月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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アルテルフ・20

2018-09-27 04:13:06 | 詩集・瑠璃の籠

透明な死魚を吐き
死魚を吐き
おまえはそれを積み重ね
自分を守る城をつくる

半月のつるぎの
突き刺さった心臓を守るために
死魚を吐き積む

永遠に不安のない
自分の島をつくるために
風のような死魚を吐き積む

それは永遠に終わらない
言い訳の風だ

夢を見ていたかった
あほうになっていれば
いつのまにかすべてが
自分の都合のいいようになっている
そんな夢を見ていたかった
愚か者め

おれは何もしてはいない
すべては
神の過ちなのだと

赤い心臓から滴る血を
ぐみの実が風に落ちるのだと偽りながら
闇に汚れた目に
涙が染みる

ああ 
逃げるところが欲しいと
虚無の壁をひっかきながら
馬鹿はまた死魚を吐き
いいわけの城をつくる




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フェクダ・12

2018-09-23 04:13:10 | 詩集・瑠璃の籠

いやらしいことを
してはならぬ

愚か者の王冠を保つために
まことの人間の
努力の宝石を
盗んではならぬ

恥ずかしい自分の
過ちを隠すために
天使のほほえみを
かすめとってはならぬ

すべてを返しなさい
自分のものでないものは
すべて神に返すのだ

出てくるおまえの自分が
だるまのように
情けないものであっても
おまえが生きていく自分は
それしかない

逃げることはできない真実を
頭からかぶり
きしる叫びに自分をこすりながら
まことを生きてゆけ

もう人のものを
二度と盗んではならぬ
人のいやがることを
二度としてはならぬ




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アンドロメダ・11

2018-09-16 04:13:11 | 詩集・瑠璃の籠

奪われたものを
とりかえすために
神は支配する

怨霊のとりことなった
竜胆の花を
解放するために

凍り付いた
青瑪瑙のためいきを
粉々に砕き
蒼天の春を
全世界に広げるために

ゆめまようでない
ゆめまようでない
二度とない
このような支配は
二度とない

灰の夢にまようた
人間の愚を掃除するために
神が
一度だけやるのだ

永遠をはかる
砂時計をひっくり返し
神はすべてのために
努力する

傲慢の糞の
こびりついた人間を
人間であったものを
永遠の外側の世界に
追い出す




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トリアングルム・21

2018-09-09 04:13:59 | 詩集・瑠璃の籠

さびしさを
青い石の中に塗りこめ
凡庸の淵に沈んだ
心臓をつかみ

ためいきでつくった
小さな鍵を
けして開きはしない
黄金の壁にさした

これ以上行ってはならぬという
黄金の壁に

永遠に忘れ去りたい
傷をまるめこんで
指輪の石にした
すると傷は空に現れて
微笑みの形の月になった

あほうよ
どうしようもないあほうよ
おまえは
蜘蛛の糸で編んだ幻になる
ねばつくその罠に
おまえ自身がもつれる

夢であればいいのにと
泣くおまえの涙に
海がすみつく

永遠の永遠に
凍り付いたため息をさし
おまえはとうとう
決して開いてはならない壁を
開いたのだ

苦い未来の
嘘寒い舌になめとられ
おまえは
おまえではないものになるために
神の指から
落ちてゆく

すさまじく
悲しい
真空の裏に
落ちてゆく

愚か者よ
ああ愚か者よ
二度と戻れない



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アルテルフ・19

2018-09-07 04:14:33 | 詩集・瑠璃の籠

美しくなりたいと
ただそれだけのために
天使の真似をし
自分を捨て
自分に捨てられ
無人格化していく女がいる

逃げることはできない自分を
空蝉のように脱ぎ捨て
天使の顔を着込んで
天使になろうとする馬鹿がいる

むごい真実のしっぽを
風になびかせながら
石膏で作った清らかな顔を
自分に埋め込み
自分のすべてを変えようとして
愛を消去していく女がいる

ありとあらゆるものを
失うというのに
喜々として破滅の縄をとき
自分を虚無の床に投げる
女がいる

絶対神のごとき
虚無とまぐわい
自分ひとりがうつくしい
永劫の王国を生もうとして
かすにもならぬ屁をひる
馬鹿な女たちがいる




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フェクダ・11

2018-09-06 04:12:51 | 詩集・瑠璃の籠

嘘を
きれいに飾れば飾るほど
それは虚しいものになるのです

あなたがたは
美しいものを情熱的に観察し
むしりとるように美を奪い
それを我が身につけて
にわとりのように着飾るが
そのすきまというすきまから
本当の姿が見えていることに
気付かねばならない

何もしてこなかった
自分の貧しさゆえに
あまりにも寂しくなった自分を
完璧な美貌で隠せば隠すほど
自分がみじめになっていくことを
学ばねばならない

自分にはない
新しいものをみるたびに
それが欲しくなり
それを盗み取り
それを身につけて
ますます着飾っていく
そのたびに
本当の自分が消えてゆく
その恐ろしさゆえに
また一層着飾っていく
どんどん自分が嘘になる

全知全能の神のように
全美をそなえた
ロボットのようなものにでもなるつもりですか
そんなことをすれば
あなたがたは形だけの馬鹿になる

形だけあって
中には何もない
人形よりも虚しいお化けになる

もうやめなさい
嘘を着飾るのは
骨にまで結び付けた
よけいな美をほどき
すべての嘘をかなぐり捨て
もとの自分にもどっていきなさい




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メンカリナン・21

2018-09-02 04:13:34 | 詩集・瑠璃の籠

本当に救われたいのなら
自分を捨てなさい

その愚かな自分を
守ろうとすればするほど
あなたは苦しむのです
永遠に苦しみ続けるのです

あなたが守ろうとしているものは
ほんとうの自分自身ではない
自分を守るために必要だと思い込んでいる
卵の殻のようなものです
それはもうとっくに
必要のないものなのです

あなたはまだ
世界で一番自分が偉くいられた
自分が唯一の存在であれた
卵の中の仮定された絶対感の中に
逃げたいと思っているのです
いやなことをしてしまった自分の責任も
その中でなら無いことにできると
思い込んでいるのです

逃げてはなりません
もう自分として独り立ちできる年齢に
十分になったのです
あなたはその責任を負い
少しずつでも償っていける力を持っているのです
それはできることなのです
そしてそれをやることそのものが
あなたの悦びとなるのです
それを信じなさい
本当の自分の力は
あなたが思っているよりもずっと
高いものなのです

自分を捨てるということは
自分に必要のないものを捨てるということだ
あなたが今自分そのものだと思っている
絶対に必要だと思いこんでいるものを捨てなさい
それは単なる執着です
もうとっくに滅びてないものを
まだあると信じて
いまだにもぐりこもうとしている

逃げてはなりません
自分を捨て
神の中に飛び込みなさい
そこにこそ本当の自分がある
本当の自分に戻らない限り
あなたは永遠に同じ間違いを繰り返すのです




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