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4月22日のUS-VISITとJAPAN-VISITを結ぶ入管生体情報―このブログにアメリカの指紋・顔写真採取システム「US-VISIT」を運営するアクセンチュア社が、日本版「US-VISIT=JAPAN-VISIT」を手がけていることが判明したことを記すと静かだが、大きな反響をいただいた。これは、4月21日の衆議院法務委員会で質疑した後に書いたものだった。衆議院のHPに議事録がupされるのを待っていたが、昨日ようやく公開されたので、この問題に関心の深い方に該当部分だけ紹介することにしたい。(初めて読まれる方は、4月22日の本ブログを読んでからじっくり議事録を読んでいただきたい)

○保坂(展)委員 ここの委員会の議論は我々もっと続けたいと思いながら通ってしまった法案なんですが、その際に河野副大臣と、レガシーシステムの見直しについて、議論をさせていただきました。社会保険庁のオンラインシステム(のように)一兆円を見込んでいるという規模ではありませんけれども、入管のレガシー、日立の設計と運営ということですけれども、刷新可能性調査がなされたということでございます。この調査を引き受けられた会社はどちらの会社かという非常に簡単な質問で恐縮ですが、どちらでありましょうか。

○河野副大臣 株式会社アクセンチュアと承知しております。

○保坂(展)委員 これは、入管の『刷新可能性調査報告書』ということが法務省のホームページでも明らかになっていると思います。明らかになって公開されているわけですが、また、現在、四月末に提案される最適化計画というシステム企画、これもアクセンチュアが受けて作成中で、四月中ぐらいに内容が固まってくる、こういうふうに聞いておりますけれども、これは何を頼んでいらっしゃるのか、その四月中にまとまるという中身は、一体どういう中身なのか。

○河野副大臣 出入国管理業務の業務・システム最適化計画というものを策定することになってございます。

このポイントは、今の現行のレガシーシステムと言われているシステムから次世代のオープンシステムへ刷新をする、そのために必要となる共通基盤はどういうものであるのかということを考える、あるいは情報システム管理体制の強化ということを考えたいと思っております。

それからもう一つの柱は、テロ、犯罪、不法滞在を防止するためにバイオを使ったテロ対策関係のシステムを入れることになっておりますが、その関係についても触れてもらうことになっております。

それから、電子申請でございますが、在留許可の諸手続を電子化、あるいはインターネットを活用した情報提供機能の充実、あるいはコールセンターの設置、そうした対応体制の拡充についてでございます。

 それから四つ目の柱が、情報収集、分析の関係で、情報共有化の促進、インテリジェンス機能の充実強化、位置情報システムを活用した実態調査及び違反調査業務の効率化、こうしたことに関して報告をしたいと思っております。

○保坂(展)委員 ありがとうございました。

 こちらの各委員席の方にも資料でお配りをしておりますけれども、「低入札価格調査の概要」、こういうペーパーがございました。これは、我々が先日審議をした自動化ゲートなど、バイオメトリクスを活用したIC旅券に対応するため、また、認証装置及び自動化ゲートシステムに対するソフトウエア開発、実証実験などを行う契約であった。これが何と十万円。これはいかにも安いということで、これは法務省大臣官房会計課入札室において聴取が行われたようであります。これはどうだったのかということをお答えできますか。

○河野副大臣 法務省では、会計に関する法令の規定に基づきまして、予定価格が一千万円を超える工事または製造その他の請負契約の競争入札に際して、予定価格より一定割合以上安い、要するに一定割合に満たない低価格な入札が行われた場合には、契約の内容に適合した履行がされないおそれがあるということで、それがしっかりできるかどうかを調査することとしてございます。御指摘の案件はそれに当たったわけでございます。

 法務省が落札者に決定した業者、アクセンチュア株式会社でありますが、生体情報認証技術を利用したシステムの設計等に関するノウハウを有しており、特に国土安全保障の領域において今後他の潜在顧客を開拓するなどのため、経営戦略の一環として本件について戦略的な入札価格をもって応札したものであって、契約の内容に適合した履行が可能であると判断し、落札者と決定いたしました。

