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何でも「やりだすとまっしぐら」的な傾向があって、新政権になってからは「公共事業」を中心に活動を続けてきた。けれども、前国会解散前に問題となった児童買春・児童ポルノ禁止法改正案の問題点は、政権交代後の国会でどう議論されるのかという点について、たびたび読者からのメールもあり、また意見もいただいてきたので、「どこどこ」日記でもふたたびこの問題を考えていきたい。

どうも29日の自民党法務部会で前国会で提出した与党案を、臨時国会で提出するとの提案がなされたようだ。ところが、塩崎元官房長官から「野党になったのだから、旧与党案だけを出すのはいかがなものか。民主党と修正協議も進んでいたのだから、与野党合意できる案にまとめては」という異論が出され、激論になり、結局は結論は出ずということになったようだ。

[引用開始]

児童ポルノの個人所持規制、結論持ち越し

 自民党は29日の法務部会で、個人が趣味で児童ポルノの映像を持つ「単純所持」を規制に加える児童買春・ポルノ禁止法改正案の今国会提出をめぐり協議した。出席者から「単純所持禁止に消極的な民主党が賛成できるよう内容を変更すべきだ」との異論が出たため、結論を持ち越した。

 改正案は自民、公明両党が与党当時に提出したものとほぼ同じ内容。先の通常国会で、民主党は購入などを規制する対案を提出し修正協議を進めていたが、衆院解散で両案とも廃案になった。(共同

[引用終了]

その翌日、千葉景子法務大臣は記者に「自民党法務部会」の動きを問われて、こんなやりとりをしている。

[引用開始]

Q:昨日,自民党の部会でも児童ポルノ法改正の再提出が協議をされたわけですけれども,児童ポルノを巡る現状と,どのような法改正が必要かとか,お考えをお聞かせください。

A:新しい内閣がスタートする前に,国会でかなり議論が進みまして,ほぼ共通な,与野党の協議もほぼまとまったというところまでいっていると承知をしています。それからこの問題については,大変多くの皆さんが心配をなさって,成立を何とか図るべきという声も大変大きくありますので,国会のこれまでの議論の進んできたそういう経緯も踏まえながら,私もできるだけどういう形でそれをまとめていくのが良いか,真剣に考えていきたいと思っています。

Q:自民党の方は単純所持の規制,これをやはり改めて訴えたいと,求めたいという内容でして,民主党の方は,取得したときの取得罪というのを設けていまして,ちょっとその辺の違いがあったのですが,改めて大臣の単純所持規制についてのお考えをお聞かせ下さい。

A:最終的な取りまとめの過程で両者の意見がかなり煮詰まって,一定の方向にいきつつあったと思いますので,ここは所持,取得,それの事実的な合意点というのが見い出せるのではないだろうかなとは思っています。

Q:単純所持禁止に反対というか,問題ありとされていたかと思うのですが。

A:よくよく考えてみますと所持に至るところをどうみるかということであって,まったく所持していることを絶対もうだめと言うのでもなし,あるいは,所持は処罰はできないのだというのではなくて,そこにどうやって所持に至ったのかというところがやはりある意味では問題だったのだと思います。そこはだいぶ煮詰まっていると思いますので,是非これはまとめることができるように私もどういう形が一番良いのか考えていきたいと思います。

[引用終了]

この大臣会見を読むと、与野党合意=法務委員長提案(国会での議論なし)という道を模索しているのかなと思う。私が議席を失ったことで、今、法務委員会に社民党の議席はなく、民主・自民・公明の3党で決めていくことになる。与野党で修正協議で一致したものを「委員長提案」をすると、全会一致となって国会審議は行われず、問題点を社会的に明らかにする機会がなくなる。

こうした状況の中で、カムラナオトさんから『どこどこ日記』に次のような投書をいただいた。新政権の課題として受け止めるべき問題意識だと考えるので、長文だが許可を得て転載する。

[引用開始]

今回お伝えしたいことの要旨を下記に記載します。民主党の枝野議員にも、ほぼ同様のご意見をさせていただいております。

危惧されている警察の捜査権濫用は刑法175条の悪用という形で既に始まっています。新政権が警察の独走を止められないのであれば、児童ポルノ議論に実効性はありません。一刻も早く、刑法175条の効力の制限をすべきと考えます。

 刑法175条に関する警察活動は、新政権が進めておられる「国家事業の要不要の仕分け」に照らして明らかに「不要」でかつ有害であり、これを整理することは新政権の政策とも全面合致します。

