ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『ブラインドネス』

2008-09-15 21:43:45 | 新作映画
(原題:Blindness)

----あっ、この映画なら
フォーンも聞いたことあるニャあ。
確か『ナイロビの蜂』の監督作品で
日本からは伊勢谷友介と木村佳乃が参加してるんでしょ。
カンヌ国際映画祭で
オープニングを飾った上にコンペティション作品にも
選ばれたとも聞いたけど…。
「(笑)。
フォーン、詳しい説明ありがとう。
じゃあ、もう喋らなくてもいいかな」

----あらら。
そのふたりがどんな役をしているのかくらい
教えてくれてもいいんじゃニャい。
「じゃあ、その前に簡単なあらすじから話そうかな。
あるひとりの日本人男性が失明し、
目の前が真っ白になってしまう。
それをきっかけに
世界各地にこの『白い病』が発生してゆくんだ」

----それって伝染病ということ?
「うん。そうだね。
混乱を恐れた政府は、
失明患者を、
かつては精神病院だったという収容所に軟禁する」

----それまた、ヒドい話だね。
どこの国のこと?
「風景は中南米っぽいけど、
特定されてはいない。
この映画の原作はノーベル文学賞作家ジョゼ・サラマーゴの『白い闇』。
そこでも舞台は
やはり無国籍の街となっているらしい。
ついでに言えば、
この原作に対しては
たくさんのオファーがありながら、
『映像は創造力を破壊する』と、
彼はなかなか首を縦に振らなかったらしい。
ただのゾンビ映画になることを
危惧していたとも言われているけどね」

----ゾンビ映画?
これってそんなお話ニャの?
「見方によっては
そうとも取れるかもよ。
失明した人の群れが町をさまよい、
彼らによってスーパーは荒らしつくされているからね。
この映画、
そういうホラーにしようと思ったら
いくらでもできる可能性はある」

----でも、単なるホラーじゃないってワケだね。
「うん。
ちょっと前にはやった歌の歌詞になぞらえて言えば、
『見えなくなってから見えるものもあるんだよ』ということ。
この映画では、失明によって
それまでとは違った段階に人間関係が進んでいく」

----確か主演はジュリアン・ムーアだよね。
「うん。ムーアは眼科医でやはり失明した男(マーク・ラファロ)の妻。
実は彼女ひとりだけ失明していなくて、
夫が心配で一緒に入所。
そして他の人たちにバレないように、
みんなの世話をするんだ。
ところが、食料を民主的に分配しようとする夫に対して、
自らを“第3病棟の王”と称し、
力で奪おうとする男が出現。
ガエル・ガルシア・ベルナル扮するこの男は、
最初に金品類、それが尽きると
こんどは女性の体を要求する」

----ヒドい話だニャあ。
でも、よくあるといえばよくある設定のような気も…。
「うん。無人島ものとかにね。
そう言う意味でもあまり新味は感じなかったな。
ただ、フェルナンド・メメイレス監督らしい、
大胆な映像処理、
特に素早いフォーカス移動とかはオモシロかったけどね」

----ところで、ふたりの日本人の比重はどれくらいだったの?
ほんとうに重要な役だったのか、気になるけど。
「これが驚き。
さっきも話したように物語のきっかけを作るのも伊勢谷ならば、
映画の結末で重要な役を果たすのも彼。
その途中にも伊勢谷自身がアイデアを考えたという
印象に残るエピソードが…。
そういえば感動的なエピソードは
そのほとんどが彼ら日本人夫婦のパートだったな。
そうそう、この役は
日本人に限らず広くアジアからキャスティングしたようだ。
事実、中国や韓国の俳優も候補に挙がったらしい。
ところが伊勢谷友介はオーディションの後、
監督をお寿司屋に誘うという積極性を見せたのだとか…。
つくづく日本人も変わったものだと思ったね」


           (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「フォーンは夜でも見えるのニャ」ぱっちり

※猫にしか見えないものもあるんだ度

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14 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (mig)
2008-10-30 12:14:16
えいさんこんにちは★

観て来ました~。
前半とくに面白かったんだけど
ラストの方がちょっと失速かなぁ。
あの結末は賛否分かれそうですよね。

とはいえ、なかなかわたしは楽しめました。

猫にしかみえないもの、知りたい
■migさん (えい)
2008-10-30 23:10:48
こんばんは。

猫にしか見えないものですか?
こういうお話があります。
よく赤ちゃんが天井を観ているじゃないですか?
ある双子だったか三つ子だったかが天井を
見つめて指差しながらバブバブ。
その横で猫も同じところを見上げていたそうです。


それはさておき、
このお話。
なぜ起こったかも分からなければ
なぜあの結末かも分からない。

映画に説明を求めようとする人からは、
敬遠される映画かも。

おそらく原作者、そして監督は
あまりそこに重きを置いてないのではないかという気がします。


ゾンビ映画 (たいむ)
2008-11-22 18:16:39
えいさん、こんにちは。
ゾンビならば「アイ・アム・レジェンド」がそれっぽいですよね。

小説もあのように中途半端なのでしょうか?「ナイロビ・・」も曖昧に見せる趣向だったように思うし、監督の方針なのかしら?
■たいむさん (えい)
2008-11-22 22:55:44
こんばんは。

これは原作に忠実のようですよ。

ジョゼ・サラマーゴは、
ゾンビ映画になることを危惧してられたようですが、
だとしたら、
後半、外に出た後のビジュアルは見せない方がよかったかも。

なるほど (ジョー)
2008-11-23 14:57:48
遅ればせながらコメントありがとうございます。
サスペンス映画でもないし、何かの寓話でもないし、何の映画だったんだろうとモヤモヤしていましたが、なるほど、ゾンビ映画だと思えばいいんですね。納得しました。
■ジョーさん (えい)
2008-11-24 23:26:03
こんばんは。

ゾンビ映画も、一種のメタファーとなっていますし、
原作者の言葉は、ちょっと偏見混じりかも。
ゾンビ映画で悪くないと思うんだけどなあ。
こんばんは (ノラネコ)
2008-11-26 00:37:12
大期待作だったのですが、正直期待ほどではなかったかと。
中盤の「蠅の王」的な展開が、やや無理がある気がします。
特に主人公が、王様に陵辱されてまで、見える事を隠す理由が見えず、よく判らない人になってしまっていたのは残念です。
どうも理不尽さを強調しすぎて、キャラクターのリアリティがなくなってしまっていた様に思います。
終盤の外に出てからは、色々な比喩がストレートに繋がって良かったのですが。
メイレレスの演出はパワフルでしたが、脚本がイマイチだった様に思います。
ツマラン (亜蘭真 主美士)
2008-11-26 14:06:58
ツマラン監督のハプニングそっくりな感じが・・・・。
■ノラネコさん (えい)
2008-11-27 00:31:20
こんばんは。

ぼくも同じです。
ジュリアン・ムーアの気持ちがまったく分からない。
目が見えることを隠して夫に付いていきながら、
あの展開は、解せません。
もし、彼女がいなかったら、
どんな話が展開し、どのような結末を迎えたんだろう?
■亜蘭真 主美士さん (えい)
2008-11-27 20:27:09
おっ。なかなかキツい一言。
最近、『ハプニング』との類似指摘
けっこう見かけるようになりました。

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