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公共事業チェック議員の会では12月10日朝、国会を出発して午前11時40分に八ッ場ダムのダムサイト建設予定地に到着し、川原湯温泉での昼食をはさんで夕刻4時30分まで視察と国土交通省のヒアリングを行った。午後8時に国会に到着するまで12時間、バスの中の説明や議論も含めて濃密な視察だった。参加したのは、近藤正道副会長・参議院議員(社民)、大河原雅子参議院議員(民主・都議時代から八ッ場ダム問題に取り組んでいる)、塩川鉄也幹事・衆議院議員(共産)と事務局長の保坂展人(衆・社民)の4人。さらに、議員秘書やNGO・民間団体、同行記者など約20名で行動した。写真を中心としたレポートをお届けする。

八ッ場ダムは2003年に国土交通省が行った基本計画変更で、当初の建設費2110億円を2倍以上に膨らませた4600億円となり、関連事業や起債を含めれば、総工事費は9000億円を超えることになる。(水資源開発問題全国連絡会の試算による) 西の川辺川ダムと比べて、東の八ッ場ダムは「日本最大級のダム事業」と言えるだろう。 しかも、八ッ場ダム予定地は、旧群馬3区で福田赳夫元総理が、中曽根元総理と激しい選挙戦を繰り広げたところで、福田陣営はダム建設推進の中心軸だった。いわば、親子二代の「福田ダム」と呼んでもいい八ッ場ダムの事業状況を視察する意味は大きい。



ダムサイト予定地に立って説明を受ける。下の看板は、『四季』というレストランが営業していた当時のもの。この渓谷を巨大なコンクリートのダムサイトが埋めようとしている。




渓谷を見下ろす遊歩道の近くに休業している「観光案内所」があった。吾妻渓谷の四季折々の自然を堪能する観光名所も水没することになる。国土交通省は、「当初のダムサイトから600メートル移動させて渓谷の自然を残しました」と説明する。「ダムに沈む温泉地」として長い間語られてきた川原湯温泉に向う。



源頼朝が浅間狩りの時に開湯したと言われる川原湯温泉は、ダム建設の影響を半世紀にわたって受けて、旅館の改築・増築に手をつけることなくここ20年は18軒の温泉旅館が立ち並ぶひなびた風情ある温泉街だった。ここ数年で旅館の数は半減し、私が以前に止まった旅館も跡形もなくなっていた。この川原湯温泉は、ダムサイト上の代替地に、ダム湖に沈む温泉街の源泉からパイプで引き揚げ、新川原湯温泉をつくるという計画で進んでいる。しかし、現在は10軒ある温泉旅館のうち6軒しか移転しないという。温泉街ではすでにタンクが設置されて移転に向けた工事が始まっていた。



お昼は川原湯温泉の食堂『旬』で手作りのお弁当をいただく。経営者の「この温泉街には酒屋は一軒ありますけど、生活用品を売る店が一軒もないんです。車で7キロかかります。移転に前向きになったのも、今よりもいい生活が出来ればという気持ちからですが……」と語る。しかし、代替地の造成は思うように進まない。



三ッ堂石仏群に登る。岸壁がえぐられて台座になり、石仏群が鎮座をする。その下にもたくさんの石仏がならび、ひとつひとつに見入ってしまった。こうした文化財を水没させる事業が「伝統と文化を尊重する態度」(改正教育基本法)を標榜していることを石仏たちに語りかけたくなった。





そして、川原畑地区の造成工事の現場。ダンプがひっきりなしに山を崩し、大地を削る。そして、猛烈な勢いで代替地を造成している。住民たちに居住地への踏ん切りをつけてもらうために、まず神社から移転したという。



次に林地区に向かい、長野原第一小学校を見る。写真で判るように豪華な校舎は奇妙な場所に立てられている。写真でもわかる通りに、山にはさまれた低い位置に建てられた学校の周囲は、土砂崩れを防止するための砂防ダムがあちこちに見える。学校こそ、安全な場所を選ばなければならないのに。



JR吾妻線の鉄橋工事現場。これから、2度に分けて30メートルの高さまで持ち上げられるという。こうして周辺工事はどんどん進んでいくが、本体工事の着工のメドもたっていない。今年も、326億円の概算要求を行っている。





03年の基本計画見直しの時点では、2010年の竣工予定としていたが、その期限が破られることは100%確実だ。本体工事は、代替地の造成が進まないために住民が移転できず、巨大土木工事の司令塔は判然としていない。最大の問題は、このダム工事によってつくられようとしているダムの「水需要」はすでになく、「治水」「洪水防止」機能は極めて弱い。防災どころか災害規模を大きくする危険すらある。私たち公共事業チェック議員の会では、視察をふまえてヒアリングを近く行うつもりだ。







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