静岡県立漁業高等学園は、創立50年。一流の漁師になる近道です。

漁師をめざして、がんばっている生徒たち。
30歳までの若者が全国から漁業の街、焼津に集っています。

農林水産省研修生報告会第2回

2018年09月28日 10時47分33秒 | 授業・講演

8月末から研修に来ていたSさんの研修報告会がありました。
最初に学園、その後にニジマス養殖、ウナギ養殖の現場を研修しました。
昨年は養殖関連の仕事をしていて、養殖の現場を知りたかったそうです。


それぞれの研修現場で、現在の漁業をとりまく課題を直接見ることができたようです。
さて、Sさん。
学園は一週間の研修でしたが、その間に生徒にしっかり向き合ってくれました。
彼女で女性の研修生は4人目でしたが、初めてのことです。
私も「学園での研修は、女性には難しいかな・・・」と思っていましたが、
そんなことない!って思わせてくれる人でした。

農水省に戻っても、周りは男性職員が多数。
でも学園の生徒と円滑な関係を作ることができたんですから、きっと難なくやっていけそうですね!
これからの活躍を期待しています。
また、学園に顔を出してください!

学園見学のお申し込み、入学のお問い合わせは電話、Eメールで。
電話 054-626-0219
Eメール gyogaku@pref.shizuoka.lg.jp
詳しくはホームページをご覧ください。
10月はAO入試がありますよ!願書は10月1日から受付です!
www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-940

 園長のつぶやき
今回の報告のなかで、Sさんから
「学園に沿岸漁業のコースを作っては?」
との提言がありました。
実は、ちょっと前まで実際にやっていたんですよ。沿岸専攻。
現在は沿岸専攻の生徒はいません。
漁師の人数で言えば、圧倒(あっとう)的に多いのが沿岸漁業。
だから、沿岸専門の課程を作れば、多くの需要があると思われたのです。
が...
現実には希望する人がほとんどいなかったのです。

では、沿岸漁業の専門コースは必要でしょうか?

沿岸漁業では海技士免許が不要であるため必要な授業も少なくなります。
そのため、沿岸専攻は半年の修業課程で行っていました。
沿岸漁業の多くは、子供が親の仕事を継ぎます。
でも漁師の子息、特に沿岸で一人でやっているような漁師の子供が学園に来るのはマレです。
学園に行かなくても、親に教われば良い・・・ってことでしょう。
そして、今の学園生にもいるんですけど、定置網などに就職を目指す場合。
学園に求人はたくさんきますが、沿岸で限定した漁業種類となると、必ずしもあるとは限りません。
沿岸の漁業が多いと言っても、ほとんどが個人経営で外部の人を雇うことはないからです。

加えて沿岸専攻に対して、私が問題に思う問題点は「半年間で生徒の育成ができるか」と言うこと。
学園で教えるのは技術だけはありません。
漁師として通用する習慣、生活態度も教えます。
これは1年が最低期間と言う気がします。
本当は生半可(なまはんか)な技術より、こっちの方がよっぽど大事です。
じゃあ、1年間の沿岸専攻にすれば?
となるんですけど、そうは簡単に行きません。
学園で教えるのは、どんな漁業でも使う共通の技術です。

沿岸漁業と言っても、底引き、定置網、釣り、まき網...
たくさん種類があって、内容が違います。
沿岸漁業も、一年で一人前になるほど底の浅い世界ではありません。
かといって、半年を一年にしたところで個別対応しないと育成ができません。

現在のカリキュラムでも沿岸漁業に就職する生徒は何人もいます。
そして、十分に対応出来ています。
だから、あえて沿岸専攻は不要というのが私の思うところです。
それにね、入学の時から自分の進路を限定する必要はないんですよ。
もちろん、学園では漁師という世界に限定されてはいます。
でも、その世界を広く知れば、入学時とは違う漁業を希望することは多いんです。
だから、入学希望者には
「最初から就職する漁業を決めつけない方が良いですよ」
とお話ししています。

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竿の作成、バケづくり

2018年09月27日 10時07分43秒 | 実習

カツオの一本釣りで使う竿(ハネ)づくりも最終段階。
バケの作成です。
バケは疑似餌(ぎじえ)のついた釣り針のこと。
釣りあげるカツオの大きさによって針の大きさが変わります。
だからバケも作るのは一つではありません。
釣り針に鳥の羽をつけ、さらにネコ皮とよぶ魚っぽく見せるカバーをつければ完成。


ネコ皮が本当に猫の皮なのか・・・?実習の先生もわかりませんでした。

このバケも既製品が売られています。
でも、同じように一本釣りで漁獲するビンナガ(とんぼまぐろ)は、特に漁師が独自でバケを用意することが多いそうです。
ビンナガは食いが悪く、漁師の腕の差が出る魚。
ベテラン漁師は、独自のノウハウでバケを作るそうです。


生徒の作ったバケは、11月から実施する遠洋航海実習に持参します。
果たして、しっかりカツオが釣れるのか?
お楽しみです!

