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 1981年春、私は高知から上京した西隈隆則さんと会っていた。原子力発電の立地に狙われて、住民の粘り強い運動でこれを拒否した高知県窪川町で野外イベントをやりたい。協力してくれないかとのことだった。私は、25歳で当時は『80年代』という雑誌に関わり、青生舎という若い世代のアクティブな運動の場を主催していた。西隈さんは、自然保護運動の渦中にいて、安全な食べ物の供給を高知市内で取り組んでいた。西隈さんの話を聞いているうちに、脳裏に「白く大きな船」の映像が浮かんでいた。「船を出しましょう。東京から船を出して大勢で行きますよ」と次の瞬間には言っていた。

 ピースボートが始まるのは83年、当時はまだ市民運動が船をチャーターした実績はない。当初、いくつかの船会社に交渉した結果、「東京→那智勝浦→高知」を定期航路で結んでいたサンフラワー号を団体予約することになる。この年の夏、窪川町で開かれた『生命のフェスティバル』に約250人が東京からの船で参加、会場には2500人が集まって3日間を過ごした。

 その西隈さんから珍しく電話があった。高知県で、『海工房』という会社を立ち開け、『美味海』という海水からの塩づくりを本格的に取り組んでいるという。早速、サンプルを送ってもらうとミナラルをたっぷり含んだ塩だった。『どこどこ日記』読者の皆さんにも紹介したいと言ったら、さっそく現在抱えている問題について、メッセージを寄せてくれた。



西隈さんからの手紙

私は皆様ご存知のとうり、高知県幡多郡というところで塩作りをしています。

塩作りの過程でニガリ(水ニガリ)という副産物が採れます。 この水ニガリには主成分の塩化マグネシュウムを始めとして海水中にある約80種類のミネラルがバランスよく含まれていて、豆腐の凝固剤として豆腐屋さんに出荷し、好評を得ています。

 豆腐の凝固剤としては、他に塩化マグネシゥムや硫酸カルシウムなどが有りますが、やはり自然のミネラルをバランスよく含んだ国産のニガリで作った豆腐が一番美味しいという評判が広まり、豆腐屋さんも段々とこの国産の水ニガリを使うようになってきました。

 供給のほうも、1997年に塩専売法がなくなり、それまで4~5箇所でしか作られていなかった日本の塩作りも、どんどんと増えて、たぶん今では4~500箇所で作られるようになり、ニガリの供給も需要に応じることができるようになってきました。

 しかしながら、昨年突然法律が変わり、ニガリが食品添加物となってしまいました。だから今年の4月からは、豆腐の凝固剤として出荷する場合は、食品添加物取り扱いの資格がないと出荷できなくなりました。

資格を取るためには、35万円の受講料を払い、東京で35月間の講習を受け無ければなりません。

しかも、講習を受けたら、資格が取れるのかと言うと、そうではありません、その後国家試験を受けて合格しなければならないのです。 昨年、その講習会がありましたが、合格率は60%だったといいます。

 日本各地での塩作りは、長い間施行されていたあの悪法(塩専売法)の為まだ始まったばかりです。 そして、塩作りを始めた人達は、過疎の島の島起こしやIターンの人などが大半です。 そして、一部のところを除けば、殆どが家族単位ぐらいの零細企業ばかりです。

 そしてまた、塩作りに欠かせないのは、美しい海、きれいな海水なのです。 だから、塩作りをしているのは、遠く東京からはなれた、四国や九州・沖縄などの過疎地や離島に集中しています。
そんな遠くから、東京に出てきて講習を受けろと言われても、殆どの所が資金的にも、人的にも不可能なのです。

 私の試算したところ、東京に来て、講習を受けるにはこれぐらいのお金が掛かります。

東京への交通費(電車・飛行機)・・・・6万円(往復)
②  宿代(マンスリーマンション)・・・・・22万円(1ヶ月分)
③  ビジネスホテル代(5日分)・・・・・・・4万円
④  食事代・・・・・・・・・・・・・・・7万円(1日2千円)
④  東京での交通費・・・・・・・・・・・2万円
⑤  受講料・・・・・・・・・・・・・・・35万円
⑥  人件費(どこも人的ゆとりが無いのでその間のアルバイト代)・・・12万円(1ヶ月分)

              合計・・・・・・76万円

 それ以外にも、思わぬ費用がかかると思いますので、80万円は見ておかなければなりません。
私のところにも、あっちこっちで塩作りをしている人達から色んな相談がありますが、皆困まりはてています。 せっかく作ったニガリも海に捨てるしかないと嘆いている人もいます。

しかし、私は、この法律にただ反対しているのではないのです。 もし、この法律に必然性があれば、私も納得してたとえ100万円掛ろうとも講習を受けに行くつもりです。 でも、納得がいかないのです。

その理由は
①  従来のままで何か問題があるのか? 
豆腐は何百年も前からニガリを凝固剤として使用していますが今まで何の問題も起きていません。たとえば、豆腐屋さん達から、質の悪いニガリが出回っていて困っているという状況でもあるのでしょうか?

② ニガリは飲んでも、あるいは入浴剤などとして使っていいのに何故豆腐屋さんに凝固剤として出荷するのは資格が必要なのか?

(その逆であれば私も納得しますが、飲んでもいいものを何故食品添加物に指定しなければならないのか?)

私は、この法律を作った政治家を探し出してその事を質問したいと思っています。 新しく法律が出来ると、それによって被害を受ける人と、利益を受ける人が必ずいます。

国産の水ニガリという品質のいい凝固剤が(薬事法の関係でおおぴらには言えないのですが、天然の水ニガリはアトピーなどにも凄い効果が有ります)出回ると不利益をこうむる人達や企業もあります。

この政治家が、そういった人達の利益代表者だとは今のところ言いませんが、何故、誰がこの法律を作ったのか知りたいと思っています。 そして、この悪法を無くしていきたいと思っています。

この法律によって、泣いている何百人もの零細な塩作りの人達の思いを代弁してこの日記を書きました。

[お手紙終わり]

きっと、許認可権限の拡張をはかる官僚たちの天下り先としてつまらない機関が新設されたのではないかと予想するが、調べてみることにする。加えて、西隈さんたちの奮闘にエールを送りたい。





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