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共謀罪創設で、大騒ぎしている国が他にあるのか。もし、あるのなら何らかのニュースがあってもよさそうだ。しかし、122カ国の批准国のうち国内刑法体系の全面的変更を期するような国は存在していないようだ。先月来紹介した『国連立法ガイド』(国際組織犯罪防止条約の国内法制化ための2002年刊行のもの)を、もっと読んでみたいと思い小林しおりさんに翻訳をお願いした。いちおう「仮訳」ということで公表の快諾をいただいた。じっくり読んでみてほしい。

<表題>
越境的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を実施するための立法ガイドおよび議定書 国際連合(2004年ニューヨーク)

起草者 Nikos Passas ノースイースタン大学 刑事司法学部教授(米国マサチューセッツ州ボストン)

第1部
越境的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を実施するための立法ガイド

目次
I. 序論
A. 越境的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約を実施するための立法ガイドの構成
B. 組織犯罪防止条約の構成

II. 越境的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約の全体に適用可能な規定および義務
A. 条約の実施
B. 用語
C. 適用範囲
D. 主権の保護

III. 実体刑法
A. 一般的要件
B. 犯罪集団への参加の犯罪化

(以下略)

III. 実体刑法
A. 一般的要件

36. 締約国は、組織犯罪防止条約の実施へ向けて一定の立法上および行政上の措置をとることを求められる。第34条1項に述べられているように、これらの措置は各締約国の国内法の基本原則と合致する方法で行うこととする:
「締約国は、本条約に定める義務の履行を確保するため、自国の国内法の基本原則 に従って、必要な措置(立法上及び行政上の措置を含む。)をとる。」

37. 本ガイド第III章では、本条約の実体刑法の要件を取り扱う。基本的に、既存していない場合には、締約国は多くの犯罪を自国の国内法における犯罪として制定しなければならない。関連する法律をすでに保有する国は、既存の規定が同条約の要件に適合すること、また(必要に応じて)その法律を改正することを確保しなければならない。

38. 本条約実体刑法の規定は、組織犯罪集団への参加、犯罪収益の洗浄、腐敗行為、および司法妨害を犯罪として定める。これらの犯罪について、各々この章のB〜E節で取り扱う。

39. これらの犯罪が対象とする活動は、巧妙な犯罪行為の成就に不可欠なもの、また犯罪者が効果的に実行し、実質的な収益を上げ、犯罪者自身ならびにその不正利益を法執行当局から守るために不可欠なものとする。したがって、この実体刑法で定めるこれらの犯罪は、重大で充分に組織された犯罪の市場、事業および行為に立ち向かうための全世界的な協調努力の礎石をなすものである。

40. 本ガイドのこの章で取り扱う事項の中核を成すいくつかの用語、「組織犯罪集団」、「体系的組織集団」、「重大な犯罪」、「前提犯罪」などは、条約の第2条で定義されている。これらの条項で使用される用語の定義については、本ガイド第II章B節「用語」の項を精査すること。

1. 実行の最低基準

41. 条約には締約国が満たすべき最低基準が示されているが、各締約国にはそれらを超える余地が認められている。第34条3項は、越境的な組織犯罪を防止しこれと戦うために締約国が採用する国内法がこれらの基準よりも精細であること、また本条約第34条3項に厳格に従うよう求められる各規定よりさらに厳重な制裁を含めることを認めている:
「締約国は、国際的な組織犯罪を防止し及びこれと戦うため、本条約に定める措置よりも精細な又は厳しい措置をとることができる。」

42. 禁止行為の犯罪化は刑法によってなされなければならない。必要なあらゆる措置は、犯罪の立法に追加されるものとしなければならない。唯一の例外は、法人にあたるときで、その法的責任が(国内法の原則に照らして)刑法、民法または行政立法にある場合である(第10条2項)。

43. 国内法の起草者は、単に条約文を翻訳したり、条約の文言を一字一句逐語的に新しい法律案や法改正案に盛り込むよう企図するよりも、むしろ条約の意味と精神に主眼を置くべきである。法的な防御や他の法律の原則を含め、新しい犯罪の創設および実施は、各締約国に委ねられている(第11条6項)。したがって、国内法の起草者は、新しい法が国内の法的な伝統、原則、および基本法と合致するものとなることを確保しなければならない。これによって、新しい規定の解釈において裁判所や裁判官の違いにより対立や不確定要素が生じる危険性を回避することができる。

