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 今年、初めての記者会見を行いました。区長に就任してから1年8ヶ月で30回目の記者会見は、新春の年頭記者会見となりました。記者会見場には、時事通信、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞・東京新聞、TBS、フジテレビ、MXTV、日刊工業新聞、建通新聞、FM世田谷、各社と各社の皆さんが来ました。少し気張りすぎたのか、30分近い発表と20分の質疑応答になりました。私の用意した会見用原稿の冒頭部分を紹介します。(読み上げていないので、概略の内容を伝えるという意味で掲載します)

  今年(2013年、平成25年)への思いを漢字一文字で表すとしたら、「縁」(えん、えにし)がふさわしいのではないか。一昨年言われた「絆」、昨年私が掲げた「結」に続く言葉は、「縁」だなと思います。切っても切れない夫婦、親子、兄弟を結ぶ縁は「絆」に近いのもしれません。職場が一緒の縁や、趣味やスポーツを楽しむ縁、また見知らぬ者同士がちょっとしたきっかけで意気投合したり、深いつながりも持つ縁など、人とのつながりえるきっかけという意味もあります。また、生涯をかけて取り組む大きな仕事も、短い時間で準備するプロジェクト等を手がける縁もあります。この場合は、めぐってきたチャンスを逃さずにつかむというニュアンスもあります。

 元旦に区内にある次太夫堀公園の民家園で、古民家の「縁側」を見ました。縁側に腰掛けて、庭先を見ている人もいて、外であるようで内にあり、内でありながら外に開けている日本家屋独特のスペースは味わい深いと思いました。サッシや壁、ドアではなく、開放的な縁側は、言うまでもなく近所の人たちや客人との肩肘張らないコミュニケーションの場でした。内外を隔てる明快な境界線ではなく、双方が重なりあう「汽水域」のような帯状の空間が縁側だったように思います。

 過密な住宅都市となった世田谷区は、2010年の国勢調査で88万人の人口を数えました。住民基本台帳上は201012月で852千人、201212月で861千人と、なんと2年間で約9000人の人口増を記録しています。こうした中、「地域コミュニティの再生」はどの問題を掘り下げても突き当たるテーマです。そのままにしておけば、地域コミュニティが希薄となり、人と人を分離する遠心力が働いてしまうことを意識しながら、行政と住民が相談し、協力して、縁をつなぎ、縁を生かし、縁を結ぶことで「地域コミュニティの再生」をはかりたいと思います。

世田谷区の単身世帯は 世帯にのぼります。これまでの私たちの社会は、「家族」を単位として営まれてきましたが、それぞれの理由で家族と離れて暮らしたり、家族と別れて独り暮らしの人たちが、これだけの数となっていることに着目したいと思います。地域の中で、独り暮らしの方が週に12回はコミュニティスペースでゴハンを食べる機会があれば、健康面での不安やこれからの生活について話し合い、情報交換することが出来ます。

 すでに、「空き家・空き室」を活用して、コミュニティスペースとして機能させ、音楽を楽しんだり、趣味を深めたり、料理をつくるなどの活動をしている「ふれあいの家」「地域共生のいえ」などの取り組みがありますが、さらにその輪を広げたいと思います。昨年、区の若手職員の有志が、「これからの世田谷区」をイメージしながら、意見発表を行いました。若い世代から高齢者まで異世代が利用するコミュニティカフェを創る等の提案が次々と出ました。住民と共に考え、悩み、工夫し、創造する行政へと、「新しい芽」を育てていきたいと思います。昨年は33回、車座集会、区民意見交換会、シンポジウム等を重ねました。今年は、そこに区職員との意見交換も更に機会をふやしていきたいと思います。

元旦の朝の新聞折り込みで配られた「区のお知らせ」には、松任谷正隆さんとユーミンさんというふたりのアーティストとの新春対談が収録されています。ここでも、東日本大震災を契機にして、地域のつながりの大切さを思いをめぐらせ、また33年もの長い間、お住まいの世田谷区の魅力や可能性も語っていただきました。

 東日本大震災と福島第一原発事故が私自身が区長を志す大きな契機となりました。まもなく2年となります。あの激しい揺れと襲いかかる津波によって、多くの人々が生命を失いました。そして、原発事故は取り戻すことが出来ない災禍をもたらしました。いまだに住み慣れた故郷を離れて、世田谷区にお住まいの福島県の被災者の方々も多くおられます。世界中の人々が固唾を飲んで見守った重大危機であり、被災後の復興も、原発事故による汚染除去と廃炉作業も、いまだに長い時間を見なければなりません。

  先日、年始にあたり職員に対して、「2011311日に、私たちは従来の延長線上に将来は無いという教訓を得た。先人・先輩たちの苦労や努力を継承するだけではく、新たなモデルを作っていかなければならないでしょう。思い切って、前例無きものに挑戦する気概をもって仕事を始めてほしい」と伝えたところです。

 



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