まず去る12月2日に世界に向けて公開されたロシアテレビの動画:
『Russian military reveals new details of ISIS funding(ロシア軍部がISISの資金調達の新しい詳細を明らかにする)』
https://www.rt.com/news/324252-russian-military-news-briefing/
をご覧ください。これを見ると、今まで2年近くの間、IS(イスラム国)あるいはISIS(イラクとシリアのイスラム国)と“我々”との戦いについて、つまり、いわゆる「テロとの戦い」について、あれやこれやと思い悩んできたことがすっかりアホらしくなってしまうこと必定です。
上の動画は23:27分の長さで、大空の下、ISの大型石油輸送トラックの大集団がシリアの油田とイラクの油田から盗みとった石油をトルコ内へ運び込む有様が詳細明瞭な動画像、静止画像で示され、画面上を動くポインターで適切な説明が行われます。具体的な数字としては、32の精油コンビナート、11の精油工場、23の石油輸送基地、1080台の石油タンカートラックがロシア空軍機によって破壊されたと報告されています。巨大な石油タンカートラックの大集団が蝟集し、蠢き、長蛇の列をなして、シリア、イラクからトルコ国内に流れ込み、逆方向に、武器や物資を運ぶと思われるトラックの大行列を見るのは、誠にショッキングな経験で、どうしようもない虚脱感に見舞われます。一つの映像は、蝟集した3000台のタンカートラックを示します。ISのこの石油輸送に8500台のタンカートラックが動員されているのだそうです。WHAT? WHAT IS THIS!! –– 正気な米国人というものがいるのなら、こう叫ぶに違いありません。
一方、12月4日のワシントンからのロイター通信によると、有志連合の対IS空爆作戦の総攻撃回数は8605回に達したそうです。彼らの攻撃目標にこの約1万台のタンカートラックが流れるISの大動脈が含まれていないという事実ほど、文字通りグラフィックに「ISとは何か」という問いの直裁な答えを与えているものはありません。シリアとイラクから石油を泥棒して軍資金を調達し、その金で世界中の死の商人からたんまりと武器弾薬を購入し、世界中の若者たちを駆り集めて洗脳し、アサド政権打倒の米欧地上軍の代理傭兵軍隊としてアサド政権の打倒を目指す。この独立採算システム、敵ながら、誠にあっぱれ、実に卓抜なアイディアです。
12月8日のテレビの朝と夕のニュースで、「ISの財源の第一は占領地域の市民からの税収、第二は石油の密売。この第二の資金源は最近の米国空軍などの空爆で圧迫されているが、市民からの税の取り立ては防ぐ方法がない」と伝えていました。米国側は、あくまでも、この巨大な嘘で押し通すつもりなのでしょう。
仏空軍と英空軍は今から何を爆撃するのか。これも興味津々の見世物です。もし、彼らが本当にISという怪物の頸動脈を断ち切って殺してしまいたいのなら、事は簡単、残る数千台の輸送トラックを爆撃し、破壊し尽くせばよろしい。しかし、それは決して実行されますまい。
日本では殆ど報道されてないようですが、注目すべきニュースがあります。第一は米軍機がシリア政府の地上軍を爆撃したというニュースです。米国空軍機は、これまで、ISを攻撃するという名目のもとに、シリア国のインフラの壊滅を行ってきましたが、シリア政府の地上軍を直接攻撃することはしませんでした。今回の爆撃について米軍は「我々はしていない。おそらくロシア空軍機による誤爆だろう」と嘯いています。第二は、私が特に注目しているロジャバ革命を推進しているクルド人の住む地域に米軍が、シリア政府の合意を得ないままで、飛行場を建設しているというニュースです。国際法から言えば、大変な違法行為ですが、世界でダントツに一番の国際法違反国家は米国ですから、あえて驚くに値しません。私が心配するのはクルド人たちの命運です。第三は、トルコ軍がイラク北部に勝手に侵入してきたことに対して、イラク政府が撤退を要求しているというニュースです。