44. 本条約によって義務付けられる犯罪は、締約国の国内法、または議定書により導入される法の他の規定と連係して適用してもよい。したがって、新しい犯罪が現行の国内法と合致することを確保するよう努めなければならない。

2. 適用範囲

45. 一般に、犯罪が性質上越境的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与する場合に、本条約は適用される(第34条2項)。ただし、本ガイド第II章A節で詳述したとおり、これらの要件自体を国内犯罪の要件とすべきであるというわけではない。むしろ、条約または議定書による明示的な要請のないかぎり、起草者は国内犯罪の定義にこれらを盛り込むべきではない。越境性または組織犯罪集団の関与に関する要件がいたずらに複雑になり、法執行の妨げになるおそれがある。本条約におけるこの原則の唯一の例外は、組織犯罪集団への参加の犯罪であり、この場合には当然、組織犯罪集団の関与が国内犯罪の要件になる。ただし、この場合であっても、越境性を国内法レベルでの要件としてはならない。

3. 制裁および抑止

「第十一条
訴追、裁判及び制裁

1. 締約国は、第五条、第六条、第八条及び第二十三条の規定に従って定められる犯罪の実行につき、これらの犯罪の重大性を考慮した制裁を科する。

2. 締約国は、本条約の対象となる犯罪を行った者の訴追に関する国内法における法律上の裁量的な権限が、これらの犯罪に関する法の執行が最大の効果を上げるように、かつ、これらの犯罪の実行を阻止することの必要性について妥当な考慮を払って、行使されることを確保するよう努める。
(略)
4. 締約国は、裁判所その他の権限のある当局が、本条約の対象となる犯罪について有罪とされた者の早期釈放又は仮釈放の可否を検討するに当たり、このような犯罪の重大性に留意することを確保する。
(略)
6. 本条約のいかなる規定も、本条約に従って定められる犯罪並びに適用可能な法律上の犯罪阻却事由及び行為の合法性を規律する他の法的原則は締約国の国内法により定められるという原則、並びにこれらの犯罪は締約国の国内法に従って訴追され及び処罰されるという原則に影響を及ぼすものではない。」

46. 本条約によって義務付けられる犯罪における刑罰の程度は締約国に委ねられるが、犯罪の重大性が考慮されなければならない(第11条1項)。この点では国内法の優位性が第11条6項により規定されている。訴追、判決、さらに矯正の措置および決定においては、犯罪の重大性とその実行の阻止の必要性を考慮するようにも努めなければならない。

47. 同時に、効果的な抑止は訴追および刑罰によって遂行されなければならないため、締約国は、組織犯罪集団に参加している者が法執行当局に対して協力ならびに助力するよう促さなければならない(第26条1項)。その効力を上げるために、締約国はこれらの者に減刑(第26条2項)もしくは訴追免除(第26条3項)の可能性を与えることを検討する必要がある。その採用の可否は任意であり、各締約国の基本原則に委ねられる(第26条3項)。ただし、訴追がすべての犯罪に義務付けられている法域では、このような措置には追加立法を要する場合もある(詳しくは、第IV章E節「証人および被害者の保護」の項を参照のこと)。

犯罪集団への参加の犯罪化

「第五条 組織的な犯罪集団への参加の犯罪化
1 締約国は、故意に行われた次の行為を犯罪とするため、必要な立法その他の措置をとる。
(a)次の一方又は双方の行為(犯罪行為の未遂又は既遂に係る犯罪とは別個の犯罪とする。)
(i)金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接に関連する目的のため重大な犯罪を行うことを一又は二以上の者と合意することであって、国内法上求められるときは、その合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為を伴い又は組織的な犯罪集団が関与するもの
(ii)組織的な犯罪集団の目的及び一般的な犯罪活動又は特定の犯罪を行う意図を認識しながら、次の活動に積極的に参加する個人の行為
   a 組織的な犯罪集団の犯罪活動
   b 組織的な犯罪集団のその他の活動(当該個人が、自己の参加が当該犯罪集団の目的の達成に寄与することを知っているときに限る。)
(b)組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の実行を組織し、指示し、ほう助し、教唆し若しくは援助し又はこれについて相談すること。
2 1に規定する認識、故意、目的又は合意は、客観的な事実の状況により推認することができる。
3 1(a)(i)の規定に従って定められる犯罪に関し自国の国内法上組織的な犯罪集団の関与が求められる締約国は、その国内法が組織的な犯罪集団の関与するすべての重大な犯罪を適用の対象とすることを確保する。当該締約国及び1(a)(i)の規定に従って定められる犯罪に関し自国の国内法上合意の内容を推進するための行為が求められる締約国は、この条約の署名又は批准書、受諾書、承認書若しくは加入書の寄託の際に、国際連合事務総長にその旨を通報する。」

