大のモチベーションは、当地区でしかだせないデータを論文化し、地域の皆さんの長年にわたる尽力に目に見える形で報いたい、励みにしたいという思いにありました。

一方で、私は骨折患者や認知症の診療などには、ほとんど関わらない皮膚科医であり、また、データ分析を主とした論文を書いたことがない未熟者ですので、それなりに苦労もしました。案の定、査読では、タイトルと内容に相違があるという指摘から始まり、統計に関しての基本的なこと、バリアンスの設定方法、研究の限界や今後の課題について追記することなど、論文の書き方の基本から指導を頂き、大変勉強になりました。早期BI低下の要因分析、マトリックス分類や退院時バリアンスの妥当性のさらなる検討、退院後のフォローなどまた多くの課題が残っていますが、この経験を今後の当地区のパスの発展につなげていければと思っています。

今回の受賞は、私のみならず、地域の皆さんにも大変励みになったのではと思っています。ありがとうございました。

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発表者:

  1. 盛岡市立病院 須藤 隆之先生(2019年度受賞者)
  2. 福山市民病院 青木 有加先生(2019年度受賞者)
  3. 岡山市立市民病院 時岡 浩二先生(2020年度受賞者)
  4. 鶴岡地区医師会 三原 一郎先生(2020年度受賞者)

 

座長:

田中 良典 先生 編集委員会 委員長、武蔵野赤十字病院
小林 美亜 先生 編集委員会 副委員長、千葉大学医学部附属病院

<三原一郎先生発表へのコメント>

急速な⾼齢化は、疾病構造の変化を通じて、必要とされる医療の内容に変化をもたらしてきました。⻘壮年期の患者を対象とした医療は、救命・延命、治癒をメインとした「病院完結型」医療であったが、⽼齢期の患者が中⼼となる時代の医療は、病気と併存しながら QOL の維持・向上を⽬指しつつ、住み慣れた地域で暮らすための地域を⽀える「地域完結型」医療の提供が求められています。

⾻折患者を⾻折前のADL と認知症の有無との組み合わせで 6 群にマトリックス分類さ れ、6 群の ADL 回復には⼀定の特徴があり、予後予測にも有⽤であることを今まで学会報告されておられます。BI 損失量(⾻折前 BI と観察時 BI との差)という指標を⽤いて退院時アウトカムを設定し、バリアンス発⽣に影響を与える因⼦を本論⽂にて明確にされました。

地域で特定の疾患をほぼ全例を登録し、回復期からの退院までの経過を追跡でききている地域は皆無に近く、庄内南部地域連携パス推進協議会の果たしておられる役割は素晴らしいの⼀⾔です。

<質問1>

ディジーズ・マネジメントを地域で⾏うためのツールとして、地域連携クリティカルパスの有⽤性を⽰唆しておられると思惟しております。 地域全体への地域連携クリティカルパス参画を促すための秘訣はどこにあるのでしょ う。特に⼈⼿の少ない診療所への参画への⼯夫があったら教えてください。

<回答>

医師会の経済的支援を含めての全面的なバックアップ、全国に先駆けての地域電子カルテNet4Uの運用によってもたらされた地域連携への芽生え、連携パスの運用と並行して受託した緩和ケア普及のためのプロジェクトにおける中央からの支援と、そこから学んだプロジェクトの運用のノウハウ、多職種が集まる機会の急増、優秀な事務局機能、ITベンダーの存在、など複合的な要因で連携パスが運用できていると考えられる。

<質問2> 

データマイニングを⾏い、データを地域や学会発表を通じて全国にフィードバックし ておられます。データマイニングにおける教育はどのようにされておられるのでしょう。そのために必要な⼈材育成に必要なことをご教⽰ください。

<回答>

当地区には、パスにしろデータマイニングにしろエキスパートはいない。学会発表はそれなりにやってきたので、発表にあたりそれぞれが努力してきた。データマイニングに関しては、むしろパス学会からノウハウを教えて欲しい。

<質問3> 

認知症の鑑別がきちんとされている⽅だけを“認知症あり”とされたのでしょうか。病名 別(アルツハイマー型認知症、レビー⼩体型認知症等)に層別をされるご予定はありますでしょうか。

<回答>

認知症の鑑別は、「認知症高齢者の日常生活自立度」で評価している。介護で一般的に普及している尺度であり、評価のブレは少なく信憑性は高いと考えている。認知症の病型による層別化は行っていないが、今後検討してみたい。

 

先生の今後の益々のご活躍をお祈りします。 今回は誠におめでとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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