月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
コメントはゲスト・ルームにのみお書きください。

ヴィンデミアトリックス・45

2021-01-26 05:11:56 | 詩集・瑠璃の籠

わかれゆくものよ
はなれゆくものよ
永遠の川が
神とおまえを隔てる

おまえは
神の与える真実の幸福よりも
嘘とガラクタで作った
偽物の幸福を選んだのだ

奇妙な薬の混じった
黄金の酒に酔い
魂の枯れていく音を
耳のそばで聞きながら
おまえは何もしなかったのだ

永遠の樽をかきまぜながら
神の歌う悲しみの歌を聞いても
おまえはしばりつけられた幻の
腕をひっぱるばかりで
振り向こうともしなかったのだ

わかれゆくものよ
はなれゆくものよ
蟻の群れのようなさみしさが
少しずつおまえの心臓に凍り付く

永遠の別れになるまで
振り向かなかった神の涙を
すべて飲み干す気になるまで
永遠の川の向こうに
おまえは捨て置かれる




コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

アラドファル・20

2021-01-05 05:07:24 | 詩集・瑠璃の籠

愛がはなれてゆく
何度裏切っても
何度馬鹿にしても
ずっとそばにいてくれると思っていた
神の愛がはなれてゆく

それだけは倒してはならないという
神の救いの塔を
あなたは粉々に壊したのだ

愛がはなれてゆく
引き潮のように
遠のいてゆく

美しかったあの人の
すべてを奪おうとして
あなたがなしたあらゆる罪が
山のようにふくれあがり
それを見た神が
もう二度と会いたくないと
泣きながらおっしゃったのだ

愛がはなれてゆく
引き潮のように
遠のいてゆく

神とおのれを
裏切り続けてきたあなたの
鼻先を切るように
虚無の風が近づいてくる

あなたはひとり
おのれすら愛さない
おのれを抱いて
とほうもない永遠の中に
落ちてゆくのだ




コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする