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「技術翻訳のチェックポイント」

2006-10-29 | わかりやすい表現
05/3/2海保

日立テクニカルコミュニケーションズ(株)

    「技術翻訳のチェックポイント」

      丸善株式会社  05/2/21刊行


******************************


     推薦します 

筑波大学大学院教授(心理学)

テクニカルコミュニケーター(TC)協会会長

 海保博之


役に立つ本です

 言うまでもないことですが、現在、英語への翻訳実務に携わっている方々にとって、大変に役立つ本です。

 本書は、日立テクニカル コミュニケーションズ(株)での長年の翻訳経験に基づいて、著者が中心となって作り上げた翻訳評価システムTES(Translation Evaluation System)を解説したものです。わずか27コード(チェックポイント)からなる簡便な評価システムです。明日からでもどこでも誰でもが活用できます。

 企業間競争の激しい昨今、これほどの貴重な情報を外部に公開する日立テクニカル コミュニケーションズ(株)のTC技術向上への使命感には、TC協会会長として非常に感銘を受けています。

 さらに、英語への翻訳力をもう一歩高めたい人、翻訳についての知識を豊富にしたい人にとっても、実に有益な本です。

 27コードのそれぞれについて、どうすれば、そのチェックポイントをクリアできるようになのかが簡潔に解説されています。これを読むことで翻訳についての知識が豊富になります。また、それぞれのコードについて、練習問題とその解答があります。丹念に解答してみることで、翻訳で起こしてしまいがちなミスを防ぐ力がついてきます。おまけに、多数の例文は、ほとんどがテクニカル文章ですので、自然に英文のテクニカル文章に馴染むことができます。


親切な本です

 本書全体が2段組の日英対訳形式になっています。本文はもとより「はじめに」「目次」さらに「索引」まですべてが対訳になっています。「推薦文」まで対訳にしてもらいました!<ーーー????*

 日本語を読みながら気になることを右側の英語でチェックしたり、その逆をしたりすることで、知らず知らずのうちに翻訳力がつきます。

退屈もしません。

 もっと親切なのは、英文の用語と文の平易さです。これなら自分でも英語翻訳ができそうとさえ思わせてしまうようなところがあります。ちなみに、用語と文の平易さは、テクニカルライティングの基本的な執筆原則の一つです。

 さらに、5章には、テクニカルライティング一般の基本原則まで解説してくれてあります。むろん、これも対訳です。

 

お得な本です

 日英翻訳の評価ができて、翻訳力がついて、さらに翻訳の知識が豊かになる本ですが、これ以外にも、2つのお得があります。

 一つは、この本だけに限りませんが、テクニカル文書の書き方についての本は、その本で述べたことが実践できていなければなりません。この本では、それが見事なまでに実践できています。「平易な用語と文」は先程指摘しましたが、構成からメリハリの付け方や箇条書きの使い方、操作手順の書き方などまで、テクニカル文書の書き方の原則が自然に学べます。

 もう一つは、テクニカル文書の翻訳をする現場でのちょっと英語表現も知ることができます。すべてが対訳されていますので、たとえば、「箇条書きにしてください」と英語で指示したい時、どう言えばよいかといったことも知ることができます。

 

広がりのある本です

 本書が、英文マニュアルの開発者や執筆者を対象読者としているのは当然ですが、その世界だけでの活用に限定されるのは、もったいないように思います。

 たとえば、最近、大学でも実用英語を重視するようになってきました。日常会話を大学の教室でもどんどんやるようになってきました。では、実用英語の書き方はどうなっているのでしょうか。そんなところで、この本がテキストに使われたらどういうことが期待できるのでしょうか。

 日本の学生はテクニカルコミュニケーションの世界の存在そのものさえ知りません。こんな世界があることを本書で知るだけでも大変な効果があります。

 おまけに、これくらい平易な英語でよいとの認識を学生が持ってくれれば、もしかして自分でもこの領域で何かできそうだと考えてもらえるかもしれません。そして、ライター予備軍にもなってもらえるかもしれません。

 さらに、日本のあちこちの働く場で外国人の方々が増えて来ました。そうした方々への作業指示や危険表示などで苦労されている方々にも役に立ててもらえることが期待できます。


平成17年1月7日




早くも年末?