トルコの独裁者エルドアン大統領の皮算用は、ISを利用して、石油密売で一稼ぎし、同時にアサド政権を倒しクルド人も抑え込む、その上、NATOからも褒めてもらう、という余りにも虫の良い一石四鳥の夢と言わなければなりません。ISと結託して、シリアとイラクから石油を盗んで金儲けをしていることが立証されれば、大統領を辞任すると公言したエルドアン大統領ですが、今回ロシア国防省が提出した圧倒的な確証を前にしても、彼の背後に控える米国からの指示がない限り、辞職に踏み切ることは絶対にないでしょう。
しかし、エルドアン大統領の個人的な去就などよりも遥かに重要な問題があります。今この世界を動かしている大小のモンスターたちにとって、世界のあちらこちらで、散発的に、数十人、数百人の一般市民がテロ行為によって生命を失うことなど、実は、何の感興にも値しない些事だということです。
藤永茂 (2015年12月9日)
『Russian military reveals new details of ISIS funding(ロシア軍部がISISの資金調達の新しい詳細を明らかにする)』
https://www.rt.com/news/324252-russian-military-news-briefing/
をご覧ください。これを見ると、今まで2年近くの間、IS(イスラム国)あるいはISIS(イラクとシリアのイスラム国)と“我々”との戦いについて、つまり、いわゆる「テロとの戦い」について、あれやこれやと思い悩んできたことがすっかりアホらしくなってしまうこと必定です。
上の動画は23:27分の長さで、大空の下、ISの大型石油輸送トラックの大集団がシリアの油田とイラクの油田から盗みとった石油をトルコ内へ運び込む有様が詳細明瞭な動画像、静止画像で示され、画面上を動くポインターで適切な説明が行われます。具体的な数字としては、32の精油コンビナート、11の精油工場、23の石油輸送基地、1080台の石油タンカートラックがロシア空軍機によって破壊されたと報告されています。巨大な石油タンカートラックの大集団が蝟集し、蠢き、長蛇の列をなして、シリア、イラクからトルコ国内に流れ込み、逆方向に、武器や物資を運ぶと思われるトラックの大行列を見るのは、誠にショッキングな経験で、どうしようもない虚脱感に見舞われます。一つの映像は、蝟集した3000台のタンカートラックを示します。ISのこの石油輸送に8500台のタンカートラックが動員されているのだそうです。WHAT? WHAT IS THIS!! –– 正気な米国人というものがいるのなら、こう叫ぶに違いありません。
一方、12月4日のワシントンからのロイター通信によると、有志連合の対IS空爆作戦の総攻撃回数は8605回に達したそうです。彼らの攻撃目標にこの約1万台のタンカートラックが流れるISの大動脈が含まれていないという事実ほど、文字通りグラフィックに「ISとは何か」という問いの直裁な答えを与えているものはありません。シリアとイラクから石油を泥棒して軍資金を調達し、その金で世界中の死の商人からたんまりと武器弾薬を購入し、世界中の若者たちを駆り集めて洗脳し、アサド政権打倒の米欧地上軍の代理傭兵軍隊としてアサド政権の打倒を目指す。この独立採算システム、敵ながら、誠にあっぱれ、実に卓抜なアイディアです。
12月8日のテレビの朝と夕のニュースで、「ISの財源の第一は占領地域の市民からの税収、第二は石油の密売。この第二の資金源は最近の米国空軍などの空爆で圧迫されているが、市民からの税の取り立ては防ぐ方法がない」と伝えていました。米国側は、あくまでも、この巨大な嘘で押し通すつもりなのでしょう。
仏空軍と英空軍は今から何を爆撃するのか。これも興味津々の見世物です。もし、彼らが本当にISという怪物の頸動脈を断ち切って殺してしまいたいのなら、事は簡単、残る数千台の輸送トラックを爆撃し、破壊し尽くせばよろしい。しかし、それは決して実行されますまい。