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 園長のつぶやき
先日の近海カツオ漁業の講話で
「近海で捕るので鮮度が良い」
と言う話しがありました。
特に漁場(魚を釣る場所)が港から近ければ、一日で水揚げします。
たしかに鮮度が良いですね。

じゃあ、遠洋のカツオは鮮度が悪い・・・と言うと、そんなことはありません。
特に一本釣りの場合、釣りあげられたカツオは、すぐにブライン液の水槽に入ります。
ブライン液はマイナス18度くらいに冷やされた濃い食塩水です。
ブライン液で体の中心部まで温度が下がると、今度はマイナス50度の冷蔵庫に移されます。
釣った直後の鮮度が、ほぼ維持されて水揚げされます。
ただし、たくさんカツオを釣るとブライン液の温度が上がります。
始めに釣れた(まだ十分冷たいブライン液で冷やされた)カツオは本当に鮮度がバツグン。
これをブライン凍結の一級品ということで、B1(びーわん)カツオと呼びます。
海まきでも同様に処理されるものがあって、PSと呼んでいます。

御前崎にある「なぶら市場」では、いろいろな魚を食べることが出来ます。
なかでも、遠洋カツオ一本釣り漁船・日光丸を所有する日光水産のお店「一本釣り日光丸」
B1カツオを食べること出来ますよ!
そして、日光丸には学園の卒業生も多く活躍しています。

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用宗でシラス漁の体験

2018年09月26日 13時01分54秒 | 授業・講演

やっと実現しました。
7月に予定していたシラス漁の体験実習。台風でのびのびでした。
今回ダメなら、今年はあきらめるつもりでした。
雨は降ったものの、風はなくて無事に行うことができました。
向かったのは静岡市の清水漁協用宗(もちむね)支所がある用宗漁港です。
五隻に分かれて、乗船させてもらいました。

氷を用意する47期卒業のSくんとも再開。
もう2年目で、すっかりなれた感じでした。
生徒用にお土産もくれました。
相変わらず、気配りの人です。


氷を積み込む手伝いをした後、運搬船に乗り込みます。
シラス漁は、地域によって違いがあります。
用宗の場合は二艘(にそう)曳きで、二つの船で網を曳きます。
そして捕れたシラスを、すぐに運搬船が市場に運びます。鮮度バツグンです。


船頭の方から、魚探でシラスがどう見えるかも教えていただきました。


取り立てのシラスも食べさせてくれました。


船を下りた後に、漁業士でもある漁協役員の方が生徒の質問に答えてくださいました。
清水漁協のみなさん、今年もありがとうございました!


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 園長のつぶやき
学園に入学するための、もっとも大事な条件。
それは漁師になりたいこと。
だって漁師になるための専門校ですから!

学園見学者のほとんどは、漁師になりたいと思っています。
でも、そうじゃない人もいます。
進路の選択肢の一つと思っていて、とりあえず学園の説明会に来るんです。
で、どうなるか?

学園の見学に来られた方に、学園がどんな学校かをご説明します。
そのなかで、漁師の仕事に少し触れます。
でも、詳しくお話しはできません。
漁師の仕事と言っても、漁業は養殖から遠洋までありますからね。
時間が限られているなかで、お話ししても正確に伝わるのか?と思うんです。
入学者は全員卒業させるのが私の願いです。
すぐ退学するような生徒を入学させたくありません。

ですから、あえて漁師の仕事が大変であるところに絞ってお話しします。
 魚を捕る以外の仕事がたくさんある
 危険もある
 出漁してから、帰港するまで海の上では毎日仕事
 寝る時間が少ししかない時も珍しくない
 収入は仕事の大変さに比例する・・・
漁師の良さも、ちょっとだけ話します。
 満天の星空など、漁師だけが見ることのできる風景
 がんばった成果が捕った魚で実感できる・・・

選択肢の一つとして来園した人に、私がこんな説明をするわけですよ。
だから説明を聞いた人が「漁師になりたい」とはなりません。
むしろ「漁師大変じゃん。辞める」となります。
これが入学者の増えない原因の一つとなっているかも知れません。
でも、「学園に入学」することは「漁師という仕事を選ぶ」ことです。
本人には重たい話です。
仕事を選ぶ以上、覚悟をもって欲しいのです。

相手が小学生なら話が違います。
先日来た掛川市の小学生。
操船シュミレーターやカツオの一本釣り体験をしてもらい楽しい経験をしてもらいました。
彼らが漁師の仕事に興味を持ち、これから何年もかけて自分の仕事にするかを考えればよいからです。

でも、中学3年生、高校3年生ならどうなるでしょう。
「漁師楽しそうだな」
と入学して、すぐに楽しいだけじゃないことを知り・・・退学です。

昨日のブログに書いた、近海カツオ漁船の機関長講話。
例によって、生徒に感想文を書いてもらっています。
その中で
「今回を含め、話しを聞いたどの漁師も仕事が楽だと言っていない」
と書いている人がいました。

だからと言って、漁師の仕事が特別に過酷(かこく)とは思えません。
どんな仕事でも一流の人なら、自分の仕事が楽だとは言いません。
苦労を重ねて一流になったんです。
だから自分の仕事に誇りを持っています。

学園の見学では、漁師になることを決めていない方を断ることはありません。
でも、漁師の仕事を知りたいのなら、そのことを始めにお話しください。
そうすれば、学園の説明ではなく、漁師の仕事を説明します。
それに漁師の仕事を教えてくれるのは学園だけではありません。
漁協、県の水産技術研究所、県庁の水産業局を訪問するのも良いと思います。
本だってあります。YouTubeも良いでしょう。
そして、自分にとっての漁師の魅力を見つけてください。
漁師の魅力は、私が押し付けるものではありません。

そして、漁師という仕事を選ぶのなら、学園に来てください。待っています!

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近海カツオ漁船の話し

2018年09月25日 10時58分41秒 | 授業・講演

御前崎にある南駿河湾漁協に伺いました。
漁協職員のお話を聞くためですが、この方、元は近海カツオ一本釣り漁船の機関長です。
近海カツオ漁船は激減したので、このような話しを聞くことができるのは貴重です。

最初にビデオで近海竿釣りの紹介を受け、その後に生徒の質問に答えてもらいました。
一番大きい事故は?
漁師をして楽しかったこと?
苦労したことは?
魚が捕れない時はなにをするのか?
など、次々に質問があり、あっという間に予定時間になりました。
どの質問にも笑顔でていねいに答えていただきました。


静岡県にも、かつては近海カツオ漁船がたくさんありました。
なかでも御前崎は近海カツオの基地です。
その近海カツオ船に乗るため、設立当初の学園には御前崎からたくさんの生徒が来ました。
入学する前に就職する船が決まっていて、学園に来る経費は会社持ちだったそうです。
現在でも御前崎の「なぶら市場」などで近海のカツオを買うことができますよ。

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 園長のつぶやき
カツオ一本釣りも静岡県の場合は大型の遠洋漁船が主体です。
生徒の就職も、かつては近海カツオでしたが現在は遠洋カツオにシフトしています。
宮崎県では、今での近海カツオが中心です。
一本釣り自体は同じなんですが、それでも近海と遠洋で違いもたくさんあります。

まずは航海期間。
近海船は生のカツオ(冷凍しない)を水揚げするため、短期です。
だいたい2~10日です。それを年間に60回以上行うこともあります。
水揚げしたら30分後に出航することも珍しくありません。
これが遠洋だと、1~2ヶ月の航海を年に6回くらい行います。
近海はすぐに港に戻りますが、船の上の日数は少なくないです。
また、港に水揚げも母港だけなく、カツオを追って北上、南下するので各地で水揚げします。
カツオ追って北上すれば、母港には何ヶ月も帰ってこないことになります。

そして船上の仕事。
カツオを釣り上げることは小さい船のほうが、やりやすくなります。
甲板が水面から近いですから。
それと、遠洋船は釣ったカツオを空冷の冷凍庫に移動させる魚ごし(あるいはシフト)と呼ぶ作業を夜間行う必要があります。
加えて大型船になるので、海技士免許もより上級なものが必要になります。