2006-10-29 | Weblog
来年の手帳を注文した
カレンダーと同じ日曜はじまりの手帳は
にっかぎれんしか売っていない
昔は、そこで仕事をしたこともあって、
無料で送ってもらっていたがさすがに最近では、1000円
だして購入している

通販からおせち料理の注文受付がきた

税金控除の書類が保険屋から来た

くるま屋さんから来年のカレンダーをもらった

通勤路のゴルフ練習場で電飾が始まった

せめて11月に入ってからにしませんか


スパムと格闘も疲れた

2006-10-29 | 心の体験的日記
@tsu
@jcom
いずれにもスパムが9割
用件メールが埋もれてしまう
うっかり消してしまうこともある

どうか、用件のある方は、下記アドレスをご利用ください
こちらは、ほぼ完璧にスパムを拒否しています

hkaiho@mail.goo.ne.jp

ビジネス力アップのための集中術

2006-10-29 | わかりやすい表現
04/8/23海保 海保博之 筑波大学大学院教授(人間総合科学研究科)
「ビジネス力アップのための集中術」
はじめに
1章 根気を永続きさせるコツ 
1 急激な変化をしない環境を用意する
2 早朝を有効に使う
3 時間を分割する
4 やる内容を分割する
5 初頭効果,終末効果を利用する
6 小刻みに結果をチェックする
7 エサを設定する
8 知的好奇心をたやさない
9 要求水準をコントロールする
10 大きな目標をときどき思い出す
11 むずかしいものにこだわり過ぎない
12 目や耳からの刺激を利用する
13 「ついで主義」を実行する
2章 精神を一点に集めるコツ 
1 余計なものを整理する 2 決まった環境を利用する 3 勉強によって場所を変える 4 集中できそうな時間を決める 5 集中儀式を工夫する 6 最初はじっくりやること 7 予習・復習で知識を活性化する 8 好きなことから始める 9 何かをしたら何かが起こる環境を設計する 10 注意をそらされるものに注意を向けてしまう 11 一点集中のしすぎに注意する 12 「負の世界」に集中しない 13 持続力と一点集中力とから自分のタイプを知る

3章 周囲の雑音にびくともしないコツ 1 環境に馴れれば気も散らない 2 周囲の刺激と親しむ 3 人間関係を良好にしておく 4 悪環境を逆利用する 5 雑用の効用を知る 6 情報管理を工夫する 7 情報に流されないようにする 8 情報を選択する 9 「とらわれ」ない 10 「ながら族」も捨てがたい

4章 瞬発力を発揮するためのコツ
1 一人になる 2 徹底してリラックスする 3 別のことにも集中してみる 4 リラックスの仕方を工夫する 5 少しずつ調子を上げていく 6 集中してリラックスする 7 開き直って無我の境地に入る 8 遊び上手になる 9 ユーモアやジョークを活用する 10 あがりを利用する 11 ことばによる気合いを利用する 12 自分自身を追いつめる 13 一心にそのことだけを考える 14 生活のある部分で禁欲する 15 メンタルリハーサルを活用する 16 うまくいった時のことを思い出す

5章  知的パワーを充実させるコツ
1 問題意識なくして発想なし 2 集中すると意外な発想が生まれてくる 3 九の集中と一の弛緩を繰り返す 4 棚上げ効果を利用する 5 頭の中だけでこねまわす 6 会話の中からヒントをつかむ 7 頭の中と外のやりとりを活発にする 8 からだを動かす 9 集中思考のとらわれに気をつける 10 データ集めは拡散・集中で 11 連想を使う

6章 うっかりミスを防ぐコツ
1 注意の管理力を高めてうっかりミスを防ぐ 2 失敗しそうなところでは、そのことをわからせる 3 思い出す手がかりを豊富にしておく 4 同時にいくつもの仕事をしない 5 管理用の注意を用意する 6 頭の中での情報処理のくせに逆らわない 7 確認を確実にする 8 感情を安定させる


映像アップ、皆様のブログにはどのようになっていますか?