日本では殆ど報道されてないようですが、注目すべきニュースがあります。第一は米軍機がシリア政府の地上軍を爆撃したというニュースです。米国空軍機は、これまで、ISを攻撃するという名目のもとに、シリア国のインフラの壊滅を行ってきましたが、シリア政府の地上軍を直接攻撃することはしませんでした。今回の爆撃について米軍は「我々はしていない。おそらくロシア空軍機による誤爆だろう」と嘯いています。第二は、私が特に注目しているロジャバ革命を推進しているクルド人の住む地域に米軍が、シリア政府の合意を得ないままで、飛行場を建設しているというニュースです。国際法から言えば、大変な違法行為ですが、世界でダントツに一番の国際法違反国家は米国ですから、あえて驚くに値しません。私が心配するのはクルド人たちの命運です。第三は、トルコ軍がイラク北部に勝手に侵入してきたことに対して、イラク政府が撤退を要求しているというニュースです。
トルコの独裁者エルドアン大統領の皮算用は、ISを利用して、石油密売で一稼ぎし、同時にアサド政権を倒しクルド人も抑え込む、その上、NATOからも褒めてもらう、という余りにも虫の良い一石四鳥の夢と言わなければなりません。ISと結託して、シリアとイラクから石油を盗んで金儲けをしていることが立証されれば、大統領を辞任すると公言したエルドアン大統領ですが、今回ロシア国防省が提出した圧倒的な確証を前にしても、彼の背後に控える米国からの指示がない限り、辞職に踏み切ることは絶対にないでしょう。
しかし、エルドアン大統領の個人的な去就などよりも遥かに重要な問題があります。今この世界を動かしている大小のモンスターたちにとって、世界のあちらこちらで、散発的に、数十人、数百人の一般市民がテロ行為によって生命を失うことなど、実は、何の感興にも値しない些事だということです。
藤永茂 (2015年12月9日)
「正気な米国人というものがいるのなら」に大変な皮肉を感じて笑ってしまいました。
ジョン・レノンの言葉「世界は狂人によって支配されている」は真実で、学校教育による「歴史」は虚構だと思い到った今日、どういう気持ちで毎日を生きてゆくべきか、こんな世界にどう向き合って行くべきか、こんな日本でどう個人的抵抗を堅持してゆくか、思い悩みます。
先生の以前のブログ記事をとおして、ジンバブエのハイパーインフレや経済崩壊の要因が、白人が保有する広大な土地の収用など(植民地時代の負の遺産の清算)をきっかけとした西側先進国による意図的なものであることを知りました。けっして、マスコミやいわゆる事情通・文化人たちが報じるような、「独裁者」による国家の私物化などではないのだということを知りました。
シリア情勢は、本当に悲惨な状況となっていますが、マスコミはここでも、欧米・トルコ・サウジなどを擁護しつつ、ロシアを「独裁者」の後ろ盾、クルド人を「過激派」とマイナスの表象で報じています。
シリアの混沌を生んだ元凶はなんだったのか。「アラブの春」(先生は、リビアとシリアはアラブの春ではないと訴えられました)に乗じた欧米の不当な干渉・介入こそが元凶ではないのか。ISというモンスターを生み背後で動かしているのは何か。これについても、ISは欧米側の「傭兵」、と先生は見抜かれました。ISと本気で戦っているのは誰か。クルド人・アサド政府軍・ロシア軍ではないのか。加えて、クルド人たちが描く理想的な共存共生の統治構造と気高き憲法の存在も知りました。先生のブログをとおし、本当に様々な真実を知る機会に恵まれました。
先生は、ISを倒そうとするならISの資金源を断つべきなのに、なぜそれをしようとしないのかと、欧米の姿勢に不信感をもって書かれましたが、トルコ政府や欧米は、ISのトルコ経由での石油密輸は野放しにし続けました。その一方、IS掃討に赴いたロシア空軍機を「領空侵犯」と撃ち落とし、しかも墜落後に機体を爆破、パイロットも殺害するというやり口でした。日本のマスコミは、「トルコのエルドアンも、ロシアのプーチンもプライドが強く、似た性格なので、収拾がつきにくいでしょうね」などと下らぬ論評を垂れ流していました。
日本は今年、集団的自衛権を解禁し、沖縄の基地機能を再編強化、日米共同での戦争遂行の道を猛進しつつあります。戦後70年にして、先の大戦で多大な犠牲をはらい手に入れた憲法9条という人類史上輝かしい「平和憲法」まで捨て去ろうとしています。暗闇の中で、先生のブログは光を灯し続けてくださっています。どうかこれからもその力強い灯を照らし続けてください。
このところ更新されていないので心配しております。
お体は大丈夫でしょうか。
御身くれぐれもお大切に、お元気でよいお年をお迎えください。
今年も本当にありがとうございました。