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富士山が世界遺産に登録されたというニュースが流れた23日、私は静岡県浜松市に向かいました。駅前で開催されるフリーコンサートのステージで、「地域からエネルギー革命を」と題したミニシンポジウムに出席するためです。 

 きっかけは意外な人からの電話でした。「リンダ・リンダ」や「人にやさしく」等のヒット曲で80年代後半にブレイクしたロックバンド「ザ・ブルーハーツ」のドラマー、梶原徹也さんでした。

「知り合いが浜松でフリーコンサートをやるので、ぜひ来てほしい」

 久しぶりだなあ。私は記憶をたどります。20代の頃の私は、教育問題を中心にジャーナリストとして活動しながら、ロックを中心とした自主コンサートを年に数本は企画していました。

 1985年、私は「オルタナティブ音楽祭」という若手バンド向けのコンテストを企画しました。テープによる予選をへて、ライブで小室等さんらに審査してもらうのです。このとき「最優秀賞」を受賞したのが結成して間もないザ・ブルーハーツでした。エネルギーの塊のようなステージは今も記憶に焼きついています。

 以来、バンドのメンバーと交流が始まりました。とくに、86年6月に喜納昌吉&チャンプルーズをメインにした日比谷野外音楽堂での自主コンサートでは、ザ・ブルーハーツのステージが大きな評判を呼びました。やがて、彼らはメジャー・デビューしていきます。数年後、私の子どもが通う幼稚園の学芸会で、子どもたちが「リンダ・リンダ」を踊っているのを見て驚いた記憶があります。

 さて、ザ・ブルーハーツのドラマーだった梶原さんは、浜松市にあるフリースクール「ドリーム・フィールド」を運営する元高校教師の大山浩司さんと20年来のつきあいがあり、浜松駅前で行なわれてきたフリーコンサートにも協力していることから、私がシンポジウム出席のために浜松を訪れると知って、久しぶりの電話をくれたというわけでした。

 梶原さんは、フリーコンサートで、私をこんなふうに紹介してくれました。「以前、不登校や引きこもり等、悩んでいる若者たちを集めるフリスペースを主宰されている頃に知り合いました。現在は世田谷区長です」

 私は、浜松駅前に立ち止まる人々に向けて、話し始めました。

「3・11の東日本大震災と原発事故があったから、私は区長になりました。当初は、東京23区の自治体が、国のエネルギー政策に対して何か出来るのかという疑問の声の方が大きかったんです」

 実際、応援してくれる人からも「気持ちはわかるけど、地域行政との関係は薄いのでは」と言われていました。

「ところが、実際に世田谷区役所で使用している電力をPPS(新電力)に切り換えてみると、メディアをはじめ大きな反響がありました。PPSの知名度はぐんあがったのです」

 自治体による発信力を感じた場面でした。

「一般家庭への電力自由化も、電気事業法改正によって制度化されようとしています。今では、大口契約に限られているのが、一般家庭への売却も認められ、電気の購入先を選べるようになるのです。しかし、東京電力や中部電力以外に電気を売ってくれる会社がなければ、地域独占は何も変わりません」

 そこで、世田谷区はモデル地域となって電力の地域独占に風穴を開けたいと考えていることや、交流のある自治体と結んで自然エネルギーをPPSを通して買い取り、消費地である都市に供給するモデルをつくろうと考えていることなどを話しました。

「原発は怖いけれど、原発が止まると産業空洞化が進むので困ると考えている人が多いと聞きます。でも、企業のもつ高度な技術の集積がある地域では、行政と企業、市民、技術者が結んで地域協議会をつくり、そこでエネルギー転換というビジネスチャンスを生かした新しいプロジェクトを産み出していったらいかがでしょうか」

 たとえば、長野県飯田市では、牧野光朗市長が音頭を取って、市内の精密機械工業の技術を結集して60万円以下という低価格の「小水力発電機」を創り出しました。(長野県飯田市の詳細はこちら

 「そう考えると、自動車関連産業など、裾野の広いものづくりの技術を持つ企業群に加え、山も川も海もある浜松市ほど大きな可能性に恵まれているところはないと思います」

 6月16日の静岡県知事選挙で、現職の川勝平太知事は108万票を獲得して大差で当選しました。浜岡原発の再稼働に関しては「安全性の徹底した検証」「使用済み廃棄物の処理技術の確立」「県民投票の実施」などを公約しています。

 大きな選択の時期が、迫りつつあります。

「太陽のまちから」(2013年6月25日)



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