日刊イオ

月刊イオがおくる日刊編集後記

形のない「北朝鮮嫌悪」

2014-10-10 09:00:00 | (理)のブログ
 愛知・「無償化」裁判の第9回口頭弁論が、10月7日に行われました。名古屋地裁前には、傍聴券を求めて186人の同胞、日本市民が足を運びました。愛知朝高3年の生徒らも訪れ、傍聴席の1/3以上を埋めました。

 法廷では、現役朝高生の男性原告が意見陳述をしました。男性は、「学生が自分の国の言葉や歴史を学んではいけない理由などない。日本政府のやっていることはいじめではないか」と、朝鮮学校を「無償化」制度から除外した日本政府に対する憤りを力強くのべました。

 またこの日、弁護団の矢崎暁子弁護士が原告側の準備書面(10)の内容を意見陳述しました。私は愛知での「無償化」裁判を何度か取材していますが、準備書面の陳述を傍聴したのは初めてです。

 書面の内容は、日本社会の中に蔓延しているいわゆる「北朝鮮嫌悪」の問題についてでした。「現在、『北朝鮮嫌悪』を煽る言論はためらいもなく発せられ、そんな状況が当たり前になっている」。それがいかに異常で危険なことなのかを、形成過程、社会・人々に与える影響、そこから派生する各問題などをもとに説明していきました。
 
 その上で、「裁判所には、被告国が原告らを『高校無償化』から除外していることに対し、それが『北朝鮮嫌悪』に基づく世論や偏見によるものではないか、客観的かつ冷静な検証を求める。司法こそが『北朝鮮嫌悪』によらない冷静な判断を期待できる、『少数派のための最後の砦』であり、だからこそ本訴の提起に至った」と主張しました。

 口頭弁論後の報告集会では、傍聴できなかった方々への報告がなされました。矢崎弁護士は準備書面について、「今回の書面を、約1年かけて準備してきた。国は『北朝鮮嫌悪』に基づいた偏見を並べ立てているだけではないか。これが訴訟の本質であり、どうしてこの裁判が起きているのかを知るための前提条件だった」とのべました。日本が朝鮮を植民地にした時代まで遡り、歴史的な観点からも考察しながら、弁護団が一丸となって作成したといいます。形のない、しかし大多数の風潮によってこんなにも大きな影響力を持ってしまった「北朝鮮嫌悪」。準備書面はその正体を歴史的観点、社会的観点から明かし、本質を正確に規定するとてもわかりやすい内容となっていました。

 報告後、会場から質問がありました。「今日のように、支援者が準備書面の内容を知ることは可能なのか」。弁護団からの答えは、「原告の一切の情報を秘匿するという条件のもと、要望があれば可能」とのこと。以前の報告集会で中谷雄二弁護士が「国が何を言っているか、自分たちが何を主張しているのかを、ハッキリと知らなければいけない」とおっしゃっていましたが、そういった理解を深めるために今後、準備書面が有効利用されるのもいいなと感じました。

 愛知では9月から、月に1度「無償化デー」を設けて、街頭宣伝や学習会など、裁判支援に繋がる活動を展開していくことが決められました。10月は25日に実施予定。他にもたくさんの取り組みを進めています。愛知での裁判支援はこれからさらに活発化していきそうです。(理)

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