五箇山の岩瀬家の全景
80爺には少し強行軍だったかもしれないが、念願の奥飛騨の合掌作りの家が集まる集落に旅する。
高山市に一泊して白川郷に向かって宿を出る。一部高速道路があることは事前に調べておいたが、
この奥飛騨の山中にここまでハイウエイが伸びていたのは意外だった。最長10キロの二つのトンネ
ルとその半分程度の長さのトンネルが連続する。闇を抜けると一瞬渓の上を通りまた対岸の山腹に激
突するように吸い込まれるの連続。白川郷で一般道に降りるつもりが勢いに任せて県境を越えて五箇
山まで足を伸ばしてしまう。いつの間にか県境を越えてしまう。
降りたところは富山県。菅沼という集落全体が世界遺産に指定されている。ここは五箇山の合掌作り
集落の南からきて最初の集落。国道左側の谷間に地味な感じで在る。この落差を岩盤を穿ったエレベ
ータで降りるのに驚く。
遠慮したように土産店はあるものの、山村の特有の生活の匂いが濃厚な非観光的な光景が拡がる。谷
から引くのだろう、豊富清冽な水が部落中を流れる。この流れと家の裏の池がないと2mも積もる雪
の始末ができないのだそうだ。一回りしてから今度は一般道を戻る。
菅沼集落から少し南に下り、県境まじかの赤尾という集落の岩瀬家に寄り、合掌作りの家をじっくり
と見学する。私らだけだったのでこの家のお嫁さんが丁寧に説明してくれた。民謡こきりこ節までご
自身で披露してくれた。
規模からいうとこの地方で最も大きいという。一般的合掌作りの家の内部は3層だが。この家は4層
になっている。。最上層まで急な梯子段で登ってみた。木と縄で家の骨組みが出来上がったいるのが
良く判る。
これが最上層。
かっては活躍した農機具の数々。
庄川の流れが左右にうねり、川の中に岐阜・富山の県境が設定されている。国道はそこに串を刺すよう
に通り抜ける。すると急に岐阜県になり、少し走るとまた富山県と目まぐるしく変化する。渓谷の紅葉
が素晴らしい。この区間並行する高速道路は10km余のトンネルの中。
小さな集落をいくつも過ぎて1時間余で白川郷に到着する。菅沼集落に比べると圧倒的に観光地化され
ている。やたらに外国語が飛び交う。一大観光地だ。
観光写真で何度もみた光景があちこちに点在する。さっき見てきた岩瀬家の作りに比べると少し小ぶり。
観光ということなら白川郷に軍配は上がるだろう。事前に司馬遼太郎「街道をゆく」の奥飛騨の道を読
んでおいた。司馬氏が感じた雰囲気に浸りたければ軍配は菅沼もその一部の五箇山に上がるだろう。
予想以上に現役の家庭生活が営まれている家が多い。世界遺産に推薦された理由かもしれない。
今では考えられない黒光りした贅沢な太い柱と分厚い梁で作られた家はまだまだ100年現役を続ける
ことが可能なようだ。しかしここでも少子化が避けられず子供たちは街に出てゆく。断熱構造が当たり
前になった現代の住宅を体験した者が多くなっていくと、これから先新築は考えられない。どうしたら
この雰囲気を維持していくのかも大きな課題になっていくのだろうなと感じ入った次第。