ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

産科医の重点配置

2007年10月06日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

地域基幹病院の産婦人科に産科医を重点的に配置して、分娩機能を集約化しようという試みが、全国各地で進行中です。これらの取り組みは、地域の産科施設が全滅してしまう最悪の事態を何とかして回避しようとする緊急避難的措置だと思います。

これらの緊急避難的な取り組みによって、何とか地域産科医療体制の一時的な延命に成功したとしても、集約先の産科施設の業務量は従来よりも劇的に増えてしまうことは確実なので、その集約先施設の産科医や助産師などのマンパワーを大幅に増強する必要があります。さらに、今後も長期的にその増強されたマンパワーの規模を維持し続けなければなりません。

報道記事で行政の分娩施設の集約化構想の内容を読んでみますと、『今、現場で頑張っている産科医達でも、このままでは、辞めて現場からいなくなってしまうかもしれない!』という発想が全く欠如しているように感じます。国全体の勤務産科医の総数がどんどん減っているわけですから、今も現場に踏みとどまって頑張っている産科医達の職場環境はますます悪化し続けてます。いくら新人産科医を増やしても、それ以上に現役産科医が辞めてしまうようでは、全く意味がありません。『今、現場に踏みとどまって、何とか辞めずに頑張っている産科医達が、これから先も辞めないでも済むような方策を考えること!』が最も重要だと思います。

参考:産科・小児科の重点配置を提言 (長野県産科・小児科医療対策検討会)

**** 朝日新聞、北海道、2007年10月5日

産科医を重点配置/道が素案

■地域考慮、24病院に

 深刻な産科医不足のため、道内の産科医療体制の見直しが急務となっている。道は4日、道内の産科病院の「役割分担」に関する素案を公表した。各地域ごとに医師を優先的・重点的に配置する病院を決め、産科医療体制を保つと同時に、産科医を増やすことで、医師の勤務状況改善を進める狙いもある。道は来年度から10年間の道の医療計画に反映させたいとしているが、「重点」からはずれる地域の反発も予想される。

 素案によると、「道央」「オホーツク」など道内の6圏域に1カ所ずつある「総合周産期母子医療センター」となっている病院が、高度・専門医療を担えるように、医師を最優先で配置する。

 これに次いで、面積が広く、人口が多い「道央」「道北」の2圏域では、「地域周産期母子医療センター」に認定された5病院にも重点的に医師を置く。

 これら計11病院から冬場の移動時間が2時間、移動距離が100キロを超える地域の体制整備として、計13病院への医師の配置も優先する。

 一方、NTT東日本札幌病院や道立紋別病院など、すでに同センターに認定されている8病院については、引き続き産科医療体制の維持を図る。また、同センターに認定されているが、分娩(ぶんべん)を休止している市立函館病院など5病院は、再開に向けて医師確保に努める。

 これらの実現に向けて、北大、札幌医大、旭川医大からの派遣に加え、病院間の連携推進や、国の緊急臨時的医師派遣システムなどを活用する――としている。

 産科医の重点配置を進める背景には、このままでは、道内の産科医療体制が崩壊しかねないという危機感がある。

 道内の医師数は、96年の1万279人から04年には1万1490人に増えたが、産科医は439人から395人に減った。地域による偏りも大きく、04年の調べでは札幌圏に44・6%が集中し、過疎地を中心にお産ができない病院・診療所が増えている。

 道はこの素案について、11月上旬まで道民や各地域での意見聴取を実施し、12月に正式案とする方針だ。

 ただ、道が8月に発表した自治体病院の再編構想と同様、「地方切り捨て」との批判が起きる可能性もある。さらに素案に強制力はなく、実現性も不透明だ。素案で医師の配置を優先するとした中には、産科医不在で分娩を中止している市立根室病院も含まれているなど、課題解決には険しい道のりも予想される。

《キーワード》
◆総合周産期母子医療センターと地域周産期母子医療センター
 「総合」は、一定病床数以上の母体・胎児集中治療管理室や新生児集中管理室が整い、24時間体制で産科医が複数、新生児担当医が常時1人勤務している病院。道内は6病院だが、うち釧路赤十字病院と市立札幌病院は国の指定を、他の4病院は道の認定を受けている。「地域」は、24時間体制で産科医と新生児担当医を確保するよう努めている病院。道が25病院を認定している。