2006-10-29 | Weblog
自分で自分のブログをあけると、
映像は、下のプレビューのところにしか
出てきません
この欄にもっと大きく載せたいのですが?
しばらく試行錯誤が続きますが
ご勘弁ください

意味もわからずにやっているから
こういうことになるのは承知のうえだが、
歯が立たない

コミュニケーションの7つの特性

2006-10-29 | Weblog
04/5/31海保
長いプロローグ----コミュニケーションの7つの特性

特性その1「コミュニケーションは、自己表現なり」
特性その2「コミュニケーションは、知情意すべてがかかわる」

特性その2「コミュニケーションの目的は、指示、説明、説得の3つである」  

特性その3「コミュニケーションは、言葉・絵とジュスチャーでおこなう」
    発話とパラ言語

特性その4「コミュニケーションは、行ったり来たりが原則」




特性その6「コミュニケーションでは、正確かつ充分な情報を提供することが第一義」

特性その7「コミュニケーションは、場の力による影響を受ける」

********************************************************

特性その1「コミュニケーションは、自己表現なり」
一口にコミュニケーションといっても、そのねらいも形態もさまざまです。これからそのありさまをみていくことになりますが、まず最初に確認しておきたいことは、コミュニケーションの根底にはは自分(自己)があるということです。
 ちょっとした挨拶でも、いやちょっとした挨拶だからこそ、そこにあなた(自己)が出ます。やる気まんまんなら、挨拶する声には自然に張りがでます。沈んだあなたなら、自然と力のない挨拶になります。
 生まれたばかりの赤ん坊にも自己表現があります。泣いたり笑ったり、あるいはからだを動かしたりして、盛んに自己---まだ生理的な欲求だけですが---を表現します。
 もちろん、ある場面では、自己を極力抑えたコミュニケーションが求められることもあります。しかし、それは、一時的な方便に過ぎません。
 自己なきコミュニケーションは、主食のない夕食のようなものです。

特性その2「コミュニケーションには気持ちが大事」
 自己表現と言うときの自己には、気持ちもありますし、思いもあります、さらに、信念や態度もあります。あなたの知情意すべてがコミュニケーションの発信元です。
 コミュニケーションというとすぐにイメージするのは、言葉を使った会話だと思います。言葉が使われるためか、コミュニケーションは「知的」なほうにバイアスがかかってイメージされがちです。
 しかし、日常的な場面でのコミュニケーションを考えてみると、意外に、好き嫌いなどの気持ちのコミュニケーションが多いことに気がつくと思います。言葉こそ使いますが、およそ知的とは無関係のコミュニケーションです。
 たとえば、企画会議でのプレゼンテーションを考えてみてください。どうしてもその企画を実現したいとの強い気持ちがあれば、聞いている人へのインパクトはかなり強いものになるはずです。
 あるいは、こんな話もあります。
 継母が子どもに自分の本当の気持ちを悟られるのを恐れて、いつも、言葉では「かわいい」「好き」と言っているが、いっこうに子どもには通用しないというようなケースです。
 気持ちの入らないコミュニケーションは、ワサビ抜きの寿司のようなものです。。

特性その3「コミュニケーションのメディアは、多彩」
 コミュニケーションのメディア(仲介物)には2種類あります。
 一つは、自分の言葉、身体、表情です。これらがメディアであるのは、コミュニケーションしたいことを外に出す道具だからです。「うれしい」という気持ちを「うれしい」と言葉で表現することも、全身で表現することもできます。
 通常は、コミュニケーションしたい内容とそれを表現するメディアとは一体ですが、原理的には、内容とは独立にメディアを選択することができます。
 もう一つのコミュニケーションのメディアは、発信者の外にある道具とその道具を使って制作されたものです。
 紙と鉛筆、マイク、パソコンなどなど、情報化社会になって、多彩で強力なコミュニケーションの道具が開発されてきているのは、ご承知の通りです。また、その道具によって制作されるものとして、文書、映像、CDなど、これまた実に多彩なものが出回るようになりました。