1. 緒言
48.  国際社会は犯罪集団の活動の活発化に直面してきており、このことは、ほぼすべての国に著しい財政的ならびに人的な負の影響をもたらしている。犯罪行為の実行に直接参加することなく、重大な犯罪の計画や遂行において組織的犯罪集団を支援する者も少なくない。この問題に対処するため、多くの国では犯罪集団へのより軽度の参加を禁止する刑法を採用している。

49. これまで各国が採用してきたアプローチは、歴史的、政治的、および法的な背景により異なっている。大まかに言えば、組織的犯罪集団への参加の犯罪化は2種類の方法で行われており、コモン・ローの諸国では共謀の犯罪が、大陸法の法域では犯罪組織への関与を禁止する犯罪が用いられている。他に、このようなアプローチを組み合わせている国もある。本条約は、特定の組織の構成員となることの禁止を取り扱うものではない。

50. 犯罪集団は国境を越え、多くの国に同時に影響を及ぼすことも少なくないため、法律を調整ならびに調和させる必要性は明らかである。すでに、1998年12月21日の欧州連合理事会による(欧州連合参加国において犯罪組織への参加を犯罪とする) 「共同行動」の採択など、地域レベルで、そのような方向へ向けてイニシアティブがとられている。しかしながら、これは単に地域的な問題にとどまらず、世界的規模の有効な対応が求められるものである。

51. 本条約は、世界的な対応の必要性を満たし、犯罪集団への参加の行為の効果的な犯罪化を確保することを目的としている。本条約第5条は、このような犯罪化に対する2つの主要なアプローチを同等のものと認めている。第5条1(a)(i)および(a)(ii)の2つの選択的なオプションは、このように、共謀の法律を有する諸国もあれば、犯罪の結社(犯罪者の結社)の法律を有する諸国もあるという事実を反映するために設けられたものである。これらのオプションには、関連する法的な概念を持たない国が、共謀罪および結社罪のいずれの制度も導入することなしに、組織犯罪集団に対して有効な措置を講ずることを認める余地がある。また第5条は、組織的犯罪集団によって行われる重大な犯罪を他の方法で幇助ならびに援助する者も対象としている。 

2. 主な要件の要旨
52. 第5条1項に従って、締約国は以下の犯罪を制定することが求められる:
  「a)次の一方又は双方の行為(犯罪行為の未遂又は既遂に係る犯罪とは別個の犯罪とする。)
  (i)金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接に関連する目的のため重大な犯罪を行うことを一又は二以上の者と合意することであって、国内法上求められるときは、その合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為を伴い又は組織的な犯罪集団が関与するもの
  (ii)組織的な犯罪集団の目的及び一般的な犯罪活動又は特定の犯罪を行う意図を認識しながら、次の活動に積極的に参加する個人の行為
     a 組織的な犯罪集団の犯罪活動
     b 組織的な犯罪集団のその他の活動(当該個人が、自己の参加が当該犯罪集団の目的の達成に寄与することを知っているときに限る。)
 (b)組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の実行を組織し、指示し、ほう助し、教唆し若しくは援助し又はこれについて相談すること。」

53. 第5条2項に基づき、締約国は、客観的な事実に基づく状況からの推認によって認識、意図、および目的が立証できることを確保しなければならない。

54. 第5条3項は、重大な犯罪をおかすことの合意を犯罪とする上で組織的犯罪集団の関与が求められる締約国に対して、以下を規定している:
(a)国内法が組織的犯罪集団の関与するすべての重大な犯罪を適用の対象とすることを確保しなければならない、
(b)この件について、国際連合事務総長に通知しなければならない。

3. 義務的な要件
(a) 第5条1項(a)
55. 第5条1項(a)の規定に基づき、締約国は 同項(i)および(ii)に規定される一方または双方を犯罪として定めなければならない。