   ◇

■道がまとめた産科病院の「役割分担」と該当する病院■=地図参照

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○=【医師配置を最優先・重点的に進め、高度・専門的な医療をする病院】(1)函館中央病院(2)市立札幌病院(3)旭川厚生病院(4)北見赤十字病院(5)帯広厚生病院(6)釧路赤十字病院
□=【面積が広く、人口も多い地域であるため、優先的・重点的に医師を配置する病院】<1>小樽協会病院<2>砂川市立病院<3>王子総合病院<4>苫小牧市立総合病院<5>名寄市立総合病院
白抜きの○=【上記11カ所から、冬の移動時間が2時間、移動距離が100キロを超える地域で、優先的に医師を配置する病院】〈1〉八雲総合病院〈2〉倶知安厚生病院〈3〉岩見沢市立総合病院〈4〉伊達赤十字病院〈5〉市立室蘭総合病院〈6〉浦河赤十字病院〈7〉富良野協会病院〈8〉留萌市立病院〈9〉市立稚内病院〈10〉網走厚生病院〈11〉遠軽厚生病院〈12〉市立根室病院〈13〉町立中標津病院
【産科医療の機能維持を図る病院】カレス・アライアンス天使病院▽北海道社会保険病院▽NTT東日本札幌病院▽手稲渓仁会病院▽深川市立総合病院▽道立紋別病院▽帯広協会病院▽市立釧路総合病院
【将来的に分娩再開を目指す病院】市立函館病院▽道立江差病院▽滝川市立病院▽カレス・アライアンス日鋼記念病院▽旭川赤十字病院

   ◇

■「出産できぬ根室」では・・・
■「評価」一方で妊婦「心配」

 昨年9月から産婦人科医が非常勤態勢となり、出産ができなくなった市立根室病院。市内で唯一、出産できる医療施設だったため、市民は遠方の市町での出産を余儀なくされている。素案は同病院を「産科医療を確保する必要がある」と認定。関係者からは評価する声もあるが、身近に産科医がいないため、市民の不安は依然として解消されていない。

 根室支庁管内で出産可能な医療施設は、町立中標津病院(産科医2人)、町立別海病院(同1人)の2カ所。根室市内からは、それぞれ車で約1時間(約60キロ)と約1時間50分(約100キロ)。素案が示した総合周産期センターで最も近い釧路赤十字病院のある釧路市までは約2時間15分(約130キロ)かかる。

 根室において医師の確保を目指すとした素案について、根室病院の事務局は「産科医療が根室に必要だと認めている。地域の実情を理解してもらえた」と評価する。

 しかし、市民が産科医を求める状況に変わりはない。町立別海病院によると、今年2月、同病院にかかっていた根室市の女性の陣痛が強まり、女性は夫の運転する乗用車で病院に向けて出発。別海町側からも救急車を走らせたが、合流した時には出産していたという。

 根室市から同病院に通う妊娠3カ月の女性(35)は「何かあった時には心配でたまらない」と言う。さらに、同病院では1カ月に対応できる出産は20件前後のため、町民や町内関係者の受診を優先的に受け付けている。女性は「結婚して別海町から根室に来たが、出産を考えて住民票は別海町に残している」。

   ◇

■公立系の54病院医師確保「急務」――道調査

 道が道内の市町村立病院など114カ所を対象に医師の配置状況などをアンケートしたところ、約半数の病院で内科、外科、産婦人科など計152人の医師の確保が緊急に必要だと答えていたことが4日、分かった。道が同日の保健福祉委員会で明らかにした。

 道が8月に、市町村立病院94カ所と公的病院20カ所に医師の勤務状況などについて調査したところ、47%にあたる54病院で緊急に医師の確保が必要な状態だった。

 必要な総数は152人で、内訳は内科が37病院59人、外科が10病院12人、産婦人科が8病院12人、循環器科が7病院11人と続いた。

 緊急に医師を必要とする主な理由は、退職者の補充(22人)、診療態勢の充実(9人)、現員では医師の負担が大きい(8人)、大学の派遣中止(6人)などが挙げられた。

(朝日新聞、北海道、2007年10月5日)

****** 毎日新聞、北海道、2007年10月5日

医師不足:道が産科医優先配置策 10年計画、素案を議会委に報告

 道保健福祉部は4日、医師不足が深刻な産婦人科医の勤務環境を改善するため、高度な胎児・新生児医療に対応できる「総合周産期母子医療センター」認定病院など道内各地域の24病院に新人産科医らを優先的に配置する10年計画の素案を道議会保健福祉委員会に報告した。産科医減少に歯止めをかける緊急対策。年内にスタートさせる。

 道内の産科医数は96年の439人が04年には395人と10%減少し、全国平均の減少率5・9%を大きく上回る。産科医が大学から地方へ「広く薄く」配置され、過酷な勤務実態を知った医学生が産科医を敬遠する悪循環に一因があった。

