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 児童養護施設で暮らす子どもたちが社会に巣立っていくのは、18歳、高校卒業時の春だ。その時に、施設から支払われる支度金は進学時と就職時に「77000円」と少額だ。この金額は、現金で手渡されるわけではなく、独り暮らしのための身辺用具を購入した領収書がなければならない。両親が死亡・行方不明だったり、虐待・ネグレクトその他の理由で「養育不能」の時には、13万が加算される。それでも、このお金は生活費にまわすことが出来るお金だ。

 

「施設を出て働く子どもたちの給料が出るのは、働き始めて1カ月後になる。その間、子どもはどうやって暮らせばいいのかという声が施設関係者からあがって創設されたもの」(施設長)だが、とてもアパート等を借りる資金には届かない。だから、アルバイト等を積極的にして金銭を貯めて、自立のための準備を重ねなければならないことになる。

 

 こうした状況下で「進学」出来る子どもたちの支援体制はどうなのか。東京都は大学・専門学校の進学率が3割台と地方に比べれば高い。大きなハードルである入学金などの支払は東京都独自の支度金に民間の基金などを足して、何とかまかなうことが出来るという。一方で、私が見てきた北関東や東北地方の児童養護施設では、「進学など夢のまた夢」「戦後、施設から大学に進学した子はひとりもいない」など、「進学などそもそも不可能」な状態だ。

 

 虐待などから保護されて「社会的養育」のセーフティーネットの中に受け止められる子どもが、東京で保護されるか地方で保護されるかで、その後の人生の選択可能性が大きく開いてくる。「東京まで何とか逃げてきて、東京で保護される」という手段があるとも聞くが、子どもたちにそうした予備知識があるわけもない。

 

126日に開かれた保坂のぶとフォーラムでは、社会福祉法人カリヨン子どもセンターの坪井節子さん(弁護士)をゲストに招いた。坪井さんが弁護士会の電話相談を通して、「どこにも居場所のない子どもたちの緊急避難場所(シェルター)をつくりたい」と仲間たちと奔走し、「カリヨン子どもの家」を立ち上げてからの話を聞かせてくれた。

 

 インターネット中継で流れた映像記録が、今からでも見れるので2時間に及んだシンポジウムだが、ぜひ前半だけでも見てほしい。逃げ出してきた子どもたちと格闘しながら、居場所を保ち続けることの難しさと意義がきっと伝わると思う。政治の側で、やれることをメニューとして考え、レシピをつくるというのがこの日の目的だった。

 

 第一に、冒頭に触れた「18歳以後の出口支援策」は、イギリスの法改正にならって、原則20歳まで延長する。進学等の場合は、卒業時23歳まで施設で暮らすことを認めるという改革をする必要がある。未成年である18歳で社会に出ることを求められる現行制度の中では、成人年齢になる2年間が「谷間の時期」となる。

 

「中途半端のところで放り出して、自立生活につまずいて、結局は生活保護など暮らすケースをなるべくつくらないことが大事。しっかり育てて自立出来るようにして、ちゃんとした納税者に私たちは育てたい」という施設長の話になるほどと思った。

 

第二に、児童虐待防止法が虐待から緊急保護を柱とする法制化だとすれば、「虐待からの育て直し」を受け持つ専門施設と、子どもの進路保障をもうひとつ別の法体系でフォローする必要があるのではないか。「子どもの育つ権利、学ぶ権利確保法」(社会的養育の子ども支援策を法制化したもの)

 

 ここで、「携帯電話契約」「不動産契約」「預金口座開設」など社会生活の一歩のところで、「例外的少数者」として子どもたちが扱われている現状を是正する社会原則をきちんと書いておく必要がある。「携帯電話契約」のために「親権喪失」を求めて「未成年後見人」をつくるというのは適当ではなく、施設長など「保護者代行者」と児童相談所などの施設が契約を保証することで、実の親が「契約取消」などの親権の濫用が出来ないフレームを工夫してつくることが適当だと思う。

 

 こうした制度が出来るまでは、各省庁に協力を求めて「虐待」から保護された子どもたちなど、社会的養育の対象となった子どもが著しく自立生活の前提となる各種契約から排除されることのないように各業界にも協力を求めてはどうだろうか。

 

3に、児童養護施設の9割が被虐待児童だという施設に行って感じたことがある。もはや「児童虐待」に絞って、その児童を育て直す専門施設化を決断する時期が来ているのではないか。その他の理由で保護されている子どもたちと、同列に扱っている現在の対応ではおのずから限界がある。

 

 などのことを感じている。



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