出会う人からさまざまなことを学んでいく信繁(堺雅人)。
今回は、上杉景勝(遠藤憲一)。
生き残るために裏切り、権謀術数を使う父・昌幸(草刈正雄)のことで悩んでいた信繁は、景勝にこんなことを尋ねた。
「義を忘れ、おのれの欲のためだけに生きると人はどうなりましょう?」
景勝は答えて、
「織田信長の惨めな最期を思い出してみよ。死に様は生き方を映す鏡。おのれに恥じぬよう生きるのみじゃ」
信繁はさらにこんなことも学ぶ。
「国づくりの大もとは民が安心して暮らせること。民の心をつかめなくて何が国づくりじゃ」
「上杉は義のないくさはせぬ。おのれの欲望のために他国を侵略することはない」
素晴らしい考えですね。
現在の世界の指導者たちに教えてあげたい。
しかし、次に信繁は<理想と現実は違っていること>を学んでしまった。
実は景勝は無力だったのだ。
現実では、民の諍いを収めることもできない。
だから、いはく、
「今のわしには話を聞いてやることしかできぬ。これが本当のわしじゃ。世の中思いどおりにはいかぬ」
理想と現実の間で苦悩する景勝。
おまけに「これが本当のわしじゃ」と自分の弱さも信繁に見せてしまった。
景勝は弱い無力な自分をさらけ出せる人。
決して「格好つけ」ではない。
こんな景勝について、信繁はこう語る。
「正直、昨日まで私は御屋形様を尊敬しておりました。今はそれ以上に慕わしく存じます」
信繁と景勝の信頼関係がうまれた瞬間だ。
その信頼関係は、鉄火起請で争う民たちの問題を、ふたりで収めたことでさらに深まる。
今回のエピソードで、
景勝は信繁の〝第二の父〟になったのだろう。
見事な作劇ですね。
信頼関係を築く信繁と景勝のエピソードだけで、ほとんど1話を使った。
今までの大河ドラマって、これがなかったんですよね。
いろいろな人が主人公に絡むけど、結局、誰とも心を通わせていない。みんなが浅い繋がりで通り過ぎていく。
ドラマとは人間関係なのに。
そして、信繁と景勝の関わりをじっくり描いたから、ラストのクライマックスが盛り上がる!
真田に戻って家康と戦いたいと申し出る信繁に対して、景勝は、
「許そう。存分に戦って来い! そして、戦が終わったら必ずまた戻って来い!」
……………………………………………………………………………………………
最後は昌幸。
信繁が上杉の人質になったことについて、沼田城の件では「人質に出してよかった」と言っていたのに、徳川が攻めてきて戦える部将の駒が足りなくなると、
「今にして思えば、源次郎を人質に出したのはまずかったわ」(笑)
でも、これが昌幸なんですよね。
状況の変化に応じて、臨機応変。悪く言えば、行き当たりばったり。
柔軟で首尾一貫したものなどない。
これが昌幸のサバイバル術。
一方、これと対照的なのは景勝。
彼は〝義〟や〝理想〟にこだわるあまり、柔軟な対応が出来ない。
一本筋が通っているけど、すごく無器用。
昌幸と景勝。
この対照的な父親から学んで、信繁は〝柔〟と〝硬〟を兼ね備えた人物になっていくのだろう。
今回は、上杉景勝(遠藤憲一)。
生き残るために裏切り、権謀術数を使う父・昌幸(草刈正雄)のことで悩んでいた信繁は、景勝にこんなことを尋ねた。
「義を忘れ、おのれの欲のためだけに生きると人はどうなりましょう?」
景勝は答えて、
「織田信長の惨めな最期を思い出してみよ。死に様は生き方を映す鏡。おのれに恥じぬよう生きるのみじゃ」
信繁はさらにこんなことも学ぶ。
「国づくりの大もとは民が安心して暮らせること。民の心をつかめなくて何が国づくりじゃ」
「上杉は義のないくさはせぬ。おのれの欲望のために他国を侵略することはない」
素晴らしい考えですね。
現在の世界の指導者たちに教えてあげたい。
しかし、次に信繁は<理想と現実は違っていること>を学んでしまった。
実は景勝は無力だったのだ。
現実では、民の諍いを収めることもできない。
だから、いはく、
「今のわしには話を聞いてやることしかできぬ。これが本当のわしじゃ。世の中思いどおりにはいかぬ」
理想と現実の間で苦悩する景勝。
おまけに「これが本当のわしじゃ」と自分の弱さも信繁に見せてしまった。
景勝は弱い無力な自分をさらけ出せる人。
決して「格好つけ」ではない。
こんな景勝について、信繁はこう語る。
「正直、昨日まで私は御屋形様を尊敬しておりました。今はそれ以上に慕わしく存じます」
信繁と景勝の信頼関係がうまれた瞬間だ。
その信頼関係は、鉄火起請で争う民たちの問題を、ふたりで収めたことでさらに深まる。
今回のエピソードで、
景勝は信繁の〝第二の父〟になったのだろう。
見事な作劇ですね。
信頼関係を築く信繁と景勝のエピソードだけで、ほとんど1話を使った。
今までの大河ドラマって、これがなかったんですよね。
いろいろな人が主人公に絡むけど、結局、誰とも心を通わせていない。みんなが浅い繋がりで通り過ぎていく。
ドラマとは人間関係なのに。
そして、信繁と景勝の関わりをじっくり描いたから、ラストのクライマックスが盛り上がる!
