hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

和田秀樹「精神科医は信用できるか」を読む

2008年06月25日 | 読書2

和田秀樹著「精神科医は信用できるか-心のかかりつけ医の見つけ方-」2008年2月 祥伝社新書を読んだ。

宣伝文句は、以下のとおりだ。
精神科と心療内科の違い、精神安定剤、抗うつ剤や睡眠導入剤は安全か、いい医者の見つけ方はなど、精神医療へのそれらの疑問に答える。自分自身や大切な人を「心の病」から救うために、医者に行く前に読んでおきたい1冊。「全国優良病院66」「精神科で処方される主な薬の特徴・副作用」といった情報が添付されている。



著者は、東京大学医学部卒。精神科医。専門は老年精神医学。国際医療福祉大学で臨床心理学の教授でもある著者は、薬物医療中心の日本の精神医療ではアウトサイダーのようで、カウンセリングの必要性などいくつかの日本の精神医療の問題点を指摘している。



いくつか、ご紹介。

自殺者は年間約3万人。うち40代、50代が38%で、良くマスコミで問題になる19歳以下は2%、800人たらずだ。子どもより大人の方が、心が壊れやすいのだ。

社会をアメリカ型競争社会に変えるというなら、精神医療もアメリカ型にする必要がある。

安部晋太郎前首相は突然の辞任前にうつ病であったと十分推定できる。うつ病で倒れた首相をマスコミは、「責任感がたりない」などと叩いた。もし、安部さんが勇気をもってうつ病であることを認めれば,うつ病患者の精神科受診率を向上させ,ひいては高止まり状態の日本の自殺者数を低減させることにつながっただろうと著者は主張する。

日本では、多くの精神科医が十分な臨床訓練、経験を経ずに精神科医になる。したがって、マニュアル頼みの薬物療法が中心になる。

朝青龍に三人の医師が三者三様の病名をつけたのは、診断基準のあいまいさもあるが、社会的影響も勘案した上で患者本人のためになる病名をつけたのではないか。少なくとも治療方針は三者とも一致していた。

自殺願望を打ち明ける相手は、誰でもよいのではなく、特定の誰かを選んで絶望的な心情をぶつけている。ほとんどの人は死にたいと、生きたい、の間で揺れ動いている。思いとどませる努力をするのではなく、ひたすら相手の言葉に耳を傾ける。十分に話を聞いてから、「でもやっぱりいつもの君とは違うように感じるから、一度、医者に行ってみようよ」といった形で自分の意見を伝えたほうがいい。



私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)
精神病院といった暗いイメージと、分からない精神医療という世界を分かりやすく解説し、問題点も、おそらく的確に、指摘している本書は一読に値する。

「教授になれるかどうかは、臨床の実績ではなく「論文の数」で決まる。したがって、動物実験だけを行った博士ばかりが教授になる。臨床結果は日本独特の状況もあり海外論文になりにくい」といった趣旨の記述がある。このあたりを捉え、「著者は東大教授になれなかった不満を言っているだけだ」とネットでこの本の著者に噛み付いた医師がいた。

いま、勤務医は過酷な勤務や医療ミスの裁判で厳しい環境にある。不満がたまった医師たちが、医師批判をするブログなどに大勢で感情的に噛み付き炎上させる現象がある。一方では、冷静にたしなめる医師もいるのだが、お勉強はできるだろうに、極めて感情的で、厳しい状況に自棄になっているような人もけっこういるようだ。
確かに、厳しい受験を経て、地位と高給を期待したのに、ミスすれば、いや場合によっては結果が悪いだけで逮捕され、勤務医の給料は激務なのに平均1400万円程度では、自棄にもなろうというものだ。
精神医療をテーマとする本書では、この問題に対しては、「手術ミスは訴えられ、薬の副作用で患者を死なせた医師は訴えられないので、外科医は損で、内科医は得」と簡単に触れられているだけだ。







コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする