hiyamizu's blog

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川上弘美「どこから行っても遠い町」を読む

2009年01月04日 | 読書2


川上弘美著「どこから行っても遠い町」2008年11月、新潮社発行を読んだ。
一つ一つは完結した11の短編でなる連作短編集だ。



男二人が奇妙な仲のよさで同居する魚屋の話「小屋のある屋上」で始まり、入れ替わり立ち代り違う相手を連れてくる父親の話「午前六時のバケツ」が続く。
そして、美人で上品で静かなお母さんの話「夕つかたの水」、「蛇は穴に入る」,「長い夜の紅茶」,「四度めの浪花節」,「急降下するエレベーター」,「濡れたおんなの慕情」,「貝殻のある飾り窓」,「どこから行っても遠い町」と続く。 最後の、裸足で男のもとへ駆けていった魚屋の死んだ女房の話「ゆるく巻くかたつむりの殻」が、最初の「小屋のある屋上」につながる。


東京の小さな町の商店街、一見、穏やかに見える小さな昔ながらの商店街に暮らす人々。その平穏な日々の奥にあるあたりまえではない人生の数々。あやうさと小さな幸福。川上さんの文章は、透明感あり、すっきりとして、さわやかだ。つくづく、川上さんは短篇の名手だと思う。


川上弘美の略歴と既読本リスト


私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)

川上さんはお茶大のSF研究会に属していたことがあり、初期の小説には跳んだSF的な話が多い。一方で、幻想的世界と日常が混じりあう話がよく出てくる。この本は、昔ながらの商店街で平凡な日常を送る人々の話だが、現実的情景の具体的描写の中、謎めいた過去を持つ人が浮かび上がる。そして、いつの間にか摩訶不思議な川上ワールドに引き込まれてしまう。
例えば、最後の話で、主人公の女性が、「子供って、なんだかこわい」と言う。私は読んでいて、「え!なに!どういうこと」と思う。すこし後で、「好きな人が死ぬと、すこし、自分も死ぬのよ」と言うセリフなどを読み進めていくうちに、なんとなく、「こんなこともあるかもね」と思ってしまう自分がいる。

哀しい話が多いが、最後が、「生きているのは、おもしろかったです。・・・捨てたものでなかったです、あたしの人生も」で終わるので救われる。

もう少し、川上さんの本を読んでみたいと思った。

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