英文讀解自修室

  - in the historical Japanese kana/kanji orthography

・用例研究 181 〈wherever①〉

2019-07-29 | 用例研究

[用例研究 181] 〈wherever①〉

   (BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake)

1  This has been a delightful meal.

3  Now just a minute ... I heard that!

4  Cora takes her arguments wherever she can find them.

 

[解説]

・a delightful meal: 「樂しい食事の時間」

 

・Just a minute!: 「ちよつと待つてください」「ちよつと一口はさみたいのですが」(※ Wait a minute! とも)

 

・Cora: Dithers 社長の奧さんの名前。

・takes her arguments: her arguments としてゐるところから、彼女自身が言ひ爭ひに加はると考へられますので、[意味把握チェック]では「(言ひ爭ひ)に乘り出す」としてみました。

 

・wherever: wherever は複合關係副詞のケースと疑問詞強調のケースがありますが、ここは複合關係副詞です。① any の意味合ひを含み「~するところならどこでも」、②讓歩の意味合ひを含み「どこで(/どこへ)~しようとも」といつたふたつの解釋ができます。いづれであるか判斷しにくいケースもありますが、その都度文脈によつて判斷すると良いでせう。ここは①だと解してみました。

□參考例文: ①の例文です。

181.1     You can go wherever you like.

                 どこでも好きなところに行つていいですよ。

181.2     I will drive you wherever you want to go.

                 君の行きたいところへはどこでも車で連れて行つてあげませう。

  □參考例文: 疑問詞 where を強調する whereever の例です。where ever と離して綴られることもあります。

181.3     Wherever did you buy that hat?

                 いつたいどこであの帽子を買つたのかい。

 

  なほ、②のケースについては[用例研究 182]〈wherever②〉で採り上げます。

 

[意味把握チェック]

1 「樂しいお食事時間が續いてゐますね(/ずつと樂しいお食事時間でしたね)」

3 「まあ、ちょつと待つて ...聞こえたわよ」

4 「Cora は言ひ爭ひ(/口論)がみつかるとどこでも(/どこであれ)乘り出すんだ(/それに割つて入るんだ)」

 

[笑ひのポイント]

・社長の招待で美味しい食事を御馳走になり、なごやかな時間を過ごしてきたところですが、隣席の口論と社長の奧さんの性癖により雰圍氣が變はつてしまひさうです。四コマめの Bustead 夫妻の驚きと社長の心中を推し量るところに笑ひが生まれるのでせうか。


・用例研究 180 〈whatever②〉

2019-07-22 | 用例研究

[用例研究 180] 〈whatever②〉

      (BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake)

1  There isn’t one single thing here that I haven’t already had many times.

2  I’m really ready for something different.

2  Have you ever had gomba kadoodles?

3  No, but whatever it is, bring me some!

3  You got it!

4  I don’t know what it is either, but now the ball’s in your court.

 

[解説]

・There isn’t one single thing~: not の後に one single と重ねて「ひとつだつてないのだ」と強く否定してゐます。「すでに何度も食べた經驗のない料理は(つまり、食べたことのない料理は)ひとつだつてない」と不滿を述べてゐるのでせう。

・many times: 「何度も」

 

・ready for~: 「~に乘氣な」。ここでは「何かちがふものを食べたいといふ氣持になつてゐる」といふ意味でせう。

 

・whatever it is: 「それが何であれ」「それがどんなものであつても」。ここでは讓歩の副詞節として、主文の命令文 bring me some に添へられてゐます。「(イヤ、でも)それが何であれ、そいつを持つて來てくれ」と注文しました。

  [用例研究 179]では複合關係代名詞 whatever が「~するものは何でも」など、① any の意味を帶びるケースを紹介しました。[用例研究 180]では複合關係代名詞 whatever が副詞節を形成し、②「讓歩」の意味「何を/が~しようとも」などの意味を帶びるケースを採りあげます。漫畫の3コマめのやうに、主文に添へられます。②「讓歩」の場合、コンマを打つて切れを示す場合が多いやうに感じます。

  ②「讓歩」の意味に轉じた例文を紹介します。〈no matter ~〉を用ゐるはうが口語的とされます。複合關係代名詞節で may を用ゐるのは文語的とされます。

□參考例文

180.1  Whatever you say to her, she still keeps smiling.

         あなたが彼女に何を言つても、彼女はいつも微笑んでゐますよ。

        = No matter what you say to her, she still keeps smiling.

