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 「棄てられた年金記録・旧台帳に関する質問主意書の答弁書が8月30日の閣議決定によって送付されてきた。舛添新厚生労働大臣が「年金記録問題」にどう向き合っているのかの試金石となる質問内容だったが、手元に届いた内容は「お粗末」の一言に尽きる。とどのつまり「把握していない」「確認中である」の羅列で重要なことには答えていない。いったい何に答えていないのか、「棄てられた年金記録」旧台帳に関する質問主意書で聞いた質問を提示しながら、答弁書を組み合わせてみることとする。

1.厚生年金保険の被保険者台帳は、戦火を逃れるために各地方庁で保管されていたが、本格的な老齢年金の支給が始まることや記録事務の機械化が行われるようになったことから、各地方庁から中央に一元化したと言われる。この時、中央で集約した被保険者台帳(いわゆる旧台帳)はいくつあったのか。『社会保険25年史』には32,298,151件(317ページ)と書かれている。この数字に間違いはないか。「現存台帳」「喪失台帳」以外に内訳を説明されたい。

(答弁)御指摘の厚生年金保険被保険者台帳(以下、『旧台帳』という)の件数は、32・298・151件である。これは、昭和32年10月1日現在において厚生年金保険の被保険者であった者に係わる「現存台帳」と、昭和32年10月1日現在において厚生年金保険の被保険者の資格を喪失している者に係わる「喪失台帳」の二つに分類される。

2.ところが、社会保険庁が従来、国会に対して説明してきた旧台帳移管分の総数は、3,119万件であった。この集計差の110万件について、社会保険業務センターに保存されていた「被保険者台帳保管業務委託要領」は、「裁定台帳20万件」「農林共済移管分27万件」「廃棄51万件」「その他12万件」と記録している。この集計は、いつ誰が行ったものなのか。「裁定台帳20万件」は廃棄されているのか、保存されているのか。「その他12万件」に分類されている記録は、「私学共済ではないか」という青柳親房社会保険庁運営部長の答弁の裏付けはあるのか。あればその内容を提示してもらいたい。

(答弁)御指摘の集計については、過去に社会保険庁が行なったものであるが、これを行なった担当者に関する記録が保存されておらず、いつ誰が行なったせのなのか、お答えすることは困難である。お尋ねの裁定済台帳の廃棄については、元社会保険庁職員からの聴取を行なうなどにより、現在、その事実関係について確認中であり、また御指摘の答弁については、元社会保険庁職員からの聴取内容を踏まえて行なったものであるか、現在、更に「その他12万件」の内容について確認中である。

3.問題は「廃棄51万件」である。厚生年金保険法28条で「台帳」は被保険者記録として保存が義務づけられている。従って、本来は「台帳の廃棄」などあってはならないことであるが、社会保険業務センターに「廃棄51万件」を裏付ける業務文書は残っているのか。また、これ以外に台帳を廃棄した記録は存在するか。また、「廃棄51万件」と書かれている旧台帳記録は、まとめて棄てられたものなのか、調査・集計期間中にそれぞれ散逸した台帳の総数なのか。
4.社会保険庁は「鋭意調査中」というばかりで、なんら具体的な調査結果を示さないままに現在に至っている。「旧台帳年金記録廃棄問題」について社会保険庁ならびに社会保険業務センターはどのような調査をしたのか。あるいは、他の「記録」問題の処理に追われて手つかずなのか。明らかにしてもらいたい。OBから聞き取りをしたというが、どの年代に在職したOBから、いつ、どのような話を聞いたのか。このヒアリングは継続中なのか、終了したのか明らかにしてもらいたい。

(3~4への答弁)お尋ねの件については、旧台帳の磁気テープ化又はマイクロフィルム化を行なった当時の社会保険庁職員から、当時の事実関係について聴取を行なうなどにより、現在、確認作業を継続している。

5.総務省に設置された年金記録検証委員会の第三回会合(7月4日)に配布された資料「年金記録の事務処理について」の七ページに従来の政府の説明と明らかに異なる記載がある。「台帳の保管状況」という部分に、「被保険者台帳(旧台帳)」について「マイクロフィルム化して業務センターに保管(セキリュティ倉庫)・マイクロフィルム化した元の紙媒体についても一部保管している」と書かれている。この資料は誰が作成したのか。また、ここに書かれているのは、社会保険庁の資料によるとマイクロフィルム化した「一,754万件」についてのみであり、磁気テープ化された「1,365万件」については触れられていない。これはなぜか。
7.年金記録検証委員会での報告資料に上記の記載をしなかった理由は何か。

(5及び7への答弁)御指摘の資料は社会保険庁が作成したものであるが、これはマイクロフィルム化した記録の元の媒体の状況について説明するために作成したものであるため、
磁気テープの元となった台帳については、記載しなかったものである。

6.従来、社会保険庁・社会保険業務センターは、「1,365万件については、全部磁気テープからオンラインに入力されている。また、紙台帳もすべてセキリュティ倉庫に保管している」と説明した。事実か。

