北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

巨大地震“南海トラフ地震”への備えを考える④ ヘリコプター空輸隊の基地復旧部隊緊急展開

2012-05-19 01:14:08 | 防災・災害派遣
◆基地機能完全喪失時の増援部隊展開方法
 ヘリコプター空輸隊の基地近くに基地復旧部隊、機動施設隊や戦闘工兵部隊にあたる部隊を置き、機動運用できないか、という提案です。
Nimg_2051 航空自衛隊には、三沢基地、入間基地、春日基地、那覇基地にヘリコプター空輸隊を配置しています。各空輸隊にはCH-47輸送ヘリコプターが5機程度配置され、平時にはレーダーサイトへの輸送任務についています。航空自衛隊の輸送と言えば輸送機、C-1輸送機やC-130輸送機といった輸送機が代表格ではあるのですが、レーダーサイトには滑走路が配置されていないため、ヘリコプターによる物資空輸はどうしても必要であるわけです。
Nimg_7052 輸送任務に当たる航空機が航空救難団に配備されているのは少々不思議な印象がありますが、航空自衛隊においてヘリコプターを運用しているのは航空救難団だけで、練習機も初等練習機はT-7練習機を使っているほどヘリコプターは航空救難団に集中されているため、これは整備基盤や訓練基盤、運用基盤といったものを統合するうえで必要であったからかもしれません。
Nimg_7062 航空救難団ですが、UH-60J救難ヘリコプター40機、U-125A救難機25機、CH-47J輸送ヘリコプター20機を運用しています。これを救難ヘリコプター100機へ、とは書きません、救難ヘリコプターの配備数は充分です。輸送ヘリコプターとしても20機ものCH-47は、相当規模の陸軍でも配備している事例が少なく充分と言えるのですが、運用面でもう少し考えることが出来ないでしょうか。
Nimg_3204 特に必要なのは、航空救難団の輸送ヘリコプターを用いた基地復旧部隊の空輸能力です。CH-47Jの機内や機体に吊下搭載できる車両は限られていますが、高機動車であっても軽量排土板を搭載して滑走路上の障害除去に用いることが出来ますし、小型ドーザであれば吊下輸送が可能でしょう。あまり頑丈なドーザでは滑走路の舗装を痛める可能性がありますが、障害除去にはドーザでなければ実施できないこともあるといえます。
Nimg_3108 震災といった災害派遣のほか、有事の際の滑走路破壊からの復旧任務にも活躍します。航空自衛隊では滑走路復旧訓練を500ポンド爆弾相当の爆薬数発を用いて模擬滑走路を破壊し、そこからの復旧訓練を行っています。しかし、この訓練も東日本大震災では被災した松島基地の被害状況が大きく、加えて基地に配置されていた施設車両といった器材が破壊されてしまったことから自力復旧が出来ませんでした。
Nimg_2312 ヘリコプターによる部隊を空輸すれば、仮に津波被害を受け対象基地が完全に機能を喪失した場合においても、滑走路上の障害を排除し基地機能を復旧できるでしょう。空中機動により展開することが可能な施設部隊というのは陸上自衛隊においても非常に稀有です。稀有、というのは第一空挺団であっても、施設中隊は大型トラックを使用しており、空輸展開に適していないからです。徒歩と高機動車で移動する施設作業部隊はいるようですが、ドーザでなければ排除できないものに対して対処は難しいでしょう。もっとも、ドーザの降下訓練はやっているのかもしれませんが。
Nimg_9549 同時に、現在基地訓練教導隊が百里基地へ発足し、航空自衛隊の弱点とされていた特殊部隊の急襲に対する能力強化が図られています。もちろん、基地警備小隊は置かれていますが、大規模な急襲を受けた場合、空中機動部隊による警備部隊の緊急派遣を行うことも当然考えられるでしょう。この場合に、ヘリコプター空輸隊の基地近くに復旧部隊が配置されていれば、増援を行うことが可能になるでしょう。
Nimg_9569 即ち、陸上自衛隊では施設部隊は普通科部隊とともに第一線に位置し、近接戦闘を行うことが想定されています。航空自衛隊の施設復旧部隊は、近接戦闘任務を行う想定を含めれば、航空自衛隊の基地機能復旧と基地警備という二つの任務に対応することが出来るでしょう。特にイラクでの市街戦やイスラエル軍の運用実例から、施設器材は市街地といった閉所での近接戦闘に威力を発揮します。
Nimg_0459 基地復旧能力は重要です。航空自衛隊はC-2輸送機の配備開始により、空輸能力を著しく向上させます。しかし大規模災害時に大型の輸送機が配備されていたとしても、展開する基地機能が喪失したままではあまりに無意味で、落下傘投下も考えられるのですが、落下傘よりも輸送機からそのまま下した方が高効率です。なによりも落下傘は準備に時間がかかりますから、この点を考えてみてください。
Nimg_8460_1 つまり、航空救難団の任務を行う範囲を強化し、四個あるヘリコプター空輸隊の近傍に150名程度の部隊を増勢、600名程度の人員増勢と装備に関する予算が認められたならば、航空家遺体の任務は災害派遣と防衛出動に対応できる能力をもう一歩進ん練ることが出来るだろう、ということ。
Nimg_1506 理想を言うならば、UH-60J救難ヘリコプターの後継機、現在はUH-60改良型の配備が決定していますが、これを米空軍次期救難ヘリコプターに一時内定したCH-47輸送ヘリコプターを配備することが出来れば、輸送任務に寄与したでしょう、が、被災地で航空救難団が実施したような住宅への降下を行ったならば、ダウンウォッシュ、ローターが引き起こす風圧で住宅が吹き飛んでしまうでしょうから、現実的ではありません。
Nimg_0353 理想を考えれば、U-125Aの後継機に米空軍がHH-60救難ヘリコプターの支援に用いているようなC-130を採用できれば、これはこれで理想なのですが、ううむ、これは難しいでしょうか。しかし、C-130,U-125Aよりも進出速度では劣っていますし、小回りも特に運用基地において限界があるのですが、CH-47の救難ヘリコプターよりは航空救難団へC-130配備の現実性はもう少し大きいともいえるでしょうか。
Nimg_9625 C-130Hは、U-125A以上に多用途に用いることが出来ます。例えばUH-60Jには空中給油受油装置を搭載したものが強化されているため、空中給油装置を搭載したKC-130であれば、UH-60Jへの空中給油を行うことで飛行時間を延ばすことが可能となります。ヘリコプターはホバーリングにより短時間で多くの燃料を消費してしまうため、空中給油の意味が大きいといえます。
Img_1827_1 このほか、救難員の投入にも寄与します。洋上での遭難事案に対しては飛行艇の支援を海上自衛隊へ要請するべきですが、山間部での遭難事案については輸送機から降下装備を有する救難員を投入することが出来るでしょう。災害時についても、救難ヘリコプターに先行して救難員を降下展開させ、孤立地域の情報収集に寄与することとなりますし、そもそも機体規模が大きいことから捜索器材は多くを搭載できます。もっとも、機体は高価になりますので、C-130Hの25機、予算措置が必要になるのですが。
Img_4518_2 機体の近代化については、U-125Aの後継機選定が行われる際に改めて考えたいのですが、これは理想の話ということでさておき、ヘリコプター空輸隊の近傍もしくは同じ基地へ、基地機能復旧部隊を配置し、必要であればこの部隊に近接戦闘任務を付与し、機動運用するという任務、真剣に検討してみるべきと考えるのですがどうでしょうか。
北大路機関:はるな

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (8)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする