捕獲されたホトケドジョウ
先週、「駆け込み電話」があった。東京都東久留米市を流れる落合川の河川整備工事で、絶滅危惧種に指定されているホトケドジョウをはじめとした魚類が豊かに棲息する生態系が壊される寸前だというのだ。私が公共事業チェック議員の会の事務局長をつとめていることもあって、地元で開発に反対する「落合川の小渓谷を保全する会」からの急な要請だった。準備期間がないので、議員の会のメンバーには資料を送付して呼びかけて、昨日ひとりで出かけた。
市立図書館視聴覚室で山口久福会長から、ニュース番組で取り上げられた「ホトケドジョウ危機」のビデオを見て、説明を聞いた。説明を聞けば聞くほど、すでに事態は最悪の段階に来ていることがわかった。東京都の行なっている工事は、落合川の曲がっている部分を直線化している。すでに、直線化した新河川は出来上がっている。問題は、曲がっていた部分が人の手が入らない小渓谷であり、豊富な湧水がふんだんにあって、平均水温が18度とホトケドジョウなど稀少な生物の王国だったというところにある。東京都の工事計画は、この小渓谷をすべて埋め立ててしまうという乱暴なものだった。
ホトケドジョウをめぐる熱い議論が巻き起こった。ところが、残念なことに最終段階を迎えているのが実態だった。まず、小渓谷の半分の埋め立て工事は始まっていて、そこに棲息していたホトケドジョウは900匹捕獲されて、落合川の下流に移されていた。そして、昨日の朝10時から残り半分の小渓谷に東京都職員や地元の自然保護ボランティアが入り、「第2次捕獲作戦」が行なわれるというのだ。現場に近づいてみると、すでに30人が大きな網を持って「捕獲」作戦を行なっているところだった。
私は東京都の工事責任者に面会を求め、ロープが貼られた「捕獲作戦」の内部を見ることにした。すでに、1時間ほどで100匹近いホトケドジョウが水槽に入っている。アブラハヤ、タカハヤ、ギバチ、ジュズカケハゼなど狭いこの小川のような小渓谷に、棲息している魚の数は多い。
1日かけて「捕獲終了」してしまったら、1ヶ月ほどの準備期間をおいてこの小渓谷の半分は埋め立てられ、そして半分はコンクリートの水路状の変わり果てた姿になる。

東京都の職員に聞いた。「埋め立てるというが、護岸工事をしっかりした上でこの素晴らしい渓谷を残すという技術はないのか。もっと知恵を出すべきではないか」と切り出すと、「なかなか難しいんです。私たちも複雑な気持ちでいます。ただ護岸工事をするためには、通路を通さなければなりません。すると、この川は狭すぎて通路がつくれないんです」と語った。この工事に反対する山口会長は、「直線になった川があるから、ここは川でなく池として残せばいいんです。これだけ豊かな自然を潰すようなことがあってはいけない」と主張する。
これから1ヶ月。東京に残された自然豊かな渓谷を潰すのか否か、私たち自身が問われていることになる。
詳しい写真と記事→「東京都『ホトケドジョウ』を強制収容」8月26日JANJAN)

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