[ポルノ表現規制関連]謝辞と今後の要望

 まず、児童ポルノ規制関連について、「反対する奴は小児性愛者」的な暴論を跳ね除けて果敢に問題点を指摘しておられることについて、感謝いたします。

 先日の東京新聞インタビューなどで「検証し直し」の方針が示されていますが、これを全面的に支持し、小額ながら再度個人献金させていただきます。

 私は基本的に、民主党案の「取得罪」を支持しております。これは児童ポルノを産業として回転させないための必須事項です。

 検証し直すのは、「児童ポルノの範囲」のあたりにあると認識しています。これは、無軌道な「児童ポルノ」のレッテル貼りによる被害児童への人権侵害を防止するためにも必須です。しかし、さらにもう一つ提案したくメールを差し上げた次第です。

 新政権が成立して1ヶ月、政権移行作業でお忙しい中、メールさせていただくのは大変恐縮です。しかし、この問題に関して、世の状況は、予想されうる最も悪い方向「警察権の濫用」に進んでいます。

 少々手厳しく言えば、「新政権は警察を制御できていない」という状況であり、政権交代の混乱に乗じて警察は独走状態になっているように見えます。

 最初に結論を書きますが、このまま時間が経過すれば警察は独走を続け、新政権に対する私たちの信頼は失われ、最悪「結果的には自民党時代のほうがマシ」となります。これを阻止するには刑法175条を改正し、大幅に効力を制限する必要があります。詳細は下記の2.節をご覧ください。

 そして、「児童ポルノ法改正する前提として刑法175条を改正する」とすべきです。

 警察の動きや、次の選挙までの時間を考えると、残された時間は長くありません。以下の文はそう考えるに至った理由です。

1. 政権交代により制御不能となり独走する警察

 まず、下記の記事をお読みください。原文は既に掲載期限切れのようです。

9月17日 朝日新聞「疑似児童ポルノ」のDVD卸した疑い、社長ら逮捕
http://www.asahi.com/national/update/0917/TKY200909170179.html(掲載期限切れ)

-(引用開始)----------------

 容姿が幼く見える成人女性のわいせつな姿を撮影した「疑似児童ポルノ」のDVDをアダルトショップに卸したとして、警視庁は、写真家の力武靖(48)=東京都渋谷区幡ケ谷3丁目=とビデオ製作会社「ムーランコーポレート」社長河野憲一(35)=山口県下関市一の宮町3丁目=の両容疑者をわいせつ図画頒布などの疑いで逮捕した、と17日に発表した。同庁によると、力武容疑者は調べに「映っているのは陰部ではない」と容疑を否認。疑似児童ポルノの摘発は全国初という。

 保安課と四谷署によると、両容疑者は6月19日と20日、女性の陰部が露出したDVDを東京・秋葉原や新宿のアダルトショップに1枚8千円で計45枚卸した疑いがある。

-(引用終了)----------------

 この記事を読むと「擬似児童ポルノ」という罪が、国会決議を経ずに創設されたかのように思えます。この「擬似児童ポルノ」という単語は複数の新聞社の記事に共通しているため、警察がこの言葉を使用して発表したものと考えられます。

 しかし、客観的に見れば、こんなものは単なる成人ヌードであって、児童ポルノと何の関係も無いのは明らかです。

この件の詳細内容として、下記のような記事もありますが、「苦しい業界事情」などというのは、記者の憶測に過ぎません。

【衝撃事件の核心】警視庁摘発の「疑似児童ポルノ」って何? カリスマ写真家が手を出した苦しい“業界事情” (1/5ページ) - MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/091004/crm0910040701002-n1.htm

 因みに、私はこの写真家を何年も前から知っていますが、最近になって作品内容が変わったということはなく、数年間の活動の間、特に問題も発生していませんでした。なぜ今になって?という気持ちです。

 本件のように、存在しない罪を勝手に創設するため刑法175条を利用するというのであれば、これこそが「捜査権の濫用」にほかなりません。

 つまり、曖昧な刑法175条が存在している限り、児童ポルノの定義をどうしようが刑法175条を使って有罪化すればいいので、今まさに行なっている議論が無意味になってしまうのです。

 問題の「逮捕」のニュースは、新政権が設立された9月17日のものです。その後の経過を見る限り、警察は他の人物の逮捕なども着々と進めているようで、悪い言い方をすれば、「新政権になって、以前よりも警察の独走が酷くなり、表現弾圧が激しくなった」です。

