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安全と絵表示———とっさの時の命綱

2021-06-05 | 安全、安心、
「安全・安心の心理学」新曜社

安全と絵表示———とっさの時の命綱

●絵表示花盛り
 日本では、1964年の東京オリンピックを機会に、絵表示(icon)による案内が一気に充実した。言うまでもなく、そのねらいは、言語に依存しないコミュニケーションである。
 一般に、一つの絵表示が良い絵表示である、というとき,その良さを構成しているものには4つある。
 1つは、よく見えること(視認性)。
 絵表示は、狭い領域に描かれることが多い。絵の細部が見えないことがある。しかも、絵表示は、文字を読む時より遠くから見られる。したがって、細部の表示を捨てて、マクロな表示をすることになる。
 2つは、目を引き付けること(誘目性)。
 とりわけ、道路などでは、周囲の雑多な情報環境の中でも目につくようにする必要がある。色や大きさや掲載場所などを工夫して黙っていても注意を引き付けられるようにする。
 3つは、美しいこと(審美性)。
 目立つものが不快な感情を与えてしまうようでは困る。見る人の気持ちを豊かにするような芸術性のある絵表示であることも大事である。
 
 この3つは、人の知覚、感性レベルでの絵表示の良さの要件である。
 これに加えて、絵表示は、一目でわかること(理解容易性)も大事な要件になる。これが、4つ目の認知レベルの要件になる。以下、項を改めて、考えてみる。

●絵表示のわかりやすさ
 定義的に言うなら、絵表示のわかりやすさとは、まずは、符号化(頭の中への表示情報の取り込み)が容易であること、ついで、制作者の意図した意味を、容易に誤解なく思い浮かべること(表象化)ができることである。そのためには、基本的な留意点として次ぎの3つがある。
 1)内容の充足性
 ものやことを絵表示として表示するとき、その表示内容がものやことの本質的な情報を十分に描き出しているかどうかである。絵表示が指示するものやことが誤解されるようでは、十分な機能を果たしていないことになる。
 危険表示 図2***を例にとれば、表示内容の充足性とは、「What」と「Why」と「How to」の3つが描かれているかどうかである。
「What」は、「危険、警告、注意」、
「Why」は、「感電、転倒、巻き込まれ」
「How to」は、「近づくな、乗るな」である。
 なお、この例では、言葉も使って表示されているが、絵だけでは伝達効果が不安な場合には、言葉による補助も使うことになるが、言葉はあくまで補助である。
2)適度の具体性
 具象の表示は、得てして、あまりに具体過ぎて、情報ノイズが多くなる。逆に文字や特殊記号などのシンボル表示では、シンボルの約束事についての知識がないと、わからない。具象と抽象の間にある適度の具体性のある表示だと、誰にもわかってもらえる。この表示では、ものやことの特徴(示差的特徴)を際立たせて描かれていることに注目されたい。
 なお、見る人がシンボルの意味を知識として持っていれば、抽象的なシンボル表示は、表示が簡潔になるので、視認性が高くなるし、わかりやすくなる。このように、わかりやすさは、見る人の知識に依存しているところにも注目されたい。
3)同型性
 絵表示には空間的な広がりがあるので、そのイメージ表象にも空間的な広がりがある。空間的な広がりのあるものどうしの照合をするとき、とりわけ大事なのが、空間的な同型性である。絵表示が表す状況の空間的な位置関係は、イメージ表象のそれと一致している必要がある。
さらに、大きさの同型性もある。大きいものは大きく描かないと、イメージ表象との照合がすんなりとはいかない。

●緊急時の絵表示の役割
絵表示が備えるべき要件を述べてきた。絵表示は平常時よりも緊急時にその果たす役割は大きい。
緊急時には情報処理機能が低下する。そんな時に、文字でかかれた指示をじっくりと読んで対応するようなことは期待できない。一目見てするべき事がわからなければ、命を失うことさえある。そこに絵表示が果たす役割がある。
それだけに、前述した理解容易性の3つが極めて大事になる。図4を見てほしい。非常口の指示であるが、これでは、絵と矢印では逃げる方向が反対になり、混乱を起こさせてしまう。同型性違反を犯しているからである。
火災報知器のあり場所とその使い方、避難場所までの案内、電車など、での緊急停車などなど、そのわかりやすさを今一度、点検しておく必要がある。子どもや高齢者にも説明なしにただちにわかってもらえるかが絵表示のわかりやすさのポイントになる。(K)


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