ブログ「教育の広場」(第2マキペディア)

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「天タマ」第08号

2006年09月17日 | 教科通信「天タマ」
「天タマ」第08号(1998年11月27日発行)

          市立看護専門学校 哲学の教科通信

    記名式アンケート「より良い授業のために」

 まず第2項の「家族や友達に『天タマ』を見せたり、授業の事を
話したりしていますか。相手の反応はどうですか」はとても聞きた
かった事です。

 なぜこれを聞きたいのだろうか、と反省してみると、その理由と
して、自分が皆さんとほぼ同年令の子供を持つ親であるということ
があると思います。子供が学校の様子を話してくれるのはとても嬉
しいからだと思います。そして、自分に合う先生に出会って楽しく
やっている様子を聞けば「よかったなあ」と思いますし、逆に「英
語の先生は『1年くらいやったって大した事は出来ない』と言って
、雑談ばかりしている」といった事を聞くと、とても残念に思いま
す。

 私もドイツ語講師をしていますが、1年間でも工夫をして熱心に
教えれば随分出来るようになります。持ち上がりで2年間教えたク
ラスからは独検3級合格者を3人出しました。

 それに、Aさんも言うように、「この授業内だけでなく、関係す
るすべての人達とも話し合う必要のある重要な課題ばかり」だと思
っているからでもあります。これを機会に対話が少しでも広がって
欲しいと思っています。

 しかし、皆さんの中で家族と話している人は3分の1以下でした
。中学・高校時代では心理的に難しい場合も多いかと思いますが、
もう20歳です。そろそろ家族と大人の関係を作る努力をしても好い
のではないでしょうか。

 それに、話した人でも、お父さんという言葉が全然出てこないの
はどうしたことでしょうか。家族と離れて生活している人は冬休み
に話して下さるようにお願いします。

         回答から

──哲学ってどんなのか知らなかったけど、授業面白そうだね(母
)。
──母に見せたが、「おもしろいね」と言っていた。

──私と同年代は哲学=難しいというイメージがあり、概論を学ぶ
と思われるけれど、通信や授業の様子を友達に話すと、意外な感じ
を受けるようです。

──母に話したら、「まめだねえ」と一言。
──「専門学校でもこういう風にやってくれるんだねえ」と言って
いた。
──家族に話をする事はあります。個性的だと言っています。

──授業で話した事を私がしゃべると、「あんまり哲学っていうお
堅い授業じゃないんだね」と言われた。

──姉に見せた。先生は大変だと言っていました。
──友達は「いわゆる哲学のイメージとは違うね」と言っていまし
た。

──家族は「面白い授業だね」と言ってくれている。他校の友達も
興味をもってくれ、友達同士で討論している。
──親は興味深く読んでいた。「何の授業なの?」って聞かれた。

──教師をしている知人に話したら、面白そうだと、ちょっと興味
をもったようでした。

──家族が私の机の上にあった「天タマ」を読んだ時、母が「みん
なしっかり自分の意見を書いてるね。先生もコメントをのせてくれ
ていて、その生徒に対してプラスになるプリントだね」と言ってい
ました。

──驚いていた。毎回読みたい、と言っていた。
──裁判の話など家族に話したら、家族も納得をしていました。病
院の評価の話にもとても興味をもって聞いてくれていました。

──裁判をニュースでやっているのを見て、母に裁判のことを授業
でやったと話した。また姉には休憩のプリントを見せたり、好き嫌
いの区別のプリントを見せた。姉からは『明るい悩み相談室』の本
が欲しい。また好き嫌いの区別については、「この分け方は難しい
。私はこうやって好き嫌いを分けて考えたことならある」などと言
い、2人で話し合いになった。

──恋愛のパターンのテストを行った時、妹に授業のことを話した
ら、「哲学の時間にそんなこともやるんだぁ」と驚いていた。

   第6項「レポートに対する講師の感想は十分親切でしたか。
       どう思いましたか」

 講師への不満ないし要望はほとんど「レポートへの感想をもう少
し沢山書いてほしい」ということでした。まず、皆さんの声を拾っ
てみます。

──私はテーマが飲み込めてないのであまりよいレポートは書けて
いないので、いつも感想が少ないのは分かるが、多い人のを見ると
やはり羨ましいと思ってしまう。

──先生は忙しいと思うけど沢山書いてもらえるとうれしいです。
──言葉が少し難しい時もある。
──感想がとても短かったりすると、少しさみしい。

──少し簡単すぎる時もあるけど、多くの人のを見るから仕方ない
かなと思っている。
──もう少し先生のこともプラスしてあるとよかったと思います。

──もっとコメントがほしい。
──もっとたくさん書いてほしいです(大変だと思いますが、でき
るだけ)