□參考例文: 後に名詞を置くケースです。

180.2  You have to go on, whatever difficulties you meet.

         どんな困難な事態に遭遇しやうとも、前進あるのみだ。

□參考例文: 來週中の日々が選擇肢として前提にあり、そのうちのどの日でもいいと述べる whichever のケースです。後に名詞を置いてゐます。

180.3  We’re free all next week.  You’ll be welcome whichever day you come.

         私たちは來週中用事はありません。どの日にいらしても結構ですよ。

        = … You’ll be welcome no matter which day you come

 

・You got it: (レストランでの客の注文に對して)「了解しました」「承知しました」。You got it. は「その通り」といふ意味で、相手の正しい理解を認める際に使はれることもあります。

 

・I don’t know what it is either: 「私もそれが何だか知りません」。否定文脈で「~も…(ない)」といふときには too ではなく either を用ゐます。

□參考例文: 肯定文脈の「~も…」です。

180.4  “I’m from Arizona.”  “Really?  I am, too.”

        「私はアリゾナ出身です」 「本當?私もさうですよ」

□參考例文: 「否定文脈での「~も…(ない)」です。

180.5  “I can’t eat raw fish.”  “I can’t, either.”

        「私は生の魚が食べられません」 「私もだめなんです」

 

・the ball’s in your court: 「次は君の番だ」。 the ball’s は the ball is の短縮形です。The ball is in a person’s court / The ball is with a person とするのはおそらくテニス由來の成句で、何かを決める時決定權や判斷、責任が誰かにあることを示す際などに使はれます。ここでは調理について「(自分のすることは濟んだので後は)君に任せる」と丸投げしてゐるのでせう。

 

[意味把握チェック]

1 「すでに何度も食べたことのないもの(/食べた經驗のない料理)なんて此處にはひとつだつてないぞ」

2 「ぼくはホントに何かちがふものを食べたい氣持なんだ」

2 「gomba kadoodles を召上がつたことがありますかい」

3 「イヤ、でもそれが何であれ、持つてきて(/出して)くれ」

3 「承知しました」

4 「それが何だかワシも知らないんだ、でも次はお前の番だからな(/あとはお前に任せるからな)」


・用例研究 179 〈whatever①〉

2019-07-15 | 用例研究

 

[用例研究 179] 〈whatever①〉

    (BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake)

1  But all the kids are going!

1  I know one who isn’t.

2  Mothers are impossible!

2  We have to be, it’s one of our job requirements.

3  Daddy, could I ...

3  Whatever your mother says goes.

4  You’re just playing it safe!

4  That’s one of a father’s job requirements.

 

[解説]

・I know one who isn’t: one は不定代名詞で、前出の名詞の繰り返しを避けて使はれ、不特定の人・物などを指します。〈a+前出の名詞〉にあたり、ここでは a kid といふことになります。「行かない子がひとりゐることがわかつてゐる」、つまり「私はあなたが行くことを許さない」と解しました。

 

・impossible: ふつうは「(物・事が)不可能な/あり得ない」ことを意味しますが、話し言葉では人間や事情などを主語にして「我慢ならない」「耐へられない」「どうしやうもない」といつた意味で使ふことがあります。

・job requirement: 「仕事で求められる必要な資質、要件」といつた意味でせう。ここでは家族關係で用ゐられてゐますから「(役割上)義務として要求されること」と解しました。

 

・could I ...: Could I ~? と叮嚀な言ひ方で父親に許可を求めようと切出したものでせう。

 

・Whatever your mother says: 「何であれ母の言ふこと」「母の言葉は何でも」

  whoever / whatever / wherever / whenever など、關係詞に ever がついて意味が「強調」されたところから(←私見です)、① any(~する人は誰でも/~するものは何でも/~はどこでも/~するときはいつでも、など)の意味を帶びたり、②さらにそこから「讓歩」の意味が生じて(誰が~しようとも/何を/が~しようとも/どこへ~しても/いつ~しても、など)、副詞節を形成することがあります。文法書では、「關係代名詞」「關係副詞」につづけて「複合關係代名詞」「複合關係副詞」といつた項目を設けて解説してゐます。

①〈any ~〉の意味で使はれる例文を紹介します。

□參考例文: 漫畫と同じく、主部に置かれた例です。

179.1  Whatever he tells us never fails to make us interested.

         彼が話してくれることは何でも私たちにはおもしろい

        = Anything which he tells us never fails to make us interested.