○保坂(展)委員 十万円というのはちょっと納得できないんですが。

 では、入管局長に伺いますけれども、このアクセンチュアという会社、今、河野副大臣の答弁のように、経験がある、(海外で)やってきたノウハウの蓄積があるとこれに書いてありますよね。どういう経験がある会社なんですか。

○三浦政府参考人 お答え申し上げます。

 アクセンチュアにつきましては、入管のシステム関係では、レガシーの刷新可能性の調査、先ほど委員からも御指摘ございました、これについてアクセンチュアが担当しております。また、最適化計画……(保坂(展)委員「そうじゃなくて、海外でやったことがあるのでと書いてある」と呼ぶ)

 失礼しました。質問の趣旨をちょっと取り違えました。

 アメリカでUS―VISITという指紋等の採取システムが行われておりますが、これらの管理もこのアクセンチュアがやっておるというふうに承知しております。

○保坂(展)委員 入管局長、契約は公正になされなければいけないということをこの通常国会で重ね重ね申し上げてまいりましたけれども、この最適化計画、よろしいですか、まだレポートが出ていない最適化計画、先ほど河野副大臣にお答えいただきましたが、この中に、昨年の六月二十四日に、これは約一億円でしょうか、九千四百九十二万円の契約で締結をしていますね、アクセンチュアと最適化計画。

 それについて内容を先ほど言っていただいたんですが、その中身を見ますと、何をやるかということの中にこうあるんですよ。「入国管理局の情報管理室並びに、IC旅券認証システム試行運行及び自動化ゲートシステムの実証実験の委託業者に対して、適宜助言を行う」と。助言を行ったら自分になってしまったという話ですよ。これはどういうことですか。実際、この九千万円に含まれていたんじゃないのか、十万円なんという金額で落札するということは。

○三浦政府参考人 御質問の趣旨が十分理解できないのであれでございますが、要するに、アクセンチュアは今御指摘の契約でございますと、最適化計画を行うに際して、どのような観点から行ったらよいかということを検討していただいたということでありまして、実際にこれを最適化、実施に当たっては、また別の業者がこれを実施するということになると思います。

○保坂(展)委員 河野副大臣に伺いますが、私が言っているのは、先ほど内容を答弁していただいた、昨年六月の最適化計画の中身で、アクセンチュアの方にやらせること、あるいはやることとして、自動化ゲートのシステムなどについて受託業者に対して適宜助言を行うとあるんですよ。それを含めて約一億円の契約が成り立っている。ところが、その数カ月後に十万円でこの契約がなされる。これはどうでしょうか。

○河野副大臣 日本のシステムを受注するということは、これからこのシステムが海外に広がるわけでありますから、同じような出入国のバイオを使ったシステムを導入しようという国はたくさんあるわけですから、そういう中で、日本のシステムのプロトタイプの実験をやっていますよというのは多分、営業戦略上、非常に有利になる。そういう判断をされた企業がたくさんあるんだと思うんですね。といいますのは、アクセンチュアが確かに最低価格でございますが、その次の価格も十万の単位で入札をされていたというふうに私は承知をしております。

 つまり、このプロトタイプの業務を落札して日本政府の実証実験に参加していますよということは、これからやろうとしている東南アジア各国の政府に対してその企業が信頼をかち得るだろう、いわばそういうための投資をしようと思っていた企業が何社かあってもおかしくはないと思います。

○保坂(展)委員 入管局長に伺いますが、そうすると、レガシーシステムの改変のためにこういった刷新可能性調査報告書を出した後、最適化計画を出し、そしてまた自動化ゲートやバイオの認証の実験を十万円でやって、着々と実務的な準備をアクセンチュアは進めているんですが、この提案は基本的に了としてこちらの方に移行しようとしているんですか。そこだけ答えてください。

