北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ペトリオットPAC-3部隊中国四国地方展開完了,グアム八月ミサイル危機へ破壊措置命令

2017-08-12 22:20:00 | 防衛・安全保障
■中国四国地方4駐屯地へ展開
 北朝鮮のグアムへのミサイル発射宣言に伴い、航空自衛隊が動きました、陸上自衛隊駐屯地への展開を実施したのです。

 グアムへの北朝鮮火星12型ミサイル発射宣言にともなうグアム八月ミサイル危機にたいし、自衛隊は飛行経路として北朝鮮が指定した島根県、広島県、高知県、以上に加え恐らく上空を経由するであろう愛媛県へのミサイル防衛部隊の展開を開始しました。島根県の陸上自衛隊出雲駐屯地、広島県の海田市駐屯地、愛媛県の松山駐屯地、高知県の高知駐屯地、です。

 2012年、北朝鮮が沖縄県先島諸島上空を経由しフィリピン沖へミサイル実験を行った際には、陸上自衛隊と航空自衛隊は沖縄救援隊を編成し、宮古島と石垣島、下地島へミサイル迎撃部隊と衛生部隊を派遣しました。この沖縄救援隊派遣時には、沖縄は本州から陸路で展開することができないため、海上自衛隊輸送艦の支援を受けての派遣となりました。今回は陸路で結ばれた地域への展開であった為、迅速に展開できたかたち。

 ミサイルの破片落下、可能性としてはミサイル燃料に用いられる化学化合物に有毒性があり、一部でも人口密集地域へ落下した場合は広範囲が汚染される可能性があるのです。このため、自衛隊では航空自衛隊が破片を高高度で爆砕するペトリオットミサイルPAC-3部隊を派遣し、陸上自衛隊が衛生部隊と化学防護部隊を派遣しています。PAC-3は射程が15kmから20kmと大きくなく、配置の駐屯地から場合によっては迎撃が不可能となる場合がありますが、今回配置されている自衛隊駐屯地をみてみましょう。

 海田市駐屯地は中国地方と山陰地方を防衛警備管区とする第13旅団の司令部が置かれている駐屯地で、広島市中心部まで9km、原爆ドームを含め弾道ミサイル攻撃から防衛が可能です。また広島県呉市、海上自衛隊呉基地までの距離も12kmで、弾道ミサイル迎撃範囲に含みます。呉基地の第4護衛隊群はイージス艦を運用していますが、イージス艦ちょうかい母港は佐世保となっています。一方、広島市に隣接する山口県岩国市の日米航空部隊拠点である岩国基地はPAC-3の射程圏外です。

 出雲駐屯地は、出雲大社の出雲市内にあり第13偵察隊が駐屯、先日サマーフェスタが行われたばかりです。松江市まで27km、米子市まで55kmあり、山陰地方の主要都市から距離があります。山陰地方には第8普通科連隊の駐屯する米子駐屯地や第17普通科連隊の駐屯する山口駐屯地がありますが、今回出雲駐屯地へPAC-3が配備された背景には、ミサイルの飛翔経路から万一の落下の可能性がある進路として出雲駐屯地が選ばれたのでしょう。

 松山駐屯地は第14特科隊などが駐屯しています。松山市は四国最大の都市で、松山駐屯地も松山市内の南梅本町に位置しており、松山市中心部まで8kmの距離にあり、伊予市などへも迎撃範囲に含みます。駐屯地には第14旅団隷下の第14高射特科中隊も駐屯していますが、陸上自衛隊の野戦部隊として部隊を攻撃する巡航ミサイルや航空機に備えるもので、弾道ミサイルの迎撃能力はありません。

 高知駐屯地は第50普通科連隊が駐屯しており、高知市ではなく香南市にあります。沿岸部ではなくやや高台にあり、高知空港まで8kmの位置にあります。高知市中心部までは約19kmで、PAC-3であれば高度によっては迎撃できる限度の距離です。このほか、高知駐屯地からの迎撃範囲には安芸市などが含まれます。高知県にはこの他航空自衛隊土佐清水分屯基地がありますが、こちらは更に人口密集地から遠い立地に在る通信施設です。

