日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 いやー昨日(2007/06/28)の中国国内メディアは「従軍イワノフ」問題で持ち切りでした。例の米下院外交委員会が対日非難決議案を可決したというアレです。

 今回の問題について日本政府が終始曖昧な姿勢だったことは禍根を残すでしょう。二度と繰り返してはならない過ちだと思います。……いやもちろん慰安婦問題への日本政府の対応のことですよ。主張するところはちゃんと声高に主張しないと。虚構を史実めかせてしまうことは、国際社会における日本のイメージにも関わりますから、断じてなりません。

 中国国内メディアによるイワノフ連発の鬼の首をとったような騒ぎっぷりからして、反日信者で自称愛国者の糞青どもはさぞや溜飲を下げていることでしょう。これを政争に発展させる動きがあれば別ですけど、胡錦涛はいいガス抜きができて、とりあえずホッとしていることと思います。

 セットメニューというかコース料理、これを苦心惨憺して調理して出したあとに、偶然ながら最高のデザートがついた。……李登輝・台湾前総統の訪日と靖国神社参拝、それに成田空港での糞青による李登輝氏襲撃事件を軸にして眺めると、そんなところではないかという気になります。

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 以下は、李登輝氏襲撃犯である薛義が単なるDQN系糞青であり、中国政府の工作員として犯行に及んだものでないことを前提に話を進めます。

 李登輝氏の訪日期間中における胡錦涛政権の姿勢は、前回(2004年末)とは異なり、終始抑制されたものでした。元々はそういう献立が設定されていたのでしょう。表面的ながらも日中友好ムードが持続していますし、変なリアクションを示すことで、秋の党大会を前に党上層部の足並みが乱れることを避けようという狙いもあったと思います。

 靖国神社参拝に関しても中国国内メディアに報道を許したものの、外交部報道官定例会見では靖国参拝に関する質問が飛んでも巧みにスルーして「靖国神社」という固有名詞すら出ずじまい。A日M日K同あたりは不完全燃焼という気分だったことでしょうが、胡錦涛政権にしてみれば「最悪こういうこともある」と、織り込み済みだったのかも知れません。

 中国国内メディアの報道も「反日」ではなく、あくまでも「台湾問題」という扱いです。

「台湾独立派の頭目があの軍国主義の伏魔殿の如き靖国神社に参拝までした。やはり憎むべき悪党だ」

 といったニュアンスになるかと思います。

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 ところが6月9日、帰国すべく成田空港に入った李登輝氏に対し糞青・薛義がペットボトルを投げて逮捕されるという事件が突発してしまいました。これも台湾問題で、「台湾独立派の頭目」に天誅を加えんといったものでしょう。

 だから、つまり「反日」ではなく「台湾問題」だから、中国国内メディアの速報にも待ったがかかりませんでした。糞青は快哉を叫び、ネット上で薛義は「民族英雄」扱い。

 ●基地外と基地外を賞賛する民度、これぞまさに中国。(2007/06/10)

 ただし、

「薛義の釈放要求署名活動をやろう」

 といった動きが出てくるとこれは日中関係の範疇となりますから問題です。2005年春の反日騒動のように、「反日」を掲げてアンチ胡錦涛諸派が政局に仕立てようとする可能性も出てきます。台湾問題としても訪日&靖国参拝で大憤慨した軍内部の非主流派,特に、

「米国が台湾問題に手を出したら核戦争やっちゃうよ」
「真の富国強兵を実現するにはクーデターも選択肢のひとつ」

 といった電波系対外強硬派が動き出さないとも限りません。「手術中に突然停電」とか、「あっしまった動脈切っちゃった先生血圧低下してます心電図ピー」というほどではないにせよ、胡錦涛政権にとっては早急な対応を迫られる事態ということになります。

 要するに「あっさり風味」で通す筈だった献立を大幅に変更しなければならなくなりました。油コテコテでなくても濃厚な味わいの料理へと改めることになったのです。

 ――――

 この李登輝氏襲撃事件(6月9日)から一週間ないし10日程度の間に中国指導部及び軍内部で何らかの綱引きが行われた可能性があります。傍証は、

 ●国営通信社・新華社系の国際時事紙『国際先駆導報』が薛義に関する記事を「薛義よくやった」的な色彩で掲載(6月15日)。
 ●糞青15名が日本大使館に「なんちゃってデモ」を仕掛けた(6月18日)。
 ●人民解放軍機関紙『解放軍報』が突然「軍の国軍化に断固反対」という論評記事を発表した(6月18日)。
 ●薛義の扱いについて外交部報道官が定例会見で「日本政府の善処を望む」と低いトーンながらも余計なお節介を焼いた(6月19日)。

 ……などです。

 ●お、ひょっとして非主流派の反胡錦涛ビーム?(2007/06/16)

 特に注目すべきは『解放軍報』の論評記事で、「軍の国軍化」とは文字通りの国軍化へのアクションではなく、「国軍化=党中央による指導の否定」ともいえるため、「党中央の指導に従わない」場合にも使える表現だからです。何らかの独断専行が一部で起こりかけた可能性を示唆しています。

 ●糞青のデモより軍内部。何かあったのでは?(2007/06/19)

 ――――

 とはいえこの綱引き、基本的に胡錦涛サイドがある程度妥協しつつも相手を封じ込め、マスコミ掌握に成功したといっていいでしょう。

 折から訪中していた日本の青年代表団についてのニュースを胡錦涛の御用新聞たる『中国青年報』が特集し(6月15日)、さらにその流れがすぐ新華社にも広がって、訪中団の行く先々での一挙手一投足をちまちまと報じるようになったからです。

