Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

パーヴォ・ヤルヴィ/N響

2018年02月17日 | 音楽
 パーヴォ・ヤルヴィ指揮N響のフランス音楽プログラム。フランス音楽のよさが楽しめそうなプログラムだ。

 1曲目はデュルフレ(1902‐1986)の「3つの舞曲」。デュルフレというと「レクイエム」や「アランの名による前奏曲とフーガ」が思い浮かぶが(そして両曲とも名曲だが)、この「3つの舞曲」という曲は知らなかった。これもよい曲だ。牧歌的な情緒を漂わせた楽しい曲といったらよいか。アルト・サクソフォンやタンブーラン(打楽器)の使用が、ビゼーの「アルルの女」を思わせる。演奏も、音色への配慮、立体的な音像、正確なリズムなど、パーヴォ/N響らしさが出ていた。

 2曲目はサン・サーンスのヴァイオリン協奏曲第3番。ヴァイオリン独奏は樫本大進。過度に甘くならず、じっくり音楽を味わう演奏。さすがに名曲だ、まったく無駄がないと思った。樫本大進のソロは、オーケストラを引っ張っていく推進力を持つもの。日頃は(ベルリン・フィルということは別にして)オーケストラのコンサートマスターとして活動している人の枠を超えるものだった。

 休憩後の3曲目はフォーレの「レクイエム」。オーケストラが登場する前に、N響の常務理事(と名乗ったように思う)が登場して、バリトン独唱に予定していたアンドレ・シュエンが体調不良のため、甲斐栄次郎に代わる旨のアナウンスがあった。プログラムには出演者交代の紙が挟んでなかったので、それも間に合わないくらい急な交代だったのかもしれない。合唱とソプラノ独唱は暗譜だったが、甲斐栄次郎だけ譜面を持っていたことも、舞台裏の慌ただしさを物語っていた。

 演奏はすばらしかった。東京混声合唱団がハーモニーを崩さず、時にはアカペラになるこの曲を、破綻なく歌い切った。甲斐栄次郎もさすがの美声だった。ソプラノ独唱は市原愛。オーケストラは精細な神経が行き届き、全体を統率するパーヴォの指揮には力みがなかった。

 わたしは何十年ぶりかでこの曲の実演を聴いたが、(今頃こんなことに気が付いて恥ずかしいが)弦の編成が1st Vn.12、2nd Vn.8、Vla.12、Vc.8、Cb.8とかなり特殊だ。ヴァイオリンを欠く第1曲と第2曲で、ヴィオラが豊かに鳴ったので、それに気付いた。その特殊なバランスが効果的だった。

 今年も3月11日が近づくこの時期にこの曲を聴くと、東日本大震災の被災者のことが胸に浮かんだ。
(2018.2.16.NHKホール)
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