 新計画では総合周産期センター6病院(道南、道央、道北、オホーツク、十勝、根釧の各圏域に1カ所)に加え、これに準じた地域周産期センター認定病院の一部12病院、センター病院から100キロ離れた地域で産科を維持している道央・根釧の6病院を重点配置先とする。

 05年度から道内3医大と協議を始め、道医療対策協議会で議論を進めてきた。保健福祉部子ども未来推進局の立花理彦医療参事は「今のままでは産科医は減る一方。勤務環境の改善で産科志望者が増え、負の循環を断ち切れれば」と話した。【真野森作】

(毎日新聞、2007年10月5日)

****** 中日新聞、2007年10月4日

6病院の産科、3病院に集約 岐阜「お産難民」防止、年内にも

 岐阜県の羽島市民病院(羽島市)、東海中央病院(各務原市)、白鳥病院(郡上市)の三つの病院の産科が、年内にも近隣の三病院に集約されることが分かった。

 集約先はそれぞれ松波総合病院(笠松町)、中濃厚生病院(関市)、郡上市民病院(郡上市)。六つの病院では現在、常勤の産科医が羽島市民、白鳥、郡上市民の三病院が一人など、いずれも三人以下。常勤医の少ない産科の存在が、緊急時に対応できずに妊婦をたらい回しするなど全国的な「お産難民」問題の温床となっていることから、六病院すべてに産科医を派遣している岐阜大が中心となって打開案をとりまとめ、各病院が受け入れた。

 集約化によって産科自体の数は減るものの、残った産科では常勤医が増えるため「お産難民」の発生防止につながる。また医師一人一人にかかる負担が軽くなることから、出産時の妊婦のリスクが小さくなるメリットが期待できるという。

 三病院のうち、東海中央と羽島市民の両病院は周辺に開業医などが充実、近年は出産件数が減少傾向にある上、岐阜市民病院、県総合医療センター、岐阜大病院(いずれも岐阜市)など高度な医療に対応できる病院もあり、集約が可能と判断した。また郡上市の場合、人口規模などから公的産科サービスの提供は一カ所で可能とされた

 集約後は羽島市民など三病院では出産ができなくなるが、婦人科医一人は常駐し、産前産後を含めた婦人科医療は継続する。

 取りまとめの中心となった岐阜大大学院医学系研究科・医学部地域医療医学センターの今井篤志教授は「安全なお産を第一に考えた。全国的に問題となった妊婦の受け入れ拒否を発生させない母体搬送システムを確立する」と説明。

 岐阜県地域医療対策協議会のメンバーを務める長良医療センター(岐阜市)の川鰭(かわばた)市郎産科医長は「不安を感じるかもしれないが、近隣地域により安全な出産場所が増えるのであればいい動き」と話している。

 六病院のうち羽島市民と郡上市民は市、東海中央は公立学校共済組合、中濃厚生は岐阜県厚生連、白鳥は国保、松波総合は医療法人がそれぞれ運営している。

(中日新聞、2007年10月4日)

*** 医療タイムス、長野、2007年9月27日

伊那中央に分娩機能を集約化

「上伊那地域における医療検討会」

 上伊那地域の公立3病院の院長や自治体担当者らで構成する「上伊那地域における医療検討会」は25日、地域の産科医療の「連携強化病院」である伊那中央病院に分娩機能を集約化することで合意した。今後は地域内での妊婦検診や産褥管理入院体制の連携体制などについて検討を重ね、来年4月の実施にむけて準備を進める。

 会合では、年間約1600件の上伊那地域の分娩を、来年度以降は里帰り出産の制限などで1300件程度まで抑制し、地域の産科医療を保持していくことを確認。その上で、伊那中央病院に分娩を集約することとした。集約化によって、伊那中央病院で年間約1200件、福島病院と助産所、自宅で約130件の分娩を担う。

 また、検討会は分娩集約後の産科医療体制についても協議。妊婦検診については、分娩が集中する伊那中央病院の負担を減らすため、福島病院や産婦人科を標榜する医療機関、助産所などが主に担当。産褥管理入院に関しても伊那中央病院を中心に産婦人科を標榜する辰野総合病院や昭和伊南病院などで分担していくことで合意した。さらに、現在県助産師支援検討会で協議が進んでいることなども踏まえ、産科医療への助産師の関与を組み込んでいく考えだ。来年4月の集約化に向け、今後は上伊那広域連合や地元自治体と、伊那中央病院の産科施設の改修費用などの分担方法や費用捻出などについて、引き続き検討していく。

