北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

巨大地震“南海トラフ地震”への備えを考える③防災と沿岸防衛力両立目指す多用途哨戒艦案

2012-05-10 23:40:00 | 防災・災害派遣
◆ひうち型強化型を五地方隊へ3~4隻配備すべき
 海上自衛隊の任務は国家の防衛であり、外敵からの国防に備えると共に防災は国家の崩壊を防ぐ、という二本柱、この均衡の重要性は南海トラフ地震への備えにおいても忘れてはなりません。
Himg_6974 東日本大震災以降その危険性が認識されつつある南海トラフ地震へ、加えて中国海軍による南西諸島への軍事的圧力の増大や北朝鮮への対応や可能性は無視できない原子力災害への対処を行う上で必要な海上自衛隊の能力について検討したところ、護衛艦の増勢など必要な措置は大きいのですが湯大敵案として考えた場合選択肢は限られてゆきます。
Himg_7342 現実的案として多用途支援艦の強化型を配備する必要があるのではないかという一つの提案として、ひうち型多用途支援艦の武装強化型を一定数以上配備し、地方隊毎に状に複数隻を即応乃至稼働状態におけることを目指した支援隊編成が可能な程度の配備が必要と結論に達しました。
Timg_8317 地方隊の能力と言えば、護衛艦が自衛艦隊へ編入された今日、水上打撃力としてミサイル艇に依存するべきところは大きいのですが、水上打撃力だけでは災害に対処することはできませんし、離島防衛では陸上部隊を輸送することも難しいです。もっとも、ミサイル艇もせめて各地方隊に一個艇隊が必要とは考えるのですが、こちらは後述しましょう。
Himg_6958 ひうち型は基準排水量980t、満載排水量1200t。地方隊の直轄艦として五隻が建造、配備され、列記とした自衛艦です。警備任務への対応を考えていないことから掃海艇並に速力は15ノットと小さいですが、後部には73式中型トラック四台を収容する容積があり此処を多用途に用いるわけです。
Himg_4270 多用途支援艦と文字通りの活躍が出来、救難や軽輸送任務に加え、水上標的の曳航や掃海艇の支援、そして重機関銃を搭載しての港内警備任務に対応しています。特に曳航能力が大きいことから、東日本大震災では原子力災害への曳航任務に活躍したことをご記憶の方も多いのではないでしょうか。
Himg_0786 76mm単装砲を艦首部分の延長により搭載し、警備能力を付与することが改良型としての最低限の要件で、火器管制装置は熱線画像方式の簡易なものを搭載することで対応、対空レーダ装置などについても航海レーダ以上に高度なものは断念します。つまり、そこから先は護衛艦の任務ということ。
Timg_7864 こうして基準排水量は1100t程度、後部の作業空間を若干延長したいところですが、あまり高度な能力を求めた場合、大型化し結果として建造費に跳ね返ります。高性能なものは揃えたいですが、高性能な部分は護衛艦に任せ、この場合はとにかく数が必要で、数を揃えたい。
Himg_7055 可能ならば、ヘリコプターの搭載能力を有するカシオペア級のような哨戒艦を多数配備することは望ましいのですが、哨戒艦の任務は広義にOPVとなった場合海上保安庁巡視船との競合になってしまいますし、車両輸送を行うことはできません。あれもこれもと盛り込むことはできないということ。
Himg_0968 それならば、と過去に何度も掲載しているようなデンマーク海軍アプサロン級多用途支援艦のような大型水上戦闘艦と揚陸艦とを統合したような艦は、勿論理想の理想なのですが、地方隊につねに一隻を稼働状態として配備しようとすれば最低で五地方隊に合計十隻必要、しかも一隻では能力の警備範囲も限られることになるところ。これは実現にかなりの時間を要しますので喫緊の課題に他対応は難しい。
Himg_8244 ひうち型は機関出力を最小限としていますので、機関の費用は5000馬力と大きいものではありますが、速力の面で燃料消費量など維持費を最小限とすることが出来、対水上打撃力はミサイル艇により代替、対潜戦闘能力は哨戒ヘリコプターと陸上哨戒機に依存することで対応することで妥協することに。
Himg_0816 戦隊もステルス設計は断念し、支援艦と平時の任務に徹することを第一としつつ、高価な対艦ミサイル、対空レーダ、ソナーといった装備を省くことで建造費を抑え、その分、地方隊に対し3隻の一個支援隊か、警備管区が広い地方隊では4隻の二個支援隊を配備することが出来るでしょう。
Himg_8976 76mm砲が搭載されていれば、一応哨戒艦としての限定的な任務は可能です。もちろん、水上戦闘艦の追尾は速力的に無理です。水上打撃戦も時間稼ぎ以上にはできないでしょう。しかし、76mm砲は一定の抑止力があります。あぶくま型護衛艦か、はつゆき型護衛艦と同程度の護衛艦を15~20隻余分に揃え地方隊直轄にできるならば、此処までの支援艦は不用ですが、現実性を考えた妥協の結論ということです。
Himg_7354 工作船のような高速目標への対策ですが、地方隊の特殊警備隊が運用する複合艇を収容する能力が多用途支援艦には後部の大型甲板というかたちでありますので、必要に応じて対応できるでしょう。掃海艇の支援ですが、水中処分船の任務を対応することも出来ますし、後部甲板の搭載能力は掃海艇の必要な資材を配置して対応することも出来るわけです。