 中国四国地方へ展開したペトリオットミサイルPAC-3は岐阜基地の第4高射群から高射隊が今回派遣されています。高射隊は昨夜2000時頃に岐阜基地を進発、高速道路などを通行し今朝までに、海田市駐屯地、出雲駐屯地、松山駐屯地、高知駐屯地へ到着しました。陸上自衛隊の駐屯地へ展開するため、給食や休息施設などは陸上自衛隊駐屯地業務隊の支援が受けられますし、警備などにも第13旅団と第14旅団の支援を受けることができるでしょう。

 第4高射群より4個の射撃中隊を派遣した事で、現在は中部地方と京阪神地区のミサイル防衛部隊に深刻な空白が生じています。航空自衛隊には6個高射群24個高射隊のペトリオットミサイル部隊があり、射程100kmのPAC-2ミサイルにより低空から高高度までの航空機や巡航ミサイルに、射程15kmのPAC-3により宇宙空間から落下する弾道ミサイルへ警戒していますが、高射隊には5機の発射機があるのみで、PAC-3を運用するM-902発射機はうち2機、残る3基はPAC-2を運用するM-901発射機です。

 洋上には海上自衛隊イージス艦が展開し、PAC-3よりも射程の大きなSM-3ミサイルが防備に当たっています。SM-3は射程1300km、最大射高500kmというミサイル迎撃ミサイルで、放物線を描いて宇宙空間から落達する弾道ミサイルの放物線の頂点部分を中心に迎撃するミサイルです。イージス艦が展開しているのは日本海で、防衛省はSM-3で最初の迎撃を行い、可能性として撃ち漏らした場合に人口密集地域へ到達する前にPAC-3にて迎撃を行うとのこと。

 ミサイル迎撃は、日本へ落下する可能性がある場合を除き実施しません。故に自衛隊が迎撃を行う事は先制攻撃ではなく、特にPAC-3であれば射程内に入ってきた時点で既に着弾まで数秒前の段階です。特に射程の大きなSM-3でも500kmまでの中間段階の迎撃を行うもので、PAC-3については人口密集地に落下する直前に破壊力のある弾頭や燃料タンクなどを高高度にて爆砕、破片は落下しますが爆発し地上へ被害が及ぶことを阻止するものです。

 懸念するのは、北朝鮮が在日米軍基地や日本国内へミサイル攻撃を奇襲的に掛ける事です。北朝鮮は過去にも韓国内へ一方的に砲撃を仕掛ける事案が度々ありました、経済制裁への報復やアメリカの同盟国、国連加盟国や第二次世界大戦での朝鮮半島北部での被害への報復等、口実は説得力を度外視したならば幾らでもあるのです、この場合は日本国内へのミサイル攻撃という可能性を真剣に警戒しなければなりません。

 万一の際には国民保護法に基づくミサイル攻撃警報が自治体防災無線とテレビや携帯電話への一斉メールにより通達されます。ミサイルは核弾頭を搭載したものでなければ、直撃した場合でも半径200m以内の屋外にでている人員への致命的殺傷力が想定されますが、それ以上離れていたならば被害は極限できます、伏せるだけでも生存率は若干高まりますが、側溝に潜りこめば数十cmの違いですが爆風と破片の直撃を避けられるため、生存率は非常に高くなるのです。

 広島原爆投下の事例から、爆心地でも地下施設に待避したならば生存確率は十分あり、実際、爆心地近くの相生橋などは倒壊を免れました。ミサイル警報に接した場合には、落下地域に近い場合、慌てず住宅ならば浴室など構造が頑丈な設備に、マンションであれば地下駐車場や機械室など構造上頑丈な施設、商業施設ならば地下階や地下道、地下鉄など。車道であれば可能な限りトンネル内、ビル間の隘路など爆風が通りにくい場所に待避することで生存確率を大幅にあげることが可能です。

 爆発が近傍で発生した場合には、北朝鮮は先日マレーシアでのテロに使用したように、大量のVXガスなど神経ガスを装備しているため、対比するかどうかの情報が重要となります。地下室など気密性の高い場所に避難した場合を除き、滞留する地域の留まるよりは、NHKニュースなどの情報を的確に得て、落ち着いた行動を執る事が必要でしょう。退避さえしたならば、助けの手は必ず差し伸べられます、それまでに個々人で出来る措置を執る事が重要といえるでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (9)
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