 「反日」の芽を摘み、政治勢力・民間組織・軍内部の一派といった向きの蠢動を押さえ込んだということになります。

 そして、『国際先駆導報』が続報ともいえる記事を報じることになるのです。

 ●独占インタビュー・李登輝訪日に抗議した中国人エンジニア薛義(新華網 2007/06/25/10:43)
 http://news.xinhuanet.com/herald/2007-06/25/content_6287232.htm

 ……というものですが、厳密には続報ではありません。「前回の報道」である、

 ●馮錦華から薛義まで…愛国激情の弁(新華網 2007/06/15/09:31)
 http://news.xinhuanet.com/herald/2007-06/15/content_6245460.htm

 は薛義万歳色の強いルポでしたが、今回は、

「李登輝訪日に抗議した中国人エンジニア薛義」

 と、淡々としたタイトルになっています。コース料理とすればメインディッシュといったところですが、「愛国」の2文字もタイトルから消えて、扇情色を薄めたものとなっています。しかも今回は独占インタビュー。

 ……なんですけど、これをインタビュー記事として扱ってはいけません。続報でもありません。前回は恐らく『国際先駆導報』が比較的自由に筆を振るえたのでしょうけど、今回は胡錦涛政権が設けた制限の中で書かれ、胡錦涛政権による配慮が隅々にまで及んだ内容というべきです。

 ――――

 いわば、インタビューではなく胡錦涛政権の公式見解であり態度表明。「独占」というのも、「重大ニュースは新華社の配信記事をそのまま使うこと」という不文律そのままに、新華社系である同紙のみに許されたものでしょう。もちろんこれを新華社が転載して記事を配信しています。

 これと同じようなものです。

 ●中共お手製の首脳会談報道(2004/11/23)

 当然ながら、今回の記事で語っていることが薛義の肉声そのまんまと考えてはいけません。削るところは削り、修正すべき表現は手直しして、胡錦涛政権が「これならよかろう」という内容まで味を薄めているものと思われます。。

 ●中国国内で反日気運が高まること。
 ●日中関係に悪影響を及ぼす(日本に借りをつくる)こと。
 ●軍部を含めた党上層部内の足並みが乱れ、胡錦涛の統率力が低下すること。

 ……という3つの事態を回避するという意図が徹底しているといっていいでしょう。

 ただし、上述したように李登輝氏襲撃事件を契機に内部で何やら動きがあった気配がありました。その綱引きに勝利してマスコミを掌握したとはいえ、胡錦涛の指導力はいまなお万全という訳ではありません。

 要するにある程度の妥協を迫られた挙げ句「なんちゃってデモ」が実現したように、今回の記事にも胡錦涛サイドが譲った部分があり、はからずも胡錦涛路線の浸透度をはかる目安ともなっているということです。


「下」に続く)




コメント ( 4 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
こんにちは (yoko)
2007-06-29 15:11:43
わたしも慰安婦決議案は腹立たしく見ていました。
2000年以降の対中決議案は9つもあるのに、中国国内ではそのことについては報道されていないのでしょうか?

2000年、米上院でラサ蜂起を記念する決議案を可決。
2002年、米上院でトゥルク・テンジン・デレク及びチベット人政治囚の釈放を要求する決議を可決。
2004年、米下院で人権侵害について中国を非難する決議案を可決。
2005年、米下院で中国強制労働制度を譴責する決議案を可決。
2005年、米下院で反国家分裂法を非難し政府に適切な措置をとるよう求める決議を可決。
2006年、米下院で中共当局が宗教に対する迫害が日増しにエスカレートした事を非難する決議案が可決。
2006年、米下院で1989年天安門事件の犠牲者に対する敬意を払うことを求める決議案を可決。
2006年、中共政府は権限を与えられずにカトリック教の主教を勝手に任命した事を非難する決議案が可決。
2007年、米下院で中共当局がスーダンのダルフール大量虐殺を黙認している事に抗議する決議案が可決。

あと、「成田空港でペットボトル投げた犯人 ソフトバンクBBで 光の納期調整やってる派遣社員だよ!!!!」という書き込みが日本ではあったのですが、中国のニュースでは犯人の勤め先などの情報は流れていないのでしょうか?
もし犯人の就業先情報が流れているのなら、ぜひ教えていただきたいです。
 
 
 
Unknown (Unknown)
2007-06-29 19:31:51
>虚構を史実めかせてしまうことは

虚構ってなんですか?
 
 
 
辞書を引けば (芋焼酎)
2007-06-29 20:18:41
虚構って漢字書けるなら辞書引けるでしょ。
 
 
 
工作員乙 (Q)
2007-06-29 23:04:32
「いわゆる従軍慰安婦問題」が事実か否か、という問題はさておき、なんとも奇妙な決議ですよね。アメリカの議会が日本の首相に対して(支那・朝鮮に対して)謝罪すること、を求めている訳で。

大体この「いわゆる従軍慰安婦問題」にはアメリカ政府は関係ないじゃん、と。

同盟国だから云々言うのであれば、例えば日本がアメリカ政府に対してイラクで行ったこに対して謝罪せよ、と決議したらアメリカは謝罪するのかと言えば、そんなもん「内政干渉だ」の一言で終了でしょう。

「今なんでこの決議が行われたのか」とTVのニュースではなんやかんや言ってますが、簡単に言えば『ブッシュがイラクでヘタ打って選挙で負けて、支那寄りの民主党に議会を牛耳られてるから』なわけで。

もっと簡単に言うと「支那の工作員乙」。
 
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