以下省略*****

活動報告

2006-10-29 | 心の体験的日記
04/7/13海保

海保博之(心理学系教授)
16年度 活動報告 04/4-より05/3まで

1.研究活動
1-1 
「論文」
・「確かな学力とリテラシー」 指導と評価、04/7

「著書」
○単著
「学習力トレーニング」 岩波ジュニア新書 04/4
○共著
○分担
・「注意の事故管理不全とヒューマンエラー」(大山正・丸山康則編「ヒューマンエラーの科学」p159ー178、麗澤大学出版 所収)04/4

○監修
「エラーおもしろブック;知って得するヒューマンエラーの本」
中央労働災害防止協会 04/5

「学会発表」
日本心理学会WS「高齢者の手順習得」
医療事故シンポ パネラー 11月30日 

1-2 受賞・表彰
  なし
1-3 研究費
  なし

2 教育・業務活動

「人間学類」
認知心理学演習
認知心理学
心理学研究法
卒論指導3名

「心理学研究科」「人間総合科学研究科」
応用認知心理学演習
応用認知心理学
指導学生 3名

「教育研究科」
教育心理学特講
指導学生1名


3.学内委員活動
・付属高等学校校長
・人間学類 人事委員
4.学会・研究会活動
・プラント・ヒューマン・ファクター学会理事(03/1より現在)
・理論心理学会 機関誌 編集委員(平成15年7月より現在)


5.社会的活動

中央労働災害防止協会 「安全と健康のひろば」編集委員
図書文化協会 「指導と評価」編集委員
応用教育研究所所員
人事院 安全専門委員
全国国立大学付属学校連盟 理事


6.国際活動
「留学生」
教育研究科 中国留学生 金 1名

7.学位論文
「主査」課程博士

「副査」教育修士

8.学会・研究会の年次大会の開催
特になし

9.自己点検;
「研究面」
 
「教育」
  
「業務面」

「運営面」
 付属高等学校校長として、週2日の勤務をしているが、これ以外にも、各種附属学校行事にも参加した。



医療と看護の現場におけるヒューマンエラーを減らす

2006-10-29 | ヒューマンエラー
                     05/2/23 海保  改訂
医療と看護の現場における
ヒューマンエラー低減のための認知心理学からの提言
        筑波大学「心理学系」  海保博之

概要**************************************************
 エラーを事故につなげないためには、5M(Mission、Man,Machine,
Media,Management)一体で取り組む必要がある。ただ人が人を相手にして働く医療と看護の現場でのヒューマン・エラーは、ただちに事故につながってしまうことが多いだけに、その発生をできる限り抑えなければならない。
 そこで、本講演では、医療と看護の現場でのヒューマンエラーを減らすために看護師みずからが留意すべきこと(提言1ー5)と、エラーを事故につなげないための環境設計(提言6)とについて、認知心理学の立場から、6つの提言の形で提案してみる。
提言その1「コミュニケーション環境を良くする」
提言その2「目標管理を最適化することで使命の取り違えエラーを防ぐ」
提言その3「適切な知識管理によって思い込みエラーを防ぐ」
提言その4「適切な注意管理によってうっかりミスを防ぐ」
提言その5「確認を確実にすることで確認ミスを防ぐ」
提言その6「安全工学の考えを生かす」
****************************************************
 医療・看護の現場でのヒューマンエラーの特徴をプラントや原子力発電所におけるそれと比較してみると、2つの特徴を指摘することができる。
1)医療・看護の現場でのそれは、事故の被害が1人か2人程度に限定される。
プラントでは逆に、1人のエラーが大規模な被害を引き起こしてしまう。事故の被害が小さいと、マスコミも注目しない。当事者に限定的にしか事の重大さが認識されないため、より広範な対策にまで思いが及ばないということが多くなる。
2)医療・看護の現場では、エラーと事故との距離が非常に近いということがある。エラーがただちに事故につながってしまう。
 プラントでは、うっかりミスをしても、多彩な防御システムが用意されていてただちには事故にならないようになっている。
 このことは、医療・看護の現場では、働く人々一人一人がエラーをしない方策を考える必要があることを強く示唆している。

