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耐震偽装問題の捜査が、来週から月末にかけて急進展しようとしている。警視庁ほか合同捜査本部の一斉捜索から3か月、「事件」の決着と「問題」の解決は、まったく違うとういことを確認しておかなければならない。ジャーナリストの魚住昭氏が、月刊『現代』の5月号に「追及耐震偽装問題・霞が関の面相と悪知恵」という優れたルポルタージュを書いている。週明けから始まる騒ぎの前に、昨年来、考え続けてきた耐震偽装問題の「捜査対象となった事件」を追うだけでは見えないいくつかの疑問を記しておきたい。

まず、第1の疑問は姉歯元一級建築士の最初偽装物件は、「グランドステージ池上」(昨年12月の証人喚問での姉歯証言)ではないのではないかという点だ。国土交通省に何度問いただしても歯切れが悪い。実は、国土交通省自身が姉歯元建築士による偽装物件の一覧表に掲載している物件に、川崎市のAマンションがある。グランドステージ池上よりも、建築確認申請が降りた時期は早い。しかも偽装も確認されていて、設計・施工は平成設計・木村建設ではない。「グランドステージ池上」から偽装が始まったのであれば、「弱い自分がいた」(姉歯証言)で納得できるが、
別の設計事務所・施工業者で偽装物件が存在したとしたら、姉歯氏自身による物語は覆る。

第2の疑問は、姉歯元建築士の経歴が定かでないことだ。姉歯元建築士の手による物件は国土交通省の調べによると205件だが、90年に2件・(91年~94年無記載)、94年1件、95年2件、96年1件とされていて、全部合わせても7件しかない。これまでは、「偽装なし」とされていた。ところが、95年の姉歯物件のひとつ「御殿場・小山RDF施設」(ゴミ焼却場)の耐震強度が基準値の3割ほどしかないことが判明し、不思議なことに姉歯構造計算書には偽装がなく、この計算書から図面に起こす段階で、強度の低減が行われていたという。『施工したフジタなどの共同事業体は「不手際があった」と説明している』と(静岡新聞3月28日)と報道されているが、この姉歯物件は偶然に発見されたと聞いている。

「立替えをしようとして構造計算書を見たら『姉歯』とあったんで国土交通省に連絡してきたもの」らしい。つまり、公表されていない姉歯物件はこの他にも存在し、空白の期間の姉歯氏はどこかのゼネコンか設計事務所に属して組織の歯車の一部として動いていたのかどうか。ここは、ぜひ知りたいとこである。報道が事実であるとすれば、姉歯物件は構造計算はきちんと出来ていても、図面で手抜きが行われ強度不足の物件があるというになる。姉歯氏が木村建設と出会う前にどのような人脈で、仕事をしていたかぜひ究明しなければならない。

第3の疑問は、魚住さんが書いているように国土交通省の対応に統一した基準がないのではないかという点である。最初の「震度5程度で倒壊の恐れ」は本当に客観的に正しかったのか。「0・5以下は取り壊し・それ以上は補修」という基準は誰が考えたのか。国土交通省が当初適用した「保有水平耐力」の計算で0・85となった新宿のマンションが、「限界耐力法」で再計算すると耐震強度は1以上になったということをどう考えたらいいのか。姉歯物件で住民退避まで先導した国土交通省は、福岡や札幌で同様の基準で厳しく地方自治体に指示を出しているのだろうか。
どうも二重基準があったように思えてならない。

姉歯・耐震偽装とは何だったのか。何度かに分けて連載していきたい。


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