「ちょっと気が早いけど、
この映画はぼくの上半期邦画の暫定ベストワン!」
----そりゃ、また大胆な……。
この映画って確か『蛇イチゴ』の監督だよね。
「そう。西川美和。
前作の『蛇イチゴ』を観たとき、
まだ20代の監督が
どうしてここまで洞察力に富んだ映画を作れるんだろうって、
それが不思議でならなかったけど、
やはり彼女は本物だったね」
----と言うことは、今回もその路線?
「うん。最初監督は『次作は優しくてハッピーな路線』をと思っていて、
途中で、ある夢を見たことからその方向性が変わったらしい。
『蛇イチゴ』は詐欺師の兄とまじめな教師の妹の話。
今回は、東京で写真家として成功し、
忙しくも自由気ままな生活をしている弟・猛(オダギリジョー)と
地方に残り実家の商売・ガソリンスタンドを受け継いだ
兄・稔(香川照之)の話。
母の一周忌で久しぶりに実家に帰った猛。
家を出て仕事に成功を収めた彼の傲慢な態度はすぐに父と衝突する。
そのとげとげしい場をなだめ取りなすのが、争いごとの嫌いな稔。
そんな彼のガソリンスタンドで働いているのが、
ふたりの幼なじみの智恵子(真木ようこ)。
主要登場人物はこの3人。
稔はかねてより智恵子に気がありながらも
自分に自信がなく先に踏み出せない。
ところが、かつて彼女と関係のあった猛は、
いともやすやすと旧縁を復活させてしまう。
そして問題の翌日。
渓谷に架かった吊り橋から流れの激しい渓流へ智恵子が落下。
そのときそばにいたのは稔。
兄をかばうため猛が奔走する中、稔の裁判が始まる…」
----ふうん。つまりこの映画は法廷劇になっていくってわけ?
「そうなんだ。
最初は彼女が事故で落下したと言っていたはずの稔が、
途中から自分が突き落としたと口走ってしまう。
でも、それは自責の念に駆られての嘘の証言では?
というところから物語は思わぬ方向へ転がってゆく。
この映画がオモシロいのは、
墜落の決定的瞬間を見せていないため、
何が真実か観客にはまったく分からないところ。
稔が口を開けばそれが真実に見え、
ふたりが面会室で口論すれば、
それまで観客が真実と信じていた思っていたことは、
それこそ根底からぐらぐらと揺らいでゆく」
----つまり観客のミスリードが巧いと言うことだね?
「うん。しかもそれが
よく練り込まれたふたりのキャラクターの上に成り立っているんだ」
----でも、そんな人、周りにはあまりいないよ。
共鳴しづらいニャあ。
「そこなんだよねポイントは…。
周りにはいない特殊なキャラクター。
しかし、その登場人物の性格をじっくりと描きこむことで、
『あ~あ、この人なら確かにこうしかねないな』と思わせる……、
それがいわゆる、よくできた脚本……そう、ぼくは思うわけだ」
----ふうん。少し分かった気がする。
「この映画も最初は、猛が智恵子とセックスしている次のショットで、
稔が車にガソリンを注入する…と言ったいかにもと言うシーンが出てきて、
そのあまりにもあからさまな比喩に、おやおやと思ったりもしたけど、
法廷シーン以降は、何が真実でどこに着地するのかが
まったく読めなくなる。
いわゆるミステリーのオモシロさだね。
とりわけ、兄・稔の証言・態度が二転三転し始めてからは、
彼のそれまでの優しさと思いやりの言動の奥にあるのが、
もしかして自嘲、諦念から生まれた偽善だったのかも知れないとまで
観る者に思わせてしまうんだ」
----ニャるほど。そのミステリーに
兄弟の深層心理をからませるわけだ。
「うん。そういう意味でもこの脚本は巧い。
裁判の中、初めて明らかになる事実が次々に飛び出し、
その新事実に対して兄弟がそれぞれに反応。
そしてその反応を
さらにふたりが読み合うことで、
物語はまた別の段階へと進んでゆく。
これら瞬時に変わるふたりの感情を完璧に表現した香川照之、オダギリジョー。
彼らは本年の男優賞候補に早くも名乗りを上げたと言える。
特に兄弟の絆が深い部分で再構築されるラストでのふたりの表情は
猛のセリフとともに永遠に記憶に残る。
そうそう、検事役の木村祐一の強面ながら
笑いを誘う演技も捨てがたかったな」
(byえいwithフォーン)
蛇イチゴ BCBJ-1825
※こちらは兄と妹です。
※圧倒された度
人気blogランキングもよろしく
☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)
この映画はぼくの上半期邦画の暫定ベストワン!」
----そりゃ、また大胆な……。
この映画って確か『蛇イチゴ』の監督だよね。
「そう。西川美和。
前作の『蛇イチゴ』を観たとき、
まだ20代の監督が
どうしてここまで洞察力に富んだ映画を作れるんだろうって、
それが不思議でならなかったけど、
やはり彼女は本物だったね」
----と言うことは、今回もその路線?
