ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

胎児機能不全(NRFS)、問題と解答

2010年02月22日 | 周産期医学

【練習問題22】(産婦人科研修の必修知識2007)

24歳の初産婦。妊娠経過に異常を認めない。妊娠38週で前期破水のため入院となった。入院後、自然陣痛発来し、順調に分娩進行していたが、胎児心拍図モニター上、子宮収縮に伴う100bpmの変動一過性徐脈が出現した。内診所見は子宮口7cm開大、展退80%、station +1で、流出する羊水に胎便や血液の混入は認めない。ただちに行うべき処置を下記の中から2つ選べ。

a.緊急帝王切開
b.母体の体位変換
c.人工羊水(生理食塩水)注入
d.酸素投与
e.吸引分娩

【解答】b、d

NRFSに対する対応
①母体への酸素投与
②母体の静脈路確保・輸液
③母体の左側臥位への体位変換
④子宮収縮薬投与を中止して、子宮収縮抑制薬(塩酸リトドリン)の点滴静注
⑤内診
⑥急速遂娩(吸引分娩、緊急帝王切開など)

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【練習問題23】

母体の発熱時にみられる胎児心拍数陣痛図所見はどれか。1つ選べ。

a.一過性頻脈
b.持続性頻脈
c.遷延性徐脈
d.基線細変動消失
e.サイヌソイダルパターン

【解答】b

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【練習問題24】

胎児心拍数モニタリングについて正しいのはどれか。
3つ選べ。

a.遅発一過性徐脈では胎児中枢神経系の低酸素状態が強いほど心拍低下の程度は大きくなる。
b.胎児の呼吸様運動に伴う循環動態の変化は、胎児心拍数基線細変動が起こる要因の一つと考えられる。
c.妊娠40週の胎児にNSTを30分施行したとき、一過性頻脈がなく基線細変動が5~10bpmであれば、CSTを行うべきである。
d.正常胎児では、妊娠中期以降妊娠末期に向かい胎児心拍数基線が低下する。
e.妊娠28週の胎児では40分間NSTを施行したとき、一過性頻脈が全く見られなくても異常とはいえない。

【解答】b、d、e

遅発一過性徐脈は、胎児低酸素症により出現する。胎児心拍数低下の程度は問わない。基線細変動消失時の遅発一過性徐脈は極めて危険である。

NSTでは、一過性頻脈が出現することをreactive、出現しないことをnon-reactiveとよぶ。胎児は20~40分ごとに睡眠と覚醒を繰り返すため、NSTは、一過性頻脈の出現まで、あるいは80分間測定を行う。

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【正誤問題】(チャート国試対策・産科)

(1)一過性頻脈の頻発はNRFSの徴候である。

(2)non-reactive NSTはNRFSの徴候である。

(3)早発一過性徐脈はNRFSの徴候である。

(4)軽度変動一過性徐脈の発生は胎児にとって病的意義はない。

(5)高度変動一過性徐脈、特に基線細変動消失の合併は超危険徴候である。

(6)CSTにおける遅発一過性徐脈の頻発は急速遂娩の適応にならない。

(7)サイヌソイダルパターンは胎児高度貧血または胎児失血の存在を示す。

(8)サイヌソイダルパターンを示す胎児ではしばしば胎児水腫がみられる。

(9)胎児に高度貧血を起こすのは風疹とパルボウイルスB19感染症である。

(10)遅発一過性徐脈から遷延性徐脈への移行は極めて危険である。

解答 ――――――

(1)X 一過性頻脈(accelation):15bpm以上、15秒以上続く頻脈化。交感神経優位の所見で、妊娠30週以降、accelationの増加が起こる。妊娠32週以後、accelationが頻発する活動期とaccelationがほとんど認められない静止期に分類できるようになる。accelationの存在は、胎児がreassuringであることを示す上で最も重視される。accelationが認められないという所見の診断価値はあまり高くない。

(2)X 胎児の睡眠もあり得る。reactive NSTにおける胎児well-beingの予知は高いが、non-reactive NSTにおける胎児危険の予知は低い。

(3)X 早発一過性徐脈(early deceleration):分娩第2期に子宮収縮による児頭圧迫で発生する。異常所見ではない。

(4)X かなり危険な徴候。

(5)O CST:10分間に3回以上の子宮収縮を起こさせた状態で、胎児心拍数陣痛図を記録し遅発一過性徐脈の出現の有無をみる。遅発一過性徐脈の出現を認めるもの(CST陽性)を胎児機能不全と診断する。

(6)X 急速遂娩の適応。

(7)O サイヌソイダルパターンの原因:胎児水腫、重症胎児貧血、胎児低酸素症、正常分娩の途中など 

(8)O

(9)X 先天性風疹症候群(白内障、心奇形、動脈管開存症、聴力障害、肝脾腫)。パルボウイルスB19(胎児水腫、高度な胎児貧血)

(10)O 遷延一過性徐脈(心拍数の減少が15bpm以上で、開始から元に戻るまで時間が2分以上10分未満の徐脈)は、母体の無呼吸・低血圧、過強陣痛、子宮破裂、臍帯脱出、常位胎盤早期剥離などで発生する。多くは胎盤の循環不全により生じるが、胎児状態がよいものから急速遂娩が必要なものまであるので慎重に判断する。10分以上の一過性徐脈の持続は基線の変化とみなす。この場合は超緊急帝王切開の適応となる。

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【正誤問題】

(1)既往帝切の経腟分娩では遷延一過性徐脈の発生は子宮破裂を考える。

(2)骨盤位分娩では破水後の遷延一過性徐脈の発生は臍帯脱出を考える。

(3)排臨時に遷延性一過性徐脈が発生した児の予後は一般に不良である。

(4)簡易BPSではnon-reactive NST、および、AFI<5cmを妊娠中断の指標とする。

(5)胎児血流測定では臍帯動脈拡張末期血流の途絶を妊娠中絶の指標とする。

(6)児頭採血法で血液pHが7.3であればNRFSである。

(7)胎児酸素飽和度が40%で持続すればNRFSである。

(8)羊水の胎便汚染、急激な産瘤増大はNRRSの存在を示唆する。

(9)低酸素症では腎臓、皮膚、筋肉への血流が増加する。

(10)低酸素症では脳、心臓、副腎への血流が増加する。

解答 ――――――

(1)O

(2)O

(3)X

(4)X 簡易BPS:10分間のNSTで2回以上の一過性頻脈が認められ、AFIが5cm以上の場合、胎児はwell-beingであると考える。negative NST、あるいは、AFIが5cm未満の場合は、CSTあるいはSPSを行う必要性が生じる。

(5)O 胎盤機能不全によって胎児低酸素状態が発生すると、臍帯動脈拡張末期血流が途絶あるいは逆転する。

(6)X pH>7,25 正常。pH<7.20 急速遂娩。

(7)X 基準値:30~70%

(8)O

(9)X 低酸素症の血流再配分で血流が増加する組織:脳、心臓、副腎。血流が減少する組織:四肢、腎臓、肺、腸管。

(10)O

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【正誤問題】

(1)低酸素症の血流再配分では末梢血管の血管抵抗が減少する。

(2)低酸素症の血流再配分では脳血管や冠動脈の血管抵抗が減少する。

(3)NRSFでは一般に呼吸性アシドーシスだけが発生する。

(4)NRSFの徴候が発生したら母体の体位変換を試みる。

(5)NRSFの徴候が発生したら母体に酸素吸入および輸液を行う。

解答 ――――――

(1)X 低酸素症の血流再配分で、末梢血管の血管抵抗が増加する。

(2)O

(3)X 胎児・新生児の低酸素症では嫌気性解糖の結果、乳酸菌が上昇して代謝性アシドーシスが発生する。

(4)O NRFSに対する対応
①母体への酸素投与
②母体の静脈路確保・輸液
③母体の左側臥位への体位変換
④子宮収縮薬投与を中止して、子宮収縮抑制薬(塩酸リトドリン)の点滴静注
⑤内診
⑥急速遂娩(吸引分娩、緊急帝王切開など)

(5)O