 伊那保健所の宮澤茂次長は、病院や地元自治体が分娩機能の集約化に合意したことについて「これまで足踏みしていた上伊那地域の産科医療問題が、ようやく解決に向けて一歩踏み出した。これからは住民の理解が得られるよう、各論部分の検討を進めていきたい」としている。

■妊婦の共通カルテを導入へ

 また、会合では、妊婦検診の円滑な実施を目的に、共通カルテを導入することを決めた。これに伴い、10月に伊那中央と昭和伊南病院の産科医と助産師、上伊那医師会、上伊那地区助産師会の代表者でつくる「上伊那地域産科連携体制研究会」を立ち上げ、11月までに共通カルテの具体的な運用方法や産科医療機関における連携などについてまとめる予定だ。

(医療タイムス、長野、2007年9月27日)

****** 信濃毎日新聞、2007年9月26日

妊婦の共通カルテ導入へ 上伊那地域

 上伊那8市町村の福祉担当課長や公立3病院長らでつくる「上伊那地域における医療検討会」は25日、上伊那の産婦人科がある病院や診療所、助産所で、妊婦の共通カルテを導入することで合意した。上伊那のお産は伊那中央病院(伊那市)に集約、妊婦健診や産後の体調変化による入院はできるだけそれ以外で分担するため、妊婦の健康状態など円滑に交換する試みだ。

 上伊那には、民間1病院を含む4病院と、民間3診療所に産婦人科、1病院に婦人科があるが、信大医学部の医師引き揚げなどにより、来年4月以降お産を扱う病院は伊那中央病院と福島病院(箕輪町)だけになる見込み。伊那中央病院の産婦人科外来患者数は8月が1750人で、4月と比べ約2割増。同病院の産婦人科医ができるだけお産に集中できるよう妊婦健診などの分担が急務だった。

 会合で、辰野総合病院(辰野町)の松崎廉院長が、2005年4月から同病院が休止していた妊婦検査を近く再開する方針を明らかにした。昭和伊南総合病院(駒ケ根市)の千葉茂俊院長は、来年4月開設を検討してきた院内助産院について「市内に産婦人科の開業医がおらず、不可能」と述べ、妊婦検査などに協力する姿勢を示した。

 同検討会は10月、伊那中央病院と昭和伊南総合病院の医師と助産師、上伊那医師会と上伊那助産師会の代表者でつくる「上伊那地域産科連携体制研究会」を立ち上げ、産婦人科の病院や診療所、助産所の協力態勢や共通カルテの詳細をまとめる方針。11月には完成させる予定だ。

(信濃毎日新聞、2007年9月26日)

****** 伊那毎日新聞、2007年9月26日

産科連携体制研究会設置へ

上伊那地域における医療検討会(2)

 伊那保健所が主催する「上伊那地域における医療検討会」の第2回会議が25日、駅前開発ビル「いなっせ」であった。産科医療の機能分担を示し、具体的に連携体制の枠組みを検討する「上伊那地域産科連携体制研究会」(仮称)をできるだけ早い時期に設置することを決めた。

 来年4月、昭和伊南総合病院(駒ケ根市)の常勤産科医がいなくなることを受け、上伊那全体で産科体制について検討している。

 機能分担で伊那中央病院(伊那市)、民間病院、助産所などが「妊婦検診」「分娩(ぶんべん)」、出産後、母体が回復するまでの「産褥(さんじょく)管理入院」をそれぞれ受け持つ。分娩は、中病が年間1200件、民間が100件、助産所・自宅出産が30件と想定。

 助産所は伊那市と駒ケ根市の2カ所にあり、出張助産師は2人いる。来年は4施設になる予定で、2、3年後には6施設と見込み、年間100人くらいは対応できるのではないかとみている。

 昭和病院は来年4月以降、信州大学産婦人科からの非常勤医師による妊婦検診をする予定。「院内助産院は事実上、できない」との考えを示したが、引き続き、検討するという。

 新たに設置する産科連携体制研究会では、機能分担の詳細、公立病院間や助産院を含めた共通カルテの導入などを検討する。人選はこれからで、中病、昭和病院、上伊那医師会、上伊那助産師会の医師、助産師らで構成。検討内容は、医療検討会へ提言する。

 医療検討会メンバーは公立3病院長、上伊那医師会長、市町村担当課長ら16人で、6月に第1回会議を持った。

(伊那毎日新聞、2007年9月26日)

****** 長野日報、2007年9月26日

産科医療の連携大枠了承 上伊那地域医療検討会

 県伊那保健所が主催する「上伊那地域における医療検討会」は25日、伊那市の駅前ビルいなっせで第2回会合を開いた。公立3病院や医師会など医療、行政関係者約20人が出席。産科医療の連携体制の大枠を了承し、医師や助産師ら実務者レベルの上伊那地域産科連携体制研究会(仮称)を設置して具体的な連携のあり方を早急に検討していくことになった。