(答弁)磁気テープ化した旧台帳の記録は昭和52年までに磁気テープに収録され、現在は社会保険オンラインシステムに収録されていることは事実であるが、紙媒体による被保険者の記録の保管状況については、現在、改めて確認中である。

8.従来、1,754万件のマイクロフィルム化した元の紙媒体は全部廃棄したと厚生労働大臣は答弁している。ところが、この資料には「マイクロフィルム化した元の紙媒体についても一部保存している」と書かれている。どちらが真実なのか。

(答弁)マイクロフィルム化した元の紙媒体は廃棄することとされていたが、その一部の紙媒体は廃棄されず保存されていたものもあることが判明しており、現在、その保管状況について引き続き確認中である。

9.セキリュティ倉庫には、3,119万件の旧台帳記録は存在すると社会保険庁・社会保険業務センターから説明を受けてきた。6月、参議院厚生労働委員会の野党理事とともに視察に入ろうとした時、「第二倉庫に1,754万件のマイクロフィルム化した旧台帳」が保管されていて、第三倉庫に1,365万件の磁気テープ化された紙の旧台帳を保管している」と聞いていた。事実か。
10.セキリュティ倉庫の第二倉庫は、「年金記録」を個票で発注しピックアップできる方式で、また第三倉庫は委託者から指定されたダンボール箱ごと送り出し、使用後に戻す方式で、社会保険業務センターと契約していると聞いた。事実か。

(9~10への答弁)御指摘の第2倉庫には磁気テープの元となった旧台帳を保管しており、社会保険業務センターからの以来に応じ、保管委託業者が個々の旧台帳の検索を行ない、その写しを社会保険業務センターに送付することとする契約になっており、また御指摘の第3倉庫にはマイクロフィルム化した旧台帳を保管しており、社会保険業務センターからの依頼に応じ、保管委託業者が必要なマイクロフィルムが保管されているケースを配送し、使用後に保管委託業者に返却する契約となっている。

11.社会保険業務センターとセキリュティ倉庫との平成18年の契約書によれば、文書等のケースを410×330×310㎜の保管ケースを18,000箱預けている。また、被保険者台帳の保管に関して450×390×150㎜の台帳収容箱を4,373ケース保管している。この契約中、前者に「1,365万件」が含まれており、後者が「1,754万件」を保管していると理解してよいか。


(答弁)御指摘の保管ケースには、磁気テープ及び磁気テープの音となった旧台帳は保管されていない。また御指摘の台帳収容箱には当該旧台帳及び年金額計算書が保管されている。

12.台帳収納箱一箱には、何件分の台帳が入っているのか。そもそも、契約後の保管委託時にセキリュティ倉庫との間で確認した「マイクロフィルム」と「紙」の旧台帳の総数は何件なのか。
(答弁)御指摘のセキュリティ倉庫については保管委託業者にが保有しているが、当該業者との間では、旧台帳の件数ではなく台帳収納箱等の数を確認の上、契約を行なっており、台帳収納箱の数は、4373ケースである。また、台帳収納箱に収納されている旧台帳の件数については、台帳収納箱により異なるものであり一概にお答えできない。なお、台帳収納箱にはマイクロフィルムは収納されていない。

13.村瀬社会保険庁長官は、参議院厚生労働委員会野党筆頭理事に対して、「与党が同意し、同席しない視察では倉庫を見せることは出来ない」と門前払いを行ったが、当時の与野党間で「野党の倉庫視察」は事前に与党も了承・合意していたという事実がある。村瀬長官は、「与党が合意しても与党が同席しなければ倉庫は見せない」と判断した根拠は何か。
14.年金記録に対して不信が高まり、参議院厚生労働委員会の審議中に東京から相当離れたセキリュティ倉庫に議員団が到着した際に、社会保険庁・社会保険業務センターはただひとりの職員すらも配置せず、非礼にも議員団を追い返した。突然に出発した視察団ではなく、当日応対する予定だった社会保険庁会計課の職員の携帯電話や、日程表までが作成されており、いったんは受け入れた倉庫視察を突然にキャンセルしたのは誰なのか。村瀬社会保険庁長官か、柳澤厚生労働大臣の最終判断と考えていいのか。

(13~14への答弁)社会保険庁としては、旧台帳は個人情報を含むものであるため、その安全の確保に万全を期しているところであり、セキュリティ倉庫についても、とくに慎重に対応することか必要であることから、御指摘の視察については、最終的に社会保険庁長官がお断りしたものである。

15.そもそも、東京から遠く離れたセキリュティ倉庫に議員団が出かけたのは、旧台帳の保管状況を視察するためであった。ところが、視察に行ってセキリュティ倉庫のシステムの説明を受けると、三鷹にある社会保険業務センターで旧台帳の保管されている箱を取り寄せて、無作為抽出して100件のオンライン入力の有無を検査することが出来ることが判明した。旧台帳の保管状況は東京で確認出来るのであるが、そのテスト(検査)を社会保険業務センターならびに村瀬社会保険庁長官は頑なに拒否し続けた。1,365万件はすべてオンライン記録に入力されているのなら、その実証を行うことに何のためらいがあるのか。しかも「プライバシーの保護」を理由にあげたが、私たちは住所・氏名を隠してもらい、ディスプレイの表示もカバーして読み取れないようにして、実証してくれと求めたが村瀬長官はこれも拒否した。国会議員の調査をこれほどあからさまに拒み、参議院選挙結果がどうあれその硬直した態度は変わらない。年金記録検証委員会・年金業務・社会保険庁監視委員会からも指摘がある通り、国会議員に対して調査に協力し、事実を明かす用意はないのか。

