ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

行政計画の負担感

2023年04月09日 00時00分00秒 | 国際・政治

 最近に限ったことではないのかもしれませんが、都道府県や市町村に計画策定を義務づける法律が多くなっていると感じます(名称は計画に限られません)。

 たとえば、「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」第45条第1項は「市町村は、単独で又は共同して、基本方針に基づき、所有者不明土地の利用の円滑化等を図るための施策に関する計画(以下「所有者不明土地対策計画」という。)を作成することができる」と定めています。また、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」第5条第1項は「地方公共団体は、基本方針に基づき、国土交通省令で定めるところにより、市町村にあっては単独で又は共同して、都道府県にあっては当該都道府県の区域内の市町村と共同して、当該市町村の区域内について、地域旅客運送サービスの持続可能な提供の確保に資する地域公共交通の活性化及び再生を推進するための計画(以下「地域公共交通計画」という。)を作成するよう努めなければならない」と定めています。ここであげた2つの規定は、それぞれ「できる」、「努めなければならない」となっているので法的義務ではないように読み取りえますが、法律で定められているということは地方公共団体が計画を定めるように求めていると解釈することが可能です。

 現在発売されている行政法の教科書のほとんどに、行政計画に関する独立の章があり、判例なども取り上げられています。それだけでなく、Plan-Do-See、Plan-Do-See-Actionという言葉が行政に関する研究論文などにも登場しています。しかし、計画万能主義に陥っていないかという懸念もありますし、「計画を作ればそれで良し」という姿勢が見られるとも言えます。実際のところ、計画を作ることに労力を取られたりすることもあり、どれだけ意味があるのかと疑いたくなることもあります。

 このようなことを記してきたのは、共同通信社が今日(2023年4月8日)の21時1分付で「行政計画、7割が負担感 都道府県、23年度平均34本」(https://www.47news.jp/politics/9171363.html)として報じているのを目にしたからです。

 共同通信社が調査したところによると、「国の法令や通知に基づき都道府県が2023年度に作成予定の行政計画は、平均34本に上る」、「最多は宮城と山口の68本で全体の7割超は事務負担が重いと回答」したとのことです。宮城県と山口県の次に多いのが鳥取県で64本、兵庫県が61本です。

 今や何処へ行ったのかわからなくなったような憾みもある地方分権ですが、法律や通知によって形式的に、あるいは実質的に行政計画の策定を求められる地方公共団体からは、「医療や防災などの施策の進め方を示す計画の重要性は理解しつつ、総数が多すぎるとして削減要望が続出した」というのです。それはそうでしょう。それぞれの法律を所管する省庁から計画策定を求められる訳ですから、本数も多くなるはずです。しかも、法律や、省庁からの通知の内容にそぐわないものはダメですし、場合によっては複数の計画の間で調整を行わなければならないでしょう。基本計画のようなものはよいとしても、実施計画となるとそれなりの具体性も必要となりますから、策定の段階でそれなりの知識(知恵)なども必要です。そもそも、法律で地方公共団体にあれやこれやの役割を定め、実質的に押しつけることが問題とされざるをえません(勿論、法律で地方公共団体の役割を定めること自体が悪い訳ではありません)。

 地方自治法には国と地方の役割分担に関する規定があります。第1条の2第1項は「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする」と定めており、同第2項は「国は、前項の規定の趣旨を達成するため、国においては国際社会における国家としての存立にかかわる事務、全国的に統一して定めることが望ましい国民の諸活動若しくは地方自治に関する基本的な準則に関する事務又は全国的な規模で若しくは全国的な視点に立つて行わなければならない施策及び事業の実施その他の国が本来果たすべき役割を重点的に担い、住民に身近な行政はできる限り地方公共団体にゆだねることを基本として、地方公共団体との間で適切に役割を分担するとともに、地方公共団体に関する制度の策定及び施策の実施に当たつて、地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない」と定めています。一旦はこれらの規定に立ち戻るとともに、これらの規定の見直しが必要かもしれません。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする