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先週の半ば、「東電の大口電気料金の値上げについて、こんな動きがありました」と報告を受けた時に、一瞬で「これはおかしい」と直感、ただちに調査を始め疑問点を抽出、東電を呼んで直接ぶつけた。その後の経過は、3回続きのブログに書いた通り。何とかぎりぎりで、「知らないうちに値上げ受諾」という事業所や自治体が4月1日以降に憤るという事態は回避出来た。世田谷区だけが、東電の提示する条件(契約期間のまま更新日まで現行料金)に乗って1500万円を圧縮したとしても、その情報開示を怠っていたら「フェアでない」という批判を受けても仕方がないと考えた。

今週になって東京新聞が1面で報じた。「3・11」があったとはいえ、東京電力が各社経済部に残している影響力はまだまだ大きく、「これは知っていたけど書かなかった」というメディアがいくつもあったはずだ。ともあれ、テレビが動き出して報道が広がり、21日の枝野経済産業大臣の東電に対しての「指導」につながった。私が懸念していた3月30日までに「値上げのトリック」に気づかずに、何のリアクションもせずに「契約期間以前にかかわらず4月1日からの値上げに了承をいただいたもの」という解釈をされた事業者・自治体が多数出てくる事態は回避された。

ただ、報道が及び腰だったことも、いまだに「東電地域独占」の現実があることと無関係ではない。世田谷区の導入したPPSの人気が高まって導入希望が相次いで供給力をすでにオーバーしていて、すでにパンクしていることもよく知られている。したがって「値上げ」に不同意だった場合に、「それじゃ他社から買って下さい」と契約打ち切りを宣告されたら、他の代替手段がないということが、通常の社会にはありえない「契約期間内の一方的値上げ通告」を生み出している。何より、私や世田谷区役所も含めて「契約期間内の契約変更=値上げ」は、有無も言わさず強制なのだろうと「錯誤」していたことによく現れている。

ここで、もう一度、東京電力の21日付けのホームページを見てみよう。

[引用開始]

平成24年3月21日
お客さま各位
東京電力株式会社

契約電力500キロワット未満のお客さまへのお知らせ


このたびの電気料金値上げのお願いに際しましては、お客さまに多大なご負担をおかけすることとなり、伏してお詫び申し上げます。
さて、契約電力500キロワット未満のお客さまにつきましては、本年2月初旬、当社より「電気需給契約の一部変更についてのお願い」(以下、「お願い文書」と略)を郵送させていただきましたが、契約期間と値上げ実施日について、数多くのお問い合わせを頂戴しております。
つきましては、下記のとおり改めてご案内させていただきます。


○「お願い文書」には、お客さまごとの電気需給契約のご契約期間を記載しておりますが、当社といたしましては、極めて厳しい経営状況を早期に改善し電気の安定供給を維持するため、そのご契約期間にかかわらず、4月1日以降の値上げにご了承いただくべくお願いさせていただきました。

○しかしながら、値上げの実施日としてお願いした4月1日がご契約期間の途中である場合は、お客さまのご了承なく一方的に電気料金の値上げを行うことはできません。
 こうした中、現在、値上げのご了承をいただくため、電話等によりお客さまのご意向の確認を進めておりますが、契約期間と値上げ実施日について充分お伝えできていないケースが見られることから、当社がお客さまの明確なご了承を確認できない限り、それぞれのご契約期間満了まで現在のご契約内容(電気料金単価)を継続させていただくことといたしました。なお、この場合、ご契約期間満了後の値上げにつきまして、何卒ご理解を賜りますようお願い申し上げます。

○このたびは、当社のご説明が至らず、誠に申し訳ございませんでした。
上記内容は、別紙イメージ図でもご説明しておりますので、併せてご高覧いただけますと幸いに存じます。

[引用終了]

 この太字のところがポイントである。メディアは「世田谷区が東電の値上げを拒否」と伝えられたが、上記の東電の文書を見ると、世田谷区は「契約期間通りに契約を順守してほしい」という意志を伝えたもので、「契約期間の途中変更、無返答でも値上げ了承」という東電側のスキームの方が「例外」であることがわかる。先週、16日に東電の責任者と話してみてわかったが、自由化市場の契約でありながら、東電との間に「契約書」は存在していない。単なる「申し込み書」があり区長名が書いてあるだけ。「契約期間中なのに、途中で契約変更して値上げが出来る法令上の根拠は?」と訪ねると、「約款にあります」という。どういう内容なのかと問うと「それぞれ協議をするとあります」との答え。その協議が「お手紙」で、返答が「無返答は了承」というのが協議の結論だという解釈だということも判明した。

 旧知の大手企業の社長室長から電話があった。「うちは3月25日が契約更新日なんだよ。この場合は、現行料金で契約出来るだろうと交渉しているんだが」ということだった。今回のことも大きな目で言えば、電力会社の地域独占を崩し、事実上の自由化に向かうエピソードとなるのかもしれない。同時に世田谷区では、この夏に予想される「節電」への取り組みで、東京電力23区内のリアルタイムの電力情報開示を要求している。昨年は、度重なる交渉によって前日の1時間ごとの電力供給実績表を東電からメール送信してもらって、区のホームページで公開してきた。電力供給の逼迫時に、使用者の側で「危機回避」をするシステムを構築するのが狙いだ。

 また、いっそうの「節電」、しかも効率的で巧みな節電に向けての準備も始めていきたい。

 

 

 



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