あと2年で裁判員制度が始まる。衆議院選挙の有権者名簿の中で、国民からくじで選ばれるた裁判員候補者は、「70歳以上」 「地方自治体の議員(会期中に限る)」 「学生や生徒(通信制の場合等は除く) 」「過去5年間に裁判員を経験」「重い病気」 「親族の介護・養育」「その他政令(未制定)で定める上記に準ずる事由」以外は、辞退が認められない。その裁判員制度の導入で日本の司法は大きく変わる。ところが、裁判員制度の導入の時には想定さえされていなかった新制度が導入されようとしている。それが「犯罪被害者の法廷参加」だ。
昨日から衆議院法務委員会では「犯罪被害者の法廷参加」のための刑訴法改正案の審議が始まっている。法廷で犯罪被害者は被害者参加人として検察官席の裁判官に近い席に座り、従来認められていた意見陳述に加えて、証人尋問や被告人質問がが出来るようになり、検察官と共に論告求刑も行うという制度だ。
法制審議会の答申が1月に発表された時に大きな衝撃が走った。刑事司法の場が激変するのは間違いない。「裁判員制度」自体にもまだ未消化な課題が山積している。その場に当事者としての犯罪被害者関係者(被害者参加人)が法廷参加し、殺人などの重大事件ではくじで選ばれた6名の裁判員と3人の裁判官の前で2~3日という短期間の裁判で判決を出す。大切な家族を突然の犯罪で失った被害者の立場から、法廷で意見を言いたい、被告にも直接答えてもらいたいという気持ちは十分に判る。しかし、被告人が起訴事実を否認している場合はどうなるのか。裁判員も含めて、事実認定よりも応報感情が先走るという危険はないだろうか。ここで「無罪推定の原則」は貫けるだろうか。
これまでの刑事裁判に比べて、量刑は重くなり、死刑判決も続出するのは想像に難くない。長勢法務大臣がすでに2回の死刑執行を行ってきたことや、その事後反応が鈍っていることを合わせて予想すると、日本は世界の流れに逆行して「死刑大国」への道を歩みだしてしまうのではないか。裁判員制度と被害者法廷参加で5年後には、 「1年間で百人台の死刑確定」「百人の死刑執行」という事態も考えられる。さらに、裁判員制度の発足にあたって最高裁が裁判員候補者に「死刑判決を出すことが出来るか」を質問するかどうかの議論をしていたことも明らかになった。
「あなたも死刑判決の責任が取れますか」ということだろう。
明日から日本の刑事司法にとって、根底的な変化をもたらすことが必須の法案審議が始まる。今日は、国会図書館や弁護士など専門的知識を持つ人々と意見交換し、明日の午後16時5分~45分の40分間の法務委員会の質疑に立つ。
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