前提その1「メタ認知力を高める」
 人は必ずエラーをおかす。しかし、メタ認知力(自分の心を知り、自分をコントロールする力)を高めることで、事故につながるエラーを少しでも減らすことはできる。メタ認知力を高める王道は、エラー、事故に関する知識を豊富にすることである。本講演では、これが主となる。さらに、メタ認知力を高める方策として、内省/反省( reflection)をする習慣をつけ、さらに、その質を良質にすることが考えられる。    
    「エラーを知りおのれを知れば百戦たりとも危うからず」
前提その2「エラーを引き起す多彩な要因に目配りする」
 ヒューマンエラーを、その時その場にいたヒューマン(人)だけの問題として孤立させてとらえてはならない。その人を含めた組織、機械システム、メディア、さらに組織の使命にまで幅広くかつ深く原因追及の目を向けなければ、次の事故の防止にはつながらならない。     
      「”誰がした”より”何がそうさせた”かを考えよう」
前提その3「重大事故(アクシデント)を防ぐためには、     多層防御の仕掛けを作り込む」
 ハインリッヒの法則(1:29:300)は、エラーと事故との直結を断ち切る障壁を工夫することの重要性・有効性を示唆している。 
  「エラーは庭に生えた雑草 積み取らないとどんどん増える」


提言その1「コミュニケーション環境を良くする」
 チームで仕事をしているときは、コミュニケーション環境が良好であることが、エラー,事故の防止に役立つ。思いを話す、意見を聞くといったことから、正確に伝える、わかりやすく伝えることまで、コミュニケーション環境を良好にするための努力を怠ってはならない。   
   「ホウレンソウ(報告、連絡、相談) 事故防止の栄養源」
1-1)自由な発言、きちんとした権限関係が良好なコミュニケーション環境を作る   
○権威主義はエラーチェックが効かない(医師ー看護師)
○言わずもがなは危険(看護師ー看護師)
○患者はエラーチェッカーの最後の砦(看護師ー患者)
       「伝える勇気 受け取る素直さ」(ビル工事現場にて)
1-2)指示・連絡を正確に
    「サクシゾン 一文字抜けば 死を招く」(赤穂市立病院)
○口頭伝達は、誤解のもと
○複雑な指示は、反唱確認、メモなどによるダブルモードでの確認を 
  例 「IV(Intravenou;静脈内に)」と「1V(1 Vial;1瓶)」
      *略語は同じでも意味は違う
    「フェルムカプセル」 と 「フルカムカプセル」
    「アルマール」と「アマリール」
    「タキソール」と「タキソラール」
      *最初と最後の文字が同じ。文字数も同じ
      *メニュー画面にこれが隣同士で表示される
       *薬名1文字違いは、1520件ある(読売新聞)
1-3)指示・連絡をわかりやすくする
 指示・連絡の内容の「正確さ」と「充足さ」が、まず、大切。
 しかし、これを重要視するあまり、正確さ・充足さ中毒に陥り、わかりに くい指示・連絡になってしまうことがある。
             「正確さ中毒はわかりやすさの大敵」
  実習1「電話で絵を描かせると」
○相手の知識と状況に配慮する
 ?関連知識がどの程度あるかに配慮
  ・伝えたいことに関連することを知っているかを確認する
 ?状況への配慮
  実習2「同じことでも状況によって異なる表現をする必要がある」  
○指示(作業)の全体像や意味を先に説明することで何が何やらわけのわか らない状態にしない