□參考例文: あとに名詞を續けて形容詞的に用ゐた例です。

179.2  Take whatever books you want to read.

         讀みたい本はどれでも取つてよい。

□參考例文: whichever はいくつか選擇肢があつて、そのうちの「どれでも」と言ふ場合に用ゐられます。あとに名詞を續けて形容詞的に用ゐることもできます。whatever には選擇肢の前提がありません。

179.3  Choose whichever suit you like best.

         どれでも一番好きな服を選びなさい。

        = Choose any suit that you like best.

□參考例文: 疑問詞 what の強調のために whatever を用ゐることがあります。

179.4  Whatever will he say when he hears this?

        このことを聞いたら彼はいつたい何と言ふだらうか。

 

②「讓歩」の意味に轉じた例については [用例研究 180] で扱ひます。

 

・go: 「(事・ことばが)決定的である/有效である」

□參考例文:

179.5   What the boss says goes.

         ボスのことばが掟だ。

 

・just: 強調と口調を整へるはたらきをしてゐるやうに見えます。

・play it safe: (話し言葉で)「危險を冒さない」

 

[意味把握チェック]

1 「でもみんな行くのよ」

1 「行かない子がひとりゐることがわかつてゐるわ」

2 「母親つてどうにもならないわね/どうしやうもないわね」

2 「さうでなくちやならないの、それが(わたしたち)母親の役割(/義務)のひとつなんだから」

3 「お父さん、お願ひなんだけど...」

3 「何でもお母さんの言ふとほりで決まりだよ(/お母さんの言ふことが何でも通るんだよ)」

4 「安全策をとつてるだけなのね」

4 「それが父親の役割(/義務)のひとつなんだ」

 

[笑ひのポイント]

・娘の Cookie の求めに對して job requirement といふことばを揃へて應じてゐます。4コマめの job requirement の内容が、今どきの(奧さんに頭のあがらない)父親のイメーヂを表はしてゐて笑ひを誘ひます。


・用例研究 178 〈whoever②〉

2019-07-08 | 用例研究

[用例研究 178] 〈whoever②〉

                       

  (BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake)

1  May I use your phone, Mr. Bumstead?

1  Sure, Elmo.

2  5...5...5...6...3...5...4...7...8...1...

2  Who are you calling?

3  Oh, I just punch a bunch of numbers and talk to whoever answers.

Guten abend?

 

[解説]

・Who are you calling?: 「誰に電話してるんだい」 疑問詞は目的格ですが、口語では whom ではなく who が使はれます。

・5...5...5...: 番號には國外通話の番號や國番號もなくでまかせのやうに見えます。

・a bunch of ~: bunch は葡萄などの「房」から轉じて「束」「山」など。ここは「一群の~」「一聯の~」といふところでせうか。

・talk to ~: 「~に話しかける」

 

・whoever: Longman Dictionary of American English の whoever の項には、

  used in order to show that it does not matter which person does something(どの人がするのかは問題にならないことを示す爲にもちゐられる)

  と説明があり、例文として、

Whoever gets there first can find a table.(誰であれ(/誰でも)そこに最初に着いた人は席がみつかる)

  が擧げてあります。

  この whoever は anyone who に相當すると考へたらいいでせう。文法書では「複合關係代名詞」の項に説明がみつかります。

□參考例文: 關係詞節が主部。

178.1  Whoever reads this will surely be surprised.

         これを讀む人は誰でもきつと吃驚するだらう。

        = Anyone who reads this will surely be surprised.

□參考例文:關係詞節が前置詞目的語になつてゐますから、漫畫の例と似てゐます。複合關係代名詞は主格です。

178.2  He told the story to whoever (=anyone who) came to see him.

        彼は會ひに來る人なら誰にでもその話をした

□參考例文: 關係詞節が動詞 employ の目的語になつてゐます。複合關係代名詞は recommend の目的語になつてゐますから目的格で本來は whomever ですが、口語では whomever の代はりに whoever が使はれます

178.3  We’ll employ who(m)ever you recommend.

         あなたが推薦する人なら誰でも雇ひませう。

        = We’ll employ anyone who(m) you recommend.

