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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】中華民国台湾海軍新造潜水艦海鯤號進水式とアメリカ海軍はヴァージニア級後継次世代攻撃型原潜大幅遅延

2024-04-16 20:00:40 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 友人で学生時代台湾からの留学生の方が広島観光の際に潜水艦はるしお型が既に用途廃止が始り桟橋に退役艦が係留されているをみてショックを受けていたのを思い出します。

 中華民国台湾海軍は新造潜水艦海鯤號の進水式を挙行しました。台湾海軍は1990年代から逆転した中国海軍の軍事圧力に対抗するべく、潜水艦戦力の増強を進めたいところでしたが、1990年代にオランダから導入したズヴァールトフィス級潜水艦2隻は、その後中国政府からオランダ政府への徹底した経済や外交上の圧力を受けています。

 ズヴァールトフィス級に続いて台湾海軍は新型のワルラス級潜水艦導入を希望していたとされますが、外交問題により実現せず、一方で輸出販路をなくし自国海軍の需要もなくなったオランダの潜水艦産業は終焉を迎えることとなりました。潜水艦造船所を維持するには一定間隔での発注が必要であり、この影響は現代の次期潜水艦計画にも響く。

 コリンズ級潜水艦の導入希望をオーストラリア政府に打診した中華民国台湾政府ではありますが、1990年代の安全保障環境では機器よりも通商問題が優先され、当時のオーストラリア政府により、潜水艦はあまりにも攻撃的な装備であるとして輸出を拒否されています。ただ、オーストラリアの潜水艦産業も需要不足から新造能力を喪失しました。■

 中華民国台湾海軍の新潜水艦海鯤について。海鯤は台湾が独自に建造を開始した潜水艦です。元々台湾はブッシュ政権との間で通常動力潜水艦6隻の導入という交渉を進めアメリカ側も好意的な反応を示していましたが、アメリカは1950年代にバーベル級潜水艦を建造したのを最後に通常動力潜水艦の建造は終了、原子力潜水艦しか建造していない。

 独自設計という指針が明確に示されたのは祭英文政権時代に入ってからのもので、今回建造される海鯤は、水中排水量2500t、全長70m、全幅8m、魚雷発射管6門を有していて、魚雷とハープーン対艦ミサイル、及び機雷敷設能力を有するとのこと。台湾海軍は今後海鯤級潜水艦を8隻から10隻建造するといい、本艦は試験艦的な意味合いも持つ。

 台湾国際造船がこの新型潜水艦海鯤の建造を担当しています。なお、台湾はオランダよりズヴァールトフィス級潜水艦の建造技術移転を受けていましたが、その移転を受けた技術だけでは独自建造することは出来ませんでした。台湾は独自技術により建造を強調していますが、部品単位で単独建造は難しく、複数の企業の協力はあるのでしょう。
■防衛フォーラム
 事実上半世紀先まで建造する事を想定して設計していたのかという些かな疑問とともにやはり建造費と建造期間が原子力潜水艦は長期化するのだなあと日本が次々と新型通常動力潜水艦で防衛力を刷新しているのと比べて。

 アメリカ海軍はヴァージニア級に続く次世代攻撃型原潜を2040年代より建造します。ぎゃくの表現をしますとヴァージニア級攻撃型原潜の後継艦艇構想はさらに10年程度遅れることとなります。アメリカ海軍はSSN-X次期潜水艦について、その必要性を強く認識しているものの海軍の予算不足などから建造開始が遅れているという現状です。

 SSN-Xについて、海軍は2023年の段階では建造を2035年に開始する計画を示していますが、2024年初頭に、2040年代、つまり10年近く遅れることを示したかたちです。ただ、もともとSSN-X計画は2031年建造開始の方針が2023年に遅延として発表されたもので、やはり10年程度遅れることには変わり有りません。

 ロスアンゼルス級攻撃型原潜の後継艦として建造されたのはシーウルフ級攻撃型原潜でしたが、建造費高騰により3隻で建造がいつ切られ、安価であるヴァージニア級に移行しました。しかしヴァージニア級は改良に民間コンピュータシステムの応用など障壁を下げたことで高性能化が進み、現在アメリカ海軍の主力攻撃型原潜となっています。■

 アメリカ海軍のSSN-X計画遅延について、ロスアンゼルス級攻撃型原潜は1990年の段階で建造費が9億ドルとなっていました、そして1976年から1996年まで実に62隻という大量建造が行われていますが、2024年時点では既に34隻が退役しており残る現役艦は26隻となっています。実質その後継と成っているのがヴァージニア級という。

 ロスアンゼルス級攻撃型原潜の建造数62隻に対応すべくヴァージニア級は66隻の建造が計画されており、2024年までに24隻が建造され10隻が建造中、また更に4隻の予算が承認されています。ただ、ロスアンゼルス級攻撃型原潜とヴァージニア級攻撃型原潜の合計は50隻、シーウルフ級を加えても現在は攻撃型原潜は53隻と減りました。

 ヴァージニア級について、SSN-X建造開始が2040年代はじめという状況が維持された場合でも、竣工は2050年前後となり、ヴァージニア級の一番艦ヴァージニア収益は20年前の2004年ですから、改良が行われているとはいえ、実に半世紀、潜水艦が新型を建造できない事となります。これは潜水艦の歴史が始まって以来世界でも異例と言えましょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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