月の岩戸

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ルナ・29

2017-04-25 04:16:55 | 詩集・瑠璃の籠

忘れてしまった
記憶の
入っていた小箱を
割って
小さな木くずに砕いて
蜜にとき
小さな練り香を作ろう

それを
銀の香炉で焚いて
薄紫の
小さなすみれの花びらに
焚きこもう

すみれはかすかに
悲しみを帯びて
重くなった花びらを
つけてくれるだろう

風に揺れるたび
それはあえかな
吐息のような
透明な鈴の音を立てて
匂うのだ

ああ
あなたのことだけは
忘れたくなかったのにと




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