 来年4月から昭和伊南総合病院(駒ケ根市)が産婦人科を休止するのに伴い、上伊那地域の医療機関の機能分担を検討し、妊婦検診、出産、産じょく管理入院の3段階で示した。出産は、里帰り出産を自粛した上で、伊那中央病院(伊那市)が約1200件、民間の福島病院(箕輪町)が約100件、助産所約30件を想定した。

 助産所は2カ所、妊婦の自宅出産を行う出張助産師が2人いるが、日本助産師会県支部上伊那地区は「2、3年のうちに」助産所が6カ所6人に増加し、「年間100例くらいできるようになるのでは」との見通しを示した。

 出産前の妊婦検診は、これら病院や助産所、開業医に加え、お産の拠点となる伊那中央病院の負担軽減が必要として辰野総合病院が「パート医師による検診を検討する余地はある」と実施に前向きな姿勢を示した。伊那中央病院は「(助産師が中心になって妊婦検診を行う)助産師外来も考えたいが、それには助産師の研修も必要」とし早急な対応は難しいとした。

 昭和伊南総合病院の千葉茂俊院長は取材に、来年4月以降の対応について「非常勤の医師で妊婦検診をやりたい。できれば助産師外来もつくりたい」とする一方、院内助産所の開設は「信大との話で来年4月からの開設は無理。ただ、あきらめず開設は検討していく」と述べた。

 検討会は、産科・小児科医療の集約化・重点化を打ち出した県の検討会の提言を受け、地域の実情に応じた対応策を検討する目的で、県の呼び掛けで6月に発足した。

(長野日報、2007年9月26日)

****** 信濃毎日新聞、2007年9月26日

上伊那地区の産科医確保を 知事あてに要望書

 昭和伊南総合病院(駒ケ根市)が来年4月から出産の扱いを休止する問題で、同病院を運営する伊南行政組合(組合長・中原正純駒ケ根市長)は25日、上伊那地区の産科医確保を求める村井知事あての要望書を板倉副知事に提出した。

 中原組合長は、同病院の医師確保を訴えた一方で、県の検討会が上伊那地区で産科医を重点配置する「連携強化病院」に指定した伊那中央病院(伊那市)についても「強化病院である以上、1人でも多く配置してほしい」と求めた。

 また、昭和伊南の休止に伴い、上伊那の市町村が負担し、伊那中央の産科施設増設を検討している-として、県の財政支援を要望。同組合独自に、研修医を対象とした助成制度を検討していることも明らかにした。

 板倉副知事は「医師の確保は県としても全力で取り組んでおり、徐々に芽は出ている」と説明。財政支援については「無い袖は振りにくい。よく考えさせてほしい」と述べた。

(信濃毎日新聞、2007年9月26日)


第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題011~問題020

2007年10月06日 | 婦人科腫瘍

第1回婦人科腫瘍専門医試験(2006年)、問題と解答例

【問題011~問題020】

問題011 子宮頸部細胞診クラスⅣから推定される病変はどれか。
a)軽度異形成
b)中等度異形成
c)高度異形成
d)上皮内癌
e)微小浸潤癌

問題012 子宮頸部上皮内癌の細胞診所見で正しいのはどれか。
(1)平滑な核縁
(2)著しい核の大小不同
(3)出血壊死性の背景
(4)錯角化または異角化
(5)傍基底型の癌細胞

a(1)(2)、b(1)(5)、c(2)(3)、d(3)(4)、e(4)(5)

問題013 新コルポスコピー所見分類(日本婦人科腫瘍学会、2005)で正しいのはどれか。
a)ヨード塗布試験が必須である。
b)移行帯は異常所見に分類される。
c)白色上皮は軽度または高度にgradingする。
d)白斑は異常所見から除かれた。
e)HPV感染所見を特別に分類する。

問題014 子宮頸部にみられたポリープ状の病変である。組織診断はどれか。(図 1)
a)尖形コンジローマ
b)正常頚管腺上皮
c)微小頚管腺過形成
d)腺癌
e)扁平上皮癌

【問題14-図1】

問題015 子宮頸部腫瘤の生検標本である。組織診断はどれか。(図 2)
a)内頸部型ポリープ
b)正常重曹扁平上皮
c)扁平上皮癌
d)腺癌
e)尖形コンジローマ