「うん。最初監督は『次作は優しくてハッピーな路線』をと思っていて、
途中で、ある夢を見たことからその方向性が変わったらしい。
『蛇イチゴ』は詐欺師の兄とまじめな教師の妹の話。
今回は、東京で写真家として成功し、
忙しくも自由気ままな生活をしている弟・猛(オダギリジョー)と
地方に残り実家の商売・ガソリンスタンドを受け継いだ
兄・稔(香川照之)の話。
母の一周忌で久しぶりに実家に帰った猛。
家を出て仕事に成功を収めた彼の傲慢な態度はすぐに父と衝突する。
そのとげとげしい場をなだめ取りなすのが、争いごとの嫌いな稔。
そんな彼のガソリンスタンドで働いているのが、
ふたりの幼なじみの智恵子(真木ようこ)。
主要登場人物はこの3人。
稔はかねてより智恵子に気がありながらも
自分に自信がなく先に踏み出せない。
ところが、かつて彼女と関係のあった猛は、
いともやすやすと旧縁を復活させてしまう。
そして問題の翌日。
渓谷に架かった吊り橋から流れの激しい渓流へ智恵子が落下。
そのときそばにいたのは稔。
兄をかばうため猛が奔走する中、稔の裁判が始まる…」
----ふうん。つまりこの映画は法廷劇になっていくってわけ?
「そうなんだ。
最初は彼女が事故で落下したと言っていたはずの稔が、
途中から自分が突き落としたと口走ってしまう。
でも、それは自責の念に駆られての嘘の証言では?
というところから物語は思わぬ方向へ転がってゆく。
この映画がオモシロいのは、
墜落の決定的瞬間を見せていないため、
何が真実か観客にはまったく分からないところ。
稔が口を開けばそれが真実に見え、
ふたりが面会室で口論すれば、
それまで観客が真実と信じていた思っていたことは、
それこそ根底からぐらぐらと揺らいでゆく」
----つまり観客のミスリードが巧いと言うことだね?
