月の岩戸

世界はキラキラおもちゃ箱・別館
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カブディリナン・4

2017-12-26 04:15:55 | 詩集・瑠璃の籠

玉の鈴を千個も垂らし
月が通り過ぎて行く
快い静かな音を鳴らし
誰も振り向かずにすぎてゆく

川のように長い髪が風に揺れ
そのひとすじひとすじが
月影の緒のように光っていた
乳色の衣装はかすかに金色を帯びて
豊かな泉のように
月は大地に盛り上がっていた

通り過ぎてゆくのを
誰もとめることができない
呆然と目を見張る人々の視界を
ただ黙々と横切っていく
つなぎとめられたかのように
目をそらすことができない

凡庸の沼に身を浸し
なにもせぬ者たちは
月の影を沼に写し
永遠にみんなで食える
肉菓子のようなものにしようとしたが
影はすぐに消えた
何も残りはしなかった

青いかがり火を焚き
欲望の明りで照らした世界は
空蝉の中の闇のように狭かった
その中に
万人の人間がひしめいていた

恐ろしい夢を共有し
堕落の酒に酔った愚か者どもを
神がつまみ出す
もう彼らには
どこにもゆくところがない

愛していたものを
豚にして食おうとした
愛してくれたものを
永遠に堕落の影に押し込み
すべてを馬鹿にしようとした

エデンの東の東には
追放の門がある
苦いその石門が開く

おまえたちはもう出て行けと
神の悲しい声をきく




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