Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

「ベルギー奇想の系譜」展

2017年09月20日 | 美術
 見たい映画と展覧会がたまってきた。演奏会や演劇はチケットを買ってあるので、その日が来たら行かざるを得ないが、映画や展覧会はいつでも行けると思っているので、つい億劫になる。

 昨日は仕事の帰りに「ベルギー奇想の系譜」展を見てきた。まず先にこの展覧会に行ったのは、会期末が迫っているから。9月24日で終了なので、もう後がない。幸い午後6時まで開館しているので間に合った。

 16世紀の初期フランドル派から、ブリューゲルの版画、クノップフやアンソールなどの象徴派、マグリットやデルヴォーなどのシュルレアリスム、そして21世紀の現代美術までを辿ったベルギー美術の通史のような展覧会。国内外の所蔵先から丹念に作品を集めている。

 そのような展覧会の場合、たとえばベルギー美術の特徴といった大命題へのアプローチもよいが(本展ではフランドル地方が常に戦場だった歴史的事実に由来する「死」の影という観点が示されている)、もっと気楽に日ごろ好きな画家との再会を楽しんだり、未知の画家の発見を楽しんだりするのもよい。

 わたしは3人の未知の画家の作品に惹かれた。一つ目はジャン・デルヴィルJean Delville(1867‐1953)の「レテ河の水を飲むダンテ」(1919年)。ダンテの「神曲」に題材をとった作品。全体に淡青色の柔らかい色調の中、向かって右にダンテが淡いオレンジ色で、左にベアトリーチェが白色で描かれている。忘却の河(レテ河)と生い茂る植物との描写が繊細だ。

 二つ目はヴァレリウス・ド・サードレールValerius de Saedeleer(1867‐1941)の「フランドルの雪」(1928年)。見渡すかぎりの雪原。村落が点在している。地平線に夕日が落ちる。弱々しい光。今にも闇に飲み込まれそう。人っ子一人いない。寂しい雪景色。

 三つ目はウィリアム・ドグーヴ・ド・ヌンクWilliam Degouve de Nuncques(1867‐1935)の「運河」(1894年)。運河が横たわっている。小舟が一艘。人影はない。運河の向こうに古い工場(または倉庫)。窓ガラスが全部割れている。忘れられたような風景。運河の手前に枯れ木が数本並んでいる。枯れ木と工場とが構成する縦の線と、運河が形作る横の線とが交叉する。

 以上3人は象徴派に分類される。偶然だろうが、3人とも生年は1867年。
(2017.9.19.Bunkamuraザ・ミュージアム)

(※)本展のHP
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