月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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エルナト・29

2017-09-28 04:15:17 | 詩集・瑠璃の籠

馬鹿者の
絶望と破壊を
きぬのうすものを垂らすように
静かにやってさしあげましょう

空をつんざく雷鳴もなく
轟き渡る津波の音もない

真鍮の高楼は崩れることもなく
傾ぐこともなく
永遠の虚無の傷のように立ち続ける
そこにありながら
決してないもののように
物質のまま幻となる

人間はそれを見たくないと思うままに
逃げていくのだ
あまりにも恥ずかしい記憶だからです
何のためにそれをやったのかが
見ればありありとわかるからです

そして誰もいなくなる

幻の自分を生かすために
営々と作り上げてきた
黄金の都市が
何の意味もない虚ろとなり
そこで生きていくことが激しく苦しいものになる
そして一ミリも崩れないままに
廃墟となるのです

アトランティスのように
見えない虚無の海に沈む
あふれるほどやってきた
記憶の亡霊が
あそこでは静寂の中で
永遠に騒いでいるのだ
二度と見たくはない

人間が逃げていく
誰もいなくなる
馬鹿者の虚栄が築いた城が
完璧な姿のまま破滅していく

永遠の終末を着た
あまりにも頑丈な幻となるのです




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