「うん。しかもそれが
よく練り込まれたふたりのキャラクターの上に成り立っているんだ」
----でも、そんな人、周りにはあまりいないよ。
共鳴しづらいニャあ。
「そこなんだよねポイントは…。
周りにはいない特殊なキャラクター。
しかし、その登場人物の性格をじっくりと描きこむことで、
『あ~あ、この人なら確かにこうしかねないな』と思わせる……、
それがいわゆる、よくできた脚本……そう、ぼくは思うわけだ」
----ふうん。少し分かった気がする。
「この映画も最初は、猛が智恵子とセックスしている次のショットで、
稔が車にガソリンを注入する…と言ったいかにもと言うシーンが出てきて、
そのあまりにもあからさまな比喩に、おやおやと思ったりもしたけど、
法廷シーン以降は、何が真実でどこに着地するのかが
まったく読めなくなる。
いわゆるミステリーのオモシロさだね。
とりわけ、兄・稔の証言・態度が二転三転し始めてからは、
彼のそれまでの優しさと思いやりの言動の奥にあるのが、
もしかして自嘲、諦念から生まれた偽善だったのかも知れないとまで
観る者に思わせてしまうんだ」
----ニャるほど。そのミステリーに
兄弟の深層心理をからませるわけだ。
「うん。そういう意味でもこの脚本は巧い。
裁判の中、初めて明らかになる事実が次々に飛び出し、
その新事実に対して兄弟がそれぞれに反応。
そしてその反応を
さらにふたりが読み合うことで、
物語はまた別の段階へと進んでゆく。
これら瞬時に変わるふたりの感情を完璧に表現した香川照之、オダギリジョー。
彼らは本年の男優賞候補に早くも名乗りを上げたと言える。
特に兄弟の絆が深い部分で再構築されるラストでのふたりの表情は
猛のセリフとともに永遠に記憶に残る。
そうそう、検事役の木村祐一の強面ながら
笑いを誘う演技も捨てがたかったな」
(byえいwithフォーン)
蛇イチゴ BCBJ-1825
※こちらは兄と妹です。
※圧倒された度
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すごい気になっていた映画なので、これで観ないわけにはいきませんね。
しかも法廷劇は大好きなので、この映画、期待して良さそうですね。
いやあこんな早くからベストと決めつけてしまい、
内心、冷や汗ものです。
ほんとうは『パッチギ!』のような
泣ける作品が好きなのですが、
今年はまだそう言うタイプの作品には出会ってなく、
最後まで目が離せない本作を
その吸引力を買ってベストに選んでしまいました。
上半期邦画の暫定ベストワンなんですね!
他でもかなり評判がいいのですごく楽しみです♪
映画を観た後でお返しさせてもらいますね。
またお邪魔します。
この『ゆれる』と『フラガール』がおススメです。
楽しんだと言う意味では
『ラブ★コン』もかな。
コメントとトラックバックを失礼致します。
この作品は、西川美和さんが作り出したシリアスなばかりでない多様であり深い感情を提示した映画世界が素晴らしく、主演である香川照之さんとオダギリジョーさんをはじめとした各出演者の皆さんの作品世界での存在の輝きに圧倒された一本でした。
そして、昨日遅ればせながら西川美和さんの長篇デビュー作の映画『 蛇イチゴ 』 ( ‘03年 日本 )の方も観させて頂きましたが、独自の世界を提示した見事な作品であり、本作品も映画館でじっくりと観てみたいと思っています。
また遊びに来させて頂きます。
改めまして、今後共よろしくお願い致します。
ではまた。
コメントありがとうございます。
西川美和監督、思えば『蛇イチゴ』のとき、
若いのになんでこんな映画撮れるんだろうと
小首をかしげたものでした。
この『ゆれる』を観て、
彼女はこれからの日本映画の一翼を担うこと間違いなしと、
ほとんど確信しました。
ずっと、追いかけてゆきたいです。
トラックバックありがとうございます
ホントに、この作品は凄すぎる映画ですよね。。
登場人物それぞれの心理描写が怖い位に鋭くて、見入ってしまいました。
吊り橋が揺れ、心が揺れる・・。。
この監督の頭の中は、どうなっているんだろう?とさえ思ってしまいました(^^)
「蛇イチゴ」は、まだ観ていないので、これから観たいと思います。
これからもよろしくお願いします。
またお邪魔させていただきます
リンクをたどって、いちご☆さんのところにお伺いしました。
この監督、ようやく30代になったと言う若さ。
それでいて、この洞察の深さです。
ほんとうに驚いてしまいます。
『蛇イチゴ』もスゴいですよ。
これからもよろしくお願いします。
考えさせられる、いい映画でしたね。
そうそう、木村祐一さんの演技、笑いました。
それにしても、えいさんには素晴しい話相手の猫ちゃんがいらっしゃるのですね!☆!
ウチにも借してほしいほどです(笑)
木村祐一、オモシロかったですよね。
『花よりもなほ』にも出ていますが、
あちらは少しやりすぎ。
フォーンに聞いてみましたが、
お外は怖いそうです(笑)。