56. 1番目のオプションは、コモン・ローの犯罪類型と同種のものであり、第5条1項(a)(i)に、次のように記述されている:
「金銭的利益その他の物質的利益を得ることに直接又は間接に関連する目的のため重大な犯罪を行うことを一又は二以上の者と合意することであって、国内法上求められるときは、その合意の参加者の一人による当該合意の内容を推進するための行為を伴い又は組織的な犯罪集団が関与するもの」

57. この犯罪の要件には、金銭的または他の物質的利益の獲得に直接または間接的に関わる目的のため重大な犯罪をおかすことを一人以上の他者と故意に合意することが含まれる。この要件は、金銭的または他の物質的利益の獲得を目的とした重大な犯罪をおかすことへの単なる合意を犯罪化するものである。

58. ただし、国内法上の要請がある場合には、締約国は、以下のいずれかを犯罪の要件として含めることができる:(a)その合意を推進する参加者の一人により行われる行為、または(b)組織的犯罪集団の関与。

59. 「金銭的または他の物質的利益の獲得に直接または間接的に関わる目的」との文言は、例えば、自動ポルノでつながった集団の構成員による物の受領または取引、小児性愛でつながった集団の構成員による児童の取引、あるいは構成員間における費用分担といった、主たる動機が性的欲望を満たすことである場合など、有形だが金銭的ではない目的の犯罪を対象とすることが可能となるように、広く解釈されるべきである(A/55383/補遺1, 3項)。イデオロギーに係わる目的など、純粋に非物質的な目的を持った共謀は、この犯罪の対象とすることを求められていない。

60. 2番目のオプションは、大陸法の法的伝統に適している他、共謀を認めない法を有する諸国、あるいは犯罪をおかすことへの単なる合意の犯罪化を許容しない法を有する諸国に適している。このオプションは、個人の行為を犯罪化するものであり、第5条1項(a)(ii)に、次のように記述されている:
「組織的な犯罪集団の目的及び一般的な犯罪活動又は特定の犯罪を行う意図を認識しながら、次の活動に積極的に参加する個人の行為
   a 組織的な犯罪集団の犯罪活動
   b 組織的な犯罪集団のその他の活動(当該個人が、自己の参加が当該犯罪集団の目的の達成に寄与することを知っているときに限る。)」

61. この(訳注:上のbの)その他の活動は、犯罪を構成しない場合もあるが、集団の犯罪行為や目的のために補助的な役割を果たすものである。

62. 上記の犯罪はいずれも、犯罪行為の未遂または既遂にかかわる犯罪とは区別される。

63. 2番目のタイプの犯罪(すなわち、犯罪の結社)で必要とされる主観的要件は、集団の犯罪的な性質についての一般的な認識、もしくはその犯罪活動または犯罪目的の少なくとも一方についての一般的な認識である。犯罪活動への参加の場合には、当該活動の主観的要件も適用される。例えば、誘拐や司法妨害への積極的参加は、それらの犯罪に関する主観的要件を必要とする。

64. 犯罪ではない補助的な活動に参加する場合、付加的要件は、そのような関与が集団の犯罪目的の達成に寄与するということの認識である。

65. 第5条2項の規定に基づき、上記の認識、意図、目的、または合意は、客観的な事実に基づく状況から推認することができる。起草者は、基準を設けて、証明する必要のある事柄を的確に解明することを検討してもよい。

(b) 第5条1項(b)
66. 締約国は、組織的な犯罪集団が関与する重大な犯罪の実行を組織し、指示し、幇助し、教唆し、援助し、あるいはこれについて相談することを犯罪として定めることも義務付けられる。特に、この種の犯罪は、命令は出すが実際の犯罪自体の実行には携わらない犯罪組織の首謀者の責任を確保することを意図したものである。

(c) 第5条2項
67. 各締約国は、第5条1項に規定される認識、意図、目的、または合意を客観的な事実に基づく状況により推認することを可能とする法的枠組みを有しなければならない。仮に国の証拠法がこのような主観的状況の認定にそのような状況証拠を用いることを許容しないのであれば、この条項の要件に適合するように法律を改正しなければならない。

(d) その他の一般的要件
68. これらの犯罪化義務を履行するための立法の起草に当たっては、立法者は、本条約の(特に犯罪の制定に関連する)以下の一般的要件に留意する必要がある:
(a) 国内犯罪に越境性を盛り込まないこと。越境性を、国内犯罪の要件としてはならない(第34条2項)。
(b) 犯罪化は立法およびその他の措置によって行われなければならない。犯罪は、刑法により定められなければならず、その他の措置のみにより定められてはならないのであって、禁止する立法に追加するものとする(A/55/383/補遺1, 9項)。
(c) 犯罪は故意に行なわれるものでなければならない。各犯罪に必要な主観的要件は、それが故意に行われる、ということである。
(d) 犯罪は、その重大性を考慮した刑罰が科されるべきである。刑罰は、犯罪化が求められる行為の重大さにかんがみて充分に厳重なものとすべきである(第11条1項)。
(e) 犯罪の規定は、締約国の国内法に委ねられる。本条約の犯罪化要件を履行するために締約国が定める国内犯罪は、必要な行為が犯罪化される限り、本条約とまったく同じ方法で規定される必要はない(第11条6項)。
(f) 法人の責任。法人における犯罪および責任は、刑事上、民事上、または行政上のものとすることができる(第10条2項)。
(g) 出訴期間。本条約は、(特に容疑者が裁判を逃れているときに)犯罪に対して長期の出訴期間を定めることを求めている(第11条5項)。
(h) 刑の軽減および免除。本条約は、当局への協力を決意した者に対して、刑の軽減、免除、情状酌量などを考慮することを奨励している(第26条2および3項)。これは任意であり、国内の法的原則および伝統に委ねられる。ただし、犯罪の訴追が義務付けられている法域で訴追の免除を可能にする場合には立法を要することとなる。

69. 重大な犯罪をおかすことの合意の犯罪において自国の国内法により組織的犯罪集団の関与が求められる場合には、締約国は、署名または寄託の際に、自国の国内法が組織的犯罪集団の関与するすべての重大な犯罪を対象としていることを、国際連合事務総長に通知しなければならない(第5条3項)。この通知は、国連薬物犯罪オフィスに行うこととする。

4. その他の措置(任意的事項など)
70. 第5条1項(a)(i)に基づいて、合意の内容を推進するための行為や組織的犯罪集団の関与を必要とする任意的な要件を除き、第5条は任意的な条項を含まない。

71. 最後に、本条約は、締約国が第5条1項(a)の1番目または2番目のいずれかを犯罪として定めることを求めている。締約国は、異なる類型の行為を対象とするために双方の犯罪を導入する可能性を検討してもよい。

5. 参考資料
72. 国内立法の起草者は、下に掲げる参考資料を参照するとよいであろう。

(a) 関連する条項および文書
組織犯罪条約
第2条 (定義)
第10条 (法人の責任)
第11条 (訴追、裁判、および制裁)
第15条 (裁判権)
第26条 (法執行当局との協力を促進するための措置)
第31条 (防止)
第34条 (条約の実施)

(b) 国内立法の例
73. 組織犯罪条約の締約国は、組織的な犯罪集団への参加の犯罪化の問題について様々な方法で対処している。例えば、チリは、(構成員が親族である場合を除き)犯罪組織の活動を当局に通報しないことをも犯罪化している。また、ニュージーランドは、犯罪組織の構成員となることではなく、その活動を故意に促進または推進することを犯罪化している。

74. コロンビア、エクアドル、ドイツ、ウルグアイ、ベネズエラなどの多くの国では、種々の方法で犯罪組織を支援または資金的援助することに関して特定の犯罪を規定している。以下のような個人を対象としている例もある:武器または弾薬を組織に供与した者(コロンビア、エクアドル、ハイチ、ハンガリー、パラグアイ、ウルグアイ、ベネズエラなど)、犯罪の道具を供与した者(ハイチなど)、会合の場所を提供した者(エクアドルなど)、その他の便宜を与えた者(エクアドル、パラグアイなど)。犯罪組織に関与した者が処罰を免れるのを助ける行為が直接犯罪化される場合もある(ウルグアイなど)。そのような犯罪の場合には、近親者、配偶者またはその他の親類のために、いくつかの例外が設けられることが多い(チリ、ベネズエラなど)。比較的大きな組織への参加が加重事情とみなされている国もある(イタリア、ウルグアイなど)。

75. 証拠の問題について、例えばニュージーランドでは、ある個人が、特定の集団が犯罪集団であるという警告を2回以上受けたという証拠は、その集団が犯罪集団であることを当該個人が知っていたことの充分な証拠になると法律に規定されている。

76. 組織犯罪条約第5条の規定について立法を準備している締約国は、特に以下に掲げる立法などの資料をさらに参照するとよいであろう。 (小林しおり仮訳)




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