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壇上から訴える読谷高校3年生、照屋奈津美・津嘉山拡大さん

すさまじい数の人だった。昨日、沖縄県宜野湾市で開催された「教科書検定意見撤回を求める県民大会」は、沖縄県内から続々と人が集まって同じ海浜公園で95年に開かれた少女暴行事件への抗議集会の8万5千人を大きく上回り、主催者発表で12万人を結集した一大集会となった。沖縄全島をあげて、保革を問わぬ超党派のこの大きなうねりは、週明けからの福田政権を大きく揺るがすのは間違いのない事態となった。灼熱の太陽が照りつける中で、3時から4時半まで壇上に政党代表として登り、直接民主主義のたしかな力をまざまざと感じた。集会は、従来の平和運動・労働組合・市民団体は無論のこと、県・市町村をあげての呼びかけ・協力・参加となった。仲井真知事も、「集団自決の日本軍の関与似ついては、当時の教育を含む時代状況の総合的な背景や手榴弾が配られるなどの証言から覆い隠すことの出来ない事実」と述べ、教科書の「軍隊による強制」の削除に抗議し、記述を復活させることを求める発言が続いた。

(会場に向う飛行機の中でのメモ)

 安倍政権は「戦後レジームからの脱却」という野望を持って生まれた政権だった。長期目標を「改憲」に定め、短期目標を「教育基本法改正」を突破口とした「教育改革」と「防衛省昇格と集団的自衛権容認」に絞り込んだ。そのために、教科書の記述に手を入れ始めた。2007年3月30日、文部科学省は教科書検定の結果を公表し、5社7冊の高校歴史教科書の記述から沖縄戦における「集団自決への軍の関与」を否定する修正の検定意見によって、これまでの記述が削除・変更されたということが伝えられた。沖縄では激しく抗議の声が巻き起こり、県下の市町村で次々と「検定意見の撤回と記述の回復を求める意見書」が全会一致で採択され、6月と7月に二度にわたって沖縄県議会も全会一致で「意見書」を採択している。

 今日は1995年の少女暴行事件に対しての抗議集会以来、最大規模になるだろうと言われている県民大会に参加するために早朝の飛行機に乗り込んだ。事前の話では、県の教育長自身が学校関係者に集会参加を呼びかけ、各市町村からも自治体のバスが会場に向うという「島ぐるみ」運動となっていて、5万人を超える人々が結集すると言われている。文部科学委員会でこの問題の追及にあたってきた経過もあり、是非その会場の熱気を共有したいと思ったからだ。

 さらに、「軍命削除」という教科書への介入は、安倍内閣の中枢である「チーム安倍」のやりかけた「歴史捏造」の最初の一歩だった。文部科学委員会で問題にすると、「大江健三郎氏と岩波書店」を相手取って当時の慶良間諸島座間味島の戦闘隊長だった梅澤裕元少佐と渡嘉敷島の戦隊長だった赤松元大尉の実弟が原告となり提訴した訴訟が、この検定意見の唯一の根拠となったという。この訴訟を「沖縄戦集団自決冤罪訴訟」と呼ぶ人々が支援していて、もともと自民党内の青年将校として「教科書の記述」を槍玉にあげていた安倍総理もふくめた「チーム安倍」の歴史観とぴったり合致して、何の調査も議論もなく教科書の記述は変えられた。文部科学省がこの問題で記者団に配布した「集団自決問題」の文献リストの中に、「沖縄戦集団自決冤罪訴訟」という表記があったことを私たちは問題にした。

 冤罪とは、刑事事件で無実の人が「犯罪を実行した」との予断・決めつけのもとに捜査対象・被疑者になったり、逮捕・拘留され、有罪判決を受けて刑事罰を課されることを言う。従ってこの訴訟を「冤罪訴訟」と呼ぶこと自体が適当ではないが、提訴してまだ審理も始まっていないうちに文部科学省が、この裁判を記者配布資料で「冤罪訴訟」という表記で書いた意味は大きい。文部科学省は、司法判断の結果をまたずに梅澤裕元少佐ら原告側に与していることを意味するし、同時に「軍命削除」の検定意見をつけたこと事態に、文部科学省の意図を感じる。伊吹文部科学大臣は、この点は「問題があり間違っていた」と文部科学省の非を認めたが、「検定意見の撤回と記述の回復」に関しては、「たとえ大臣といえども検定内容に政治介入は出来ないのだ」という理屈で拒否し続けた。

 福田総理・渡海文部科学大臣は、この安倍政権の「置き土産」を潔く棄てるのか、後生大事に抱え込むのかという選択を迫られる。「検定意見の撤回と記述の回復を認めない」という姿勢を貫けば、「沖縄の島ぐるみ運動」を無視し続けることになる。臨時国会冒頭に、福田政権が回答しなければならないのは、この教科書問題だ。

(9月29日・沖縄行きの機内にて)



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