○三浦政府参考人 お尋ねの点でございますけれども、現行の出入国管理システムの開発、運用に直接関与していない第三者にシステムの刷新可能性の調査を委託したわけでございます。新たなシステムへの移行を行った場合に、安全性ですとか信頼性を損なうことなく、効率性、経済性及び利便性を向上させて、かつトータルコストを下げるということが期待されるかどうかということを検討したわけでございます。

 その結果、出入国管理業務につきまして、今後さらに量的な増加ですとか質的な複雑化、多様化が見込まれる中で、現行システムを維持していくことは費用対効果やパフォーマンスの点で問題がある、競争原理が十分に機能するオープン系のシステムを新たに構築してコスト削減に努めるとともに、戦略的IT投資によってバイオメトリックスなどの最新技術を取り入れて、テロリストや犯罪者の入国を防止するための厳格な審査と外国人旅行者の円滑な受け入れという多角的な政策目的の実現に寄与するためのシステム構築を推奨する、こういう報告がなされたわけでございます。

 これに基づきまして、実際にこれを実施するに当たりましては、また全く別の観点から別の業者等に依頼をするということになるかと思います。この延長線上にあるというわけではございません。実際のバイオメトリックスの関係については、またこれと別建ての話でございます。

○保坂(展)委員 入管局長に伺いますが、先ほどちょっと、アクセンチュアの方が十万円でこれを受けられたということは、海外における経験というのは、US―VISIT、アメリカにおける入管システム、これは一兆円を上回る額で受注をされているようですが、この経験があったからだ、こういうふうに聞きました。

 それでは、US―VISITと今準備されようとしている日本版のシステムの同一点と相違点をお答えいただきたいと思います。

○三浦政府参考人 我が国でのシステムにつきましては、今、国会の御審議をいただいている最中でございますので、最終的にこれが確定した上で詳細を詰めることになるわけでございますので、細かい点について比較というのはなかなか難しいわけでございますが、今我々が想定している範囲内で申し上げます。

 アメリカのUS―VISITと、我々の想定している我が国の将来のシステムの共通点として考えられるものは、空港や海港の上陸審査において外国人の入国者から指紋と顔の電子情報、個人識別情報の提供を受ける、これを、入管当局が保管しております、または関係機関から提供のありましたいわゆる要注意人物のデータと照合をしまして、その結果によって入国させるかどうかということを判断する。こういう点におきましては米国のUS―VISITシステムとほぼ同じでございます。

 他方、米国のUS―VISITシステムにおきましては、上陸審査段階のみならず、その前段階のいわゆる査証の審査の際に申請者から指紋情報を取得しまして、これを本国に送信して要注意人物のリストと照合しているというふうに承知しております。この点につきましては、我が国では今のところ想定はしておりません。

○保坂(展)委員 十万円での低価格の調査もされたということ、そしてアメリカ大使館のホームページを見ると、こういった生体情報の交換等を外交努力等によって行っていきたいと書いてあります。この点については、引き続き、重大な問題ですので問いただしていきたいと思います。

 時間になったので、終わります。(2006年4月21日衆議院法務委員会)

会議録で私の発言で意味が通りにくいところは、カッコ内に書き込んだ箇所がある。議事録を読み直すと、私の発言にも、文法的にすっとんでいるところや、やや丁寧語が過剰なような部分もあって、気恥ずかしいがお許しいただきたい。答弁者の河野太郎副大臣は、きわめて明快でごまかしのない答弁で、入管局長がとぼけた答弁をしている上を「10万円入札は、今後のビジネスを東アジア諸国に展開するにあたって信頼を勝ち得るための投資」として位置づけている。

この質問の後に、共謀罪の趣旨説明が強行され議場は騒然とする。私たちの社会がどこへ向かおうとしているのか、入管システムの議論をしていたら「電子政府」をめざそうとする政府の歩みの奥深くを探索していかなければならないと痛感している。この問題では、福島みずほ党首も日記(5月2日)にコメントを書いている。

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