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笑えない話がある。6月から施行される改正道路交通法によって導入される駐車違反の民間監視員が導入され、デジカメでパチリと撮影されると即違反となる。これまでは、ミニパトなどで警察官が駐車中の車にチョークで印をつけ、場所にもよるがおおむね30分後に違反と認定している。これまでの「運転手さん、移動して下さい」とマイクで呼びかけることもなくなる。車から離れて買い物をして、7~8分で戻ってきたも民間監視員に撮影されれば、もう「違反ステッカー」を貼られてしまうことになる。

21日の法務委員会で、「駐車違反取り締まり民営化」について聞いた。新聞などで、大手宅配便業者が首都圏のビル街などにサテライトを設けて台車や電動自転車付きのリヤカーを使って対応を練っていると書いてあったので、質問する前日に警察庁にいろいろ聞いてみた。私は、宅配便の車が5分~10分駐車していることの違法性と、社会的経済的に果たしている役割を天秤にかけると、デジカメ瞬間捕捉式駐車違反を杓子定規に適用する弊害の方が大きいと感じていたからだ。議論しているうちに、ふとリヤカーは駐車違反にならないのか? と訊ねてみた。

宅配業者は駐車違反の犠牲になることを避けるために、リヤカーで改正道路交通法を遵守しようといるのだろうから、リヤカーが違反じゃないかどうかは確認しておきたい。意外な答えが返ってきた。「リヤカーは軽車両であり違反になることもありえる」 エッ? という感じだ。今、宅配便業者が検討している電動自転車で牽引するリヤカーは、旧型の大きなものでなく比較的小さなものであるという説明も聞いたが、高層ビルなど配達先が多い所は大きな荷台にしなければならないだろう。

法務委員会のやりとり明らかになった警察庁の見解は、「電動自転車付きリヤカーは軽車両であり、駐車禁止の場所であれば違反となる」「今回導入されるデジカメで撮影する対象とはしない」「道路交通法違反は軽車両であっても成立するが、実際に取り締まるかどうかは別問題」ということだった。つまり、形式上は道路交通法違反となるが、そこまでの取り締まりは考えていないというところだろう。

東京や大阪のビル街を色とりどりのリヤカーが走るのは、「排ガス対策」となっていいという面もあるだろうが、実際に配達する側にとってはたまったものではない。私も20歳頃に1日80個宅配するアルバイトを自家用車で友人と行っていたことがあったが、配達ルートを考えつつ車に荷物を奥から積み込んでいくのは大変な作業だった。もうひとつ、一回出発して配達を終えて二度目に荷積みをするというのも骨が折れた。今回の宅配業者のリヤカーが小さければ、何度もサテライトに戻らなければいけないことになり、労働強化はいちじるしい。タクシーをはじめ、一日中、車を運転している職業ドライバーがトイレに行きたくなった時、公園やビルの前に駐車をして3分後に出てきたら、民間監視員がデジカメを構えていたということもありえるだろう。

「おい、トイレに行ってたんだから、そんな写真とるな」とカメラの前に手をかざしたら交通違反の刑事罰以外に、公務執行妨害(民間監視員はみなし公務員)で逮捕、あるいは罰金刑(50万円以下)を取られるということも起こり得る。いくら何でもやりすぎじゃないのか。こうした懸念に応えるためには、当局は明快なガイドラインを提示し、経済活動を萎縮させないように混乱を回避しなければならないのではらないか。悪質な駐車違反を取り締まることは必要だが、デジカメを片手に道を歩けば違反車両は続々ステッカーを貼られていくことだろう。

より根源的に、都市部に車を進入させない交通政策をとって、安心して徒歩で散策でる街にしようという発想はまるでない。違法駐車に厳しい対応を取るだけでなく、車優先の都市構造も見直すというのであれば「改革」と言えるが、原宿をはじめ、休日の歩行者天国はどんどん廃止されているのだ。警察官代行の民間監視員制度に危惧を感じるが、今後のガイドラインと運用に注目していきたい。





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