ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

大野病院事件 第4回公判

2007年04月28日 | 大野病院事件

コメント:

昨日、大野病院事件の第4回公判があり、手術に立ち会った看護師と病院長の証人尋問が行われました。

いろいろチェックしてみましたが、まだ、現時点(4月28日午前2時)ではネット上に詳細な記事はみつかりませんでした。例のごとく、しばらく待てば、周産期医療の崩壊をくい止める会サイトに、詳細な傍聴録が載ると思います。

追記(4月29日):

その後、全国紙の地方版、地元紙などの情報が続々とネット上に公開されました。それらの記事をざっと見た印象では、今回の公判でも、裁判の流れを大きく変えるような新事実は特にでなかったようです。

警察への異状死の届け出義務に関しては、この病院の院内マニュアルで院長が異状死を届け出ることになっていて、『異状死ではないという院長の判断によって、マニュアルに従い、県の担当者とも協議の上、異状死の届け出は行われなかった。』という事実が、院長の証言によって再確認されたようです。

また、院長の「当時は医療過誤にあたるとは思わなかった。」という当初の認識が、県の事故調査委員と話している時に、「動揺した。やってはいけないことをしたのではないかと思った。」という認識に変わったとの院長の証言もあったようです。

参考:

福島県立大野病院事件第四回公判【天漢日乗】

ロハス・メディカル ブログ
   福島県立大野病院事件第四回公判(2)
  福島県立大野病院事件第四回公判(1)
  福島県立大野病院事件第四回公判(0)

周産期医療の崩壊をくい止める会
      第四回公判について(07/4/27)
  第三回公判について(07/3/16)
  第二回公判について(07/2/24)
  第一回公判について(07/1/26)

大野事件第4回公判(産科医療のこれから)

院長が事件当日の詳細を語る「21条違反なかった」 福島県立大野病院事件、第4回公判 (OhmyNews)

大野病院事件についての自ブログ内リンク集

****** 福島中央テレビ、2007年4月27日

大野病院裁判 看護師などが証言

Hukushimachuoutv  大熊町の県立大野病院で帝王切開の手術を受けた女性が死亡した事件の裁判で、手術に立ち会った看護師と病院長の証人尋問が行われました。

 業務上過失致死などの罪に問われている県立大野病院の産婦人科医、K被告は、2004年の12月に、当時29歳の女性の帝王切開の手術をした際、生命の危険があったにも関わらず、無理に癒着した胎盤を引き剥がして死亡させたなどとされています。

 きょうの第4回の公判では証人尋問が行われ、手術に立ち会った看護師は「手術中の被害者が大量に出血し、不安があった」と語り、「手術の間、K医師にあわてた様子は見られず、冷静な状態だったと覚えている」と証言しました。

 また、大野病院の病院長は、手術直後にK被告がうなだれた口調で「やっちゃった」と話し、とても落胆した様子だったと証言しました。

 さらに、警察に「異状死」の届出をしなかったことについては「当時は、医療過誤にあたるとは思わなかった」と述べました。

 次の第5回の公判は、5月25日に開かれます。

(福島中央テレビ、2007年4月27日)

文中、K医師名を伏せさせていただきました。

以下、追記: 公判翌日(4月28日付)の報道

****** 読売新聞、2007年4月28日

大野病院事件、院長が出廷、証言

「過誤なしの認識変わった」

 大熊町の県立大野病院で2004年、帝王切開手術で女性(当時29歳)を失血死させたなどとして、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた産婦人科医、K被告の第4回公判が27日、福島地裁(○○○○裁判長)であり、検察側の証人として同病院の△△△△院長が出廷した。

 K被告が子宮から胎盤をはく離する処置に手術用ハサミを用いたことについて、「出血をコントロールできなくなる」と県の事故調査委員が話したのを聞き、△△院長は「過誤はない」との当初の認識を翻したと明らかにし、「動揺した。やってはいけないことをしたのではないかと思った」と述べた。

 弁護側は公判後、「麻酔記録からも胎盤はく離中は大量出血していないのは明らか。その時点で、はく離を継続するとした判断に過失はない」とした。

 一方、医師に異状死体の届け出義務を課した医師法の規定に関し、△△院長は「病院の安全管理マニュアルでは院長が警察に届け出る。医療過誤がないので届ける必要はないと考えた」と自身の判断だったことを説明した。

(読売新聞、2007年4月28日)

文中、K医師名を伏せさせていただきました。

****** 朝日新聞、2007年4月28日

大野病院事件 院長「届け出不要」

-術後の対応公判で証言 院内の手引きに従い-

 県立大野病院で04年に女性(当時29)が帝王切開手術中に死亡した事件で、業務上過失致死と医師法(異状死体の届け出義務)違反の罪に問われた、産科医K被告の第4回公判が27日、福島地裁(○○○○裁判長)で開かれた。同院の院長は、病院のマニュアルに従い、院長が警察に届け出る必要が無いと判断したと証言した。