【問題15-図2】

問題016 子宮頸部のヒトパピローマウイルス(HPV)感染で正しいのはどれか。
a)HPVは異形成の90%以上に検出される。
b)HPV感染の有無は血清抗体価で判定できる。
c)HPVの型分布は世界中でほぼ同じである。
d)ハイリスクHPVをもつ異形成の約90%が上皮内癌へ進展する。
e)HPVワクチンはタイプ非特異的に感染予防効果をもつ。

問題017 子宮頚癌発生におけるハイリスク型HPVはどれか。
a)11型
b)42型
c)43型
d)44型
e)52型

問題018 ヒトパピローマウイルス(HIV)で正しいのはどれか。
a)頚部扁平上皮癌で最も高頻度に検出されるHPVは52型である。
b)頚部腺癌で最も高頻度に検出されるHPVは18型である。
c)細胞診に異常のない女性でのHPV検出頻度は約50%である。
d)koilocytosisを示す細胞ではHPVは検出されない。
e)妊娠中にはHPVの増殖能(replication)が低下する。

問題019 子宮頸癌の臨床進行期分類(取り扱い規約、1997年)で正しいのはどれか。
a)進行期決定に迷う場合は重い方に分類する。
b)進行期の決定にはCT所見とMRI所見を参考にする。
c)術前診断0期で摘出子宮に微小浸潤癌があればⅠa期とする。
d)膀胱内洗浄液中に癌細胞があればⅣa期とする。
e)進行期決定に頚部円錐切除の病理所見は考慮しない。

問題020 子宮頚癌Ⅰa2期(取り扱い規約、1997年)で正しいのはどれか。
a)浸潤の深さ3 mmを超え5 mm以内で広がり10mmを超えない。
b)脈管侵襲が存在する場合にはⅠb1期に分類する。
c)癒合浸潤が存在する場合にはⅠb1期に分類する。
d)広がりの計測には微小浸潤巣の最大の幅を計測する。
e)深さの計測の基点は浸潤巣直上の最も深い表層基底膜とする。

―――――――――――――――――――――――――

解答例 (誤答の場合は御指摘ください)

問題011 子宮頸部細胞診クラスⅣから推定される病変はどれか。
a)軽度異形成
b)中等度異形成
c)高度異形成
d)上皮内癌
e)微小浸潤癌

解答:d

日母クラス分類
 Ⅰ: 正常である。
 Ⅱ: 異常細胞を認めるが良性である。
 Ⅲa: 軽度(~中等度)異形成を想定する。
 Ⅲb: 高度異形成を想定する。
 Ⅳ: 上皮内癌を想定する。
 Ⅴ: 浸潤癌(微小浸潤癌も含む)を想定する。

******

問題012 子宮頸部上皮内癌の細胞診所見で正しいのはどれか。
(1)平滑な核縁
(2)著しい核の大小不同
(3)出血壊死性の背景
(4)錯角化または異角化
(5)傍基底型の癌細胞

a(1)(2)、b(1)(5)、c(2)(3)、d(3)(4)、e(4)(5)

解答:b

上皮内癌細胞の形態的特長としては、細胞分化が少なく、主として傍基底型の異型細胞が集族性に出現する。細胞は、その分化程度の差により卵円形から紡錘形までの多彩な形態をとる。核クロマチンは増量し、粗大顆粒状を示す。N/C比は増大し、ときに裸核を見る。背景は清明である。

******

問題013 新コルポスコピー所見分類(日本婦人科腫瘍学会、2005)で正しいのはどれか。
a)ヨード塗布試験が必須である。
b)移行帯は異常所見に分類される。
c)白色上皮は軽度または高度にgradingする。
d)白斑は異常所見から除かれた。
e)HPV感染所見を特別に分類する。

解答:c

b)移行帯は正常所見に分類される。

新コルポスコピー所見分類:日本婦人科腫瘍学会2005
A) 正常所見 NCF
 1 扁平上皮  S
 2 円柱上皮  C
 3 移行帯  T
B) 異常所見  ACF
 1 白色上皮  W
    軽度所見 W1
    高度所見 W2
       腺口型(腺口所見が主体の場合) Go
    軽度所見 Go1
    高度所見 Go2
 2 モザイク  M
    軽度所見 M1
    高度所見 M2
 3 赤点斑  P
    軽度所見 P1
    高度所見 P2
 4 白斑  L
 5 異型血管域  aV
C) 浸潤癌所見 IC
 コルポスコピー浸潤癌所見 IC-a
 肉眼浸潤癌所見 IC-b
D) 不適例  UCF
 異常所見を随伴しない不適例 UCF-a
 異常所見を随伴する  UVF-b
E) その他の非癌所見 MF
 1 コンジローマ Con
 2 びらん Er
 3 炎症 Inf
 4 萎縮 Atr
 5 ポリープ Po
 6 潰瘍 Ul
 7 その他 etc