(答弁)御指摘の対応は、旧台帳は個人情報を含むものであるため、その安全の確保に万全を期した結果であり、お尋ねの点についても行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第58号)を踏まえつつ対応してまいりたい。

16.政府は「宙に浮いた5,000万件」への対策とは別に、そもそもオンラインに入力されていない1,430万件(船員保険36万件は別)について、新たにコンピュータ入力することを明らかにしている。この1,430万件はマイクロフィルムに複写された旧台帳で、比較的使用頻度が低いと判断されて磁気データには入力されてこなかったものだが、先月の調査で社民党はマイクロフィルムの保管状況を視察し、「別人台帳」「事故台帳」というボックスがあることを確認していた。社会保険業務センターによると、「別人台帳は26万件、事故台帳は7万件あります」ということであり、32万件を入力することは出来ても、統合したり本人通知したりすることは出来ない台帳ではないか。これは、マイクロフィルム化された旧台帳のみの数字であり、磁気テープに入力しているはずの1,365万件にも、また別に「別人台帳」「事故台帳」は存在する。しかし、その数が何件であるのかは確定出来ないということで間違いないか。

(答弁)御指摘の「別人台帳」と呼び「事故台帳」は、マイクロフィルム化された32万件のみであり、これらの記録についても、マイクロフィルム化された旧台帳の記録の名寄せに当たって様々な工夫を行なうとともに、社会保険事務所に現存している年金手帳記録番号払出簿の記録も参照し、年金基礎番号への統合を進めることにしている。

17.社会保険業務センターに対して再三説明を求めているのは、マイクロフィルム化したものが1,754万件との公的記録が存在するにもかかわらず、現在も政府・社会保険庁の入力対象は1,430万件となっている。324万件については、「磁気テープにも取り、マイクロにもしたものが324万件あった」と聞いてきたが、これまで年金記録に関する資料を精読してもどこにもその記載がない。何か裏付けとなる資料はあるのか。また、裁定などで逐次磁気テープに入力していったということであれば、3,119万件の総数が変わらないことから、磁気テープ化済1,365万件+324万件=1,689万件・マイクロフィルム1,430万件という記載になるということなのか。

(答弁)御指摘の1754万件の記録は、昭和50年から52年までの間にマイクロフィルム化した旧台帳の総数である。一方、御指摘の1430万件は、昭和62年3月時点においてマイクロフィルムのみで菅多されていた旧台帳の総数である。この差である324万件については、社会保険庁において磁気テープ化を行なったものである。

18.社会保険業務センターの内部マニュアル『旧台帳(昭和32年10月前の記録)関係事故分の取扱について(指示書)昭和54年8月7日企画管理』によると、旧台帳3,200万件のうち、1,300万件の磁気テープ化を昭和41年から47年にかけて行っている。

「上記の処理によって発生した事故は74万件
課内補正処理済分 42万件 課内補正処理不能分 32万件」

とある。(資料3)また、「生年月日相違分」が21万件であり、「取得記録漏れ6万件」「喪失記録漏れ5万件」(計11万件)とある。こうした旧台帳事故分が、その後どのように処理されたのか、統合出来たのか、不明のままに放置されているのか。処理されたのであればその記録の概要を明らかにされたい。

(答弁)御指摘の74万件のデータについては、旧台帳や被保険者名簿の確認により、記録内容の補正を行なった上で磁気テープ化する取扱としていたものであり、そのように処理されたものとして認識している。

19.以上、「年金記録」についての疑問の一部を文書で提示した。政府が国民に、「最後のひとりまできちんとやります」と約束したからには、年金記録問題の歴史をひもとき社会保険業務センター内の「秘密」指定の文書も開示して、混乱を招いた記録管理の全容を明らかにすることは与野党を超えて政治の場にいる者の使命だと考える。これまで何度ヒアリングしても、社会保険庁・社会保険業務センターから、事態を積極的に解明するために作成された一枚の説明文書も受領したことはない。総務省のホームページに掲載されている資料さえ、私たちが気づかなければその提示の事実を語らない。おそろしい隠蔽体質を打破するために、私たちの旧台帳年金記録の調査に内閣としてどのような姿勢をとるのか、明らかにされたい。

(答弁)政府としては、平成19年7月5日に年金業務刷新に関する政府・与党連絡協議会において取りまとめた「年金記録に対する信頼の回復と新たな年金記録管理体制の確立について」に基づき、マイクロフィルムにより保管されている御指摘の旧台帳の記録についても、その内容を解明して公表することとしている。




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