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平成エンタメ研究所

最近は政治ブログのようになって来ました。世を憂う日々。悪くなっていく社会にひと言。

真田丸 第12回「人質」~私は御屋形様を尊敬しておりました。今はそれ以上に慕わしく存じます

2016年03月28日 | 大河ドラマ・時代劇
 出会う人からさまざまなことを学んでいく信繁(堺雅人)。
 今回は、上杉景勝(遠藤憲一)。

 生き残るために裏切り、権謀術数を使う父・昌幸(草刈正雄)のことで悩んでいた信繁は、景勝にこんなことを尋ねた。
「義を忘れ、おのれの欲のためだけに生きると人はどうなりましょう?」
 景勝は答えて、
「織田信長の惨めな最期を思い出してみよ。死に様は生き方を映す鏡。おのれに恥じぬよう生きるのみじゃ」
 信繁はさらにこんなことも学ぶ。
「国づくりの大もとは民が安心して暮らせること。民の心をつかめなくて何が国づくりじゃ」
「上杉は義のないくさはせぬ。おのれの欲望のために他国を侵略することはない」

 素晴らしい考えですね。
 現在の世界の指導者たちに教えてあげたい。
 しかし、次に信繁は<理想と現実は違っていること>を学んでしまった。
 実は景勝は無力だったのだ。
 現実では、民の諍いを収めることもできない。
 だから、いはく、
「今のわしには話を聞いてやることしかできぬ。これが本当のわしじゃ。世の中思いどおりにはいかぬ」
 理想と現実の間で苦悩する景勝。
 おまけに「これが本当のわしじゃ」と自分の弱さも信繁に見せてしまった。
 景勝は弱い無力な自分をさらけ出せる人。
 決して「格好つけ」ではない。

 こんな景勝について、信繁はこう語る。
「正直、昨日まで私は御屋形様を尊敬しておりました。今はそれ以上に慕わしく存じます」
 信繁と景勝の信頼関係がうまれた瞬間だ。
 その信頼関係は、鉄火起請で争う民たちの問題を、ふたりで収めたことでさらに深まる。
 今回のエピソードで、
 景勝は信繁の〝第二の父〟になったのだろう。

 見事な作劇ですね。
 信頼関係を築く信繁と景勝のエピソードだけで、ほとんど1話を使った。
 今までの大河ドラマって、これがなかったんですよね。
 いろいろな人が主人公に絡むけど、結局、誰とも心を通わせていない。みんなが浅い繋がりで通り過ぎていく。
 ドラマとは人間関係なのに。
 そして、信繁と景勝の関わりをじっくり描いたから、ラストのクライマックスが盛り上がる!
 真田に戻って家康と戦いたいと申し出る信繁に対して、景勝は、
「許そう。存分に戦って来い! そして、戦が終わったら必ずまた戻って来い!」

 ……………………………………………………………………………………………

 最後は昌幸。
 信繁が上杉の人質になったことについて、沼田城の件では「人質に出してよかった」と言っていたのに、徳川が攻めてきて戦える部将の駒が足りなくなると、
「今にして思えば、源次郎を人質に出したのはまずかったわ」(笑)

 でも、これが昌幸なんですよね。
 状況の変化に応じて、臨機応変。悪く言えば、行き当たりばったり。
 柔軟で首尾一貫したものなどない。
 これが昌幸のサバイバル術。

 一方、これと対照的なのは景勝。
 彼は〝義〟や〝理想〟にこだわるあまり、柔軟な対応が出来ない。
 一本筋が通っているけど、すごく無器用。

 昌幸と景勝。
 この対照的な父親から学んで、信繁は〝柔〟と〝硬〟を兼ね備えた人物になっていくのだろう。


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私好みの回 (TEPO)
2016-03-28 10:00:02
私好みの回でした。
「信頼関係を築く信繁と景勝のエピソード」には3段階あったと思います。

・第一段階は「お主と会うのは3度目じゃの」
過去2回の出会いが伏線となっており、最初から景勝は信繁に好意をいだいていました。だから
「会いたかったぞ!源次郎」

・第二段階はご指摘の「昨日まで私は御屋形様を尊敬しておりました。今はそれ以上に慕わしく存じます」
ここで信繁と「ありのままの景勝」との絆が成立するわけですが、注目すべきなのは、視聴者の目にも景勝の人物像が一挙に明らかになっている点です。
逆に言えば、視聴者に信繁と共に景勝の実像に触れさせるために、これまで敢えて景勝の描写を抑え目にしていたわけです。
このように、徹底した信繁ないしは真田家視点を貫いていることは、家康が小牧・長久手を済ませていることをあっさりナレーションで示唆しただけに留めているところにも見られます。

・第3段階は鉄火起請問題を収めた後の「お主のような息子が欲しかった」
もはや景勝の信繁に対する思いは信頼を通り越して「愛情」の域に達しています。
ご指摘の「存分に戦って来い! そして、戦が終わったら必ずまた戻って来い!」を第4段階としてもいいですが、これは第3段階の「実り」というべきでしょう。

ところで、本作の「クールな切れ者」兼続は「天地人」の「へなちょこ」兼続よりもはるかに良いと思います。
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三段階 (コウジ)
2016-03-29 09:44:16
TEPOさん

いつもありがとうございます。

おっしゃるとおり、完全に真田視点に徹していますよね。
秀吉なんか、これまで1シーンしか出て来ない。
おそらく信繁の生きる世界が拡がっていくにつれて、彼らが出て来るんでしょうね。

三段階の描写もいいですよね。
信繁は、尊敬→親しみ→父親。
景勝は、興味→ありのままを見せる→息子。
見事な「実り」です。
磁石に引かれるように、ふたりは心を通わせていきました。

兼続は、どうしても「天地人」と比較してしまいますよね。
「へなちょこ」兼続(笑)
ところが、今作の兼続は諫めながらも、景勝の心を先読みして手を打っている。
まさに切れ者軍師という感じです。
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