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 23日から25日まで、『週刊朝日』の取材で長崎県内のふたつの公共事業「諫早干拓」と「石木ダム」を調査した。詳しくは、来週発売の誌面にゆずるが、強い印象を持ったのは「長崎は政権交代から遠いのか」という点だった。「八ッ場ダム」は、その手法がいささか性急だったかもしれないが、「事業中止」を国土交通大臣は打ち出した。「泡瀬干潟」も、埋め立て事業の中止を示唆しつつ地元沖縄県・沖縄市の判断を待った。福岡高裁那覇支部は、住民勝訴の判決を維持して県・市も上告を断念した。ところが、「諫早干拓」は見直し論議の俎上にもあがらない。まして県営ダム(国の補助ダム)の「石木ダム」は、強制収用の入口となる事業認定を国土交通省に申請した。まるで、あべこべの方向へと走り出しているのである。

 ただ、大型公共事業の見直しをめぐる状況も決して楽観出来るものではない。どうしても慣性の力が強く、元の通りに戻してしまおうという流れも強い。長崎に出発する前は、「国の方は大事業の見直し」という大きな転換がはかられたが長崎はどうなのか」と考えていたが、「国の見直し」にも赤信号がついたのではないか。つい先日、「ダム事業の見直し」を論議する有識者会議の9人が選出されたというニュースが流れたが、ダム容認派が多数を占め、ダム反対派は一人もいないという構成になってしまったという信じがたいニュースが流れてきた。

朝日新聞 2009年11月21日〕

> 脱ダムの治水基準見直し、有識者会議の9人選任 国交相
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 全国のダム事業の見直しを掲げる前原誠司国土交通相は20日、ダムに頼らない新たな治水基準を検討する有識者会議の委員9人を明らかにした。前原国交相は来年度の予算編成にあたり、所管する56のダム事業について再検証するものと継続するものに分けた上で、有識者会議が示す基準をもとに中止する事業を決める方針だ。委員9人の専門分野は、河川工学のほか森林科学、災害心理学、行政法など。座長には、旧建設省ダム水理研究室長で京大工学部長を務めた中川博次・京大名誉教授(水工学)が就く。前原国交相は「できるだけニュートラル(中立)な方を選ばせていただいた」と述べた。

 有識者会議は個別のダム事業を再検証するための評価基準やダムに代わる治水対策の立案手法を来夏までに提示。八ツ場(やんば)ダム(群馬県)を含め、再検証の対象とされた個別のダム事業にあてはめ、最終的に中止するか、継続するかを決める。

 地元の知事の判断を尊重するとしてきた87カ所の道府県が進める補助ダムについて、前原国交相は「新しい考え方が定まれば、ぜひこの考え方を検討、採用してもらいたい」とし、来夏以降、見直しを求める可能性に触れた。
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[引用終了]

有識者会議の各委員について、どのような経歴の面々なのか以下のような情報が入ってきた。急いで、インターネット情報などを総合した情報なので、あるいは重要な経歴が欠けているなどの不備があるかもしれない。しかし、大きなニュースだと思うので、今日の段階の経歴リストを掲示する。

[資料開始]

「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」委員

宇野尚雄  岐阜大名誉教授(地盤工学)

三本木 健治 明海大学名誉教授(行政法) 元・河川局次長  かつては水法の専門家としてよく知られていた。

鈴木 雅一  東京大学大学院農学生命科学研究所教授(森林科学)   昨年の川辺川ダム有識者会議委員。その中ではダムに懐疑的な姿勢を示していた。森林水文学が専門であるが、緑のダムについては積極的な発言はなかった。

田中 淳   東京大学大学院情報学環付属 総合防災情報研究センター長・教授(災害心理学)  中央防災会議の大規模水害対策に関する専門調査会の委員

辻本哲郎  名古屋大学大学院工学研究科教授(河川工学)  国土交通省中部地方整備局方面の学者

◎中川 博次  京都大学名誉教授(水理学)   昨年の京都府の淀川水系河川整備計画技術検討会の座長。この検討会は大戸川ダムは評価しなかったが、川上ダムと天ヶ瀬ダム再開発は推進を主張した。専門は 水工水理、 河川構造物となっている。

道上 正規  鳥取大学名誉教授(土砂水理学)   河川文化についての講演がある。ダム水源地環境整備センター役員

森田 朗    東京大学公共政策大学院教授(公共政策学)   昨年の川辺川ダム熊本県有識者会議の委員。いろいろ述べていたが、結局は川辺川ダムが必要という趣旨であった。

山田 正    中央大学理工学部教授(水工学)   今年10月20日の読売新聞で八ッ場ダム必要論を展開。「近年は予測困難な気象現象が発生しており、それを考慮した治水対策が不可欠だ。長期的には堤防改修も必要だが、当面の費用対効果を考えれば、ダムを含めた治水対策の方が効果的だ。

〔資料終了〕

 完全に国土交通省河川局に丸投げしたのか、「政治主導」の影も見られない。早速、12月3日(木)に下記の要領にて非公開で有識者会議の1回目が開催される。この会議で、「脱ダム」や従来のダム事業の前提だった数字を検証し、「見直し基準」をつくるとすれば、「八ッ場ダム事業再開」という逆流もありえるということを予感させる。おそらく、政権交代の指揮所(政務三役)を棚上げして、旧体制が巻き返しているのだろうが、なぜこのような人選になってしまったのかを検証したい。また、何らかの戦略があって「河川局」に人選をまかせて「推進派」ごと「脱ダム」に転換させるという絵図があるのか。あるといいのだが、大変心配である。その背景と議論の推移に注目していきたい。

[参考資料]

[徳山ダム中止をも止める事務局長ブログ]


                  平成21年11月20日

  「今後の治水対策のあり方に関する有識者会議」について

1.趣旨
  「できるだけダムに頼らない治水」への政策転換を勧めるとの考えに基づき、今後の治水対策についての検討を行う際に必要となる、幅広い治水対策案の立案手法、新たな評価軸及び総合的な評価の考え方等を検討すると共に、更にこれらを踏まえて今後の治水理念を構築し、提言する。
2.主な検討課題
 (1)幅広い治水対策の立案手法
 (2)新たな評価軸の検討
 (3)総合的な評価の考え方の整理
 (4)今後の治水理念の構築
3.委員
  別紙の通り。なお、座長は、必要があると認めるときは、委員以外のものに対し、会議に出席してその件を述べる又は説明を行うことを求めることができる。
4.第1回会議
 日 時 12月3日〔木〕 18:00~20:00 (予定)
 場 所 中央合同庁舎3号館10階共用B会議室
 その他 ○会議については傍聴不可、カメラ撮りは冒頭のみとします。
      ○会議後、会議の模様を説明します(会見)
      ○議事要旨を、後日、ホームページ上で公開します。
5.スケジュール 
 平成21年秋   有識者会議発足
 平成22年夏頃  有識者会議中間取りまとめ(上記2.(1)~(3))
            引き続き、有識者会議で討議
 平成23年夏頃  有識者会議提言

 <問い合わせ>
  河川局 河川計画課 河川計画調整室長 泊(とまり) 宏
    代表 03(5253)8111 内線 35361
    直通 03(5253)8445




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