******

問題014 子宮頸部にみられたポリープ状の病変である。組織診断はどれか。(図 1)
a)尖形コンジローマ
b)正常頚管腺上皮
c)微小頚管腺過形成
d)腺癌
e)扁平上皮癌

【問題14-図1】

解答:c

******

問題015 子宮頸部腫瘤の生検標本である。組織診断はどれか。(図 2)
a)内頸部型ポリープ
b)正常重曹扁平上皮
c)扁平上皮癌
d)腺癌
e)尖形コンジローマ

【問題15-図2】

解答:e

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問題016 子宮頸部のヒトパピローマウイルス(HPV)感染で正しいのはどれか。
a)HPVは異形成の90%以上に検出される。
b)HPV感染の有無は血清抗体価で判定できる。
c)HPVの型分布は世界中でほぼ同じである。
d)ハイリスクHPVをもつ異形成の約90%が上皮内癌へ進展する。
e)HPVワクチンはタイプ非特異的に感染予防効果をもつ。

解答:a

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問題017 子宮頚癌発生におけるハイリスク型HPVはどれか。
a)11型
b)42型
c)43型
d)44型
e)52型

解答:e

HPVは子宮頸癌発症との関連性が確認されている。16型、18型、31型、33型、35型、39型、45型、51型、52型、56型、58型、59型、68型などがハイリスク型である。

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問題018 ヒトパピローマウイルス(HIV)で正しいのはどれか。
a)頚部扁平上皮癌で最も高頻度に検出されるHPVは52型である。
b)頚部腺癌で最も高頻度に検出されるHPVは18型である。
c)細胞診に異常のない女性でのHPV検出頻度は約50%である。
d)koilocytosisを示す細胞ではHPVは検出されない。
e)妊娠中にはHPVの増殖能(replication)が低下する。

解答:b

a)頚部扁平上皮癌では16型が最も高頻度である。
c)若年者には、HPV感染は30%前後で、50歳以降では5 %程度である。

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問題019 子宮頸癌の臨床進行期分類(取り扱い規約、1997年)で正しいのはどれか。
a)進行期決定に迷う場合は重い方に分類する。
b)進行期の決定にはCT所見とMRI所見を参考にする。
c)術前診断0期で摘出子宮に微小浸潤癌があればⅠa期とする。
d)膀胱内洗浄液中に癌細胞があればⅣa期とする。
e)進行期決定に頚部円錐切除の病理所見は考慮しない。

解答:c

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問題020 子宮頚癌Ⅰa2期(取り扱い規約、1997年)で正しいのはどれか。
a)浸潤の深さ3 mmを超え5 mm以内で広がり10mmを超えない。
b)脈管侵襲が存在する場合にはⅠb1期に分類する。
c)癒合浸潤が存在する場合にはⅠb1期に分類する。
d)広がりの計測には微小浸潤巣の最大の幅を計測する。
e)深さの計測の基点は浸潤巣直上の最も深い表層基底膜とする。

解答:d

a)浸潤の深さ3 mmを超えるが5 mm以内で、広がりが7 mmを超えないもの。

b)c)癒合浸潤、脈管侵襲がある場合はその旨記載する。進行期の判定には採用しない。

e)深さの判定は浸潤の開始している基底膜部位から最も深い部位までの距離となる。

子宮頸癌臨床進行期分類
(日本産科婦人科学会1997 年,FIGO 1994 年)

0 期:上皮内癌(注1)

Ⅰ期:癌が子宮頸部に限局するもの(体部浸潤の有無は考慮しない)。
 Ⅰa 期:組織学的にのみ診断できる浸潤癌。肉眼的に明らかな病巣はたとえ表層浸潤であってもⅠ b 期とする。浸潤は、計測による間質浸潤の深さが5mm 以内で、縦軸方向の広がりが7mmをこえないものとする。浸潤の深さは、浸潤がみられる表層上皮の基底膜(注2)より計測して5mm をこえないものとする。脈管(静脈またはリンパ管)侵襲があっても進行期は変更しない。
  Ⅰa1期:間質浸潤の深さが3mm 以内で,広がりが7mm をこえないもの。
  Ⅰa2期:間質浸潤の深さが3mm をこえるが5mm 以内で、広がりが7mm をこえないもの。
 Ⅰb期:臨床的に明らかな病巣が子宮頸部に限局するもの、または臨床的に明らかではないがⅠ a期をこえるもの。
  Ⅰb1期:病巣が4cm 以内のもの。
  Ⅰb2期:病巣が4cm をこえるもの。

Ⅱ期:癌が頸部をこえて広がっているが、骨盤壁または腟壁下1/3には達していないもの。
  Ⅱa期:腟壁浸潤が認められるが、子宮傍組織浸潤は認められないもの。
  Ⅱb期:子宮傍組織浸潤の認められるもの。

Ⅲ期:癌浸潤が骨盤壁にまで達するもので、腫瘍塊と骨盤壁との間にcancer free space を残さない。または、腟壁浸潤が下1/3 に達するもの。
 Ⅲa期:腟壁浸潤は下1/3 に達するが、子宮傍組織浸潤は骨盤壁にまでは達していないもの。
 Ⅲb期:子宮傍組織浸潤が骨盤壁にまで達しているもの。または、明らかな水腎症や無機能腎を認めるもの。
 注:ただし、明らかに癌以外の原因によると考えられる水腎症や無機能腎は除く。

Ⅳ期:癌が小骨盤腔をこえて広がるか、膀胱、直腸の粘膜を侵すもの。
 Ⅳa期:膀胱、直腸の粘膜への浸潤があるもの。
 Ⅳb期:小骨盤腔をこえて広がるもの。

[注1]FIGO分類の0期には上皮内癌とCIN3が併記してある。
[注2]浸潤の深さについてFIGO分類では腺上皮の基底膜からの計測も併記されている。

分類にあたっての注意事項

(1)臨床進行期分類は原則として治療開始前に決定し、以後これを変更してはならない。

(2)進行期分類の決定に迷う場合には軽い方の進行期に分類する。FIGOでは習熟した医師による麻酔下の診察を勧めている。

(3)進行期決定のために行われる臨床検査は以下のものである。
 a)触診、視診、コルポスコピー、診査切除、頸管内掻爬、子宮鏡、膀胱鏡、直腸鏡、排泄性尿路造影、肺および骨のX 線検査。
 b)子宮頸部円錐切除術は,臨床検査とみなす。

(4)リンパ管造影、動・静脈撮影、腹腔鏡、CT、MRI 等による検査結果は治療計画決定に使用するのは構わないが、進行期の決定に際しては、これらの結果に影響されてはならない。その理由は、これらの検査が日常的検査として行われるには至っておらず、検査結果の解釈に統一性がないからである。
 CT や超音波検査で転移が疑われるリンパ節の穿刺吸引細胞診は、治療計画に有用と思われるが、進行期決定のための臨床検査とはしない。

(5)Ⅰa1期とⅠa2期の診断は、摘出組織の顕微鏡検査により行われるので、病巣がすべて含まれる円錐切除標本により診断することが望ましい。
 Ⅰa期の浸潤の深さは、浸潤が起こってきた表層上皮の基底膜から計測して5mm をこえないものとする。浸潤の水平方向の広がり、すなわち縦軸方向の広がりは7mm をこえないものとする。静脈であれリンパ管であれ、脈管侵襲があっても進行期は変更しない。脈管侵襲や癒合浸潤が認められるものは将来治療方針の決定に影響するかもしれないので別途記載する。
 ただし、子宮頸部腺癌についてはⅠa1,Ⅰa2期の細分類は行わない。

(6)術前に非癌、上皮内癌、またはⅠa期と判断して手術を行い、摘出子宮にⅠa期、Ⅰb期の癌を認めた場合は(1)の規定にかかわらず、それぞれⅠa期,Ⅰb期とする。従来用いられていたⅠb期“occ”は省かれている。

(7)術前に非癌、上皮内癌、またはⅠa期と判断して子宮摘出を行ったところ、癌が子宮をこえて広がっていた場合に従来は一括して“Ch”群としていたが、このような症例は臨床進行期の分類ができないので治療統計には含まれない。これらは別に報告する。

(8)進行期分類に際しては子宮頸癌の体部浸潤の有無は考慮しない。

(9)Ⅲb期とする症例は子宮傍組織が結節状となって骨盤壁に及ぶか原発腫瘍そのものが骨盤壁に達した場合であり、骨盤壁に固着した腫瘍があっても子宮頸部との間にfree space があればⅢ b 期としない。

(10)膀胱または直腸浸潤が疑われるときは、生検により組織学的に確かめなければならない。膀胱内洗浄液中への癌細胞の出現、あるいは胞状浮腫の存在だけではⅣa期に入れてはならない。膀胱鏡所見上、隆起と裂溝が認められ、かつ、これが触診によって腫瘍と硬く結びついている場合、組織診をしなくてもⅣa期に入れてよい。