英文讀解自修室

  - in the historical Japanese kana/kanji orthography

・用例研究 190 <Que Sera Sera>

2019-09-30 | 用例研究

 

[用例研究 190] 〈Que Sera Sera〉

  (BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake  © 1999 King Features Syndicate Inc.)

1  Do you suppose it’ll rain if I wash my car tonight?

2  Que Sera Sera.

2  Kay who?

3  And what’s she got to do with anything?!

 

[解説]

・it’ll rain if I wash my car: 洗車と降雨の間に關聯といふか jinx めいた意味合ひがあるのかどうか氣にかかりますが、確認できませんでした。ご存じの方があれば教へていただけると幸甚です。

 

・Que Sera Sera: ラテン系のことばのやうですが、スペイン語もどき?或はイタリア語もどき?その意味するところはおそらく歌詞の後にある Whatever will be will be 乃至は What will be will be でせう。(※ この be の語感には小生は確信がもてないので、以下は飽くまで私見としての説明です)

  この be は「存在する」「ある」の意味で、たとへば Descartes の je pense, donc je suis の感じがします。ラテン語譯は cogito, ergo sum 英譯すると I think, therefore I am となり、「我思ふ、ゆゑに我あり」です。

  what は關係代名詞、主部は what will be 述部は will be です。つまり「在る(であらう)ものは、在るであらう」といつた感じでせうか。whatever だと「何であれ在るものは、在るであらう」といふ意味になるのでせう。この phrase は悲觀・樂觀ともに「(先のことはわからない、)なるやうになる」と解されてゐます。この漫畫でも「なるやうになる」といつた意味で使つてゐるのではないかと思ひます。

  Que Sera Sera は Doris Day の歌で日本でも知られました。今でも YouTube などで樂しむことができます。歌詞は次の通りです。

 

Que Sera Sera  (Jay Livingston, Ray Evans)

 

When I was just a little girl

I asked my mother, “What will I be?”

“Will I be pretty?”  “Will I be rich?”

Here’s what she said to me

 

* Que Sera Sera

Whatever will be will be

The future’s not ours to see

Que Sera Sera

What will be will be

 

( When I was just a child in school

I asked my teacher, “What should I try?”

“Should I paint pictures?”  “Should I sing songs?”

This was her wise reply

* repeat )

 

When I grew up and I fell in love

I asked my sweetheart, “What lies ahead?”

“Will we have rainbows day after day?”

Here’s what my sweetheart said 

* repeat

 

Now I have children of my own

They asked their mother, “What will I be?”

“Will I be handsome?”  “Will I be rich?”

I tell them tenderly

* repeat

 

※(カッコ)内の歌詞は、レコードにはありませんが、映畫 The Man Who Knew Too Much で Doris Day が歌つてゐたものです。話法の表記については、歌詞作者がどう記したのかわかりませんが、上の歌詞では引用符を用ゐて直接話法として記してみたことをお斷りしておきます。

 

・Kay who: first(/given)name に續けて姓を who で訊ね、何者かを問うてゐます。昔 Zenko Who? と外國の記者から鈴木善幸首相について戸惑ひの疑問があがつたことを思ひ出します。思ひ出すと言へば、かつて Kay Starr といふ女性歌手がゐましたが、ここで Herb の念頭に、といふか作者の念頭にあるのでせうか?

 

・what’s she got to do with anything?: 〈have ~ to do with …〉のかたちは、~の部分に、關係の深淺・大小に應じて a lot(大いに關係がある場合) / something(何らかの關係がある場合) / a little(少しは關係がある場合) / little(わづかしか關係がない場合) / nothing(全く關係がない場合)などを置いて、主語と…部分との關係を表はします。ここでは~部分が疑問詞 what となつてゐますから「彼女が…とどんな關係があるんだ」と訊ねてゐることになります。修辭疑問と解して「何も關係ないぢやないか」と受けとめることも可能かと思ひます。

  なほ have(/has) got は have(/has) のくだけた表現です。what’s は what has の短縮形です。

□參考例文: ~部に nothing を置いた例です。

190.1    I have nothing to do with the matter.

                 私はその件とは全く關係がありません。

 

[意味把握チェック]