□參考例文: 複合關係代名詞が目的格の例です。例文178.2 と比べてみると相違がわかります。

178.4   He told the story to whomever (=anyone whom ) he met.

    彼は會ふ人には誰にでもその話をした。

 

  さらにここから轉じて「たとへ~であつても」といふ「讓歩」の副詞節で使はれることがあります。こちらは主文から獨立した文構造を持つてゐます、つまり主語や動詞・前置詞の目的語として文に組み込まれてゐないのです。コンマはあつたり無かつたりします。この意味では 〈no matter ~〉のはうが口語的とされます。また讓歩節のなかで助動詞 may を使ふのは文語的とされます。

□參考例文

178.5  Whoever comes, I won’t see him.

         誰が來ようとも私は會はない。

        = No matter who comes, I won’t see him.

□參考例文: 口語では whomever の代はりに whoever が使はれます。

178.6  Who(m)ever you ask, you’ll not be able to get the answer to the question.

         誰に訊かうとその問題の正解は得られないだらう。

        = No matter who(m) you ask, you’ll not be able to get the answer to the question.

 

Guten abend: (ドイツ語で)「今晩は」

 

[意味把握チェック]

1 「Bumstead さん、電話借りて(/使つて)いい」

1 「いいとも、Elmo」

2 「5...5...5...6...3...5...4...7...8...1...」

2 「誰に電話してるんだい」

3 「ああ、一連の番號をただ押して、誰でも電話に出た人に話しかけるんだ」

3 「(ドイツ語で)今晩は?


・用例研究 177 〈whoever①〉

2019-07-01 | 用例研究

[用例研究 177] 〈whoever①〉

  (BLONDIE  By Dean Young & Stan Drake)

 

1  This is just the kind of birdhouse I’ve been looking for!... two-story, eight compartments, all-aluminum, pitched roof ...

2  Compartments snap apart for easy cleaning.

2  Well, that’s just ridiculous!

3  Whoever heard of a bird who could snap a compartment and then start cleaning?

 

[解説]

・aluminum: [əljú:mənəm]

・pitched roof: [pitʃit ru(:)f] 「ピッチ(/タール)塗りの屋根」

 

・snap apart: 「(カチッと音をたてて、まとめられてゐた小屋を)バラバラにする(/分解する)」

 

・whoever: この whoever は複合關係代名詞ではなく、疑問詞です。who が強調されたかたちであり、驚きや不信の氣持をこめて「いつたい誰が~」といつた意味を傳へます。もともとは who ever と分けて綴られてゐたものが一語に綴られるやうになつたものかと想像します。

□參考例文

177.1     Whoever told you that?

                 いつたい誰がそんなことを君に言つたのですか。

□參考例文: 主部に置かれたケースです。

177.2     Whoever comes first does not matter.

              = It does not matter whoever comes first.

                 いつたい誰が最初に來るか、といふことは問題ではありません。

□參考例文:分けて綴られてゐる例です。

177.3     Who ever told you to ask me to lend you the money?

                 いつたい誰が、私に借金を申込めとあなたに言つたのですか。

 

  ここでは whoever ~は修辭疑問文でもあつて、「誰が耳にしたか」と訊ねてゐるわけではなく「誰も耳にしたことがない」と言つてゐます。

  修辭疑問で用ゐられた whoever といへば、1959年から翌年にかけて流行した歌 Kathy Linden の Heartaches at Sweet Sixteen (『悲しき16才』)に用例があり、以前紹介したことがあります。

 

I’m sittin’ all alone and feelin’ blue

I’m wonderin’ if he’s found somebody new

Whoever thought that I’d be goin’ through

Heartaches at sweet sixteen?

 

  「私はひとりぽつちで坐つてふさぎこんでゐる。彼は誰かあたらしい人をみつけたのかしら。私が16才の惱み(/心痛)を經驗することになるなんて、いつたい誰が思つたことか(誰もそんなことは思はなかつた)」といつた意味を傳へてゐるのかと思ひます。行末で [u:] と韻を踏んでゐます。

 

・hear of ~: 「~について傳へ聞く」「~の噂(/消息)を聞く」  ※ heard と過去形になつてゐますが、現在完了時制の代用であるやうに思ひます。

 

 [意味把握チェック]

1 「こいつは正にぼくがずつとさがしてゐたタイプの鳥小屋だ...二階建て(/二層構造)で、八つ(の小部屋)に分かれてゐて、全てアルミニウム製で、タール塗りの屋根で...」

2 「小部屋は掃除がしやすいやうにカチッと分解できるんだ」

2 「ええと、ちょつとばかげたハナシだな!」

3 「小部屋を分解できて、それから掃除を始められる鳥なんて(/鳥について)、いつたい誰が聞いたことあるだらう(/誰も耳にしたことないぞ)」