通でがんす

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(旧ブログタイトル:通じゃのう)

大正8年の断髪 望月百合子

2023年11月07日 | 日記
「ジャケ買い(=ジャケット買い)」
という言葉がある。

本やCD、レコードなどのカバーが
気に入ってその商品を買うことだ。

ジャケ買いした本のうちの一冊がこれ、



森まゆみ著『断髪のモダンガール
42人の大正快女伝』(文春文庫 2010年)。

モダンガール(略して「モガ」)とは、
断髪をして、長いスカートをはき、
銀座を歩いている女性のこと。

この言葉が流行したのは
1927(昭和2)年だが、
それよりも8年早い
1919(大正8)年に髪を切ったのが、
表紙に写真が載っている
望月百合子(もちづき ゆりこ)。





今日は、
大正8年の断髪 望月百合子
についての話でがんす。





望月百合子は、
1900(明治33)年に山梨県で生まれ、
2001(平成13)年に亡くなる。

つまり、20世紀という時代を
まるまる生きた人であった。

1919(大正8)年、
東京の成女高等女学校を卒業後、
校長の宮田脩の紹介で読売新聞に入社、
記者となる。

1921(大正10)年、読売新聞を退社、
フランスのソルボンヌ大学に国費留学。

1925(大正14)年に帰国後は
アナーキストとして活動。

1928(昭和3)年、
長谷川時雨(はせがわ しぐれ)の
『女人藝術』の創刊に参加。

1930(昭和5)年、
『婦人戦線』、『ディナミック』
の創刊に参加、
古川時雄と結婚。

1938(昭和13)年、満州に渡り
満州新聞記者となる。

1978(昭和53)年、
山人会会長に就任。

1989(平成元)年、
建設懇話会委員長として携わった
山梨県立文学館が開館。

1993(平成5)年、
『ビクトリア女王の娘』を翻訳・出版。

2001年、死去。



1919年、読売新聞の婦人記者
になった望月は、
断髪洋装をして注目を浴びる。


「大橋房っていうすてきな友だちがいてね、
(略)
あるときいっそ断髪洋装にしない、っていったんです。毎朝、髪を結うのが面倒くさくてしかたがない。不器用だから髪を後ろにまとめるのが大変」

(森まゆみ『断髪のモダンガール 42人の大正快女伝』文春文庫 2010年 15ページ)



ふたりは外国人女性行きつけの
美容院へ行って髪を切り、
洋服や下着・靴をあつらえた。

しかし、「長い黒髪こそ美しい」
という美意識が根付いていた日本では、
女性が髪を切ることに対する抵抗感は
根強いものがあった。

その黒髪を切ることは
女をやめるに等しい大胆な行動だった。

彼女たちが銀座を闊歩(かっぽ。
大またで堂々と歩く)すると、
周囲からの好奇の目にさらされた。


「あるときは電車の中で『まだ若いのに、ご主人を亡くされて』と同情されたことがある。昔は夫に死なれると髪を切ったものなのね」

(同上 16ページ)



女性が髪を切るのは、
未亡人になったときか、
仏門に入るときかのどちらかだった。



↓望月百合子については、こちら↓

現代女性文化研究所

「山梨近代人物館 第14回展示 紹介人物・望月百合子」山梨県立博物館 -Yamanashi Prefectural Museum-






以下、余談。


望月百合子と一緒に髪を切った
大橋房(おおはし ふさ。
1897(明治30)年-1949(昭和24)年)
について触れておこう。

大橋家の養女だった大橋房は
1925(大正14)年、作家の
佐佐木茂索(ささき もさく)と結婚、
ささきふさを名乗る。

大橋家はプロテスタントの家庭で、
彼女が16歳のときに洗礼を受け、
青山学院在学中から執筆活動を始める。

断髪した1919年には
児童向け聖書物語『イスラエル物語』を、
1921(大正10)年には
小説『断髪』を発表する。


「刃先にヂヂヂヂッといふ弾力のある音が起ると、それに伴(つ)れて今までなだらかに垂れ下がってゐた長い髪の毛が、無慚に中途から切断されて、バラバラと膝の上に乱れ落ちてきます」

(同上 21~22ページ)



1923(大正12)年、渡欧して
万国婦人参政権大会に出席、
翌1924年に帰国。



↓ささきふさについては、こちら↓

「「ささきふさ」とは誰か?」葡萄の花房から――ささきふさとその周辺



↓断髪については、こちら↓

「おかっぱ「モダンガール」へむけてのスタイル変遷 大正時代のヘアスタイル~【永久保存版】髪型の歴史150年。美のプロなら知っておきたい明治・大正・昭和のヘアトレンド」リクエストQJナビ





今日は、
大正8年の断髪 望月百合子
について話をさせてもろうたでがんす。



ほいじゃあ、またの。

(文中、敬称略)

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