Enoの音楽日記

オペラ、コンサートを中心に、日々の感想を記します。

日本会議 戦前回帰への情念

2017年08月06日 | 身辺雑記
 山崎雅弘の「「天皇機関説」事件」を読んで、戦前の日本がわずか半年あまりで一変する歴史を学んだわたしは、今度は日本の‘今’を知りたくなった。そのためには、日本会議について、一度きちんと知ることが肝要だと思った。

 日本会議については、菅野完の「日本会議の研究」(扶桑社新書)、青木理の「日本会議の正体」(平凡社新書)、藤生明の「ドキュメント日本会議」(ちくま新書)など数種類の本が出ているが、わたしは「「天皇機関説」事件」と同じ著者が書いた「日本会議 戦前回帰への情念」(集英社新書)を選んだ。

 本書は2016年7月発行なので、1年前に書かれたものだが、基本的な事柄は変わっていないようだ。日本会議のルーツはなにか(それは、端的にいうと、生長の家が根幹にあり、そこに神社本庁が流れ込んでいるようだ)、また日本会議の思想はどうか(それは、端的にいうと、戦前の「国体」思想への回帰のようだ)、そして具体的にどのような行動をしているかが、よく分かった。

 わたしは少々恐ろしくなった。日本会議の政界への浸透は予想を超えていた。今頃なにをいっているのかと笑われそうだが、安倍晋三、麻生太郎、菅義偉、岸田文雄、石破茂、野田聖子などは‘日本会議国会議員懇談会’のメンバーだ。手法の違いはあるにせよ、最終目標は共通しているかもしれない。

 その最終目標は憲法改正だろう。自民党は2012年4月に憲法改正案を発表している。安倍首相は今年に入って、第9条について自民党の改憲案とは異なる‘加憲’案を言い出したので(それは日本会議の発想だ)、多少混乱気味だが。

 本書では、その自民党の改憲案について、逐条的に狙いが分析されている。紙数が限られているので、簡潔にポイントを押さえただけかもしれないが、わたしはそれを読むうちに背筋が寒くなった。改憲案は全体として戦前の「国体」思想への回帰が図られているようだ。第9条はその一環に過ぎない。

 わたしはあらためて自民党の改憲案を通読してみた。表面的にはあまり問題はないように思えてしまうことが、かえって怖かった。

 本書で紹介されているのだが、安倍首相は2012年12月14日のYouTube「政治家と話そう」で、日本国憲法について「いじましいんですけどもね。みっともない憲法ですよ。はっきり言って」と述べている(今でも視聴できる)。まるでネトウヨのような言説だ。
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