1 「今夜車を洗つたら雨が降ると思ふかい」

2 「なるやうになるだらうさ(先のことはわからないよ)」

2 「Kay 誰だつて?」

3 「それに、彼女が、何であれそれとどんな關係があるんだ」

 

[笑ひのポイント]

・ “Que Sera Sera” を聞き違へ、とんちんかんな對應をしてしまつたところに笑ひが生ずるやうに見えます。米社會では歌を通してひろく知られてゐることばではないかと思はれますが、Herb は理解してゐないやうです。この漫畫の讀者たちは Herb の困惑の表情にどんな印象・感想を持つのでせうか。


・用例研究 189 <關係代名詞+挿入節②>

2019-09-23 | 用例研究

[用例研究 189] 〈關係代名詞+插入節②〉

  (BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake  © 2000 King Features Syndicate Inc.)

1  You don’t pay me what I think I’m worth.

2  You’re lucky I don’t pay you what I think you’re worth!

3  Did you get the raise?

3  Are you kidding?  I’m already way ahead of the game!

 

[解説]

・You don’t pay~: 第四文型(SVOO)の文構造です。關係代名詞節 what I think I’m worth が例文189.1の 50 dollars に該當します。「私が値ひすると(私が)思ふもの」乃至は「自分が思ふ自分の値打分」ほど(の給料)を支拂つてゐない、もつと給料を上げるべきだと抗議してゐるのでせう。

□參考例文

189.1     I paid her 50 dollars for the shoes.

                 私は彼女に靴の代金として50ドル支拂ひました。

・what I think~: 關係代名詞 what の後に I think が插入されてゐます。

□參考例文: [用例研究 176]の再掲です。

176.1    The woman who I thought was her sister was actually her mother.

                 私が彼女の姉だと思つたその女性は、實は彼女の母親でした。

・worth~: 「~の値打がある」。ここでは~部分に關係代名詞 what が置かれてゐます。what I think I’m worth として、「私が値すると私が考へるもの(/給料)」或は「私が考へる私の値打分」といふことになります。

  worth は、辭書によつて扱ひが「目的語をとる形容詞」「前置詞」と分かれますが、例文により解し方・使ひ方を習得すればいいでせう。

□參考例文: ~部分が金額で示される例です。

189.2    This book is worth twenty dollars.

                 この本は20ドルの値打があります。

□參考例文: 下の例文で it は形式主語、while は「時間」といふ意味の名詞です。

189.3     The ruins are worth visiting.

              = It is worth while visiting the ruins.

              = It is worth while to visit the ruins.

                 その遺蹟は訪れてみる價値があります。

 

・You’re lucky (that) ~: ~部分にthat節を置き、それが You’re lucky と判斷する理由・根據の説明になつてゐます。

  社長としては、ダメ社員の Dagwood の給料はもつと低くていいと思つてゐるわけです。現在の給料額はそれよりは多い、だから「運がいい」「ついてるな」と斷じました。

□參考例文:  that が省略されてゐない例です。

189.4     He is lucky that he could pass the examination.

                 彼がその試驗に合格できたとはついてますね(/幸運です)。

 

・Are you kidding?: 「冗談でせう」。kid は「かつぐ」「からかふ」の意味。

・raise [reiz]: 「昇給」

・way ahead: 「うんと優勢な」。way は「ずつと」「はるかに」「うんと」といつた意味の副詞で ahead を強調してゐます。

・ahead of the game: 「有利に」「他より優つて」。ここでの game は「勝負」「驅引き」といつた意味でせう。

 

[意味把握チェック]

1 「社長は私が考へる値打ほどの給料を私に拂つてはゐません」

2 「ワシの考へるおまへの値打の額をワシが拂つてなくてお前は運がいいな!」

3 「給料、上つたかい」

3 「冗談だろ(/冗談言ふなよ)。(この驅引で)ぼくはすでにうんと優勢なんだぞ!」

 

[笑ひのポイント]

・ことばの一部を變へての社長の切りかへしの見事さに笑ひを誘はれます。また、切りかへしの内容が Dagwoodにわかつたのかどうか、わからずに you’re lucky が頭に殘つてゐるだけなのではないか…そこにも笑ひが生ずる契機があるやうに思はれます。


・用例研究 188 <關係代名詞 what, that>

2019-09-16 | 用例研究

[用例研究 188] 〈關係代名詞 what, that〉

  (BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake  © 1991 King Features Syndicate Inc.)

1  Look what I bought at the maritime auction, Mr. Dithers.

2  A genuine cat-o’-nine-tails.

3  Dagwood, c’mere a second.

4  Dagwood, for heaven’s sake, what have you done that I don’t know about?!

 

[解説]

・look: 他動詞として用ゐてゐます。「~を見る」

・what: 關係代名詞です。先行詞を含むはたらきをしてをり、the thing(s) which (「~するもの」「~すること」)ほどの意味です。關係代名詞 what については、 「關係詞の讀み方 (7)」 (2012年6月27日付)をご覽ください。

□參考例文:

188.1     That is not what I said.

                 それは私の言つたことではない。

・maritime: 「海の」「海事の」

 

・genuine [dʒénjuin]: 「本物の」「眞の」

・cat-o’-nine-tails [kæ̀tənáintèilz]: 「九尾の猫鞭」。こぶのついた9本の繩をつけた鞭で、刑罰用です。ここは maritime とありますから「海事用」か「海軍用」ではないでせうか。

 

・c’mere a second: = Come here a second.  實際の發聲に似せて綴つたのでせう( phonetic spelling 「表音式綴り字(/法)」)。この second の意味は a  very short period of time(「秒」「瞬間」など)です。

□參考例文

188.2     Just a second, I’m almost ready.

                 ちよつと待つて、もう少しで準備ができます。

 

・for heaven’s sake: 「後生だから」「お願ひだから」「どうか」

・that: 關係代名詞のはたらきをしてゐます。先行詞は疑問詞 what です。

  疑問詞が先行詞だと自然な日本語にはしにくいところがあります。[意味把握チェック]では一應和譯してゐますが、英文のままで讀むはうがわかりやすいかと思ひます。

□參考例文: wh- で始まる疑問詞の直後では that が置かれることが多いやうです。ここでは who who と續く語調を避けたものでせう。

188.3    Who that understands music could say his playing was good?

                 音樂のわかる人で誰が彼の演奏が良かつたと言へるだらうか。

 

[意味把握チェック]

1 「Dithers 社長、ぼくが海事オークションで買つたものを見てくださいよ」

2 「純正品の九尾の猫鞭なんです」

3 「Dagwood、ちよつと來な」

4 「Dagwood、後生だ(から、意識を取り戻してくれ)、ワシの與り知らない(ことで)何をやつたんだ?!」

 

[笑ひのポイント]

・叱られるこころあたりがあつたのでせうか、脅しが效き過ぎて、社長も慌ててゐるやうです。


・用例研究 187 <關係代名詞 that>

2019-09-09 | 用例研究

[用例研究 187] 〈關係代名詞 that〉

  (BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake  © 1990 King Features Syndicate Inc.)

1  Cora, is that you behind all those packages?

1  It’s me all right.

2  You’ve bought all those gifts for Mr. Dithers?

2  Hardly.

3  These are all things that he bought for me

4  only he doesn’t know it yet.

 

[解説]

・all right: 文末に置くと「確かに」「間違ひなく」といつた意味合ひを添へるやうな印象があります。

 

・hardly: 「ほとんど~ない」「とても~とは言へない」。 almost not or almost none といつた意味ですから、「買つたうちで夫のものは(無いわけではないが、)ほとんど無い。ほとんどが自分のもの」といふことでせう。

□參考例文

187.1     Hardly anyone goes to the old theater anymore.

                 もとの(/古い)劇場に行くひとはもうほとんどゐない。

 

・that: ここでは關係代名詞のはたらきをしてゐます。先行詞は all things で bought の目的語がブランクになつてゐます。先行詞が all / every / any / no など「すべて」とか「まつたく~ない」の意味の語句を伴ふ場合に that がよく使はれます。

□參考例文: every などを伴ふ例です。

187.2            In those days I believed everything that my parents told me.

                その當時私は兩親の言ふことをすべて信じてゐました。

□參考例文: any などを伴ふ例です。

187.3            She is interested in anything that has to do with history.

                彼女は歴史に關はりのあるものは何にでも興味がある。

□參考例文: no などを伴ふ例です。

187.4            There's nothing you can do that will make up to me for forgetting my birthday.

                私の誕生日を忘れた償ひはどんなことをしてもできませんよ(/償ひにできることはありませんよ)

 

・only: 3コマめのせりふに續けて接續詞的に使つてゐるやうに思ひます。略式の表現であり、正式の用法ではありません。「ただし」「だがしかし」。

□參考例文

187.5            He'd like to go, only he has another engagement.

                彼は行きたいのですが、別の約束があるんです。

・not + yet: 「まだ~ない」

□參考例文

187.6    She hasn't done her homework yet.

                彼女はまだ宿題をやつてゐません。

 

[意味把握チェック]

1 「いつぱいの箱のうしろにゐるのはあなたなの、Cora」

1 「確かに、わたしよ」

2 「そのプレゼント全部 Dithers さん(のため)に買つたの」

2 「とてもさうは言へないわね(/ほとんどはさうではないわね)」

3 「これみんな彼がわたし(のため)に買つてくれたものなのよ」

4 「でも(/但し)、彼はまだそのことを知らないの」

 

[笑ひのポイント]

・この漫畫は12月19日の日附ですからクリスマス用の gifts なのでせう。Dithers 氏の苦り切つた顏が目に浮ぶやうです


・用例研究 186 <who/接觸節>

2019-09-02 | 用例研究

[用例研究 186] 〈 who/接觸節〉

  (BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake  © 1991 King Features Syndicate Inc.)

1  I have no respect for employees who are afraid to stand up to me.

2  Really?

2  Really!

3  In that case, you’re the one who lost us the Arnold account.

4  Now there’s a man I respect.

4  boom

 

[解説]

・employee:  [implɔií:] (アクセント注意)

・afraid to-不定詞(~): 「~することを恐れてゐる」「(結果を心配して)恐くて~できない」

□參考例文

186        I was afraid to talk to you.

                 私はこはくて君に話しかけられなかつたのです

・stand up to~: 「~に恐れず立ち向かふ」「(衝撃など)にびくともしない」

 

・In that case: 「その場合には」。[意味把握チェック]では「それなら」としてみました。

・you’re the one who ~: 會議の場で、Arnold 社との(取引)話をだめにしたのは誰なのかが話題になつてゐるところに、Dagwood が「あなたがその人(/該當者)だ」と指摘してゐるのでせう。「あなたがArnold 社との(取引)話を失はせた人だ」と Dithers 社長に向つて言つてゐるのかと思ひます。

  この文のかたちが Elvis Presley 1950年代のヒット I was the one の冒頭にあつたことを思ひ出します。I was the one who taught her to kiss ... とはじまる歌詞でした。elvis presley i was the one で檢索すると今でも YouTube でこの曲を聽くことができます。

 

・lose~: 「~を失はせる原因となる」「~を失はせる」

□參考例文:

186       The incident lost him the seat.

                  そのできごとで彼は議席を失つた。

・the Arnold account: 「Arnold 社との(取引)話」と解しました。

 

・there’s a man I respect: I respect は「接觸節(a contact clause)」と呼ばれます。文法書では「關係代名詞の省略」として扱はれてゐることがあります。

  there’s a man だけでは何のことかわかりませんので疑問に思ふでせう(a man つて?)すぐに I respect と續き、a man I と名詞が重なることに意外に思ふとともに respect の目的語がブランクになつてゐる(/無い)ことに氣づきます(誰を尊敬するのか?)。そこから目的語は前出の a man ではないかと察し、「私が尊敬する人物」といふ意味に解されるのではないか……私見ですがこんな意識の流れがあるのかと想像します。

・boom: (擬聲語)

 

[意味把握チェック]

1 「ワシを恐がつて立ち向かはない從業員への尊重はないな(/敬意は抱かんな)」

2 「ホントに?」

2 「本當ぢや!」

3 「それなら(言ひますが)、Arnold 社との(取引)話をウチに失はせ(る原因となつ)たのはあなたですよ(/あなたの所爲でArnold 社とウチの社との(取引)話がだめになつたんですよ)」

4 「さあ、ワシが尊重する人物がゐるぞ(/人物だ)」