         講師の考え

 「天タマ」と「感想」の両方を続けるのは難しいと分かった時、
私は「天タマ」を優先しました。感想は1人3行を原則として、い
ろいろな事情で多く書く場合もあります。

 皆に同じ分量を書くのは悪平等だと思います。この授業に取り組
む生徒の姿勢や熱意などが違うのですから、そしてそれがレポート
に出てくるのですから、それへの反応も違うのが本当の公平だと思
います。

 もちろん生徒に対する好き嫌いの感情で区別しているとしたら、
それは依怙贔屓であり、悪い事だと思いますが、レポートの内容と
か、休んだ人を励ますとかの理由なら、悪くないと思います。

 上の人々への感想を確かめて見ましたが、他の人より特に少なく
書いているという訳ではありませんでした。皆さんはどう思います
か?

 大多数の意見は次の3種です。

──先生の感想が少ないと、私のレポートは大したこと書かったか
なと思う。ちゃんと読んでくれてるなと思うこともある。
──自分の考え方をより深くさせてくれる感想で、とてもためにな
る。
──「天タマ」を作る上に感想を全員書くというのは本当に大変な
事だと思う。

        講師からのお願い

 「感想」の中に、あなたへの質問を書いているのに、答えてくれ
ない人がいます。これでは対話になりません。ストーカーをしてい
る訳ではありませんから、なるべく答えて欲しいと思います。

            その他

 休憩は好評でした。カンファレンスの人数(3~4人)と時間(
10~15分)も、これで好いという意見がほとんどでした。

レポートを宿題にすることについては、3割くらいの人が「時に
は好い」で、7割が「止めて欲しい」でした。

 話すスピードを落として欲しい、という意見は、当然の事ながら
ありました。

 「その他」からいくつか拾います。

──ケーキ作りが趣味ということをもっとくわしく聞きたいです。

──先生の授業は最初に思っていたより楽しかった。「天タマ」で
はみんなの意見に触れることが出来、いろいろ考えさせられた。

──より良い授業のために、私達の意見を取り入れようとする先生
の姿勢を、他の先生方にも見習って欲しいな、なんて思ったりして
います。
──先生のドイツ語、1度聞いてみたいです。

──先生は自分の意見をしっかり持っていて、それに自信を持てて
いるのがすごいと思いました。

──哲学の授業は他の授業にくらべて参加しているという感じがし
ます。

──哲学と聞くと難しいと思っていたが、自分で考え、皆と話して
、考えも広がり、興味深いものであると思いました。

──あきない授業で楽しいです。休憩では又、心あたたまるユーモ
アのある話を聞かせて下さい。

      「マッターホルンの麓」から

 村の北のはずれから、風に騒ぐ小波のように、チーゲ(山羊)の
鈴の音が高く低く響いて来る。

 南へだらだら上りになった、たった一本しかない村の通りを、牧
童に追われつつ、チーゲの群れが進んで来る。両側の家の間から、
一匹二匹、ひょいひょいと現れて、この仲間が殖えてゆく。鈴の音
はますます賑やかになる。からんころんと忙しげに鳴る鈴の音が、
村の南のはずれに消えかかると、教会の鐘が鳴り出す。そしてツェ
ルマットの朝が始まる。(中略)

 両側から谷を抑(お)し狭めるように、差し挟んでいる高い崖に
切り取られて、青空が北から細長く流れている。・・峠の向こうに
イタリアの空がのびのびとしている。

 地の底から生え抜けたような、マッターホルンの大きな姿が、た
だ一つその大空に聳えている。茶褐色の岩肌にまばらに残った白雪
が、朝日に眩(まばゆ)いほど爽やかに輝いている。

 思えばこの山一つのために、幾万の人がこの谷へ、自然への限り
ない憧れに駆られて入って来たことか。それほど底知れない力をも
って、人の心に迫って来る。美しいの一言だけでは言い尽くせない
。力強いと付け加えてもなお足りない。はっきりと大空に、鋭い直
線で描き出す二本の山稜の上に、ゆらぐ光を見るがいい。青でもな
い、緑でもない、身も魂もその中に溶かし込んで、空高いあの岩の
上に、しがみつかずには置かない、不思議な光が燃えている。(以
下略)
(浦松佐美太郎著『たった一人の山』)