 公判には、検察側の証人として、△△△△院長と、手術に立ち合った看護師が出廷した。

 △△院長の証人尋問によると、女性が亡くなった04年12月17日の午後10時半ごろから、院長ら3人が、K医師と手術に立ち合った麻酔科医の2人から事情を聴いた。K医師らは「過誤にあたる行為は無かった」と報告したという。

 このため、院長は「医療過誤による死亡の疑いがある場合、院長が警察署に届け出る」という院内マニュアルの規定にあたらず、届け出の必要が無いと判断。マニュアルに従い、県の担当者と電話で協議した上、届け出ないことを決めたという。

 医師法は、死体を検案した医師に24時間以内の警察署への異状死の届け出を義務づけており、検察側は、K医師が届け出義務に反していると主張。一方、弁護側は病院のマニュアルに基づいて院長が判断しており、K医師が届け出る期待可能性は無いとする。

 院長によると、手術3日後の20日には、院長やK医師、麻酔科医らが参加する院内検討会を開いたが、そこでも医療過誤では無いとする結論に至った。

 院長は、その後に開かれた産婦人科医3人からなる県の事故調査委員会で、委員から「器具を使用して胎盤を無理にはがしたのは問題」と指摘され、初めて「医療過誤にあたるのではないか」と認識したという。

 院長が後日、K医師に対し、「クーパー(医療用はさみ)を使うのはいけないのでは」とただしたところ、「そんなことはない。ケースバイケース。剥離した時に筋っぽいところをちょっと切っただけ」などと話していたという。

 クーパーを使用した胎盤の剥離については「安易に使用し、無理やりはがしたのは問題」とする検察側と、「妥当な医療行為」とする弁護側が対立している。

 また△△院長が手術室に入った際、女性が大量に出血していたため、K医師に応援の医師を呼ぶか尋ねたところ「大丈夫です」と断られたという。だが、輸血によって女性の血圧が回復したため、「生命の危機を脱した」と判断し、1時間後に退室した、としている。

(朝日新聞、2007年4月28日)

文中、K医師名を伏せさせていただきました。

****** 毎日新聞、2007年4月28日

大野病院医療事故:院長「医療過誤でない」判断、事故調指摘で揺らぐ--地裁 /福島

 県立大野病院で起きた帝王切開手術中の医療事故で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた同病院の産婦人科医、K被告の第4回公判が27日、福島地裁(○○○○裁判長)であり、証人尋問が行われた。事故を医療過誤ではないと判断した同病院の院長は、県の事故調査委員会で手術の問題性を指摘された際に「やってはいけないことをやってしまったのではないかと思った」と自身の考えが揺らいだことを明らかにした。

 同病院のマニュアルでは、医療過誤やその疑いがある時は院長が富岡署に届け出ることが規定されており、医師法でも医師自身が24時間以内に警察署に届け出ることが義務づけられている。院長は事故当日の夜、加藤被告と麻酔科医に事情を聴いたが「医療過誤にあたる行為はなかった」と答えたため、警察への届け出をしなかった。

 しかし事故調では、委員を務める産科専門医から「教科書的に言うと、器具ではがしてはいけない」とクーパー使用の妥当性を否定されたという。【松本惇】

(毎日新聞、2007年4月28日)

文中、K医師名を伏せさせていただきました。

****** 福島民友、2007年4月28日

院長「過誤の認識なかった」 大野病院事件

 大熊町の県立大野病院で2004(平成16)年12月、帝王切開で出産した女性=当時(29)=が死亡した医療事件で、業務上過失致死と医師法違反の罪に問われた産婦人科医K被告の第四回公判は27日、福島地裁(○○○○裁判長)で開かれた。検察側証人として同病院の男性院長と手術に加わった女性看護師の2人の尋問が行われた。

 院長は検察側の尋問で「当時、医療過誤の認識がなく、県の了解を得て警察に届けないことにした」と述べ、事件3日後の院内検討会でも問題を指摘する声がなかったことも明らかにし、異状死の届け出義務を定めた医師法21条に該当する認識はなかったと証言した。

 院長は大量出血が起きるまで帝王切開手術が行われていたことを知らず、知らせを受けて手術室に駆け付け、K被告にほかの医師の応援を提案したが「大丈夫です」と断られたことも証言した。

 女性看護師も手術台から血液が落ちるほどの大量出血が起きた様子を証言し、「その日の朝の術前会議でどのような事態になったら応援要請をするか明確ではなかった」と述べ、深刻な状態が起きた場合の病院内の態勢が不十分だったことを述べた。

 また、公判の冒頭で弁護側は、検察側が被告の過失を証明するため提出した文献について文献執筆者に意見照会したことを明らかにし、「クーパー(手術用はさみ)の使用は有用であり多様」などとする見解を提出した。

 次回公判は5月25日午前10時から。検察側証人で病理鑑定医が証言する。

(福島民友、2007年4月28日)

文中、K医師名を伏せさせていただきました。