 仮にこの傾向が来年まで続けば、新政権に対する私たち表現弾圧反対派の信頼はそれこそ地に落ちてしまいます。児童ポルノ法の決着がいくら良くても、実態として警察が175条を振り回して暴走していたのでは何の意味もなく、我々からみて政権移行は「結果的失敗」扱いになるのです。これでは民主党・社民党連立政権支持の呼びかけすら困難になります。

 そんなことになれば、最悪の場合、細川政権同様に来年の参院選後に政権崩壊し、悪夢の自公政権が復活してしまいます。

 それとは別件で、9月28日にこういう記事もありました。詐欺サイト等は取り締まるべきだと思います。ですが、実態は、まったく見当違いの猥褻などに注力するようです。

違法サイト取り締まりを効率化 警視庁、統括事務局を開設
http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20090928AT1G2800G28092009.html

2. 新しい時代の刑法のありかた

 可能な根本対策、刑法175条改正の試案を一つ提案します。

現行法: わいせつ物頒布罪

わいせつな文書、図画、その他の物を頒布し、販売し、又は公然と陳列した者は、2年以下の懲役又は250万円以下の罰金若しくは科料に処する。販売の目的でこれらを所持した者も、同様とする

改正案: わいせつ物強制頒布罪

わいせつな文書、図画、その他の物を、受領者の同意を得ずに強制的に頒布閲覧させた者は、250万円以下の罰金若しくは科料に処する。

 このように、受領者の同意を得なかった場合のみ有罪とすべきです。
 「受領者の同意を得ない」例としては、白昼の地上波テレビ放送や未承諾の電子メールによる強制送付などがあります。

 上記の案ですが、私の新体制に対する期待や思いを込めています。175条に限らず、今までの日本の刑法はいわば「戒律」でした。これは支配者が、庶民に正しい道を教えるといった物です。

 しかし、新政権に必要とされるのはそんなものではありません。刑法の基本思想は「戒律」から「人権」に変革されるべきです。人権とは、自分のことを自分の意志で自由にする権利であり、上記案で述べた「同意」こそが重要なのです。

 所信表明において鳩山総理は「平成維新」であり「新しい国づくり」と言いました。既存の刑法を、古い「戒律」から、民主的な「人権」の思想で見直して、総書き換えする、これくらいのことができなければ「維新」ではありません。そうでなければ、ただの「政権のたらい回し」「支配欲に溺れた者どもの権力の奪い合い」です。

 上記案は、新政権の他の政策との整合性も高いです。この改正により有罪化される範囲が大幅に減るので、警察の仕事が減り、無駄削減に貢献できます。まさに新政権が取り組んでおられる仕事の目的とも合致します。

 それ以前に、公金を使って「表現の自由」「罪刑法定主義」の双方に反する表現弾圧活動をしている、という現状があまりにも異常であり、問題外であるとも思います。

 モザイクという日本固有の謎の行為で誤魔化し、それをしないと摘発、というのも、明らかに異常であり、諸外国の基準から外れています。とうの昔に破綻した偽善が長い間放置されているのです。今や、刑法175条があるからこそ成立する「モザイク無しの裏ビデオ市場」が、人権侵害ポルノ(児童ポルノや盗撮物)を隠す格好の温床としても機能しています。

 他の削減検討になっている予算は、「不急だが不要とは限らない」が多いと思います。しかし、刑法175条関係の予算については、「特定思想の人間の自己満足」であり、人権侵害であり憲法違反であり、さらには児童ポルノの温床を作り出し、それによって取締の警察の仕事を創出し…、最早、税金の無駄どころか有権者に対する犯罪といってもおかしくありません。それが、今までの自民党政治で、みんな感覚が狂ってしまっているのです。


 新政権への支持率の問題もあります。

 法改正作業を単なる「児童ポルノ」の問題だとして、このまま悠長に進めた場合、「新政権で、揉めていた児童ポルノ法の『強化』だけが行なわれた」「警察が刑法175条を悪用、独走して、以前より貪欲に点数稼ぎをするようになった」という結果だけが残ることになりかねません。

 そのような結果で、私たち表現弾圧反対派が、今までのように民主党・社民党支持を訴えるのには無理があります。結果の伴わない政権を支持することは不可能です。

[引用終了]

解散前の「表現規制」問題をめぐる議論で、たいへん多くの方から応援をいただいた。にもかかわらず、国会の外に出てしまったので問題意識を共有する議席のある議員の人たちの頑張りに期待をする他ないが、少なくとも在野で議論を深めていく役割は果たしていきたいと思う。

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