船の生活
近海も遠洋も、新しい船の方が居住スペースが広くなっています。
大型船には真水を作る浄水器もあります。

収入
これは船によって違います。
が、やはり遠洋船の方が多くなります。
船主の会社も大きいので、安心感はあります。

カツオ一本釣りにだけでなく、まき網、マグロはえ縄でも近海から遠洋まであります。
どちらも特徴があり、どちらが優れていると簡単に言えません。
まして、漁業のことを全然知らない人が、判断するのは難しいと思います。
学園では、説明してくれる職員がいます。
長所、短所を分かった上で、自分の仕事を決めることができますよ!

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農林水産省研修生のMさんが報告会

2018年09月21日 09時17分51秒 | イベント

一ヶ月間の研修を終えるMさんが、その報告をしてくれました。
いつも東京は霞ヶ関で仕事をしている方が、静岡の漁業、漁村をみてどう感じたのか。
とても参考なります。
ちなみに、カラオケしているわけではないですよ。

沼津市の内浦、西伊豆町の田子、そして学園の3カ所で研修でした。
内浦では海面養殖、刺し網漁業。
田子では潮カツオの製造や、活魚流通などを現地研修したそうです。
天候が悪くて沖に出る機会は少なかったそうです。


生徒から
「研修中に、もうだめか...と思うくらい辛いことはありましたか」
と質問がありました。
天候の悪い時に行った刺し網漁業が大変だったそうです。


報告の中に、担い手を育成するために必要なこととして
「漁師の勘を数値化する」
と言うのがありました。
これは農業ではすでに行われています。
コンピューター管理の温室栽培もあります。

ただし、漁業が違うのは天然資源を相手にしていること。
一流漁師の腕を数値化し、誰にでもできるようにしたら良いことばかりではありません。
密猟者含む漁師以外の人もたくさん魚を捕ることができてしまう。
現時点でも人工衛星情報、GPS、高性能魚群探知機などハイテクが使われています。
そして魚は減りつつあります。
今は資源を守りながら、資源を活かす時代。
このへんが農業とは違うところです。

学園見学のお申し込み、入学のお問い合わせは電話、Eメールで。
電話 054-626-0219
Eメール gyogaku@pref.shizuoka.lg.jp
10月はAO入試がありますよ!10月1日から願書受付です。
www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-940

 園長のつぶやき
研修生のMさん。
某有名大学の水産学部出身です。
水産学部は大きく分けて三つの学科で構成させます
 漁業系(漁業機械、航海士含む)
 食品系(水産加工品、食品化学)
 生物系(養殖、漁業資源、生物学)
です。
昔から人気のあるのは生物系です。
生物が好きでたまらない「さかなクン」みたいな人が行くところです。
もちろん、偏差値も高くなります。

・・・ところが、そんな優秀な人でも就職は苦労するんですよ。
それは勉強したことを生かせる仕事はそんなにないんです。
生物関係を勉強した人を必要とする会社は少ないということです。
だから、Mさんのように専門職の公務員を目指す人も多くなります。
実際には公務員の枠も少ないので、ほとんどは生物とは関係ない会社、仕事に就職します。

でも、Mさんにしたって農水省で現在行っている仕事を水産学部で学んだわけではありません。
ほとんど場合、仕事のことは就職後に一から勉強です。
じゃあ「大学に行くのはムダ」かと言えば違います。
直接でなくても、学んだことが助けてくれる場面はたくさんあります。

学園の実習で行うロープワーク、漁具製作など。
基本的な作業を覚えます。
実際の漁船では、やり方が違うことも少なくありません。
その船でのやり方を覚える必要があります。

それでも、学園で身につけたことがムダになるのではありません。
基本作業ができているから、その応用、あるいは変形を短い時間で身につけることができるからです。
加えて、学校だからこそ安全最優先の方法を教えることができます。

海技士の勉強も同じ。
20トン未満の船を使う沿岸漁業では海技士免許は不要です。
でも20トン未満でも船を使うことには変わりありません。
海技士としての知識がどこかで役に立ちます。


漁業現場でしか学べない技術があるのは確かです。
でも、学校でしか学べない技術や知識があるのも事実です。
ですから、大学にしても学園にしても、学ぶことはムダでないんですよ。

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