真田に戻って家康と戦いたいと申し出る信繁に対して、景勝は、
「許そう。存分に戦って来い! そして、戦が終わったら必ずまた戻って来い!」
……………………………………………………………………………………………
最後は昌幸。
信繁が上杉の人質になったことについて、沼田城の件では「人質に出してよかった」と言っていたのに、徳川が攻めてきて戦える部将の駒が足りなくなると、
「今にして思えば、源次郎を人質に出したのはまずかったわ」(笑)
でも、これが昌幸なんですよね。
状況の変化に応じて、臨機応変。悪く言えば、行き当たりばったり。
柔軟で首尾一貫したものなどない。
これが昌幸のサバイバル術。
一方、これと対照的なのは景勝。
彼は〝義〟や〝理想〟にこだわるあまり、柔軟な対応が出来ない。
一本筋が通っているけど、すごく無器用。
昌幸と景勝。
この対照的な父親から学んで、信繁は〝柔〟と〝硬〟を兼ね備えた人物になっていくのだろう。
「信頼関係を築く信繁と景勝のエピソード」には3段階あったと思います。
・第一段階は「お主と会うのは3度目じゃの」
過去2回の出会いが伏線となっており、最初から景勝は信繁に好意をいだいていました。だから
「会いたかったぞ!源次郎」
・第二段階はご指摘の「昨日まで私は御屋形様を尊敬しておりました。今はそれ以上に慕わしく存じます」
ここで信繁と「ありのままの景勝」との絆が成立するわけですが、注目すべきなのは、視聴者の目にも景勝の人物像が一挙に明らかになっている点です。
逆に言えば、視聴者に信繁と共に景勝の実像に触れさせるために、これまで敢えて景勝の描写を抑え目にしていたわけです。
このように、徹底した信繁ないしは真田家視点を貫いていることは、家康が小牧・長久手を済ませていることをあっさりナレーションで示唆しただけに留めているところにも見られます。
・第3段階は鉄火起請問題を収めた後の「お主のような息子が欲しかった」
もはや景勝の信繁に対する思いは信頼を通り越して「愛情」の域に達しています。
ご指摘の「存分に戦って来い! そして、戦が終わったら必ずまた戻って来い!」を第4段階としてもいいですが、これは第3段階の「実り」というべきでしょう。
ところで、本作の「クールな切れ者」兼続は「天地人」の「へなちょこ」兼続よりもはるかに良いと思います。
いつもありがとうございます。
おっしゃるとおり、完全に真田視点に徹していますよね。
秀吉なんか、これまで1シーンしか出て来ない。
おそらく信繁の生きる世界が拡がっていくにつれて、彼らが出て来るんでしょうね。
三段階の描写もいいですよね。
信繁は、尊敬→親しみ→父親。
景勝は、興味→ありのままを見せる→息子。
見事な「実り」です。
磁石に引かれるように、ふたりは心を通わせていきました。
兼続は、どうしても「天地人」と比較してしまいますよね。
「へなちょこ」兼続(笑)
ところが、今作の兼続は諫めながらも、景勝の心を先読みして手を打っている。
まさに切れ者軍師という感じです。