** 
提言その2「目標管理を最適化して使命の取り違えエラー    を防ぐ」
 人はエラー、事故を起こさないことを目標に生きているわけではない。安全という制約(上位の使命)の中で仕事上の目標を達成することになる。ところが、しばしば、仕事上の目標が安全の制約をはみ出てしまったり、両者が葛藤したりすることがある。それが事故を発生させることにもなる。
  
 例 ミッション・エラ(使命の取り違いエラー)
    ・なにがより大切な目標かを見失う
    ・出来もしないことをやってしまう
    ・積極的行動によるエラーと表裏一体
       自己顕示欲と自己効力感がくせもの
    ・人によく思われたい/助けたい/喜んでもらいたい
             「ストっプ ザ 使命変更への誘惑」
2ー1)使命を意識して絶えず確認・活性化をはかる
  日本社会は、ハイ・コンテクスト(文脈規定性の強い)文化。 暗黙の使命が支配している。したがって、しばしば、使命と個人の内化目標との間にズレが発生する。安直な業績主義、合理化は、暗黙のしかし強力な目標となって、エラー、事故を誘発することが多い。
       「安全には 言わずもがなのことでも口に出す」
2-2)適度に具体的な目標に落として意識化する 
上位の使命(理念的使命)も下の使命(行動的使命)も同時に意識できるよ うな目標にしておく(ミドル・アウト表示)。
  例 「患者第一」より「安全ケアーを第一に」
    「安全運転」より「法定速度の遵守」
    「落っこちるより遅れる方がまし」
2-3)目標行動を単線化して、目標間の葛藤を起こさせない
何が何より大事かを完璧にわからせる  
  例 宅配便 
    ・3つの使命が葛藤している
       時間決め配達  安全運転  競争
    ・「安全第一」が「迅速配達」の上にくるようにしておく
     「安全第一は いつも第一に」

***
提言その3「適切な知識管理によって思い込みエラーを防     ぐ」
 人が頭の中に貯蔵した知識はすぐに不活性化してしまい、その知識を必要とするときにタイミングよく思い出せないことがある。 
               「仕事前 頭の準備体操も忘れずに」
 実習1「活性化した知識しか使われない」  
3-1)適切な知識を活性化する機会を頻繁に用意する
○研修会や朝会での打ち合わせでエラーに関連する知識を活性化する
 危険予知訓練(KYT)   

3-2)エラーにかかわる知識の高度化をする
知識の高度化とは、要素知識を体系化しより抽象化されかつ普遍化すること○高次の知識をテストすることで、低次の知識も活性化される 
  記憶--理解--応用--分析--総合--評価
○知識活性化と知識の高度化の観点からのマニュアルを見直す
  ・マニュアルの5つの役割   
     操作支援 参照支援 理解支援 動機づけ支援 学習記憶支援
  ・とりわけ、理解支援を工夫する
     操作の意味をわからせる 
          「手順には そうする意味があることを知る」3ー3)思い込みエラーに対処する
 知識の不活性化とは逆に、その時その場で活性化している知識だけが使われてしまい、思い込みエラーを起こさせることがある。          とりわけ、即応を要求されたり、状況の激変のために、何が何やらわけがわからなくなってしまうような事態では、その時その場で目立つ限定された手がかりだけに基づいて駆動された知識だけを使って状況の解釈モデル(メンタルモデル)を構築しがちである。それが状況とのかかわりにふさわしくないとき思いこみエラーが起こる。  
 例 患者を取り違えているのに気がつかないで、誤った手術を完璧にして   しまう。 
 実習2「メンタルモデル駆動型の状況解釈を経験する」  