Himg_1166 武装ですが、12.7mm重機関銃を現在でも艦橋に搭載することがありますので、これに加えて発射用架を置き、91式携帯地対空誘導弾の連装発射装置を配置できれば、少し能力は大きくなるかもしれません。もっとも、76mm砲の能力は近年、砲弾の多様化により高性能となっていますので、その必要は必ずしも大きくないのかもしれませんが、このほか25mm機関砲でも搭載できれば、とも思うのですが、後日装備としてお茶を濁すのが、マあ現実というものでしょうね。
Himg_6897 災害派遣に際し、多用途支援艦は、外洋型曳船の構造に近いものがありますので、揚陸艇でなければ対応できない任務はどうするか、ということですが、これには一つの方法があります。まず、揚陸艇型の交通船が地方隊の港務隊には配備されています。本来は港内の補給処などからの装備品や人員の交通に用いる装備なのですが、これを活用するということ。
Timg_6696 多用途支援艦の改良により後部甲板を揚陸艇型の交通船、この母艦としての機能を発揮することが期待できるのです。揚陸艇型交通船は、外洋航行を行うことは難しいですが、おおすみ型への搭載を念頭に置いた新型も開発されています。クレーン能力に左右される部分はありますが、災害派遣に威力を発揮できることは大きい。
Himg_9479 支援任務に用いられる後部甲板は、無人機の発射拠点として用いることが出来るでしょう。実のところ、OH-6やEH-135のような連絡と観測任務に用いられるヘリコプターが地方隊に配備されていれば、これは文字通り観測任務に用いて急患輸送に用いることが限界ですので哨戒任務は使えないでしょう。
Timg_9322 しかし、迅速な情報収集手段に何かヘリコプターがあれば、ということはあります。しかし、それが出来ないのであれば無人機、標的機にも用いることになるのでしょうが、あれば便利、という装備であること、確かです。 何よりも情報収集や迅速な展開が可能となる装備なのですからね。
Img_3619 ミサイル艇は海上自衛隊全体で6隻しかありませんので2隻のミサイル艇隊が三地方隊に配置されているのみですので、水上打撃力を考えなければならない地方隊にのみ配備されているのですが、今後は小笠原諸島への脅威増大が考えられますので、結局のところ現在の三地方隊に加えもう一つの地方隊に配備が必要となります。
Himg_7358 一時期は掃海艇に30mm機関砲を搭載し哨戒艇として運用する計画が立てられていました歩ですので、多用途支援艦の能力のためにもミサイル艇だけは必要なところ。結果的にミサイル艇は10隻、出来れば15隻を配備し、五地方隊に三隻のミサイル艇を配備するミサイル艇隊を置く必要はあると思います。しかし、それ以上は予算的に厳しいでしょう。
Himg_9321 哨戒艇も、港湾哨戒艇があれば、これは理想なのですが現状では交通船により対応することが事実上の限界でしょう。もっとも、港湾内で運用する哨戒艇ならばプレジャーボートに防弾板と軽機関銃を搭載することで対応できますので、テロ対策に若干の予算が認められれば可能な印象もありはするところですが。
Timg_7212 輸送艇、輸送艦のと、が先日除籍されたばかりで地方隊に配備されている輸送艦艇は、輸送艦ゆら、輸送艇一号型2隻の合計3隻のみで、これはできれば、小型の輸送艇でもいいので増強が望ましいのですが、領海警備と災害派遣という必要性、この任務の両立を考えた場合には、輸送艇では少々限界があります。
Timg_7352 しかし、多用途支援艦であれば、前述の通り若干は輸送任務に対応出来ますし、76mm砲と搭載すれば一応哨戒艦としての能力を発揮できます。何より、搭載能力はミサイル艇よりも大きいですし、輸送艦と異なりサイドスラスターを搭載したならば、荒天時においてもある程度の運用は可能となり、運用多様性を高くすることが出来ます。何も搭載せずとも、何かを搭載することが出来る能力はそれだけ将来性ということもいえるところ。
Timg_3818 もちろん、速力22ノット、RAM簡易艦対空ミサイルを搭載し、必要に応じて後日装備の曳航ソナー搭載の余力を残し、ステルス性を維持する、なんて望ましいものを出せば、まあ、速力を抑えた米i軍の沿岸海域戦闘艦LCSになってしまうようで、そんなことをしては建造費が大きくなり、結局のところ必要な護衛艦の建造費を削ってしまうことになるので、これは論外です。
Timg_6812 将来的に予算に余裕が出来れば、アプサロン級のようなものを建造し配備し、地方隊の直轄刊とすることは望ましいですし、建造費に余裕が出来れば2500t級のLCSを小型化させたような艦を多用途哨戒艦の後継に2030年代後半をめどに検討する余地はあっていいでしょう。
Timg_3828 こうした中で、喫緊の課題に対応する地方隊の選択肢としては、選択と集中、護衛艦の部隊規模と共に全体の抑止力を向上し災害に備える観点から、ひうち型改良艦の多用途哨戒艦を18~20隻、毎年数隻の範囲で建造することは必要なのだと考えますがどうでしょうか。
北大路機関:はるな

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