○思い込みエラーの特徴
 ?限定的な手がかりだけに基づいて状況を解釈している(視野狭窄)
 ?思い込みを否定する情報は無視される
   例 いったんつけられた病名が一人歩きをする
 ?状況が激変するまで、エラーであることに気がつない
                  「その思い 今一度の点検を」
○思い込みエラーに対処する  
 ?わけがわからない状況にしないことです
 ・仕事の目標や全体像をあらかじめ意識する
   実習3「大文字のTをさかさまに描いて、その上に三角形を」
 ・仕事に関連する知識を豊富かつ高度化しておく 
                「知は力なり」(ベーコン)
 ?あえて判断停止(エポケ)をする
 ・情報収集の時間をかせぐ
 ・ステレオタイプ(固定観念)による思い込みの防止  
 ?妥当なメンタルモデルを持つ
 ・使えそうな知識を動員する
 ?自分の思いを人に話せるようにする/話すようにする
 ・コミュニケーション環境を良好にしておく
 ・人と情報を共有する 
           「一人より 皆で確認 事故防止」(人事院)
 ・思いを外に出すことで自分の思い込みに気がつくことがある
 ?現場を一時的に離れてみたり、知識量や考え方の異質なメンバーを入れ  て、新鮮な目(fresh  eye)によるチェック体制を作り込む
              「一言居士 あなたは悪魔の代弁者」

****
提言その4「適切な注意管理によってうっかりミスを防ぐ」
 うっかりミスのほとんどは、注意管理不全から起こる。人の注意資源には限界があるからである。また、注意資源の活用の仕方も、いつも適切であるとは限らないからである。
「選択」、「配分」、「持続」についての注意の特性を知った上での注意の自己コントロールと、さらに注意管理の外部支援が必要となる。            「注意1秒 怪我一生」
4ー1)認知的葛藤状態にしない(「選択」の自己コントロール)
  実習「漢字ストループ課題」
  実習「1から10まで、ひらかなで書く」
 ○習慣的処理とは違ったほうを選択して処理するため過剰な注意が必要
 ○よそ見による見落とし
   外と内によそ見をさせるものがあるので面倒
          「このあたり美人多し よそ見するな」
4ー2)あわてない(「配分」の自己コントロール)           実習「書字スリップを起こしてみる」
      「あ」「数」をできるだけ速く何度も書いてみる
  ○配分された注意と仕事が要求する注意とのギャップ
    ・容量ギャップ(例 足りない)
    ・時間ギャップ(例 間に合わない)
4ー3)多重課題にしない(「配分」の自己コントロール)
  実習「自己チェック;あなたの聖徳太子度はどれくらい」
  ○多重課題は、注意量の限界に達しやすい         
4-4)管理用の注意を残しておく/複眼集中の状態にする
(「配分」の自己コントロール)
  仕事用に7割、管理用に3割    
 ○集中しすぎ(過剰集中)による視野狭窄
4-5)感情を安定させる(「配分」の自己コントロール)
  感情は注意の調節弁
   例 パニック時  恐怖が対象への過剰集中をもたらす
     高ストレス時  ストレスの原因に注意が取られる
4ー6)休憩の自己管理をする(「持続」の自己コントロール)
  退屈も疲労も危ない。いずれも、ある程度の自己モニタリングが可能。
 ○服務規程に従って休息管理に加えての、休息の自己管理も。

番外;自分の注意の特性を知る
  実習4「注意の持続力と集中力とを組合わせると」  


*****
提言その5「確認を確実にすることで確認ミスを防ぐ」
 エラーをおかすのは人間である限りしかたがない。
とすれば、エラーをしたかどうかを確認して、事故につながらないようにすればよいということになる。
 ところが困ったことに、確認という行為にもミスがある。
○確認行為そのものを忘れる
確認行為が習慣化してしまっていると、
・マクロ化の罠 
 PDSサイクルが一体化してしまい、See(チェック)だけ を分離させる のが難しくなる。
・現実モニタリングの混乱
 ストーブの火を消したかどうかなどのように、実際にやったこととやった つもりとの区別ができなくなることがある。
○確認そのものにミスが起こる
となると、確認忘れ、確認ミスは起こるという前提で、うっかりミスとおなじような仕掛けを作り込んでおくことをまず考えておく必要がある。
              「確認は 事故を防ぐ最後の砦」


5ー1)確認行為を確実なものにする
○一連の仕事の流れをあえて中断して確認する場所(ホールド・ポイント)を設ける
 とりわけ、仕事に熟練すると、ほとんど努力なく「むり、むだ、むら」(3ム)なく流れるかのごとく仕事が進んでいく。たくさんの要素行為があたかも一つの行為であるかのごとくになる。これを「仕事のマクロ化」と呼ぶ。その途中で、うまくいっているかを確認するのは、なかなか難しい。     「ベテランになる直前は要注意」
               「ベテラン意識はエラーのもと」
○確認を動作と言葉とで外に出すようにして(外化)、確認行為を確実なものにする
 例 指さし呼称
    指でさす---確認場所や行為の焦点化
    呼称---頭の中だけの確認にしない
        「指先で 危険読み取る 作業前」(中災防)
  
5ー2)確認ミスを防ぐ
○確認は複数で独立に行う
○仕事が終わった後の確認を確実に行う
  例 4S(整理 整頓 清潔 清掃)
          「4Sは エラーを防ぐ身だしなみ」

******
提言その6「安全工学の思想を生かす」
 安全工学は、人はエラーをおかすもの、機械・システムは故障するものとの前提で、機械・システムや人工環境の安全を工学的に保証する技術である。その背景には、エラー、事故防止のためのちょっとした心がけや仕掛けのヒントがある。まとめの意味で、そのいくつかを紹介してみる。
            「人は弱い葦(あし)されど工夫する葦」
6-1)馬鹿なことをしても大丈夫なようにしておく---フールプルーフ(fool proof;)
○すぐにはできないようにしておく
 ・カバーをかけておく
 ・手の届かないところにおいておく
○入れないようにする
 ・強制排除(ロックアウト)
○やるときに意識化せざるをえないようにしておく
 例 指さし確認
   ロックを解除してから湯を出す
○順番通りにやらないとだめ
 例 インターロック
    ふたを閉めないと電源が入らない電子レンジ
6-2)一つがだめでももう一つがあるようにしておく---フェールセーフ(fail-safe;故障しても大丈夫)
○複数で別々にやる
 例 ダブル・インカム(夫婦で稼ぐ)
○複数のシステムが動いているようにする
 例 コンピュータ・システムと口頭報告システムの併存

6-3)一つがだめならその次で防ぐ---多層防御(幾重にも障壁を設ける)             「安全には厚化粧もがまんのうち」
○ダブル、トリプルで「独立に」チェックをする
 例 稟議システム
6ー4)自然にそうしたくなる/したくないようにする---アフォーダンス(適切な行為を自然に誘う仕掛け)
○形を使う(シェイプ・コーディング)
○色を使う(カラーコーディング)
  例 国際標準(ISO) 緑は安全、赤が危険、青は低温、赤は高温
    文化差があるので要注意
○場所を使う(ポジション・コーディング)
  同型性になるように
   例 レバーを下ろすと水が出る  右のものは右で
                  「百の説法より一つの仕掛け」

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まとめ
 使命(M)からはじまって、計画(Plan)-実行(Do)-評価(See)の
M-PDSサイクルで起こる4つのエラー---「使命の取り違えエラー」「思い込みエラー」「うっかりミス」「確認ミス」---をめぐって、その特徴とそれが事故につながらないための方策を提言してみた。25
 メタ認知力をつける、あるいはメタ認知力の発揮を支援するための一助になれば幸いである。
       「メタ認知こそ ヒトを猿から分けるもの」
最後に蛇足ながら
 しかし、やみくもな精神論(弛んでいるから、もっとしっかりやれ)にならないように注意してほしい。
 大事なことは、合理的な精神論の普及である。心理学の知見や考え方に裏づけられた「精神論」「自己コントロールの方策」を話させていただいたつもりである。
             「エラーにもエラーなりの理屈あり」